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トンネルでも繋がる「つくばエクスプレス」の無線LANトライアルを体験

つくばエクスプレスのTX-2000系
 8月24日に開業したつくばエクスプレスでは、列車内で利用できる無線LANトライアルを開業日より開始した。駅停車中だけでなく、区間内であれば列車の移動中でも利用できる点が特徴だ。

 これまでにも、駅をターゲットにした無線LANサービスはいくつか存在した。無線LAN倶楽部は関東の私鉄沿線をターゲットとしてサービスを提供しており、モバイルポイントはJR東日本駅構内および関連施設がサービスエリアだ。また、東京メトロや都営地下鉄でも、MzoneやHOTSPOT、無線LAN倶楽部などのサービスが提供されている。

 これらの従来サービスと比較して、つくばエクスプレスのトライアルがもっとも異なる点は、列車の移動中でも利用可能なユーザーレベルのサービスということだろう。前述の公衆無線LANサービスは、駅構内や改札などでの利用は可能だが、列車で移動中も使い続けることはできなかった。

 また、日本テレコムは移動中の列車で利用可能な公衆無線LAN実験を行なっており、一部のユーザーはモニターとしてサービスを利用できたが、これはあくまで技術検証のため。つくばエクスプレスの場合、サービス開始当初こそモニター数やエリアが少ないものの、今後は全駅でのサービス展開を目指し、商用化を予定しているという点では非常に画期的なサービスだろう。


トライアルは無料。IEEE 802.11bでインターネットに接続

北千住駅に設置された無線LAN機器収容盤
 つくばエクスプレスが開業した8月24日から2006年3月31日までは、トライアル期間として列車内の無線LANが無料で利用できる。サービスを希望するユーザーはトライアルの専用ページから申し込みを行なうと、後日、登録したメールアドレスにトライアル用のSSIDとWEP、IDとパスワードがメールで送付される。

 トライアルの対象は当初、首都圏1都7県に住むユーザー300人だったが、NTTBPによればモニター開始受け付けから2時間で募集人数の300名を超えるほどの人気だったため、予定を変更して募集人数に達した以降も受け付けが行なわれている。ただし、予定数を上回ったために、IDとパスワードの通知は多少の時間を要するとしている。

 トライアルの対応エリアでは、首都圏新都市鉄道の光ファイバ網を利用した無線LAN基地局が駅構内および駅区間に設置されており、この基地局と列車をIEEE 802.11gで接続する。ハンドオーバー技術やモバイルIP技術によって、時速130kmでの走行時でも通信が可能だという。

 列車内はさらにIEEE 802.11a準拠のアクセスポイント3台を使って車両間を接続しており、トライアルに対応した編成であればどの車両からも接続できる。ハンドオーバーは列車側の無線機器で行なうため、ユーザーは列車内のアクセスポイントにさえ接続していれば基地局の移動を気にすることはない。また、ユーザー端末とアクセスポイントとの通信はIEEE 802.11bで行なうため、たいていの無線LAN機器であれば利用できるだろう。


トライアル車両の無線LAN構成。駅と列車は11g、列車内のアクセスポイント間は11a、アクセスポイントとPCは11bで接続

トライアル対応車両は1編成のみ。運行時間は2時間おき

クロスシートの通路側はPCが置ける収納式テーブルが用意されている
 サービス開始当初、無線LANトライアルが利用できるのは1編成のみ。また、つくばエクスプレスは秋葉原〜つくば間を45分で走行するため、秋葉原への往復は最低でも90分が必要だ。このためつくばエクスプレス自体は5〜10分間隔で運行しているが、トライアルに対応した列車は約2時間ごとに1本しかない。トライアルのWebサイトには、トライアル対応列車のダイヤが掲載されているので、利用したいユーザーはあらかじめ確認しておこう。

 トライアル対応の列車は、6両編成のうち中間車両2両がクロスシートになっているTX-2000系。クロスシート席には通路側に収納可能なテーブルが用意されているため、ノートPCを利用するならこの位置がお勧めだ。なお、クロスシートは1車両につき12席で、1編成でテーブルを利用できるのは24席まで。乗る前に場所のチェックもしておくといいだろう。

 トライアルを利用する際には、特別な機器やソフトを用意する必要はない。無線LAN対応のPCであれば、SSIDとWEPを設定し、つくばエクスプレスのアクセスポイントへの接続を確認した後にInternet Explorerなどのブラウザを立ち上げると、自動的にトライアルのログインページが起動する。このログインページでIDとパスワードを入力すれば、あとは自由にインターネット接続が可能だ。


ロングシート(左)とクロスシート(右)。トライアル対応列車は前後2車両がロングシート、中央2車両がクロスシートになっている


スループットは約4Mbps。Webブラウジングやメールには十分

 無線LANトライアルが利用できるのは、現在のところ秋葉原〜北千住間の5駅4区間。区間内であれば電車内だけでなく駅構内にもアクセスポイントが設置されており、インターネットに接続可能だ。

 「speed.rbbtoday.com」サイトで駅構内アクセスポイント接続時のスループットを測定したところ、上下ともに4Mbps近い数値が得られた。接続にはIEEE 802.11gのカードを利用しているが、アクセスポイントがIEEE 802.11bのためにそれほど高いスループットは得られない。ただし、Webブラウジングやメールといった用途であれば、4Mbps程度のスループットで十分快適に利用できるだろう。

1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 平均値
下り(ISP→PC) 3.9Mbps 3.22Mbps 4.56Mbps 4.59Mbps 4.54Mbps 4.16Mbps
上り(PC→ISP) 4.38Mbps 3.85Mbps 4.14Mbps 5.39Mbps 4.01Mbps 4.35Mbps


 トライアル対応列車が到着するまで、秋葉原駅構内では2つのアクセスポイントしか発見できなかったが、列車が到着するとアクセスポイントが10以上発見できた。一見すると普通の列車と大きな違いはないが、無線LANに対応した列車であることがわかる。


左がトライアル対応列車到着前、右が到着後の駅構内のアクセスポイント状況。アクセスポイント数が大幅に増えている


駅構内のアクセスポイントにPSPで接続
 列車での移動中、Webサイトの閲覧やメッセンジャーによるチャットを行なったが、時折反応が遅くなることはあるものの、接続自体が切れることはなく、トンネルの中であっても快適なアクセスが得られた。ただし、トライアルでも注意を促している通り、一部の区間では接続しにくい場合もあり、メッセンジャーで送信した文章が相手に届かない場合もあったが、その場合もメッセンジャー自体はログアウトせず、ログイン状態を保持できていた。

 impress.tvの動画コンテンツを再生し、ハンドオーバーの効果も確かめてみた。700kbps、300kbpsのクオリティではさすがに途切れることが多く、バッファの蓄積が多発したが、40〜80kbps程度であれば駅区間内を続けて再生することも可能だった。

 最新ファームウェアにアップデートしたプレイステーション・ポータブル(PSP)からインターネット接続を試してみたところ、駅構内のアクセスポイントであれば問題なく接続できたものの、列車移動時にはアクセスポイントから切断され、つながらないことが多かった。

 PSPはPCと違って自動でアクセスポイントに再接続する機能を持っておらず、駅構内と列車内のSSIDとWEPが共通であることから、駅構内のアクセスポイントに接続してしまうと、列車移動時にはうまくハンドオーバーできないようだ。1回の乗車で利用できる時間が10分程度のために十分な検証ができていないが、システム構成上、列車内のアクセスポイントに初めから接続できていれば問題なく利用できる可能性もありそうだ。

 トライアルが始まったばかりのため、エリアは5駅4区間、乗車時間も10分程度と短いが、インターネット自体の利用は多少つながりにくい時間もあるものの、総じて快適に利用できた。また、今後はサービスエリアをつくばエクスプレスの全区間に拡大するほか、無線LAN対応車両も現状の1両編成から拡大する方針という。NTTBPが運営に参加していることもあり、今後は同技術を利用した他の路線でのサービス提供も期待したい。


関連情報

URL
  「つくばエクスプレス」トライアル事務局
  http://www.ntt-bp.net/pc/tsukuba/

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(甲斐祐樹)
2005/08/25 19:13
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