10月25日、ついにJR北海道のICカード乗車券「Kitaca」がスタートした。Kitacaを皮切りとして今後電子マネーのさらなる普及が期待される北海道において、現状の電子マネー動向をレポートする。
■ 首都圏と異なるコンビニ事情。道内出店数最多はセイコーマート
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北海道最多出店を誇るセイコーマート
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少額決済の利用に適している電子マネーの利用頻度が高い店舗の1つがコンビニエンスストア。首都圏でも多くのコンビニエンスストアが電子マネーに対応しているだけでなく、複数の電子マネーを利用できるなど環境が整っているが、札幌を含む北海道の事情は少々異なる。
というのも、首都圏に店舗を構えるコンビニエンスストアのうち、北海道にも出店しているのはセブン-イレブン、ローソン、サークルKサンクス、ファミリーマートのみ。また、ファミリーマートは地元企業である北海道ファミリーマートが2006年7月7日に第1号店を開店したばかりで、店舗は札幌市内で27店舗のみと、北海道全体というほどには展開していない。
また、北海道のコンビニエンスストア事情としてはセイコーマートの存在も特徴の1つ。北海道を中心に展開する同社の道内店舗数はセブン-イレブンを超えて1位であり、北海道を代表するコンビニエンスストアとなっている。
現状ではKitacaがサービスを開始したばかりのために、首都圏のSuicaに相当する電子マネーが存在しない。また、イオン系列の「WAON」が利用できるミニストップも北海道には店舗がないため、コンビニエンスストアで利用できる電子マネーはEdy、nanaco、iD、QUICPay、Smartplus/Visa Touchということになる。
■ QUICPayが強い北海道のコンビニエンスストア
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唯一Edyに対応するセイコーマート全日空ホテル店
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実際の対応状況を比較すると、QUICPayの普及率が非常に高い。セブン-イレブン、ローソン、サークルKサンクスは全店でQUICPayが利用でき、セイコーマートは札幌市内全店と札幌近郊の311店舗でQUICPayに対応と、ファミリーマートをのぞくコンビニエンスストアすべてに対応している。ファミリーマートが札幌市内で27店舗しかないことを考えると、QUICPayがもっとも利用できる店舗数が多い電子マネーと言えるだろう。
EdyとiDはファミリーマート、ローソン、サークルKサンクスがともに対応しているため店舗数はほぼ同数。なお、セイコーマートは基本的にQUICPayのみの対応となるが、札幌全日空ホテル内のセイコーマートだけは、ANAマイレージクラブによる提携の関係か唯一Edyに対応している。
店舗名 |
店舗数 |
電子マネー |
Edy |
nanaco |
WAON |
iD |
QUICPay |
Smartplus/Visa Touch |
セブン-イレブン |
820 |
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○ |
--- |
--- |
○ |
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ファミリーマート |
27
(札幌市内のみ) |
○ |
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○ |
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ローソン |
496 |
○ |
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○ |
○ |
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サークルKサンクス |
204 |
○ |
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○ |
○ |
○ |
セイコーマート |
927 |
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札幌市内全店と
札幌近郊の311店舗 |
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北海道内のコンビニエンスストアと対応電子マネー
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WAONやSuicaが利用できないものの、EdyやiD、nanaco、QUICPayが使えるためにコンビニエンスでの電子マネー利用感は首都圏とさほど変わらない印象。2009年にはKitacaの電子マネー対応とSuica相互利用がスタートするため、Suicaに対応しているコンビニエンスストアでもKitacaの利用が可能になるだろう。旅行者としてはいつもと変わらない感覚でコンビニエンスストアで電子マネーが利用できるのは大変便利だった。
■ 電子マネーはKitacaとSAPICAに期待。一部バスは独自ICカードも
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KitacaがスタートしたJR北海道
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続いては交通網の電子マネー対応状況。と言ってもICカード乗車圏はJR北海道が商用サービスとしてKitacaを開始したばかりであり、ICカード乗車券が使えるのは函館本線の小樽~札幌~岩見沢間、千歳線の札幌~新千歳空港~苫小牧間、学園都市線 札幌~北海道医療大学間の55駅のみ。JR北海道の他路線では、従来通り切符を購入する必要がある。
JR北海道以外の路線では、札幌市交通局が運営する地下鉄「南北線」「東西線」「東豊線」全線で利用できるICカード乗車券「SAPICA」を2009年1月のサービスに向けてモニターを募集中。まだモニター自体は開始されていないものの、駅の改札にはICカードリーダーが一部で用意されていた。
SAPICAが提供されていない現状は、磁気カード「共通ウィズユーカード」がプリペイド型のサービスとして利用できる。市営地下鉄だけでなく市電、バスなどで共通に利用できるため、首都圏で東京メトロや私鉄、バスで共通利用できた「パスネット」に近いサービスだ。
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札幌市営地下鉄の改札機はICカードリーダーが準備されていた
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券売機はICカードに対応しているが購入はできない
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なお、エリアは限定されるものの、旭川を中心に展開する道北バスは「Do CARD」、北見エリアの北海道北見バス「ICバスカード」というICカード乗車券をすでに提供済み。Do CARDは1000円で1100円分、5000円で5800円分利用できる、ICバスカードは1000円利用ごとに80円分が付与されるなどの特典が用意されている。
いずれにせよ、交通網での電子マネーやICカード利用はKitacaやSAPICAのサービス開始を機にこれから本格展開するタイミング。ICカード乗車券は学生やサラリーマンなど日頃から電車を利用するユーザーには非常に利便性が高いだけに、北海道全体のICカード普及活性化にもつながろうだろう。
■ 電子マネーの普及が進む「さっぽろ地下街」
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さっぽろ地下街の「オーロラタウン」
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最後にショッピングでの電子マネー状況を見てみよう。北海道エリア全体は把握しきれなかったので、今回は札幌駅周辺の利用状況をチェックした。
JR札幌駅には、「アピア」「エスタ」「パセオ」「ステラプレイス」という4つのエリアで構成された地下街があるが、電子マネーの対応は一部店舗がEdyやiDに対応している程度で、地下街全体では電子マネーの利用できる場所はきわめて少ない。JR系列の地下街ということもあり、このエリアはKitacaの電子マネーが開始されて以降、順次広がっていくと予想される。
一方、大通駅を中心として南方向へ伸びる「ポールタウン」、東方向の「オーロラタウン」で構成される「さっぽろ地下街」は、ほぼすべての店舗がEdy決済に対応しており、半数近い店舗がiDに対応するなど、ICカード決済が充実。さっぽろ地下街のホームページでもトップページにEdyとiDのロゴを表示、利用可能店舗を紹介するなど積極的な対応を見せている。
さらに特徴的なのが、さっぽろ地下街のポイントシステム「さっぽろ地下街 POINT CLUB」だ。これは独自のポイントカードを作成するのではなく、EdyカードもしくはEdyが利用できるおサイフケータイを登録することで、さっぽろ地下街での買い物などでポイントが貯まるというものだ。
ポイント還元率は通常100円で1%だが、Edy支払いは100円で2%を付与。Edy対応のポイントシステムで代表的なANAマイレージクラブが200円で1ポイント、特定の店舗での利用時に200円で2%を付与する「Edy マイルプラス」を提供しているが、同じEdy決済で考えると100円で2%はAMCの2倍。さらに日曜・祝日の利用は現金やクレジット利用でも100円で2%、Edy利用時は3%を還元するなど、非常に還元率が高い仕組みになっている。
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Edyやおサイフケータイを会員カードにできる「さっぽろ地下街 POINT CLUB」
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さっぽろ地下街店舗にはEdyカードリーダーが常設
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■ Kitacaを機に広がる電子マネー対応に期待
2001年11月にICカード乗車券としてSuicaが開始され、現在は電子マネーやおサイフケータイ対応、ロッカーなど幅広く使われている首都圏と比較すると、電子マネーが利用エリアがコンビニエンスストアなどのチェーン店中心であり、ICカード乗車券もまだこれからという北海道は、一見するとICカードへの取り組みが遅いように思われる。
しかし、2001年には札幌市営地下鉄で利用できるICカード乗車券「S.M.A.Pカード」をSuicaの商用サービスよりも早い2001年3月から試験サービスとして実施されていた。また、エリア限定だが北海道北見バス、道北バスが独自のICカード乗車券を提供するなど、実際にはICカードに対して非常に早くから取り組みが行われてきた。
10月25日に開始したKitacaは2008年春に電子マネー機能を搭載し、2008年1月のSAPICAも詳細は未定なものの、電子マネーの対応は既定路線と言えるだろう。乗車券がICカード対応することで利用者も増加し、駅周辺の店舗が電子マネーに対応し始めるといった効果も期待できる。2009年以降の札幌の電子マネー動向に注目したい。
■ URL
Kitaca
http://www.jrhokkaido.co.jp/kitaca/
ICカード乗車券「SAPICA(サピカ)」の市民モニター募集について
http://www.city.sapporo.jp/st/ic_monitor/ic_monitor.html
さっぽろ地下街
http://www.sapporo-chikagai.gr.jp/
道北バス
http://www.dohokubus.com/
北海道北見バス
http://www.h-kitamibus.co.jp/
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(甲斐祐樹)
2008/10/27 12:15
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