10月3日、ナップスターによる音楽配信サービス「ナップスター」がサービスを開始した。サブスクリプションと呼ばれる定額プランを採用した初の音楽配信サービスとなるナップスターの使用感をレポートする。
■ 料金プランは3種類。定額プラン以外に個別購入プランも用意
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料金プランは3種類
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ナップスターは、米Napsterとタワーレコードが共同設立した「ナップスタージャパン」による音楽配信サービス。ポータブルプレーヤーへの転送も含めて定額で利用できる料金体系が大きな特徴で、定額で利用できる楽曲数は150万曲を超える。
料金プランは3種類。購入した楽曲をPCでのみ再生できる月額1,280円の定額プラン「Napster Basic」、PC再生に加えて対応ポータブルプレーヤーへも転送できる月額1,980円の定額プラン「Napster To Go」、そして1曲ごと料金を支払う「Napster a la carte(アラカルト)」だ。
ナップスターを利用するためには、まず専用アプリケーション「ナップスターアプリ」をPCにインストールする必要がある。ナップスターアプリはWindows XP/2000に対応しているが、サブスクリプションを利用するためにはWindows Media Player 10以降が必要。現在のところWindows Media Player 10はWindows XPのみに対応しているため、サブスクリプションを利用する場合は必然的にWindows XPが必要になる。
アプリケーションの初回起動時にはユーザー登録が必要になる。無料チケットやナップスターカードを購入しているユーザーは画面右上からコードを登録しよう。チケットやコードがなくとも7日間は無料で利用可能だが、その場合はクレジットカードの登録が必要なほか、無料期間以降は自動で課金が発生する。今回はポータブルプレーヤーへの転送も可能な「Napster To Go」が14日間無料のトライアルチケットを利用した。
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サービスに利用する「ナップスターアプリ」
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初回利用時にはIDの取得が必要になる
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■ 邦楽は少ないが洋楽は充実した品揃え
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邦楽のJポップカテゴリを日本語名表記順に表示
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ユーザー登録が完了すれば、すぐにナップスターが利用できる。楽曲はアーティストやアルバム名、楽曲名から検索できるほか、「ブラウズ」からジャンルごと表示することも可能だ。
実際に楽曲を検索してみたところ、邦楽に関しては正直「少ない」と言わざるを得ない。発表会では「他の音楽配信サービスと同じ程度」とコメントされていたが、J-POPのランキングに名を連ねるようなアーティストはほんの一握りといったところ。中には「大木こだまひびき」「ブラックマヨネーズ」「宮川大介・花子」など、お笑い芸人のコンテンツも含まれていた。
しかし、邦楽に対して洋楽は非常に充実。サービス開始時点で揃ったという190万曲の楽曲のうち9割が洋楽というだけに、有名なアーティストであれば大抵はラインナップされている印象を受けた。知名度が高いと思われる洋楽アーティストをいくつか検索してみたところ、すべてのアルバムが揃っているとまではいかないものの、代表的なアルバムやベストアルバムなどはかなりの高確率で発見できた。街のレコード店舗やCDレンタルショップで曲を捜すよりは充実しているのではないだろうか。
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マイケル・ジャクソンを検索。世界で最も売れたという「Thriller」など代表的なアルバムが揃っている
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13年ぶりの来日公演を果たしたマドンナはアルバムも充実
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歌手デビューで話題を集めたパリス・ヒルトン
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「お騒がせ」アーティストのt.A.T.u.
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■ サービス全体を「自分のライブラリ」感覚で利用できる
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ジャネット・ジャクソンの場合、ニューアルバム「20 Y.O.」はアラカルトのみ、それ以外はサブスクリプションに対応する
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気に入った楽曲を見つけたら、実際に楽曲を再生してみよう。「ダウンロード」のアイコンが表示されている楽曲は定額制に対応しており、ダウンロードやフルレングスでのストリーミング再生が可能だ。アイコンが「購入専用」となっている時は定額プラン対象外で、ストリーミングも30秒の試聴のみに制限される。
ストリーミングもダウンロードした楽曲も、ナップスターアプリ内での扱いはほぼ同様で、楽曲をライブラリに保存する、プレイリストを作成して保存するといった操作をドラッグ&ドロップや右クリックから行なえる。「購入専用」の楽曲に関しても、再生時間に制限があることを除けばプレイリストやライブラリ登録が同じように可能だ。
今までの音楽配信サービスに慣れていたこともあり、最初は「ダウンロードした曲だけ再生できる」という意識でいたが、常時接続環境で聴くのであればダウンロードはそれほど関係ない。定額制でほとんどの楽曲が再生できるということもあり、190万曲を揃えるというサービス全体が自分のライブラリになった感じだ。
また、ダウンロードした楽曲は、「マイミュージック」などのあらかじめ設定したフォルダに自動で保存されるが、初期設定ではアーティストごとにフォルダ管理されない。アーティストやアルバムごとフォルダで管理したい場合は、「ファイル」「オプション」から「サブフォルダのファイルをアーティスト/ファイル名で整理する」を選択しよう。
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ライブラリの登録例。黄色い矢印アイコンはダウンロード済み、青い波型アイコンはストリーミングのみと、ダウンロードとストリーミングを混在できる
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ダウンロードしたファイルは自動で保存される
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■ ドラッグ&ドロップでポータブルプレーヤーへ転送
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ドラッグ&ドロップでポータブルプレーヤーへ転送できる
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ポータブルプレーヤーへの転送も簡単だ。対応プレーヤーをPCに接続すると、ナップスターアプリの画面右下に端末が表示される。この端末画面に転送したい楽曲をドラッグ&ドロップするか、楽曲を右クリックして「トラックをポータブルプレーヤーに転送」を選べばいい。
転送に関してもダウンロード済みかどうかは関係なく、ストリーミングのみでプレイリストに登録した楽曲もドラッグ&ドロップすれば自動でダウンロードしてから転送してくれる。プレイリストに登録せず、楽曲の検索画面などから直接転送を指定することも可能だ。サブスクリプションであれば「買う」という意識を持つことなく自由に音楽を楽しめると感じた。
楽曲ファイルの形式はWMAで、ビットレートはダウンロードした楽曲が192kbps、ストリーミング再生時は128kbpsと異なる。また、CD-Rの書き込みにも対応しており、同一のプレイリストからは最大7回まで、個々の楽曲では無制限にCD-Rへ書き込める。
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ナップスターに対応した東芝の「gigabeat S」で再生。ジャケット画像も表示できる
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画面下の「書き込み」をドラッグして上に引き上げるとCD書き込み画面が現れる
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■ 最大3台のPCで共有が可能。PC間の同期機能も実装
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2台目以降のPCから1台目のライブラリをネット経由でコピーできる
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国内でこれまで提供されていたWMA採用の音楽配信サービスと比べて、定額制という料金面のほかに大きく異なるのが楽曲の共有だ。ナップスターでは利用時に取得したIDを使うことで、最大3台までのPCで購入した楽曲を利用できる。
楽曲ダウンロードに利用したIDで別のPCにログインした場合、他のPCでダウンロードした楽曲をプレイリストに同期できるため、PCごとにライブラリの楽曲が異なる、という心配もない。また、他のPCで登録したライブラリを別のPCでコピーできる機能も用意されている。PCを複数台所有しているユーザーには嬉しい機能だ。ちなみに、他のPCで登録した楽曲は、ダウンロードの有無にかかわらず他PCにはストリーミングで登録され、自動でファイルをダウンロードすることはない。
なお、複数台でログインできるからといって、複数ユーザーで同一IDを利用することは認められていない。ナップスターのIDは排他仕様のため、同じIDで同時にログインすることはできず、先にログインしていたIDは自動でログアウトされる。
また、サービスを解約した場合、サブスクリプションの楽曲はダウンロード済みの楽曲も含めてすべて再生ができなくなる。解約時にはアカウントが単品購入のみ可能なアラカルトとなり、アラカルトで購入した楽曲は解約しても利用が可能だ。また、解約後に再び定額プランを契約する場合、6カ月以内であれば以前のライブラリを再度取得できる。
■ 楽曲の推薦機能も充実。ブログ表示機能もサポート
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充実したアーティスト特集
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ナップスターでは楽曲配信だけでなく、さまざまな楽曲のレコメンド手段も用意されている。
ナップスターアプリのホーム画面では、配信楽曲の特集を実施。単なるアーティストごとの特集に留まらず、タワーレコードで配布されている雑誌「bounce」との連動企画、有名アーティストのデビュー曲特集など趣向が凝らされている。このあたりは店舗でのCD販売ノウハウを持つタワーレコードならではといった印象だ。
約200曲の楽曲をストリーミング配信するラジオ感覚の「チャンネル」、特定のテーマに沿った「プレイリスト」も公開されており、こうした公開チャンネルやプレイリストから楽曲を見つけることもできる。Amazon.co.jpのように、自分の過去の過去のアクセス履歴や楽曲の分類状況から楽曲をリコメンドする機能も用意されており、過去の履歴から自動でお薦めのプレイリストを作成してくれる。
友人間での共有機能も用意。自分で作成した楽曲のプレイリストを友人に送信できるほか、任意の楽曲をブログなどで表示する機能も用意されている。ブログに設置したアイコンをクリックするとナップスターアプリが起動し、該当の曲が表示もしくは再生されるという仕組みだ。また、自分のライブラリやIDをナップスター上で公開し、他のユーザーが自分のライブラリや最近ストリーミングした楽曲を閲覧することもできる。
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ナップスターが推薦するプレイリスト
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過去の再生履歴からプレイリストを自動作成する機能
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気に入った楽曲データを他のユーザーに送信できる
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楽曲を右クリックし「NapsterLink の作成」からブログ設置コードを取得できる
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■ 定額ならではの音楽の楽しみ方が可能に
ダウンロードやポータブルプレーヤーへの転送まで定額で利用できるというサブスクリプションの音楽配信サービスは日本では初の存在。定額ということで楽曲に対する敷居も低くなり、洋楽に関しては曲数も非常に多いことから、気がつけば気になった楽曲を次から次へと登録していた。
この感覚はADSLやFTTHなどのブロードバンド導入時にも似ていると感じた。ブロードバンドは単に高速なだけでなく、どれだけ接続しても料金が一定だからこそ、好きなときにWebサイトを巡回したり、オンラインショッピングを気軽に楽しめた。音楽配信も定額かつ好きな楽曲を選んで聴けることが、今までにない音楽の楽しみ方を実現している。
料金もポータブルプレーヤーへの転送も含めたTo Goの場合で1,980円と、国内盤のCDと同等かそれよりも安価な価格設定。月に2,000円と考えると高く感じるかもしれないが、コンピレーションアルバムを月に1枚購入する価格で、200万近い膨大な楽曲を自由に楽しめると思えば、コストパフォーマンスは高いのではないだろうか。
定額の魅力は実際に使ってみなければわかりにくいが、クレジットカードの登録が必要ではあるが7日間までは無料で利用可能。まずは1週間限定でサービスに加入し、自分の気に入る楽曲が見つかるかを試してみてもいいだろう。
残念なのは邦楽のラインナップが充実しておらず、現時点では洋楽ファンでなければ魅力がそれほど感じられない点。日本の音楽市場はやはり邦楽が中心であるだけに、今後は一層の邦楽の充実を期待したい。
[お詫びと訂正]
初出時、楽曲ビットレートおよびCD-Rの仕様に誤りがありました。正しくはダウンロード楽曲が192kbps、ストリーミング楽曲が128kbpsとなります。また、一部楽曲はCD-R書き込み画面に登録できますが、実際に書き込むには別途料金が発生します。お詫びして訂正いたします。
■ URL
ナップスター
http://www.napster.jp/
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(甲斐祐樹)
2006/10/04 13:55
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