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[2004/07/23]
パナソニック ネットワークカメラ
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[2004/05/10]
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~コレガ CG-NCMN&CG-WLNC11MN、プラネックス CS-TX01F&CS-W01B~
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~コレガ CG-NCMN&CG-WLNC11MN、プラネックス CS-TX01F&CS-W01B~
[2004/04/08]
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[2004/04/01]
NEC AX300~DVDレコーダ搭載で進化したホームAVサーバー~(後編)
[2004/03/04]
NEC AX300~DVDレコーダ搭載で進化したホームAVサーバー~(後編)
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[2004/03/03]
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~手軽にファイル&プリントサーバーとして使えるネットワークストレージ~
[2003/12/24]
[番外編] 価格の違うルータは、どこが違うか?
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[2003/11/12]
NTT-ME MN8300
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[2003/10/20]
マイクロ総合研究所 NetGenesis SuperOPT100
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[2003/09/17]
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[2003/09/10]
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~4,000円台半ばの低価格・高スループットルータ~
[2003/08/26]
NECアクセステクニカ AtermWR7600H
~IEEE 802.11a/b/g全対応の無線LANルータ~
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[2003/07/09]
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[2002/08/28]
「メルコ BLR3-TX4」
~実効スループット88Mbpsを謳う高速ルータ~
[2002/05/29]
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「メルコ BLR3-TX4」
~実効スループット88Mbpsを謳う高速ルータ~


光ファイバマーケットをターゲットとした製品

 メルコのBLR3-TX4は1万4800円という低価格ながら、実効スループット88Mbpsという高い性能を誇るブロードバンドルータである。従来、これほど高速なルータに対するマーケットのニーズは非常に少なかったが、高速化が進む昨今のインターネット接続環境の影響を受けてか、次第に高速なルータに対する需要が高まりつつある。

 特に今年は、電力系企業によるFTTH接続サービスの開始や、これに対抗してのNTT地域会社によるBフレッツの新サービス(ニューファミリータイプ)の開始など、需要を促進する要因に事欠かない。今後このマーケットは、(ADSLの普及ほどではないにせよ)急速に盛り上がると見られており、いち早くマーケットシェアを確保するために早速製品を投入したというわけだ。

写真1
メルコ製品ではおなじみの丸みをおびた縦置きタイプ。どことなくマンボウを思わせるスタイルである
写真2
WAN/LANの通信速度は、表示色を変えることで示される(緑点灯時が100M、橙点灯時が10Mを表わす)

 外観は同社の従来製品と同じく、設置スペースを節約できる楕円形状の縦置きスタイル(写真1)。本体正面にはPOWER、WAN LINK、DIAG(ステータス)の各LEDが、側面には各ポートのLAN LINK LEDが配置されている(写真2)。背面はポート類が集中しており、WAN側の10/100BASE-T(X)ポート1つと、LAN側の10/100BASE-T(X)ポートが4つ、あとは電源コネクタと設定初期化スイッチ、WAN側ポートの極性切り替えスイッチといった、必要十分の構成である(写真3)。

 同梱物はシンプルで、シート状のセットアップガイド、ACアダプタ、ユーティリティCD-ROM、3mのLANケーブルといったところだ(写真4)。ACアダプタは小型で、OAタップなどに挿しても隣のコンセントと干渉することがなく便利である。シート状のマニュアルは「らくらく!セットアップシート」という、言わば簡易設定マニュアルだが、詳細なマニュアルはユーティリティCD-ROMの中にPDF形式で収録されているので、不明な点はこちらを参照すれば良い。

写真3
LAN側がAUTO MDI/MDI-X(極性自動判別)なのに、WAN側はスイッチによる切り替え、というあたりがややアンバランスな感もなくはない
写真4
本体の同梱物。CATVやADSLに接続する場合には、同梱のらくらく!セットアップシートの手順を踏むだけで簡単に設定できる



Webブラウザベースで判りやすい設定画面

 ルータの設定はブラウザを使う一般的なもの。また、デザインも従来の同社のものを踏襲しているので、以前から同社のルータを使ってる人は馴染みのある画面だろう。設定画面は、ルータのIPアドレスを直接指定して起動できるほか、ユーティリティのメニューからも起動できる(画面1・画面2)。

画面1
設定画面のトップメニュー。デフォルトのLAN側アドレスは「192.168.0.1」で、ブラウザからIPアドレスを直接入力すれば設定画面を呼び出せる
画面2
付属のCD-ROMに収録される設定ユーティリティからもPhoto05の設定画面を呼び出せる。なお、ブラウザの設定画面からは設定内容を保存できないので、その場合はこのユーティリティが必須になる

 トップメニューから[簡易設定]を選ぶと、WAN側の各種設定とLAN側のIPアドレス、DHCPサーバー設定程度の簡単な設定画面が表示される。最低限の設定はここで行なえるが、より細かい設定を行なうなら[詳細設定]を選ぶことになる。こちらではWAN側、LAN側の設定はもとより、NATやパケットフィルタリングの設定など、本製品に搭載された豊富な機能をフルに活かす設定が行なえる。ここでは、本製品で設定可能な主な機能を紹介しておこう。

 WAN側の設定については、DHCPサーバからの自動取得、固定IPの他にPPPoEにも対応する(画面3)。このPPPoEはオンデマンド接続の設定や、MRU値の変更も可能という、ツボを抑えた設定項目を持つ(画面4)。残念ながらPPPoAには未対応だが、ADSLはともかくFTTH系の接続では殆どがPPPoEで提供される現状を考えれば、それほど大きな問題とはならないだろう。

画面3
設定画面。左のフレームから項目を選択し、右のフレームで設定を行なうといったありふれたスタイル。WAN側はDHCP、固定IP、PPPoEに対応と一般的だ
画面4
PPPoEの設定画面はPhoto07とは別に用意されている。オンデマンド接続ができたり、逆に自動切断を無効にできるなど、ニーズに合わせた接続方法を選択できる

 NATの設定もごく一般的なものである(画面5)。とはいえ、必要な機能はほぼ網羅しており、「優れている」とはいえないものの(例えばログの転送が不能とか、ポートフォワーディングの際に転送先ポート番号を変更できないなど、我が家ではちょっと不便なところもある)、一般的な利用にはまず不自由はないだろう。

 パケットフィルタリングの設定も簡単だ(画面6)。初期設定で登録されているルールは、画面6の「簡易フィルタ情報」に登録されている3項目だけだ。つまりほとんどのパケットを通過させてしまうわけで、コンシューマ向けルータであることを考えると配慮に欠けているだろう。逆にこのルータを使うなら、使用開始前にフィルタリングの設定を行なっておくことをお勧めする。

画面5
NATの設定画面。アドレス変換テーブルの設定は、必要な機能はほぼ網羅しているが、ちょっと設定項目が煩雑。もう少し整理してほしいところだ
画面6
パケットフィルタリングの設定画面。IPアドレスは空欄にすることで、すべてのIPアドレスを対象にできる。また「192.168.0.100-192.168.0.150」といった書式で範囲指定できる。ポートの指定も同様の書式で範囲指定が行なえる

 もう一つ気になるのは、DMZホスト機能。ここで言うDMZとは、ちゃんとセグメント分けされたDMZをLAN側とは別に用意できるという話ではなく、いわゆる「なんちゃってDMZ」機能である。にも関わらず、マニュアルなどには「不正アクセス対策に実用性が高い」という記述があるあたりは、初心者にはやや不適切な感がある。筆者が試した限り、単なるアドレスフォワーディングであり、そのDMZサーバーがクラックされるとLAN側のマシンが丸見えになるという危険性を回避できるものではなかった。別にこれはBLR3-TX4に限らず、DMZ専用ポートを持たないほぼ全てのブロードバンドルータに共通の話だが、この方式の危険性をきちんと説明すべきなのではないだろうか?

 ちなみに、本製品はUPnPに対応しており、NetMeetingやWindows Messengerでビデオチャットなども問題なく行なえるという話になっているが、現時点では間に合っていないようである。こちらのページ(http://buffalo.melcoinc.co.jp/products/catalog/item/b/blr3-tx4/index.html)を見ると、UPnPやWindows Messengerは「対応予定」ということであり、将来の対応に期待したいところだ。



高スループットを狙いMPC8241を搭載

 これまで高スループットを狙った製品の場合、搭載されるプロセッサはCONNEXANTのNetwork Processor(ARM9ベースのSOC)や東芝のTMPR3927AF(MIPS32 4kコア)、あるいは日立のSH-3/4などを使う例が多かった。いずれも100~200MIPS程度の演算性能を持つものだ。もちろん中にはレーザーファイブのL-Routerとか、センチュリー・システムズのXR-300など、とてつもない構成の製品もあるが(L-RouterはNECのVR4122/180MHzを、XR-300はIBMのPowerPC405/200MHzをそれぞれ搭載する)、これらは元々汎用のプロセッサボードをベースにブロードバンドルータを構成したもので、ちょっと話が違う。

 さて話をBLR3-TX4に戻すと、この製品で搭載しているのはモトローラのMPC8241/200MHzである。PowerPC 603eのプロセッサコアに、メモリコントローラやPCIバスインターフェイス、シリアルインターフェイスなどを統合したSoC(System on Chip)だが、その演算性能は200MHz駆動で380MIPSと、従来の製品の倍近いパフォーマンスを実現した製品だ。高スループットを実現するためには、それなりのプロセッサパワーも必要なわけで、88Mbpsという公称性能もあながち嘘ではない気がしてくる。というわけで、どの程度のパフォーマンスがあるか、実際に測定してみる事にした。

 図1に、テスト環境を示す。サーバー、クライアント共に、CENATEKのRAMDisk NTを使って128MBのRAMディスクを生成し、これを使って転送を行なう事で、ルータ以外のボトルネックを極力解消するようにしている。一応便宜上、サーバーとクライアントという具合に分けているが、どちらのマシンでもIISを立ち上げ、FTPサーバーおよびWebサーバーとして利用できるようにしてある。Windows 2000 Professional/Windows XP Professionalに付属するIISは、HTTP圧縮機能などは付いてないが、今回は速度測定が目的だからかえって目的には適っているだろう。ファイルの受信にはIEの「ファイルに保存」を利用している。

サーバークライアント
CPU:AMD Athlon MP 1.2GHz×2CPU:AMD Duron 1GHz
M/B:TYAN TigerMP(AMD760)M/B:ECS K7S5A
Memory:Registerd DDR SDRAM 512MB(256MB×2)Memory:PC133 SDRAM 256MB
HDD:MaxtorのDiamondMax Plus D740X 20GB (NTFS)HDD:Seagate Barracuda ATAⅣ 40GB(NTFS)
NIC:プラネックスコミュニケーションズ GN-1000TENIC:ノーブランド RTL8139C搭載LANカード
OS:Windows 2000 Professional 日本語版+Service Pack 2
IIS 5.0
OS:Windows XP Professional 日本語版
IIS 5.1
RAMDISK:128MBRAMDISK:128MB
図1:今回のテスト環境

 さてこの環境の上で60MBのファイルを用意し、これを転送するのに必要な時間から転送速度を計算したのが、表1である。(いずれも3回の転送を行なっての平均値を利用している)ちなみにこの原稿を書いている最中、メルコはBLR3-TX4のファームウェアをアップデートした。そこで、元々のファームウエアと新しいファームウェアの両方で速度測定を行なっている。

 「直結状態」というのは、図1の中で点線で示された状態だ。つまりBLR3-TX4を介さないで転送を行なった場合の性能である。この環境だと、低いときで57Mbps、高速な場合でも84Mbps程度の成績が出ている事がわかる(今回、クライアント機のメモリが遅いのがボトルネックになったようだ)。このままだと、本当に88Mbpsが出せる場合にはそのピーク性能が測定できないことになる。が、実際にBLR3-TX4を使ってみると、アベレージで40Mbps前後といったところ。一番早い場合でも42Mbps程度の実力ということになる。面白いのは、ダウンロード(WAN側→LAN側:今回の場合、サーバー→クライアント)よりもアップロード(LAN側→WAN側:今回の場合だとクライアント→サーバー)の方が性能がやや高いことである。とはいえ、わずかに速いという程度なのだが。

 また、NATあるいはパケットフィルタリングを実施すると多少性能は落ちるが、最悪でも37.7Mbpsと高い水準で転送速度を維持しているあたりは、さすがに高速なCPUを利用していると感心させられる。

プロトコル転送条件ファーム
ウェア
1.00
ファーム
ウェア
1.01β
直結
状態
ftpサーバー → クライアント57.4
クライアント → サーバー84.8
httpサーバー → クライアント70.8
クライアント → サーバー84.0
BLR3-
TX4
利用
ftpサーバー →
  クライアント
パケットフィルタリングなし40.440.8
パケットフィルタリングあり37.738.6
パケットフィルタリング+NAT37.738.6
クライアント →
  サーバー
NATあり40.042.0
NAT+パケットフィルタリング38.738.6
httpサーバー →
  クライアント
パケットフィルタリングなし40.041.3
パケットフィルタリングあり38.238.6
パケットフィルタリング+NAT38.138.5
クライアント →
  サーバー
NATあり40.641.6
NAT+パケットフィルタリング38.839.5

表1:テスト結果



話半分としてもお買い得

 まぁさすがに88Mbpsというのは無茶な数字だと思わなくもないが、アベレージに近い40Mbpsでもかなりルータとしては高速な部類に入る。既存のFTTHサービスの場合、回線状態が良い時で40Mbps前後というのが相場だから、その意味では必要十分な性能と言える。

 これだけの性能を持つルータが、1万4800円で購入できるというインパクトは大きい。2万~4万という、比較的高い値段で安定していた高価格ルータのマーケットへのインパクトは大きそうで、他社製品の追従状況が興味あるところだ。それほどに良くできた製品なのは間違いない。お勧めである。



□メルコ BLR3-TX4製品情報
http://buffalo.melcoinc.co.jp/pronow/blr3-tx4/index.html

(2002/05/29)
槻ノ木隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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