つくばエクスプレスの列車内で利用できる無線LANサービスが、8月24日から正式サービスとして開始された。1年前に開始されたトライアルと比較して利用可能列車なども拡大され、正式サービスとしてふさわしいものになっている。実際につくばエクスプレスでの無線サービス利用感をレポートする。
■ 本サービスになったつくばエクスプレスの無線LAN
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正式サービスの開始を告知するポスター。日本初のブロードバンド対応列車であることを盛んにアピール
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つくばエクスプレスの無線LANサービスは、電車の走行中に車内から無線LAN経由でインターネットに接続できるサービス。つくばエクスプレスが開通した2005年8月24日からトライアルサービスが開始された。利用区間なども徐々に拡大され、正式サービスが開始された8月24日には、つくばエクスプレス全線でサービスが利用可能になった。また、対応車両もつくば駅まで乗り入れ可能なすべての車両が対応したため、秋葉原からつくば行きの列車に乗れば、必ず無線LANが使えることになる。
つくば駅まで乗り入れ可能な車両は、全30編成中の53%を占める16編成。つくばまで乗り入れ可能なTX-2000系がその対応車両で、実際は途中の守谷行きを含め、ほとんどの快速、区間快速がこの車両を使用する。
ただし、早朝深夜のつくば行きを除くほとんどの普通列車と、ごく一部の守谷行き快速、区間快速はTX-1000系を使うため、車内での無線LAN使用はできない。車両運用は一定ではないため、実際に乗ってみなければわからないところではあるが、確実に無線LANを使いたいのであれば、事前に自分が乗る列車がつくば行きであることを確認するといいだろう。
TX-2000系かTX-1000系の見分け方は、車両外装や車内にある形式表示などで確認できる。赤いラベルでTX-2***であればTX-2000系、紺青色ラベルでTX-1***であれば1000系だ。TX-2000系は3号車と4号車がクロスシートになっていることでも見分けがつくだろう。また、正式サービスになってから、始発駅では「ただいまご乗車中の電車は、無線LANでインターネットがご利用できます」と乗務員が車内アナウンスを行なっている。
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無線LANの使えるTX-2000系。車両側面に形式表示のラベルは赤
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現在は無線LAN非対応のTX-1000系。形式表示のラベルは紺青色
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車内では通路の左上に形式ラベルがある。同様に赤はTX-2000系
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TX-1000系は車内も紺青色ラベル
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■ 対応する公衆無線LANサービスはNTTドコモの「Mzone」
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mopera UのWebサイト
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MzoneのWebサイト
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トライアル期間中は無料で利用できたつくばエクスプレスの無線LANサービスだが、正式サービスでは有料の公衆無線LANサービスと契約する必要がある。
現在のところ、対応するサービスはNTTドコモの「Mzone」のみ。MzoneはNTTドコモのFOMA携帯電話を持つユーザー向けの「mopera U」の公衆無線LANオプションとしても使えるため、Mzoneまたはmopera Uのどちらかのユーザーとなる必要がある。
Mzone単体での利用料金は月額1,575円または日額525円。mopera Uはすでにブロードバンド接続などを利用していなければ合計で月額1,050円、ブロードバンドコースなどを利用していれば、月あたりプラス525円で利用できるため、FOMAのユーザーであればmopera Uの加入をお勧めする。
なお、mopera Uの申し込みは少々複雑だ。まずはドコモユーザー向けの会員制サービス「My DoCoMo」のIDを取得した上で、各種手続きの「ドコモeサイト」から手続きを行なう。無線LANを利用するためには「Uスタンダードプラン」と「公衆無線LANコース」の両方に申し込む必要がある。申し込み後にメールが送付され、FOMA携帯電話のiモードを使ってメールに記載されたIDやパスワードといった接続情報を携帯電話で確認する必要がある。
この際に必要なのが、携帯電話の留守番電話操作などに必要なネットワーク暗証番号だ。暗唱番号を確実に覚えていない場合は、ドコモeサイトから暗証番号を事前に再設定しておくことをお勧めする。暗証番号を何度も間違えるとロックがかかってしまい、接続に必要な情報の確認ができなくなってしまうからだ。
一方、FOMA携帯電話を持っていない場合はMzoneの申込みとなる。NTTドコモの携帯電話はあるがFOMAではない場合はMy DoCoMoからの手続きでMzoneに加入できるが、NTTドコモの携帯電話の契約がない場合は少々面倒だ。というのもオンラインサインアップなどといった方法はなく、最寄りのドコモショップに出向いて店頭で加入手続きをする必要があるためだ。
このほかの公衆無線LANサービスは現在のところ非対応。2006年内にはNTT東日本の「フレッツ・スポット」の対応が予定されている。
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mopera Uの申し込みはMy DoCoMoから行なう
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mopera Uの基本コースは月額525円のスタンダードコースとし、公衆無線LANコース(月額525円)を申し込む。これでMzoneの利用が可能になる
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■ コンテンツなど一部サービスは無料で利用可能
なお、つくばエクスプレスでは無料で利用できる「ブロエム」という専用のポータルサイトも用意されている。無線LAN経由でアクセスすれば、つくばエクスプレスの時刻表や運行情報や駅のライブカメラ、さらに沿線情報やスポーツニッポンのニュースなどを読むことができる。
使い方はWEPキーが設定されていない「tsukuba」というSSIDに接続するだけ。ブラウザを開くとブロエムの入り口がリダイレクトされて表示される。「tsukuba」のアクセスポイントはMzoneのアクセスポイントそのもので、駅構内はもちろん、列車内からもアクセス可能。アカウントがなくても、つくばエクスプレスや沿線の情報と無線LANのテストだけは利用できる。
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SSID「tsukuba」に接続してブラウザを開くと、ブロエムに接続する
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ブロエムでは、つくばエクスプレスの運行情報やスポニチのニュースなどが閲覧可能。アカウントなしでもこれだけなら楽しめる
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■ 本サービスに実際に接続
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Mzoneのログインページ
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実際につくばエクスプレスに乗車する前には、接続の設定などをあらかじめ準備をしておこう。Mzoneの公衆無線LANユーティリティをインストールしておくことが望ましいが、指定されたSSIDとWEPキーを設定することでも利用できる。
ユーティリティのインストールをお勧めするのには、前述の「ブロエム」の存在がある。ブロエムのSSIDはMzoneのSSIDとは異なる「tsukuba」で、WEPも設定されていない。このため、Wireless Zero Configurationなどを使って接続しようとすると、は自動で「tsukuba」に接続され、インターネットに接続できなくなるケースも生じる。
もちろん、Mzoneやmopera Uの接続ユーティリティでも、最初に「tsukuba」に接続してしまう事象は同じだ。しかし、すぐ後にMzoneやmopera Uの接続ができることを表示して再接続できるため、こちらのほうが便利だろう。
うまく接続できればインターネットが利用できるが、発車寸前や途中駅で乗車した場合に、接続の認証が行なわれないままに発車した場合、接続速度の低下やデータが流れない状況下によって、DHCPによるIPアドレスの割り当てや認証作業がうまく完了しない場合がある。認証に失敗した場合でも、あわてずにリトライしてみよう。
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専用ユーティリティを立ち上げておけば、エリアに入った場合にダイアログが出て、無線LANが使えることが表示される
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ログインすれば接続状態となり、インターネットへのアクセスが可能となる。ログインのIDとパスワードを登録しておくこともできる
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■ スループットにはばらつきがあるもブラウジング程度であれば問題なし
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実際に列車内からインターネット接続
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全区間で本サービスとして無線LANが開始されたつくばエクスプレスだが、実際に乗車してその状況を確かめてみた。
speed.rbbtoday.comによるスループット測定結果は、駅停車時でアップリンク、ダウンリンクともに4Mbpsを超える程度。また、走行中では良好な場合で2Mbps程度で、悪ければ数十kbps、さらにデータが停止して測定不能という状態までさまざまという結果だった。
もちろん、Webサイトで調べものをしながら、時折メールの送受信をする程度であれば十分使える。ただし、Web閲覧やメールチェックの最中に、パケットが流れず安定しない状況が発生し、たびたびデータが止まる場面も見受けられた。
特に、ほぼ130km/h運転となる「流山おおたかの森」駅から「つくば」駅寄りで不安定になる場面が多い。流山おおたかの森までは、カーブやトンネルの出入りなどの勾配で減速する区間が多くあり、そのせいかデータの流れは良く感じる。
パケットが安定しない状況下では、スループットが数十kbpsに落ち込むことや、まったくパケットが流れない状況も発生するため、動画のストリーミング再生は難しい。また、VPN接続などで他のネットワークに接続しリモートデスクトップを使うような場面でも、、画面がたびたび停止してしまい、円滑な操作が難しかった。
余談だが、つくばエクスプレスには2カ所の電気が通らない区間が存在する。これは、秋葉原~守谷間が直流、守谷~つくば間が交流のためで、この切り替えに伴って車内設備の電源が守谷~みらい平間で一時的に切れる。また、交流区間同士でも電源の元になる変電所の違いによって、位相違いによるショート防止のために一時的に電源が切れる区間が、「みどりの」駅から「万博記念公園」駅の間に存在する。
この区間でもバッテリーによって無線LAN設備の電源は切れることはないが、通信のブランクが発生する。守谷~みらい平の交直切り替えでは、MSNメッセンジャーのログインが切れることもあった。
一方、みどりの~万博記念公園間では接続が切れることがなくデータも流れていた。どちらの電源切り替え区間でも車内の電灯はついているが、走行モーターも切れて惰性で走行、空調やLEDによる車内案内表示もすべて消灯する。この区間は若干不安定になることを踏まえておいたほうがよいだろう。
■ 上手につくばエクスプレスの無線LANを利用するには
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TX-2000系の3-4号車のクロスシート。通路側の席は収納式のテーブルが使える。開業初期はテーブルのない車両があったが、現在は全車に装備している
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移動中の車内からのインターネット接続だけに、喫茶店などで公衆無線LAN接続サービスを利用する感覚で安定に使うのは難しい。このサービスをより有効に利用するにはどのような注意が必要だろうか。
まず、重要なデータや大容量データのやりとりは電車の走行前に済ませておこう。つくばエクスプレスでは駅構内でも無線LANが提供されている。移動がないぶん、こちらのほうが安定的にデータを伝送できる。
また、走行中の車内からインターネットにアクセスするなら、秋葉原に近いうちに済ませておこう。筆者が試用した限りでは、秋葉原に近い区間のほうが無線LANが安定していると感じられた。
車内でPCを使う場合は、クロスシートでテーブルのある3・4号車がお勧め。ただし、膝上とテーブルのすき間がない関係で、テーブルにノートPCを置いた場合の荷物は横か網棚に置くしかない。鞄をどうしても手元に置いておく場合は膝上に置くしかなく、テーブルの使用は不可能だ。また、この時期、3号車は弱冷房車なので、発熱するPCを手元に置いて作業するなら通常冷房の4号車を選びたい。
無線LAN対応車が多い快速や区間快速は乗車率が高く、余裕をもって座れる時間帯は限られる。空いていてパソコン操作のしやすい普通列車は無線LANなしがほとんど。現実問題として、無線LANを使いたければ車両の対応よりも着席の心配を先にしたほうがよいだろう。
そのほか、接続のコツとして認証の問題がある。認証が失敗した場合はリトライすればよいが、走行中などで運悪く一度認証が成功してすぐ切断してしまった後などは、2重ログインとして接続拒否されることがある。ホームで利用中、電車が来たのでログアウトせずにパソコンを閉じてしまった場合も車内で再接続をしようとするとこうなる。
その場合は、最初の接続がタイムアウトするまでは接続できず、再接続に挑戦している間に下車駅に着いてしまう場合もある。認証だけは確実に行ない、万が一失敗したときは潔く接続をあきらめるという判断も必要だ。
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テーブルの出し方はひじ掛けを開け、垂直に跳ね上げられたテーブルを引き出す。収納状態ではテーブルがあることは気づきにくい
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テーブルを水平に倒して準備完了。飲み物用の段差も設けられている
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■ うまく使えば便利なつくばエクスプレスの無線LAN
つくばエクスプレスの車内無線LANを利用してみると、実際に走行中の車内でインターネット接続できるありがたさを実感できる。不安定な区間も目立つが、それは安定して便利に使える状況の中で、一部の不安定な区間が目立ってしまうからとも言えるだろう。
従来から、ウィルコムなどのPHSデータ通信なども走行中に利用できた。つくばエクスプレス車内からも使えないことはないが、無線LANがそれに勝っているのは何よりも通信速度の速さだ。順調なときのデータの速さは格別で、こればかりはPHSに真似できない。
つくばエクスプレスの無線LANの安定度も、時間が経てば改善が期待できるだろう。しばらく後は見違えるほどのものになっている可能性もある。
今後、走行中の列車からのインターネット接続が増えることを期待したいが、今のところ公開された予定は、東海道新幹線で2009年春開始というもののみ。移動中のインターネット接続は非常に便利なサービスであり、ぜひとも公衆無線LAN事業者や鉄道事業者には、他の路線でのサービス導入を検討して欲しいと感じた。
■ URL
つくばエクスプレス
http://www.mir.co.jp/
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(江須田)
2006/09/04 11:25
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