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携帯電話で聴けるニフティの音楽配信「MOOCS」の実力を検証

MOOCS
 1999年の「music.co.jp」「bitmusic」から始まった日本の音楽配信サービスは、これまでなかなか普及が進まなかった。しかし、アップルコンピュータのiTunes Music Store(iTMS)がサービス開始からわずか4日で100万ダウンロードを突破。タワーレコードも定額の音楽配信サービスを表明するなど、音楽配信サービスの状況は一転し始めている。

 iTMSの登場により、楽曲のファイル形式ではWMA、AAC、ATRAC3の三つ巴となっていた音楽配信サービス市場において、ニフティがSD-Audio形式の音楽配信「MOOCS」で参入を表明した。厳密にはSD-AudioはSDメモリカードのファイル格納フォーマットであり、WMAやAACのような音声圧縮方式とは異なるが、これまでのWWA/AAC/ATRAC3対応機器とは異なる専用機器でなければ再生できないという点では、まったく新しい第4の音楽配信サービスと言えるだろう。

 MOOCS最大の特徴は、SD-Audioのサポートで携帯電話にも対応したこと。と言っても現時点では携帯電話から楽曲を購入できる訳ではなく、PCで購入した音楽をSDカードやminiSDカードに転送し、携帯電話で再生するという流れだ。

 ただし、注目すべきはSD-Audio対応の携帯電話端末数。ニフティの調査によれば、MOOCSを発表した9月の時点ですでに120万台のSD-Audio対応携帯電話が出荷されており、秋以降に発売される新端末や、SD-Audio対応のオーディオプレーヤー、ポータブルプレーヤーを含めると、SD-Audio対応機器は2005年3月までに700万台を突破する見込みだという。

 後発ながらも、携帯電話に対応したという点で可能性を秘めたMOOCS。10月31日に開始されたサービスを早速利用してみた。





ニフティ会員以外も利用可能。楽曲は2005年内に20万曲を用意

メールアドレスだけで登録できる「PLEASY」
 MOOCSの利用には、ニフティのコンテンツ決済サービス「PLEASY(プリージー)」の登録が必要だ。PLEASYはクレジットカード登録の必要がなく、購入したコンテンツの料金のみ課金される月額基本無料制。決済方法もクレジットカードのほかにWebMoneyやEdy、BitCash、Mobile Edy(おサイフケータイ)と豊富で、ニフティのISP「@nifty」会員以外でも利用できるほか、@niftyとの合算請求も可能だ。

 PLEASYに登録したユーザーは、MOOCS専用のプレーヤーソフト「MOOCS PLAYER」が無料でダウンロードできる。MOOCSを利用するためには必須のソフトだが、基本的には松下電器産業製のソフト「SD-Jukebox V5.0 LE」をベースとした製品のため、SD-Jukebox V5.0 LEの差分アップデートでもMOOCSが利用可能だ。なお、MOOCS PLAYERはWindows XP/2000対応ソフトのため、現状ではMacintoshからMOOCSは利用できない。

 購入できる楽曲は、東芝EMIやエイベックス ネットワーク、ドリーミュージックなど、他の音楽配信サービスでも定番のレーベルが顔を揃えている。配信楽曲はサービスが始まったばかりのためか、他サービスと比較して同じアーティストでも配信されていない楽曲などが見受けられるが、2005年内には20万曲まで拡充する予定という。価格はインディーズアーティストのもので1曲105円で、最も高い楽曲は257円。中心価格帯は150円に設定されている。

 また、MOOCSでは無料でダウンロードできる楽曲も用意されている。配信楽曲はインディーズアーティストのみだが、サービス開始時点で50曲以上の無料楽曲が用意されており、手軽にMOOCSを試すことができる。もちろん、楽曲購入前の試聴も可能だ。


無料でダウンロードできる楽曲も用意 ユーザーに無料提供される「MOOCS PLAYER」




専用ソフトでCD取り込みも対応。ファイル形式はSD-Audio独自

CD取り込み機能。gracenote CDDBでアーティスト名やタイトルを自動で取得できる
 まずは専用ソフト「MOOCS PLAYER」の使い勝手から見てみよう。MOOCS PLAYERは楽曲購入だけでなくCDからの楽曲取り込み機能も備えており、取り込んだ楽曲はインストール時に設定した「Audio」フォルダに一括して保存される。gracenote CDDBにも対応しており、すでにCDDBに登録済みのCDであればタイトルやアーティスト名も自動で取得可能だ。

 ただし、楽曲ファイルはWMAとAACの2通りが用意されるものの、最初に述べた通りSD-Audioは中にファイルを格納するための仕組みであり、取り込んだファイルはWMAは「swma」、AACは「saac」という独自の形式で保存される。このため、SD-Audioで取り込んだ楽曲は音声圧縮方式が同じであっても一般のWMAやAAC対応オーディオ機器では再生できない。

 また、MOOCS PLAYERではMP3での楽曲取り込みにも対応していない。自分の音楽ライブラリをSD-Audioでのみ構築する、という割り切りでもない限り、通常は他のソフトを使ってMP3で楽曲を取り込み、SD-Audio対応機器で聴きたい曲をMOOCS PLAYERで転送する使い方が適していると思われる。

 なお、すでにPC内に保存された楽曲であれば、MP3/WMA/WAVE形式の楽曲はファイルを変換することなくMOOCS PLAYERに登録できる。楽曲ファイルが保存されたフォルダを一括してMOOCS PLAYERへ登録できる「インポート」機能も利用可能だ。ただし、他の音楽配信サービスで購入したDRM対応の楽曲や、iTunesで作成したAACファイルはインポートできない点は注意が必要だ。


左がWMA、右がAACでCDからリッピングしたファイル。どちらも拡張子に「S」が付いた独自のファイル形式で保存される PC内の楽曲を一括してMOOCS PLAYERに登録できるインポート機能




転送はチェックイン/チェックアウトに対応。Move機能も実装済み

楽曲はカート形式で購入する
 MOOCSで楽曲を購入するには、ブラウザもしくはMOOCS PLAYER内の「Music Store」からMOOCSのWebサイトへアクセスする。ブラウザから利用する際は専用のActiveXコントロールをインストールする必要があり、楽曲を選択してカートに入れる場合は自動的にMOOCS PLAYERが起動する仕組み。楽曲を連続購入する場合は、MOOCS PLAYERとブラウザを交互に使わなければならないため、基本的にはMOOCS PLAYERから購入したほうが使いやすいと感じた。

 MOOCSの楽曲はすべて128kbpsのAACでエンコードされており、ダウンロード後はリッピングしたファイルと同じ「Audio」フォルダで管理され、MOOCS PLAYERに自動で登録される。ファイル形式は「.ssa」で、リッピングした楽曲とファイル形式は異なるものの、MOOCS PLAYER上での操作は同じ。プレイリスト登録やタイトル編集も可能だ。

 購入した楽曲ファイルは、PC上ではMOOCS PLAYERから再生できるが、ファイルを手動でSDカードへコピーしても再生できない。SD-Audio対応機器で再生するためには、USBケーブルで対応機器とPCを接続するか、もしくはCPRMに対応したSDカードリーダ/ライタを使い、SDカードもしくはminiSDカードへ楽曲を転送する必要がある。CPRM非対応のカードリーダ/ライタでは転送できず、携帯電話などSD/miniSDスロットを搭載した端末であっても、SD-Audioに対応していなければ楽曲を転送できない点に注意しよう。


購入した楽曲のファイル拡張子は「.ssa」で、ファイル名は番号で管理される 購入した楽曲もCDから取り込んだ楽曲も同じ画面で管理する

プレイリストからCD-Rへの書き込みも可能
 転送は、楽曲ごともしくは作成したプレイリストごとに行なえる。画面下の転送ボタンか、楽曲もしくはプレイリストを右クリックして転送が可能だ。ただしプレイリストの転送は、プレイリストに登録された楽曲も合わせて転送されるため、プレイリストだけの転送はできない。

 一旦SDカードへ転送した楽曲は、SD-Audio対応機器であればどの端末でも再生可能。他のPCで購入した楽曲も、SD-Audio対応端末を接続すればMOOCS PLAYERを使って別のPCで再生できる。購入した楽曲はCD-R書き込みにも対応しており、書き込みたい楽曲をプレイリストへした後にプレイリストを右クリック、「Audio CDの作成」から音楽CDを作成できる。

 楽曲転送後は、SDカードをSD-Audio対応機器に装着すればいいだけ。一度楽曲を転送したSDカードであれば、他の端末に差し替えても問題なく再生できる。購入した楽曲はタイトルやアーティスト名なども付与されており、プレイリストを使った操作も可能だ。


購入した楽曲を「SV-SD100V」「W31SA」で再生。楽曲を転送したminiSDカードを差し替えるだけで再生できる


 楽曲の転送ルールはレーベルごと異なり、東芝EMIの宇多田ヒカルであれば転送は無制限でCD書き込みが10回まで、ドリーミュージックの平原綾香であれば転送3回、CD書き込みが7回までといった具合だ。ただし、転送システムはチェックイン/チェックアウトに対応しているため、一度SDカードへ転送した楽曲もチェックインを行なうことで転送回数を元に戻せる。このあたりの転送ルールはMoraを初めとしたATRAC系の音楽配信サービスに近い。

WMA ATRAC3 AAC SD-Audio
代表サービス MSNミュージック
OnGenなど
Mora
Yahoo!ミュージックダウンロードなど
iTMS MOOCS
転送回数 レーベルごと レーベルごと 無制限 レーベルごと
チェックイン/チェックアウト × −※1
CD-R書き込み レーベルごと レーベルごと 無制限※2 レーベルごと
他PCでの再生 バックアップのみ バックアップのみ 4台まで バックアップのみ
※1 全曲が転送無制限のためチェックイン/チェックアウトなし
※2 同一プレイリストの書き込みは7回まで
代表的な音楽配信サービスの配信ルール比較


楽曲のプロパティには「Move」の項目が
 気になるのは購入した楽曲のプロパティに「Move」の項目が用意されている点だ。ただし、MOOCSの楽曲購入時にはMoveに関する記述はなく、購入した楽曲もMoveに関しては何も表示されていない。

 ニフティによると、SD-AudioではMoveの機能自体は持っているものの、レーベルの許諾が降りていないためにサービスとしては実装していないという。今後はレーベルと楽曲のMove対応についても進めていく予定とのことで、この機能が実装されれば、他のPCで買った楽曲を1つのPCでまとめて管理することもできそうだ。





携帯電話での購入も技術的には可能

MOOCSに対応した携帯電話の紹介コーナー
 提供されている楽曲や配信ルールなどを見る限り、他の音楽配信サービスとMOOCSとでは大きな違いは見受けられない。配信ルールに関して言えば、すべての楽曲が転送およびCD-R書き込み無制限であり、最大5台のPCで楽曲ファイルを再生できるiTMSほどの柔軟性も見受けられない。

 やはり最も注目すべきは最初に述べた通り、携帯電話でも利用できるという対応ハードウェアの多さだろう。SD-Audioに対応した携帯電話という制限はあるものの、すでに100万単位で対応ハードウェアが市場に出回っているという点は大きな強みだ。また、携帯電話に対応したサービスという面から、量販店などの携帯電話売り場でのMOOCSプロモーションも期待できる。これまで音楽配信サービスを利用したことがないユーザーへの認知度を高める良い機会にもなりそうだ。

 現状ではPCから購入して携帯電話に楽曲を転送する流れだが、携帯電話からの直接購入も技術的には可能だという。ただし、現状の携帯電話の通信速度では楽曲ファイルのダウンロードは厳しいため、サービス提供に至っていないのが現状だ。今後携帯電話の高速化が進み、携帯電話事業者やレーベル各社との提携が進むことで、携帯電話のみで完結できる音楽配信サービスも実現が期待される。

 配信ルールに関しても、Move機能が実装されることで、外出先からノートPCで楽曲を購入し、自宅のデスクトップPCへムーブして一括管理する、携帯電話で購入した楽曲をPCへムーブ、という使い方も可能になるだろう。PC在りきの音楽配信サービスから大きく成長できる可能性も秘めていると感じた。


 ただし、懸念材料もないわけではない。音楽を聴くために音楽プレーヤーを購入したユーザーに比べて、携帯電話のユーザーが果たしてどこまで音楽配信を積極的に利用するかという点は疑問が残る。また、操作性や電池の持ちに関しても、専用機器ほどに携帯電話の利便性は高くないだろう。SD-Audio対応の音楽専用プレーヤーとしては、松下電器の「D-snap Audio」シリーズ程度で、対応機器が多いとは言いがたい。

 個人的に気になったのは、無料のMOOCS PLAYERではCDからMP3での取り込みができないこと。著作権的な観点からの配慮もあるのかもしれないが、CDからはMP3で取り込んでおき、SDカードへ転送する際に初めてSD-Audio形式へ変換する方式であれば、リッピングソフトとしての利用度が高まり、結果としてMOOCSのサービス利用にもつながるのではと感じた。iTMSがサービス開始からわずかな時間で大きく普及したのは、iTunesが単なるiPodへの転送ソフトというだけではなく、MP3やAACで楽曲を取り込めるソフトとしての利便性が高かったことも要因ではないだろうか。

 ソニーがATRAC3以外にWMA対応を表明していることから、今後はマルチプラットフォームの時代が到来する可能性もあるが、少なくとも現状の音楽配信サービスはハードとソフト、そしてサービスの3つが強く結びついており、どれが欠けても良いサービスとは言えない。サービスは提携レーベルで他事業者とほぼ同等、ハードは携帯電話に対応したというメリットもあるMOOCSだが、ソフト面に関しては他に比べて使い勝手の面で課題も感じた。携帯電話からの購入対応など今後に期待を持てる点もあるだけに、MOOCSには総合的に優れた音楽配信サービスの実現を期待したい。


関連情報

URL
  MOOCS
  http://moocs.com/

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(甲斐祐樹)
2005/11/02 13:55
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