SCNが考える今後のホームゲートウェイサービス展開とは

　ソニーコミュニケーションネットワーク（SCN）は、同社が展開を予定するホームゲートウェイサービスの一環としてSo-net会員向けに提供していたルータ「HN-RT1」の販売を、12月10日をもって終了した。SCNのホームゲートウェイサービスは今後どういう展開を進めていくのか。SCNの平林信隆執行役員に話を伺った。

HN-RT1

　SCNでは2003年3月より、IEEE 802.11b準拠の無線LANルータ「HN-RT1」をSo-net会員限定で発売開始した。有線LAN側の1ポートを優先して処理、映像のストリーミング再生におけるコマ落ちを防ぐ「AV優先ポート機能」などを搭載しており、同社ではHN-RT1を「ブロードバンドAVルータ」と位置付けていた。

　また、HN-RT1を中心としたホームゲートウェイサービスの展開も予定。ルータのかんたん設定機能や宅外からのリモート接続機能、宅内のネットワーク機器を一括してセキュリティ対策できるサービスなどを、ファームウェアのアップグレードで対応、サービス提供していく方針だった。

■ ホームゲートウェイサービスは今後も提供予定

SCNの平林信隆執行役員

　SCNの平林氏は「HN-RT1の販売は終了したが、ルータ機能を利用したホームゲートウェイサービスそのものを中止した訳ではなく、今後も検討を進めていく」とコメント。「家庭内の機器がネットワークにつながり、その中でサービスを提供するスタンスはまったく変わらない」と強調した。

　ただし、当初予定していた家電のコントロールといった部分については「予想以上に市場全体が立ち上がらなかった」という。平林氏は「テレビのような受け側となる家電機器ができてこないと、宅外から宅内へのアクセスといったサービスも難しい」とコメント、今後は市場を判断しながら、中長期的にサービス展開を考えていきたいという考えを訴えた。

　また、HN-RT1の機能についても「世の中のルータの進化からは若干遅れがあるかもしれない」という心情を明らかにした。ただし、無線LAN機能については「IEEE 802.11a/b/g対応にすべきとの声もあったが、SCNとしてホームゲートウェイサービスを展開するという姿勢を早い段階で明らかにする意味もあり、技術的に成熟したIEEE 802.11bを選択した」という。

　予定していたファームウェアのうち、「ホームルータかんたん接続設定」「ワイヤレスLANかんたん設定」については、ファームウェア公開以降の機種を購入したユーザーを対象としていたため、「既存ユーザーは設定をすでに済ませていることもあり、改めてファームウェアを公開するまでには至らない」との判断だったという。

　また、宅外から宅内へのリモートアクセス、家庭内のネットワーク機器を一括してセキュリティ対策するサービスについては「有料サービスとして提供予定だったが、サービスが現状では提供できていないため、ファームウェアの公開に至らなかった」とコメント。ハードウェアベースでの実証実験では実現できていたものの、実際にサービスを展開する段階で「対応機器との連動が難しかった」のだという。

　なお、これらサービスの今後の実装については、現行機種の「HN-RT1」での対応は難しいものの、「実際に購入したユーザーは非常に大切なため、ユーザーへの案内は決定次第対応する予定」とした。

　IP電話サービスの普及も、HN-RT1を利用したサービス展開を難しくした要因の1つだという。NTT東西の「VoIPアダプタ」など一部の機種を除けば、多くのIP電話対応機器はルータ機能を利用する必要がある。そのためSo-netのIP電話サービス「So-netフォン」も、VoIPアダプタ以外ではHN-RT1を併用できなかった。今後は「IP電話機能の搭載も検討」していくという。

■ HN-RT1で多くのノウハウを蓄積

　平林氏はHN-RT1について「正直なところ、一歩早かったのかもしれない」という心情を明らかにした上で、「HN-RT1によって、多くのノウハウを蓄積することができた」とコメント。今後もルータ機能を利用したホームゲートウェイサービスを展開していく方針を強調した。

　また、HN-RT1に続く次世代機も検討を進めているという。ただしこちらはルータのスペックといった問題はもちろんのこと、「ルータというハードウェアで提供するかどうかと言う根本的な問題もある」とコメント。「ルータ単体ではどうしてもコストがかかる」と前置き、「テレビやレコーダなどに搭載するといった考え方もある」とコメントした。

　So-net会員限定販売だった販路も「今後は弾力的に考えていく」方針だ。「Web告知も限界があり、実店舗での販売員による説明で売れることもある」とコメント、可能な限り販路を拡大していきたい考えを示した。

■ ＵＲＬ
　 So-net
　 http://www.so-net.ne.jp/

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（甲斐祐樹）
2003/12/19 12:35

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