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開発陣に聞くニンテンドーDSブラウザーのコンセプト

 7月24日、ニンテンドーDSをブラウザとして利用できる「ニンテンドーDSブラウザー」が発売される。この製品のコンセプトや概要について、任天堂 開発技術本部の下村勝氏と橋本英之氏に伺った。


「Wi-Fiを最も使うアプリケーションはブラウザー」

ニンテンドーDSブラウザー
――本日はよろしくお願いします。はじめに、ニンテンドーDSブラウザー開発のきっかけを教えて下さい。

下村:ニンテンドーDSは標準でWi-Fi準拠の無線LANを搭載していますが、無線LANを最も使うアプリケーションといえばやはりブラウザーだろうと。ゲームボーイアドバンスと比べてニンテンドーDSは画面の解像度も向上していますし、実際に使えるブラウザーが作れるのではないか。作れるかもしれないならやってみよう。そんな発想から開発がスタートしました。

――ブラウザにOperaを採用した理由は。

下村:携帯機器向けの組み込みブラウザーで快適に動作しているということ。また、OperaさんもDS用ブラウザーという話に対して積極的に取り組んでいただけたことも理由の1つです。

――ブラウザ開発のスタート時期は。

橋本:Operaさんとの交渉を始めたのが2005年の初めくらいです。ブラウザー開発自体はそれよりも前から動いていましたが、本格的に開発が始まったのは2005年のゴールデンウィーク頃で、開発期間としては約1年程度です。

――製品にはメモリー拡張カートリッジが同梱されますが、DSカードとの役割分担は。

下村:DSカードは、他のゲームと同様にマスクROMが入っていて、そこにブラウザーのプログラムが組み込まれています。最初はDSカードだけで開発していたのですが、実際にさまざまなホームページを見ていると、PC用に書かれたホームページではメモリー容量が足りずに閲覧できないことがありました。本体内のRAMだけでは快適な閲覧が難しいということで、後からメモリー拡張カートリッジを開発しました。

――メモリー拡張カートリッジの違いでDS用、DS Lite用とパッケージが2種類になった理由は。

下村:基盤は共通なので、1つにすることは難しくありません。ただし、ニンテンドーDS Liteでは、DS用のメモリー拡張カートリッジが少しはみ出てしまいます。デザインを気にされるお客さまのことも考えてLite用のデザインも作りました。

 もちろん、中身は一緒なのでDS用カートリッジをLiteに装着しても動きます。ただ、Liteのほうが輝度調整ができるぶん、従来のDSよりも快適にホームページを楽しめるかもしれませんね。逆にDS Lite用カートリッジは形状が異なるので、ニンテンドーDSには装着できません。


2種類の製品パッケージ DS Lite用メモリー拡張カートリッジ(上)とDS用メモリー拡張カートリッジ(右)。DSカード(左)はDS、DS Liteで共通

Broadband Watchを表示したところ。画面下の青枠部分が画面上部に拡大表示されている 2画面で1画面表示する「縦長モード」では画面の横幅に合わせてサイトを表示する

設定画面。検索エンジンは任意のサービスを設定できる。初期設定はYahoo! JAPAN 50〜150%の幅で拡大・縮小表示が可能

公衆無線LANサービスでも利用可能

ゲームボーイカラーやゲームボーイアドバンスを携帯電話・PHSに接続して通信できる「モバイルアダプタGB」
――ニンテンドーDSブラウザーの通信速度は。

橋本:詳しい測定はしていませんが、約1Mbpsくらいでしょうか。

下村:ニンテンドーDSが搭載しているのは、(a/b/gが付かない)無印のIEEE 802.11ですが、それがボトルネックになっているということはありません。むしろ通信速度が速すぎても、レンダリングスピードが追いつきませんので。

※IEEE 802.11: 2.4GHz帯を利用した理論値最大2Mbpsの無線LAN通信規格。後に同じ2.4GHz帯で最大11MbpsのIEEE 802.11b、最大54MbpsのIEEE 802.11g、5GHz帯を使った最大54MpsのIEEE 802.11aといった規格が策定されている。

――携帯電話・PHSといったデータ通信の対応は。

下村:任天堂でも以前に「モバイルアダプタGB」という製品を出したことがありますが、通信関連の製品は非常に対応が難しい分野だと思います。

 ただ、無線LANのアクセスポイントはこれから広がっていくと思います。例えば、無線LANアクセスポイントがあるファーストフードショップでも、ノートPCを広げている人はあまり見かけない。けれどニンテンドーDSを持っている子供はよく見かけます。そういった街のショップを見つけて気軽にメールをチェックしたりといった使い方が広がっていけば、と期待しています。公衆無線LANサービスも、NTTコミュニケーションズさんのHOTSPOTと、日本テレコムさんのBBモバイルポイントでは、動作を確認しました。残念ながら、PPPoE認証が必要な公衆無線LANサービスには、対応できていません。

――「おいでよ どうぶつの森」などでは本体が変わるとともだちコードも変更される仕様になっていましたが、ニンテンドーDSブラウザーは本体を変えても使えるのでしょうか。

下村:ゲームではそういう仕組みもありましたが、今回は使っていません。DSカードにはお気に入りと若干の設定情報が入っていますが、別のDS本体にDSカードを差し替えても、そのまま自分のお気に入りが使えます。

――オンラインでの限定販売の理由は。

下村:本当は店頭で販売したいのですが、ブロードバンドも無線LANもない人が購入される場合も想定されますよね。マリオカートDSなどであればネットにつながなくても遊べますが、ブラウザーはネットにつながなければ何もできない。そういうことも考えてまずはオンライン販売のみとしました。


マルチメディア対応よりも閲覧の快適さを優先

任天堂 開発技術本部 研究開発部 部長代理の下村勝氏(右)と企画グループの橋本英之氏(左)
――動画や音声、Flashには非対応ですが、実装は難しかったのでしょうか。

下村:ニンテンドーDSはPCと比べればCPUやメモリーが小さく、価格も安い商品です。そういった意味ではPCに比べて力が劣る点はありますが、それでもPC用のホームページを快適に閲覧できるようにしたかった。動画やFlashに対応することと、快適にホームページが見られることのどちらが重要か、と考えたときに、むやみに動画に対応するよりもまずはホームページを快適に見られることを目指しました。

――無線LANの設定はニンテンドーWi-Fiコネクションと共通でしょうか。

下村:設定自体は共通ですが、今回の製品は、「ニンテンドーWi-Fiコネクション」のラインナップには入れていません。というのも、ニンテンドーWi-Fiコネクションは「あんしん・カンタン・無料」がコンセプトのブランドです。もちろんニンテンドーDSブラウザーも安全面で最大限配慮していますが、ユーザーさんが閲覧されるページはメーカー側でコントロールできないですから。

 とはいえ、仕組み自体はニンテンドーWi-Fiコネクションと共通ですし、画面も同じです。「マリオカートDS」などで一度ニンテンドーWi-Fiコネクションを設定していれば、そのままニンテンドーDSブラウザーも利用できます。

――メモリー拡張カートリッジにプログラムの保存はできるのでしょうか。

下村:動画やFlashと同様、まずは快適にホームページを見てもらうことを優先しているので、プログラム保存には対応していません。

橋本:プログラムのダウンロードはウイルスの危険性もありますし、ニンテンドーDSを使うユーザー層にはそういったことに詳しくない方もいらっしゃるかもしれないので、プログラムが実行できないことがセキュリティ的に安心という考えもあります。


気軽に使える「ライフスタイルを変えるブラウザー」を目指す

――セキュリティ面での対応は。

下村:安全面の配慮として、デジタルアーツさんにお願いし、有害サイトをブロックする「iフィルター」をニンテンドーDSブラウザーにも対応していただきました。月額315円の別料金ではありますが、iフィルターがあれば子供に気軽に渡しても、出会い系サイトなどが表示される心配はありません。ニンテンドーDSブラウザーには起動時にパスワード入力が必要な設定も可能ですので、子供さんに勝手に使われてしまうということも防げるでしょう。

 また、本体に保存される個人情報もお気に入り情報程度ですから、個人情報流出に対する心配もありません。一方で、Cookie情報は電源を切るたびリセットされるため、IDでログインするサービスなどはそのたびにIDを入力する手間がかかります。この点は悩んだところですが、本体を落として無くすということも考えられるので、安全性を重視する仕様を採用しました。


デジタルアーツの「iフィルター」に対応 起動制限パスワードも設定できる

――他のハードと連動するといった機能は。

下村:任天堂が発売するブラウザーだけに、変わった機能があるのでは、と推測される方もいらっしゃるようですが、今回の製品はゲームや連動といった面白いブラウザーというよりも、シンプルに使ってもらえるブラウザーです。ライフスタイルを変えられるブラウザーを目指して開発しました。

 たとえばテレビを見ている時にURLが紹介されたら、ホームページをその場で確認できますし、ベッドの上でごろごろしながらニュースやオークションをチェックすることも手軽にできます。そういった使い方はPCでは難しく、携帯電話は画面表示や文字入力といった点に課題があります。

 ニンテンドーDSブラウザーはPCでも携帯電話でもない、気軽に「ながら」で使えるブラウザーです。掲示板やSNS、ブログもこれ1台で楽しめるよう、文字入力にジャストシステムさんのATOKを採用したり、手書き文字の認識にも対応しました。入力インターフェイスにはこだわって作っています。


タッチペンによる手書き入力や予測変換に対応 ソフトキーボード入力も可能

下村:今回のニンテンドーDSブラウザーは、いわゆるゲームソフトのような商品とは異なりますし、ニンテンドーDSは高齢者や女性など幅広い層にユーザーが広がっていますので、ニンテンドーDSブラウザーもそういった幅広いお客さまに興味を持っていただけたらと考えています。

 商品が完成してから社内で見せて回ると、年齢が高めの人にも人気があり、多くの人たちが興味を持ってくれました。私には1人暮らしの母がいますが、プロバイダーやブロードバンド、PCなどの環境を作ってあげてもなかなか使いこなせない。このニンテンドーDSブラウザーであれば、母親も気軽にネットで調べものができるようになると思います。SSLにも対応していますから、ネットオークションやオンラインショッピングも楽しめますし、そうした高年齢層の方々にも気軽に使ってもらいたいですね。

――ありがとうございました。


関連情報

URL
  ニンテンドーDSブラウザー
  http://www.nintendo.co.jp/ds/browser/

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(甲斐祐樹)
2006/07/18 11:01
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