12月12日、イー・モバイルのHSDPA通信サービス「EMモバイルブロードバンド」が下り7.2Mbpsに高速化された。同日に発売された対応端末を利用し、高速化サービスの使用感をレポートする。
■ 下り7.2Mbpsへと2倍の高速化。料金は従来から据え置き
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下り最大7.2Mbps対応の「D02HW」
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下り3.6Mbpsの高速データ通信を定額で利用できる「モバイルブロードバンド」の火付け役となったイー・モバイル。3月31日のサービス開始以降、NTTドコモやKDDIも制限つきながら高速データ通信の定額サービスを投入しているが、イー・モバイルは下り7.2Mbpsというさらなる高速プランを投入、12月12日より開始した。
現在のところ下り7.2Mbpsの高速サービスに対応した端末は、サービス開始と同日から発売するUSB接続型の「D02HW」のみで、エリアも当初は関東エリアの国道16号線圏内を中心に全国の主要地域に限られている。端末やエリアは順次拡充予定で、PCカードタイプといった端末も今後発売される予定だ。
料金は下り3.6Mbpsから据え置かれ、対応端末を入手すれば下り7.2Mbpsのサービスが利用できる。また、すでに下り3.6Mbpsの端末でサービスを利用している場合は、いったんサービスを解約して新規に加入するか、追加で端末を購入することで利用可能になる。なお、上り速度に関しては従来と同じ384kbpsに据え置かれている。
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D02HWのパッケージ
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パッケージの内容
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D02HW本体
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miniUSBポートで接続
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SIMカードを内蔵
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PCカード型の「D01NE」と大きさ比較
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■ 対応端末はUSB接続の「D02HW」。PCと接続するだけでインストール完了
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D02HWのユーティリティ
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対応端末の「D02HW」は、下り3.6Mbpsに対応した「D01HW」と同じ形状で、パッケージ内容なども同一。本体の他にUSB接続用のケーブルが2種類とマニュアル、ユーティリティインストール用のCDなどが同梱する。D02HWとPCをUSBで接続するだけでインストールを開始する「ゼロインストール」に対応しており、画面の指示に従って操作すればセットアップは完了する。
対応OSはWindows Vista/XP/2000、Mac OS X 10.3.7~10.4.10(PowerPC)、Mac OS 10.4~10.4.10。なお、Mac OSの最新OS「10.5(Leopard)」については動作保証はされていないが、現時点で動作確認はできているという。
プロバイダーなどの設定が必要ないため、ドライバとユーティリティのインストールが終了すればすぐにサービスが利用可能。D02HWを接続したらユーティリティを起動し、「接続」をクリックすればインターネットに接続できる。
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PCに接続すると自動でドライバのインストールを開始
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ドライバのインストールが終了するとユーティリティのインストールを開始する
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■ 最大で4Mbpsの通信速度。従来と同程度のエリアも
実際のインターネット接続時のスピードを、端末を購入した秋葉原付近とImpress Watchのオフィスがある市ヶ谷で、測定サイト「speed.rbbtoday.com」を利用して計測。秋葉原での計測は、3月31日のサービス開始時に計測した際と同じ、CPUにモバイルPentium III-M 1.20GHz、OSにWindows XPを搭載した「ThinkPad X31」で5回計測。下り3.6Mbps対応のPCカード型端末「D01NE」で計測した前回の数値と比較した。
PC |
端末 |
1回目 |
2回目 |
3回目 |
4回目 |
5回目 |
平均 |
X31
(USB 1.1) |
D01NE |
2.57Mbps |
2.03Mbps |
1.96Mbps |
2.3Mbps3 |
2.41Mbps |
2.26Mbps |
D02HW |
3.91Mbps |
4.31Mbps |
3.61Mbps |
4.42Mbps |
4.21Mbps |
4.09Mbps |
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秋葉原での測定結果 ※D01NEは3月31日測定時の数値
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結果は数値を見ると一目瞭然で、D02HWはD01NEの理論値上の最大スピードである3.6Mbpsを上回る4Mbps超を計測。平均値でも前回の約2Mbpsに比べて2倍近い数値となった。なお、D02HWはUSB 2.0ではなくUSB 1.1のポートに接続した計測結果だが、それでも4Mbps近い数値を計測できた。
次にImpress Watchのある市ヶ谷で計測。こちらは前述のX31に加えて、CPUにIntel Core 2 Duo、OSにWindows Vista Ultimateを搭載した「ThinkPad X61」も併用し、D01NEとD02HWの組み合わせで合計4種類の計測を行なった。
PC |
端末 |
1回目 |
2回目 |
3回目 |
4回目 |
5回目 |
平均 |
X31
(USB 1.1) |
D01NE |
2.33Mbps |
1.39Mbps |
1.78Mbps |
1.97Mbps |
1.33Mbps |
1.76Mbps |
D02HW |
1.73Mbps |
2.26Mbps |
1.97Mbps |
1.31Mbps |
1.56Mbps |
1.77Mbps |
X61
(USB 2.0) |
D01NE |
1.44Mbps |
1.96Mbps |
1.17Mbps |
1.94Mbps |
2.38Mbps |
1.78Mbps |
D02HW |
1.42Mbps |
2.51Mbps |
2.67Mbps |
2.54Mbps |
2.95Mbps |
2.42Mbps |
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市ヶ谷での測定結果
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こちらはD01NE、D02HWで数値に大きな違いが見られなかったが、X61を使用したD02HWの接続結果は3Mbps近い数値も計測できた。ただし、秋葉原のように4Mbps近い数値は計測できなかったため、エリアによって数値は異なりそうだ。
■ 新割引プランで料金も安価に。既存ユーザーは契約解除料がカギ
続いて料金プランを確認してみよう。サービス開始当初は月内定額の「データプラン」のみだった料金プランも、2段階定額の「ライトデータプラン」「ギガデータプラン」の2種類が追加。また、料金割引も2年契約を前提とした「新にねん」が導入されている。
今回は2年契約で初期費用も安価となる「新にねん」を割引プランとして選択し、D02HWの料金プランを比較。また、同様にPC定額サービスを提供しているNTTドコモ、KDDIでも同等の料金プランを選択して比較した。上り速度やエリアなどに各社違いはあるが、参考値として考えて欲しい。
キャリア名 | プラン名 | 初期費用 | プロバイダー料金 | 月額基本料金 | イー・モバイル | データプラン (新にねん) | 9,980円 (D02HW) | 無料 | 4,980円 | ギガ (新にねん) | 9,980円 (D02HW) | 無料 | 1GBまで (8,388,700パケット) | ~1.7GB (8,388,700~8,960,100パケット) | 上限 | 3,980円 | +0.0105円/パケット | 9,980円 | ライト (新にねん) | 9,980円 (D02HW) | 無料 | 約17MBまで (141,700パケット) | ~約52MB (426,700パケット) | 上限 | 2,480円 | +0.0105円/パケット | 5,480円 | KDDI | WINシングル定額 (フルサポートコース) | オープン (W05K) | 682円(au one net) 420円(IIJmio) ※ISPによっては無料 | 無料通信分無し | ~72,000パケット | 上限 | 3,150円 | 0.0525円/パケット | 6,930円 | NTTドコモ | 「定額データプランHIGH-SPEED」 | 20,000円前後 (A2502 HIGH-SPEED) | 840円 | 50万パケットまで | ~100万パケット | 上限 | 月額4,200円 | +0.0126円/パケット | 10,500円 |
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料金プラン比較 ※イー・モバイル、KDDIは2年契約プラン
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イー・モバイルの料金プランは他社と比較して3種類と豊富。また、月間1GBまで利用できる「ギガデータプラン」は、制限内であれば3,980円と4,000円を切る価格。ただし制限を超えると上限は9,980円と最も高くなる点は注意が必要だ。ユーザーが月間でどれだけパケットを使用するかにかかっているが、まずは「データプラン」「ライトデータプラン」で契約し、月間のパケット利用料を確認してから「ギガデータプラン」を検討するといいだろう。
なお、上記の料金プランは新規契約者向けであり、すでにイー・モバイルを契約しているユーザーの場合は初期費用が異なる。具体的にはいったん契約中のイー・モバイルを解約するか、契約を解約せずに端末を追加購入するという2つの選択肢が用意されている。
追加購入の場合、端末の購入33,980円が必要になるが契約期間は継続される。契約を解除する場合、「いちねん」などの割引プランに加入していれば解除料が発生し、契約期間もリセットされてしまうが、割引プランを新たに変更できる点が違いだ。
割引プラン |
経過期間 |
いちねん |
利用開始月 |
1カ月 |
2カ月 |
3カ月 |
4カ月 |
5カ月 |
6カ月 |
7カ月 |
8カ月 |
9カ月 |
10カ月 |
11カ月 |
1年 |
24,000円 |
24,000円 |
22,000円 |
20,000円 |
18,000円 |
16,000円 |
14,000円 |
12,000円 |
10,000円 |
8,000円 |
6,000円 |
4,000円 |
2,000円 |
にねん |
利用開始月 |
1カ月 |
2カ月 |
3カ月 |
4カ月 |
5カ月 |
6カ月 |
7カ月 |
8カ月 |
9カ月 |
10カ月 |
11カ月 |
1年 |
48,000円 |
46,000円 |
44,000円 |
42,000円 |
40,000円 |
38,000円 |
36,000円 |
34,000円 |
32,000円 |
30,000円 |
28,000円 |
26,000円 |
48,000円 |
1年1カ月 |
1年2カ月 |
1年3カ月 |
1年4カ月 |
1年5カ月 |
1年6カ月 |
1年7カ月 |
1年8カ月 |
1年9カ月 |
1年10カ月 |
1年11カ月 |
1年12カ月 |
24,000円 |
22,000円 |
20,000円 |
18,000円 |
16,000円 |
14,000円 |
12,000円 |
10,000円 |
8,000円 |
6,000円 |
4,000円 |
2,000円 |
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契約解除料金
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SIMカードを交換すればどちらも利用可能
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契約解除料は月ごと変化し、開業キャンペーンの無料期間が終了した6月1日時点からデータ通信カードで契約しているユーザーの場合、12月時点での契約解除料は6カ月で14,000円。これにD02HWを新規契約した場合の初期費用9,980円を合計すると23,980円と追加購入より1万円安くなるほか、月額料金が従来の「いちねん」より1,000円安くなる「新にねん」を契約できる。自分の契約時期を確認した上で、D02HWを追加購入するか、新たに加入し直すかを検討するといいだろう。
決済方法もやや異なり、追加購入は端末の料金を店頭などで支払う。契約解除の場合、契約解除料はイー・モバイルの月額料金と合わせて請求され、それとは別に初期費用として端末料金を店頭で支払うことになる。
また、「いちねん」「にねん」といった初期費用が安くなる割引プランを利用していない場合、月額料金を1,000円割り引く「年とく割」が利用できる。こちらの解除料は3,150円と定額に設定されている。
なお、イー・モバイルはSIMカードを採用しているため、カードを差し替えれば他の端末も動作可能。D02HWを新たに契約した場合も、SIMカードを差し替えるだけでD01NEを今まで通り利用できる。ただし、通信速度はD01NEの仕様である下り3.6Mbpsに準じることになる。
■ 高速かつ料金の低廉化が魅力。エリアと端末の拡充に期待
携帯電話事業者が次々に定額データ通信に参入する中、下り速度に関しては他社と比較して倍近いスピードの新サービスを投入したイー・モバイル。現状のエリアは限定的ではあるが、速度向上にも関わらず料金が従来から据え置かれている点は魅力的だ。また、新たに開始された新割引プラン「新にねん」や1GBまでの準定額プラン「ギガデータプラン」を利用することで、料金面でもより使いやすくなった。
新規ユーザーの場合は、対応端末を選択するだけで下り7.2Mbpsを利用できる。現状は対応端末がまだUSB接続タイプのみだが、Windowsでしか使わないユーザーであればUSBケーブルで接続するD02HWよりもPCカード型のほうが利便性は高いだろう。逆にUSBであればMac OSだけでなくデスクトップPCでも利用できる汎用性の高さがメリット。自分の好みの端末の発売時期を待って契約するといいだろう。
既存ユーザーの場合、追加購入かいったん契約を解除するかで初期費用が大きく変わってくる。契約解除料は月ごと2,000円ずつ安くなるため、自分の好きな端末が発売されるまで待つという手もある。
下り7.2Mbps対応エリアはイー・モバイル全体のエリアに比べるとまだ狭いが、対応エリアであれば下り3.6Mbpsでは通信可能。また、対応エリアは積極的な拡大が図られており、12月には43都道府県へサービスを開始する予定だ。料金や通信速度でも他社より優れている点が多いイー・モバイルだけに、残された課題はサービスが利用できるエリアと言える。端末ラインナップの拡充に合わせて、今後のエリア拡大にも大いに期待したい。
■ URL
イー・モバイル
http://www.emobile.jp/
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(甲斐祐樹)
2007/12/12 15:32
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