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【 2009/12/25 】 【 2009/11/13 】 【 2009/09/25 】 【 2009/07/01 】 【 2009/06/26 】
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上下ともに高速化を図った「フレッツ・ADSL モアIII」の実力を検証
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2003年には20M超、40M超と1年で2回の速度向上を果たしたADSLが、さらなる速度向上を実現した。NTT東西、イー・アクセス、アッカ、ソフトバンクBBといった主要ADSL事業者が、次々に下り最大47Mbps(Yahoo! BBのみ下り最大50Mbps)のサービスを発表している。
今回の速度向上で注目すべきは、初めて上りの最大速度が1Mbps超へと高速化されることだろう。上り速度の高速化は以前からアッカとソフトバンクBBが最大3Mbpsのサービス提供を表明していたものの、実際にサービスを提供するためには、上り帯域拡張のための技術が社団法人情報通信技術委員会(TTC)で承認される必要があった。TTCでの協議は7月2日に決着し、これを受けてアッカ、ソフトバンクBBを含むADSL事業者が新サービスの発表に踏み切ることになる。
下表は主要ADSL事業者のサービス内容をまとめたもの。いずれも下りが最大で47M/50Mbps、上りが最大で3M/5Mbpsという点は共通だが、提供方法などは事業者ごと微妙に異なる。アッカとYahoo! BBは40Mタイプの既存プランを無料でアップグレードするという形でサービスを提供するが、Yahoo! BBは下り速度の高速化と同時に上り速度も最大5Mbpsへアップグレード。一方、アッカではまず下り速度から高速化し、上り速度の高速化は今後対応する予定だ。
NTT東西とイー・アクセスは、40Mタイプの既存プランとは異なる新サービスとして提供する。下り最大47Mbps、上り最大5Mbpsという点では共通だが、NTT東西は上り最大3Mbpsでサービスを開始、8月下旬に5Mbpsへ高速化するのに対して、イー・アクセスはサービス開始当初から上り最大5Mbpsで提供する点が異なる。
なお、アッカでは2004年内に、下り最大速度を50M超へとさらに高速化させた新サービスを予定している。このサービスでは上りの速度も最大10Mbpsで提供する予定だ。
サービス/事業者名 |
サービス開始日 |
サービス形態 |
下り |
上り |
開始時 |
増速予定 |
フレッツ・ADSL |
8月5・6日 |
新プラン |
47Mbps |
3Mbps |
5Mbps |
イー・アクセス |
8月中旬予定 |
新プラン |
47Mbps |
5Mbps |
--- |
アッカ |
7月30日 |
アップグレード |
47Mbps |
1Mbps |
3Mbps |
Yahoo! BB |
8月上旬 |
アップグレード |
50Mbps |
3Mbps |
--- |
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主要ADSL事業者の47M/50Mサービス概要
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料金面では、NTT東日本のみ40Mタイプと比較して税別で50円高いほかは、NTT西日本、イー・アクセスとも40Mタイプとほぼ同額に設定(AOLのイー・アクセス対応プランのみ従来より安価)。また、Yahoo! BBとアッカはいずれも既存プランを高速化する形態のため、月額料金も変わらないほか、変更手数料なども必要ない。ユーザーはモデムのファームウェアをアップグレードするだけで新サービスを利用できる。
下り速度の高速化はアッカが7月30日より順次開始しているが、上り速度の高速化は5日にサービスを開始したNTT西日本の「フレッツ・ADSL モアスペシャル」、6日にスタートしたNTT東日本の「フレッツ・ADSL モアIII」が初めて。今回はフレッツ・ADSL モアIIの47Mタイプをフレッツ・ADSL モアIIIへと変更し、リンク速度などを検証した。
■ 線路長約2km、伝送損失約30dBでモアIIIを導入
NTT東日本ではADSLの速度目安として、Webサイト上で伝送損失とリンクアップ速度のグラフを公開している。これによると上下共に高速化が見込めるのは伝送損失が20dB程度までの環境で、30dB近くではほぼ速度の向上が見られない。NTT東西では8月下旬以降、モデムのアップグレードで上り最大5Mbpsを実現する予定だが、この場合でも30dBでは速度向上が望めないようだ。
今回フレッツ・ADSL モアIIIを導入した電話回線は線路長が約2,070m、伝送損失が31dB。NTT東日本のグラフに基づくならば、速度向上のメリットは享受できない可能性が高い。
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モアIIIの下り速度と伝送損失の目安
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モアIIIの上り速度と伝送損失の目安
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前回は下り最大24Mbpsの「フレッツ・ADSL モアII」を下り最大40Mbpsへ高速化するという方法を採用したNTT東日本だが、今回は新プランとして「フレッツ・ADSL モアIII」を提供する。そのためフレッツ・ADSL モアIIを含む既存のユーザーが速度変更する場合、一度解約してから再度フレッツ・ADSLに加入するか、速度変更であればタイプ1の場合で3,202.5円の工事費用が必要になる。
フレッツ・ADSL モアII高速化のサービス開始当初は、IP電話に非対応の「ADSLモデム-MNIV」が用意され、時期が遅れてIP電話対応の「「ADSLモデム-NVII」が提供された。今回はサービス開始当初からIP電話対応の「ADSLモデム-NVIII」のみが提供される。
NVIIIの概観は前モデルのNVIIやIP電話非対応のMNIVと同じだが、機能面では拡充が図られた。接続先設定では新たにNTT東西が運営するコンテンツ配信サイト「フレッツ・スクウェア」がプリセットされており、初期設定時に地域を選ぶだけで簡単にフレッツ・スクウェアが設定できる。
また、IP電話機能では指定した電話番号からの着信を拒否する機能が追加された。このほかにMNIVから搭載されたADSLの接続モードを自動で判定する「拡張自動設定」も見直しが図られており、上り優先と下り優先の2種類が用意された。
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IP電話対応の「ADSLモデム-NVIII」
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指定番号からの着信拒否機能
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■ 約30dBではわずかに速度が向上
まずは回線がフレッツ・ADSL モアII(47M)の状態でモデムをNVIIからNVIIIに変更、モデムによるリンク速度を検証した。上下とも大きな速度向上は見られず、もっとも速度の速いAnnex I接続時で下りが約8.2Mbps、上りが約1.1Mbpsという結果だった。
モアII |
接続モード |
NVII |
NVIII |
下り |
上り |
下り |
上り |
Quad Spectrum |
6,976kbps |
1,152kbps |
6,880kbps |
1,120kbps |
G.dmt Annex I |
8,224kbps |
1,152kbps |
8,192kbps |
1,152kbps |
G.dmt Annex C |
7,200kbps |
1,152kbps |
7,008kbps |
1,120kbps |
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モアII回線でのNVIIとNVIIIのリンク速度比較
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続いてADSL工事が終了、回線がフレッツ・ADSL モアIIIに切り替わった後のリンク速度を比較した。フレッツ・ADSL モアII環境ではAnnex Iがもっとも高速だったのに対して、モアIIIではAnnex Cでの接続がもっとも高速となる場合が見受けられた。ただし、上下ともにモアIIの速度を上回ることはなく、モアIIの時よりも速度が落ちる場合もあった。
以前よりもリンク速度が落ちる現象が見られたため、今度はモアIIIの回線で以前のモデム「NVII」を接続してみた。すると下りのリンク速度は約400kbps程度向上し、上りもわずかながら1,152kbpsを超える結果を示した。線路長や伝送損失、モデムの製品個体差などの影響で、旧型モデムのほうが速度が向上するケースもあるようだ。なお、NTT東日本によれば、NVIIもモアIIIに対応してはいるものの、モアIIIのフルスペックである下り最大47Mbps、上り最大5Mbpsでは利用できないという。
モアIII |
接続モード |
NVII |
NVIII |
下り |
上り |
下り |
上り |
Quad Spectrum |
6,848kbps |
1,152kbps |
5,292kbps |
1,120kbps |
G.dmt Annex I |
8,606kbps |
1,216kbps |
7,734kbps |
1,056kbps |
G.dmt Annex C |
7,328kbps |
1,184kbps |
8,192kbps |
1,056kbps |
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モアIII回線でのNVIIとNVIIIのリンク速度比較
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以上、旧型モデムを利用した場合に限るという条件下ではあるが、わずかながらも速度向上が実現できた。ただし、上記の測定結果はあくまで1ユーザーの環境であり、すべてのユーザーに当てはまるものではない。また、NTT東日本ではNVIIIのバージョンアップで上りを最大5Mbpsへ高速化する予定があるため、モデムの選択は注意する必要があるだろう。
なお、本誌連載「イニシャルB」でもすでにアッカ・ネットワークスの47Mbpsサービスについてレポートを掲載しているが、中距離での高速化は実現できなかった。主要事業者が一斉に発表したADSLの高速化も、大きなメリットを享受できるユーザーは距離によって限られることになりそうだ。
すでにフレッツ・ADSL モアII 40Mを利用しているユーザーの場合、月額料金が税別で50円高くなるほか、速度変更であれば工事費用も必要だ。自宅の環境とNTT東日本のグラフを踏まえた上で速度変更を検討するといいだろう。
■ URL
フレッツ・ADSL(NTT東日本)
http://flets.com/adsl/
■ 関連記事
・ NTT東日本、下り最大47Mbpsの「フレッツ・ADSL モアIII」を8月6日開始
・ 第112回:40Mbpsから47Mbpsへ高速化 アッカ 47Mサービスの実力は?
・ フレッツ・ADSL モアII高速化の効果を検証
(甲斐祐樹)
2004/08/10 16:01
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