7月24日、ニンテンドーDSでインターネットの利用が可能になる「ニンテンドーDSブラウザー」が発売された。サイト閲覧や操作性、通信スピードなどの機能をレポートする。
■ 初回設定は簡単。無線LAN設定はゲームのものが共通して使える
ニンテンドーDSブラウザーは、DSカードとメモリー拡張カートリッジをニンテンドーDSに装着することでブラウザが利用可能になるブラウザソフト。メモリー拡張カートリッジの形状によってニンテンドーDS用とニンテンドーDS Lite用の2種類が用意されており、Lite用のメモリー拡張カートリッジはDSには装着できない。また、メモリー拡張カートリッジはDSカードとセットで利用する必要があり、DSカード単体では動作しないようになっている。
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パッケージは2種類
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DS用メモリー拡張カートリッジ装着時
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DS用メモリー拡張カートリッジはDS Liteでははみ出てしまう
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DS Lite用メモリー拡張カートリッジ装着時
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初回起動時にはまずキーボードとタイムゾーン、起動制限パスワードの有無を設定する。デフォルトではすべて日本向けに設定されているので、そのまま進めていけば特に問題はないだろう。
無線LAN接続は、すでにニンテンドーWi-Fiコネクションなどを利用したことがあるユーザーであれば設定の必要はない。初めて無線LANを設定する場合はSSIDとWEPキーを手動で入力するか、バッファローの「AOSS」、NECアクセステクニカの「らくらく無線スタート」といった設定支援機能も利用できる。
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初期設定でキーボードなどを設定する
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無線LAN設定はニンテンドーWi-Fiコネクションと共通。AOSSやらくらく無線スタートも利用できる
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■ サイトが確認しやすい「2画面モード」と文字向けの「縦長モード」
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起動時に表示されるスタートページ
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ニンテンドーDSブラウザーの画面表示設定は3種類。初回起動時は2画面を1画面として利用する「縦長モード」が設定されており、タッチスクリーンのアイコンから2画面のうち上画面を通常表示、下画面を縮小表示する「2画面モード」に切り替えられる。2画面モードではさらにXボタンかタッチスクリーンのアイコンで、縮小画面と拡大画面を上下入れ替えられる。
Aボタンは決定、Bボタンはキャンセル、Xボタンが画面切り替え、Yボタンが文字やカーソル切り替えなど、ボタンはそれぞれ大まかな役割分担がされている。例えばBボタンはサイトの読み込み中止や再読み込みが可能で、縦長モード時にXボタンを押すと表示ページの先頭と末尾へ交互へ移動。Yボタンを押すとアイコンにカーソルが移動する。
画面の移動は十字ボタンとタッチペンで行なう。十字ボタンはリンクを基準にして移動するが、タッチペンはドラッグ操作で画面を自由に移動できる。また、LボタンとRボタンにも画面移動の補助機能が用意されており、L/Rボタンいずれかとと十字ボタンを組み合わせることで縦長モードでは画面スクロールが可能。2画面モードでは拡大画面の範囲を表示する「スコープ」を十字ボタンで操作できる「スコープ操作モード」に移行する。
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縦長モード。文字が画面幅で折り返されるためテキスト中心の閲覧では使いやすい
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2画面モード。上画面に拡大ページが表示され、下画面の縮小ページで画面内を移動する
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リンクをタッチする際は下画面と上画面を入れ替える。下画面に拡大ページを表示したままドラッグ操作で移動することも可能
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縦長モードでは新しいページを表示するごとに操作のヒントが示される
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操作感としては縦長モードのほうが直感的。だが、2画面モードもスコープを移動しつつ、先に進みたいリンクがあれば上下を入れ替えてタッチスクリーンでリンク先をタッチするという流れを理解すれば、サイト全体の構成を確認しながら操作できる。ただし、2画面モードでは文字の折り返しなどはされないので文章を読むには合わない。ニュースサイトやブログなどを読むには縦長モード、ショッピングサイトなどを利用する時は2画面モードと使い分けるといいだろう。
また、縦長モードでサイトを閲覧している場合、新しいページを開くたびに操作のヒントが上画面に表示されるため、使いながら操作を覚えられる。マニュアルを読み込まなくても機能が覚えられるという作りにはゲームメーカーならではのこだわりを感じた。
■ 手書き入力や予測変換をサポート。任意の検索エンジンも設定可能
続いて機能面を見てみよう。文字入力は手書き入力とソフトキーボードの2種類が用意されている。手書き入力は、すべての文字種類で認識する「標準」モードのほか、入力された文字をひらがなやカタカナ、もしくはアルファベットや数字でだけ認識するモードが用意されており、入力文字の精度を高められる。
実際に手書き入力を使ってみると、認識モードをきちんと切り替え、文字を正しく書くことに気を使えばかなり精度は高いと感じた。ただ、ひらがなの「り」とカタカナの「リ」、カタカナの「ニ」と漢字の「二」などは書き分けが難しい。文字入力直後には、入力エリアの右下にページをめくるようなアイコンが表示され、ここから似た文字を選択できるので、認識が難しい文字はこの機能を利用するといいだろう。画面左側の三角アイコンを押せば予測変換も利用でき、ひらがなで入力した文字の漢字変換候補、入力した文字に続く言葉の候補を表示してくれる。
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手書き入力では予測変換機能が利用可能
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ソフトウェアキーボード。タッチペンで操作できる
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検索エンジンはカスタマイズ可能
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検索機能では、ページ内検索とWeb検索の2種類が利用可能。Web検索の場合、初期設定でYahoo! JAPANが設定されているが、任意の検索エンジンへ変更することもできる。変更する場合、検索対象となるキーワードを「%s」で終了する必要があり、検索にGoogleを利用する場合であれば、「http://www.google.com/search?hl=ja&q=%s」などと設定する。
ブックマークは個別にカスタマイズが可能で、表示するときに縦長モードと2画面モードのどちらを使うか、画像を表示するかどうかをサイトごと設定できる。また、ブックマークのスタートページに任意のURLを設定することで、ニンテンドーDSブラウザー起動時に表示されるリンクを好きなものに変更できる。もちろん、URLは直接入力も可能だ。
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ブックマークのカスタマイズ画面
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スタートページに表示されるリンクを任意のサイトに変更できる
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画面のズームは「50%」「80%」「100%」「120%」「150%」から選択可能。100%は文字が少し小さく、文字中心であれば120%か150%がちょうど良いと感じた。ページの画像オンオフも用意されており、読み込み時間の短縮化が図れる。
■ 画像読み込みによる通信速度計測は約150kbps程度
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BNRスピードテストの測定結果。時には200kbpsを超えることも
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ニンテンドーDSブラウザーを利用した通信スピードも計測。一般的にスピード測定サイトはFlashを用いているケースが多いが、ニンテンドーDSブラウザーはFlash非対応のため、今回はBNRスピードテストの「画像読み込み版」を利用した。
画像読み込み版でスピードを5回計測し、平均値となった数値は約158kbps程度。開発者インタビューでは1Mbps近いスループットが可能だとのことだったが、画像読み込み版はCPU性能に大きく影響されることに加え、実際にインターネットを経由することもあって速度はそれほど速くはない。とはいえ実測で150kbps近いスループットはPHSの高速接続サービスクラスだ。また、2画面モードと縦長モードの切り替え、画面の先頭から末尾への移動といった表示切り替えの動作は早く、サイトも読み込んだ部分から随時表示できるため、総合的にはそれほど大きな差は感じない。
回数 |
1回目 |
2回目 |
3回目 |
4回目 |
5回目 |
平均 |
速度 |
148.30kbps |
169.03kbps |
178.77kbps |
148.30kbps |
148.97kbps |
158.67kbps |
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BNRスピードテストの測定結果
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mixiを表示したところ
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SSLに対応しているため、Amazon.co.jpなどショッピングサイトにもログインでき、一通りのサイトは表示できる。ただし、Flashに対応していないため、Flashで全面的に構成されたサイトなどは閲覧が難しい。また、ポップアップも非対応のため、「MSN Web Messenger」などは利用できなかった。
なお、ニンテンドーDSブラウザーでは電源を切るとCookie情報をリセットする仕様のため、mixiなどログインが必要なサービスはその都度IDとパスワードを入力する必要がある。
【お詫びと訂正】
初出時、ショートカット機能を使ってID登録が可能と記載しておりましたが、ショートカットが使えるのはURL入力画面のみです。お詫びして訂正いたします。
ニンテンドーWi-Fiコネクション対応ゲームはユーザーIDの認証が必要な公衆無線LANでは利用できなかったが、ニンテンドーDSブラウザーはHOTSPOTなどの公衆無線LANでも問題なく利用できる。喫茶店などで気軽にメールやサイトをチェックするには便利だろう。
■ PSPとのブラウザ機能は一長一短
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ブラウザ機能を内蔵したPSP
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携帯型ゲーム機では、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)のPSPもブラウザ機能を内蔵している。最新版のファームウェアを適用したPSPとニンテンドーDSブラウザーで同時にBroadband Watchのページを表示させたところ、読み込みはPSPのほうが速かったが、すべてのデータをダウンロードし終わったのはニンテンドーDSブラウザーが先だった。PSPの最新ファームウェアはFlash表示に対応しており、Flash非対応のニンテンドーDSブラウザーに比べて読み込むデータ量が多いためだろう。
PSPの場合、画面が大きく色表示も豊富なため視認性は高く、フォントも読みやすい。ただし文字入力がボタン操作中心のために、手書き入力やタッチスクリーン操作が可能なニンテンドーDSに比べると入力操作はやや煩雑に感じた。また、メモリー拡張カートリッジのあるニンテンドーDSに対し、本体メモリだけでブラウジングするPSPでは、いくつかサイトを見るとメモリ不足になり、ブラウジングできなくなるケースが多発する。ニンテンドーDSブラウザーも連続でサイトを見続けるとメモリ不足になるが、その際にはメモリをリセットしてサイト閲覧を継続することが可能だ。
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PSPの文字入力はボタン操作で行なう
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ニンテンドーDSブラウザーはメモリをリセットする機能を搭載
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とはいえPSPはニンテンドーDSでは表示できないFlashに対応しており、動画や音声もファイル形式によっては対応可能。Podcasting機能も備えており、2006年夏には動画のPodcastingにも対応する予定だ。機能はPSPのほうが豊富だが、文字入力や操作性はニンテンドーDSなど一長一短と感じた。
■ 幅広い層のインターネット体験に期待
ニンテンドーDSの無線LAN機能を活用するために開発されたニンテンドーDSブラウザー。通信速度こそそれほど速くはないものの、上下画面の入れ替えや画面モードの変更など画面切り替えは俊敏。手書き入力や予測変換など文字入力支援が充実しており、子供から高齢者まで幅広い年齢層が気軽にインターネットを楽しめる端末ではないかと感じた。
電源を投入して数秒でブラウザが利用できるという起動の早さも魅力で、サイトを見たいがPCを立ち上げるまでもない、という時に気軽に利用できる。すでに800万台以上を出荷しているニンテンドーDSがブラウザーに対応することで、インターネットがより身近で使いやすくなることに期待したい。
■ URL
ニンテンドーDSブラウザー
http://www.nintendo.co.jp/ds/browser/
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(甲斐祐樹)
2006/07/24 13:30
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