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マイクロ総合研究所 NetGenesis SuperOpt-GFive
~初のギガビットフル対応ルータ!~
[2004/09/03]
パナソニック ネットワークカメラ
「BL-C10」「BB-NWC150」 (後編)
[2004/07/23]
パナソニック ネットワークカメラ
「BL-C10」「BB-NWC150」 (前編)
[2004/07/22]
コレガ CG-WLBARAG-P
~初心者向けサポートを売りにする無線LAN機能内蔵ルータ~
[2004/05/10]
ネットワークカメラを試してみる(後編)
~コレガ CG-NCMN&CG-WLNC11MN、プラネックス CS-TX01F&CS-W01B~
[2004/04/09]
ネットワークカメラを試してみる(前編)
~コレガ CG-NCMN&CG-WLNC11MN、プラネックス CS-TX01F&CS-W01B~
[2004/04/08]
東芝 gigabeat G21~ネットワーク接続も可能なHDD内蔵オーディオプレーヤー~
[2004/04/01]
NEC AX300~DVDレコーダ搭載で進化したホームAVサーバー~(後編)
[2004/03/04]
NEC AX300~DVDレコーダ搭載で進化したホームAVサーバー~(後編)
[2004/03/04]
NEC AX300~DVDレコーダ搭載で進化したホームAVサーバー~(前編)
[2004/03/03]
バッファロー LinkStation HD-H120LAN
~手軽にファイル&プリントサーバーとして使えるネットワークストレージ~
[2003/12/24]
[番外編] 価格の違うルータは、どこが違うか?
~セキュリティ、NAT、使い勝手を比較~
[2003/11/12]
NTT-ME MN8300
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[2003/10/20]
マイクロ総合研究所 NetGenesis SuperOPT100
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[2003/09/17]
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NECアクセステクニカ AtermWR7600H
~IEEE 802.11a/b/g全対応の無線LANルータ~
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NTT東日本/西日本 Web Caster 7000
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「メルコ BLR3-TX4」
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[2002/05/29]
槻ノ木隆の
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マイクロ総合研究所 NetGenesis SuperOpt-GFive
~初のギガビットフル対応ルータ!~

業界初!のギガビットイーサネット/Jumbo Frame対応ルータ

 マイクロ総合研究所から発売された「NetGenesis SuperOpt-GFive(MR-OPTG5)」は、同社のコンシューマ向け製品としては最高性能を誇るハイエンドモデルである。最近でこそLAN側にギガビットイーサネットポートを装備したルータはいくつか登場しているが、WAN側ポートにまでギガビットイーサネットを搭載した製品はこれが初めてである。ギガビットイーサネットを搭載するからには、ルーティング性能は100Mbpsオーバーであることが求められるわけで、実際同製品のルーティング性能は公称240Mbpsと極めて高い。

 もちろん、単に高速なだけではない。NetGenesis SuperOpt100同様にポートごとに別の仮想LANを最大5グループまで構築できるポートベースVLAN機能、ポートごとに帯域幅を制限するポートベースQoSやIEEE 802.1pのQoSタグにより帯域制限を行なうタグベースQoS、2セッションのPPPoEマルチセッションやUPnP、VPNパススルー、IPフィルタリングなど、機能的にも極めて充実しており、もはやコンシューマ向けの枠をはみ出しかかっているといっても過言ではない製品だ。

 外観はというと、従来のプラスチック製から大きく変わった。薄型メタルシャーシが薄水色に塗装されており、Opt90/Opt100とはまったく異なる装いである。LEDはシンプルで、Power以外にLINK/ACTとポートのスピードを各々表示するだけである(写真01)。背面部もまたシンプル(写真02)。LAN側の4ポートとWAN側の1ポートの間にリセットスイッチが配され、左端には電源スイッチとACアダプタのコネクタがのぞく。電源スイッチはいまどき珍しいトグルスイッチだが、それがかえって本機にマッチした雰囲気もある。上面(写真03)や側面(写真04)には通気口が多く設けられており、底面にはWAN側とLAN側のMACアドレスが記載されたラベルが貼られている(写真05)。

 なお、付属品はACアダプタとLANケーブル(ストレート、3m)、クイックスタートマニュアルとCD-ROMといったところである(写真06)。

写真01
本体は横置きのみ。本体サイズは288×148×30mm(幅×奥行×高)、重量は約760g
写真02
スイッチがある製品も次第に少なくなってきたが、コンシューマ向けと言いながら安価な製品とは一線を画した、業務用向けっぽいデザインの雰囲気が漂っており、これはこれでアリかもというのが個人的な感想
写真03
上面はこんな感じでパンチングが施されている
写真04
側面スリットはこんな具合。下半分にもきっちりスリットが入っているあたりに、手間がかかっている風情を感じさせる
写真05
底面にもしつこくパンチングが
写真06
本体同梱品

相変わらずきめ細やかな設定項目

 では本製品の設定画面をチェックしていこう。基本的な構成は、同社の従来製品を引き継いでおり、Webブラウザから設定を行なうことが可能である(画面01)。基本的な設定項目は、以前のOPT100と変わらないので、従来からOPTシリーズユーザーであれば、迷わずに設定できるだろう。

 まず基本設定に関しては、LANポート側のジャンボフレームの設定がちょっと目新しい(画面02)が、そのほかはそれほど大きな違いはない。

画面01
FTTHを意識してか、最初に出てくるプロバイダー名が多少異なっているる
画面02
MTUとMRUの初期値は通常のフレームサイズになっている。送信側が最大7,000バイト、受信側が最大13,000バイトというのが最大値である

 WAN側設定に関しては、まずPPPoEでは簡単設定が用意され(画面03)、最低限の情報だけで接続できるのは(画面04)以前同様である。もっと細かい設定に関しては、WANポートの設定→動作モードの設定で細かく選択ができる(画面05)。用意されているのは、DHCPクライアント(画面06)、PPPoEクライアント(画面07)、IPアドレス固定(画面08)、IP Unnumbered(画面09)、ローカルルータ(画面10)の5種類である。

画面03
このあたりはOPT100(というかOPT90)あたりから変わらない
画面04
この画面も変わらないが、説明がより細かくなった印象を受ける
画面05
これはほぼ一緒
画面06
Windows Messenger/PPTP/UPnPの設定項目はOPT100に同じ。MTU/MRUの設定が主な違い
画面07
機能的にはOPT100と変わらないが、説明は丁寧になっている
画面08
こちらも同じく。ちなみに変換用IPアドレスに「192.168.4.2/32」が設定されているのはスループット測定のためで、初期状態では何も設定されていない
画面09
IP Unnumberedでの設定。「192.168.4.2」が設定されているのは写真08と同じ理由で、画面08で設定すると自動的に画面09も同じ設定になるようだ
画面10
ローカルルータ設定。こちらにも「192.168.4.2」が設定されているのは画面09と同じ理由と思われる

 いずれの項目も、以前のOPT100とほとんど違いがないが、すべてのケースでMTU/MRUの値の設定が変更できるのは、ちょっと目新しい部分だ。例えば、PPPoEに関しても、マルチセッションに対応している以外に基本的には大きな違いは見られない。強いて言えば、詳細設定でMSS CLAMPの有無が設定できるようになったところだろうか(画面11)? 。細かいところでは、回線接続方法にIP電話への言及があるあたりが、細やかさを示しているとは言える。IPマスカレードに関しては、PPPoEマルチセッションを考慮して、どちらのセッションに対してNAPTを行なうか設定できる(画面12)あたりは、使い勝手が良さそうだ。

 一方、LAN側であるが、こちらも大きな違いはない。DHCPサーバー(画面13)、SNTPサーバー(画面14)、SYSLOG(画面15)、ファイアウォール(画面16)、RIP(画面17)、EasyDNS(画面18)の設定が行なえるが、これらは従来のOPT100とほとんど設定項目に違いはない。

画面11
細やかになったのは良いのだが、結果として画面が長大になったのはちょっと敷居が高く感じられるところ。説明は左フレームに表示とかの方法でも良いかもしれない
画面12
通常サーバー公開のためにはこれを使うのが普通。PPPoEとそのほかで別々に設定できるのはちょっと便利
画面13
LANポート側DHCPサーバーの設定。MACアドレスベースで固定IPアドレスを割り振る機能がついてくれたら完璧なのだが
画面14
SNTPサーバー。SNTPサービスを使わない場合でも、OPT-GFive自身の時間設定のためにも便利
画面15
LOG_INFOにデフォルトでチェックが入っているのがちょっと変わった点か。基本的にはOPT90/100と変わらず
画面16
ちょっとだけ違うのは(この画面には出てこないが)プロトコルとして任意のプロトコル番号を指定できるようになったことで、そのほかはほぼ変わらず。相変わらず横長でちょっと見にくいのが欠点である
画面17
IPの機能はほとんど変わっていないが、回線切断時の設定が追加されているのがちょっと新しい。それにしても、RIPを使うユーザーはかなりレベルが高い(から誤解はしない)とは思うが、「広告情報」という日本語を使うのはそろそろやめて欲しいと個人的には思う
画面18
EasyDNS機能。実はこの機能、筆者はまるっきり使っていないのだが本当に必要なのだろうか?

 さて、OPT100以降から登場した「Hubポートの設定」メニューであるが、OPT100のそれは、搭載されている米Micrel Incorporatedの「KS8995M」で設定できる機能をそのまま並べたといっても良いものだったため、搭載スイッチが変わればその点が変わるかと思ったら、案外と似た構成になっているのはちょっと驚きである。

 ただ、例えばQoS設定(画面19)は一見細かい設定が可能なようであるが、実はOPT100とそれほど変わらない点や、速度制限設定はかえって機能が減っている(画面20)、ポートベースVLAN設定(画面21)ではグループ数が減っている、ブロードキャストストーム保護設定(画面22)では設定方法自体が異なっているといった違いが散見される。

 ミラーリング設定(画面23)についても、送受信両方のミラーリングはできないなど、微妙に設定項目が異なっており、機能的に差がないのはポート設定(画面24)位のものである。このあたりは、搭載しているインテリジェンススイッチの機能の違いに起因するもので、やむをえない部分はあるが、もっと高次元の話をするならば、たった4ポートしかないコンシューマ機に求められるスイッチの機能というのがまだ定まっておらず、結果としてスイッチの持つ機能をそのまま設定できるようにしている「だけ」という感じではある。

 もっともこのあたりは、メーカーとしても現在はユーザーからのフィードバックを待っているのかもしれない。今後こうした機能が本格的になってくれば、またこのあたりも整理されてくるだろう。そのほかの機能としては、スタティックルーティング(画面25)が多少異なる程度で、あとはOPT100とほぼ同様と考えて問題ないだろう。

画面19
もっともポートベースQoS以外に802.1pのタグベースQoSも可能なあたりは、新機能ではある
画面20
OPT100ではQoSに連動して制限速度を決められたので、それから考えると多少機能ダウンである
画面21
OPT100では8グループの設定が可能。ただそれが必要かといわれると、かなり疑問ではあったりするが
画面22
OPT100では、保護対象のポートを指定して、保護レートでの指定となっている
画面23
OPT100では、送受信別にミラーリングのポートを指定できるようになっており、これは残念ながら機能ダウン
画面24
細かく指定はできるが、現実問題としてここで強制的に設定を変えるべきケースはあまり思いつかない
画面25
PPPoEを2セッション別々にルーティング設定できるあたりがちょっと新しいが、それ以外はほとんど変わらない

依然搭載されるのはSH-4

 では次に、本体を分解して内部をのぞいてみよう。OPT90/100と比べてケースが大型化されたこともあり、基板自体はかなり大きくなっている。この結果もあり、ゆったりしたパーツ配置となっている(写真07)。ただ、100BASE-TXが最高速だったOPT90/100に対し、OPT-GFiveでは1000BASE-Tを扱う関係で高速な信号のハンドリングが必要とあってか、基板表面はグランドを広くとったパターンになっている。とはいえ、実装面積が増えた関係もあって、裏面に配置されたパーツは1つだけ(写真08)であり、幾分シンプルな印象を受ける。

 メインとなるプロセッサは、OPT100同様にルネサステクノロジの「SH-4(SH7551R)」である(写真09)。“BP240”の文字からもわかる通り240MHz駆動で、このあたりもOPT100とまったく同じである。このSH-4に接続されるメモリはWinbondの「W986432DH-6」である(写真10)。166MHz/64Mbit SDRAMで、基板裏面に配される。また、ブート用のFlash Memoryには東芝セミコンダクターの「TC58FVT160AFT-70」が採用されているが(写真11)、これはOPT100と同じだ。

写真07
基板の表面。チップの数は多くない。プロセッサとスイッチにはヒートシンクがつけられている
写真08
基板の裏面。こちらにはチップは実装されていない
写真09
ちなみに入力クロックは20MHzで、この12倍速として動作する
写真10
OPT100はSAMSUNGのK4S643232F-TC60を使っていたが、容量/速度ともに同じで、要するにTSOPIIのパッケージの64Mbit/166MHz品なら何でも良いのだろう

 さて、OPT100と同じなのはここまでで、ここからはOPT-GFive独自の構成となっている。まずWAN側ポートのギガビットイーサネットコントローラとしては、台湾Realtekの「RTL8110S-32」が搭載され(写真12)、その先にトランスフォーマーとして台湾LANKom Electoronics Co.,Ltdの「SQ-H40B」(写真13)を挟んでWANポートに繋がっている。ちなみにSH7551R自体はギガビットイーサネットコントローラを内蔵しないため、LAN側のコントローラとしてもやはりRTL8110S-32とSQ-H40Bが1個ずつ用意されている。

 一方、LAN側の中核をなすのは台湾ASIX Electronics Corpolationの「AX88655AB」である(写真14)。5ポートのGbE MACとスイッチを内蔵した製品で、9,000/12,000バイトのジャンボパケットの対応や、QoS/VLANなどの機能も十分に備えている。実のところ、先のHub設定メニューはこのAX88655ABに合わせて設定項目が変更されており、これが必ずしもOPT100に搭載されていたKS8995Mと一致していないため、メニュー項目の詳細が微妙に変わるといった状態になっているわけだ。

 さてそのAX88655ABの先には、米MARVELLのシングルポートPHYである「Alaska 88E1111(写真15)が接続され、さらに台湾Bothhand Enterprise Inc.の「LAN-MATE LA4S109」(写真16)経由でLANポートに接続されているという具合だ。

写真11
16Mbit/70nsのフラッシュメモリ
写真12
“-32”でわかる通り、32bit PCIで接続されるGbE MAC/PHYを統合した製品。最近ではPCのマザーボードによく搭載されており、安価な製品なのに「ギガビットイーサネット搭載」と書いてあると、大体はこのチップが載っていたりする
写真13
このチップも比較的メジャーな製品。もっとも最近はトランスフォーマーとRJ45コネクタ、シールドケースが一体化した製品も多いので、それほど頻繁に見かけるわけではないが
写真14
OPT100のときにはRTL8139C+→スイッチの間にPHYは挟んでいなかったが、今回無理やりAlaskaを挟んだのはRTL8110S-32にMACの出力をそのまま出すオプションがなかったためと思われる
写真15
Single-Chip GbE PHYでは定番のAlaskaシリーズ。最近はPHY内蔵MACが増えてきたので、あまり見かけないが
写真16
同社の製品ページにこの製品は記載されていないが、型番から考えれば「LAN-MATE LA1Sxxx」シリーズの4ポート版と考えられる

 これらをまとめたのが図1である。2つのRTL8110S-32を接続するPCIバスが33MHzか66MHzかは外からはわからないが、66MHz動作の場合バスマスタデバイスを1つしか搭載できないことから、33MHz動作であろうと推定される。

図1:SuperOPT-Gfive内部構成図(筆者推定)

確かにOver 100Mbps!

 ということで、お待ちかねのスループット測定である。せっかく、ギガビットイーサネットポートを積んでいるわけで、100Mbps超えは当然期待したいところである。実際、公称240Mbpsなのだから、それなりに期待したいところではある。特にPPPoE環境でどこまで引っ張れるかは非常に興味あるところだ。ただ気になるのはCPUが依然として240MHz駆動のSH-4、つまりOPT100と同じというあたりは、ちょっと不安にさせる。

 実際のテストであるが、今回はギガビットイーサネットとあって、例えばPPPoEのテストをするにしてもフレッツ・スクウェアのスピード測定では、光PONの速度(100Mbps)がボトルネックとなってしまい、また実際には回線状態によってこれをはるかに下回る結果が出ることがある。このため外部回線のテストは中止し、今回はすべてLAN内で行なうことにした。

 また機材に関しても、今回はハイスループットの環境が必要なので、いつもとは異なる構成にした。図2と表1にテスト環境をまとめたが、要するにCPU性能を思い切り高くすることで、力技でスループットを上げようという構成である。ちなみにサーバー側はWindows XP ProfessionalとSlackware 10の両方を用意したが、前者はPPPoEを使わないローカルサーバーとしてのスループット測定に、後者はPPPoE環境の測定に利用した(*1)。

 ついでに書いておけば、サーバー用のAOpen AX4SPE-ULは、オンボードでギガビットイーサネットコントローラを搭載している(RealtekのRTL8110S-32)。ところがこれをWindows XP環境で使う分には問題なかったのだが、Slackware環境(当然ドライバはRealtekのサイトから入手したRTL8110S用のものを使っている)では、転送中にハングアップが100%の確率で発生してしまうため、やむなくこれを無効とし、Intel Pro/1000 MTカードを追加した。

*1:Slackware環境の方は、Apache 1.3.1とかProFTPD 1.2.9といったちょっと古めのバージョンになっているが、これはSlackware 10の標準のままである。

図2:テスト環境
表1:テスト環境
サーバー クライアント
CPU Pentium4/3.40GHz(Prescott) Pentium4 560
マザーボード AOpen AX4SPE-UL(Intel865PE) Intel D925XCV(Intel 925X)
メモリ PC3200 DDR SDRAM 512MB×2 PC2-4300 DDR2 SDRAM 512MB×2
ビデオカード ATI RADEON 9600 XT nVIDIA GeForce PCX 5750
HDD Seagate Barracuda 7200.7 80GB Seagate Barracuda 7200.7 80GB
NTFS EXT3 NTFS
LANカード オンボードGbEコントローラ Intel Pro/1000 MT
OS Windows XP Professional 日本語版+SP1a (IIS) Slackware 10 (Kernel 2.4.26, Apache 1.3.31, ProFTPD 1.2.9, RT-PPPoE 3.5) Windows XP Professional 日本語版+SP1a (IIS)

 またMTUに関しては、標準(1,518バイト)のほか、9,000バイトのケースも測定した(画面26,27)。ジャンボパケットを利用することで、どの程度性能が向上するかを確認したかったからだ。ただ、OPT-GFiveは最大送信サイズが7,164バイトなので、こちらは7,164バイトで実施している。なお、測定は以下の手順を取っている。

・http : Opera 7.53(英語版)を使い、IISもしくはApacheからダウンロード
・ftp get : Opera 7.53を使い、IISもしくはProFTPDからダウンロード
・ftp put : コマンドラインのftpを使い、IISもしくはProFTPにアップロード

 なんでOperaを使ったかというと、テストが極めて簡単(画面28)というのが最大の理由で、2つ目には同じファイルをダウンロードする場合、IE 6.0を使うよりも性能が高かったということも挙げておきたい。ただ、ftpでのPutはOperaから不可能なので、これに関してはコマンドラインのftpを使うことにした。なお、すべての転送テストは731.6MBのバイナリファイルを1つ転送するものとし、全ケースで5回転送を行なってその平均値を示している。

画面26
Intel D925XCVにオンボードで搭載されているMarvell 88E8050 ギガビットイーサネットコントローラのプロパティ。フレームサイズを数値指定できる
画面27
こちらはIntel Pro/1000 MTのプロパティ。ちなみにRTL8110Sの場合、ジャンボフレームが「有効」か「無効」かしか選べない
画面28
Operaの場合、転送状態をこの“Transfer”ウィンドウで表示でき、再転送も“Retransfer”ボタン一発、しかも転送速度がログで残ると良いこと尽くめのOpera 7.53
●直結状態

 さて前置きが長かったので、早速結果を見てみよう。まずは直結(図2の点線の接続形態)におけるスループットである。結果は表2に示す通りで、遅いケースでも36MB/sec前後、もっとも高速なケースでは60MB/sec近い数値が出ている。とりあえず100Mbps(=12.5MB/sec)は軽く突破しているので、テスト環境としては十分であろう。またこの環境では、ジャンボパケットを使うことで最大10%程度の性能向上が得られており、それなりに意味があることがわかる。

表2:直結(単位:KB/sec)
Normal Jumbo
(1,512バイト) (9,000バイト)
サーバ→
クライアント
http 36,140.5 37,871.0
ftp get 37,366.3 37,952.4
ftp put 44,314.7 45,819.8
クライアント
→サーバ
http 36,076.9 38,637.6
ftp get 36,918.0 38,635.7
ftp put 53,277.1 59,630.2

●ローカルルータ状態

 次は図2の実線のように、間にOPT-GFiveを挟み込んだ状態である。結果は表3の通りで、さすがに大きく性能が落ちるが、それでも最悪のケースで89Mbps程度、最高で160Mbps程度となかなか高い性能を示してくれることが確認できた。なぜコマンドラインのftp putだけが高速かまでは今回追求できなかった(ちなみにコマンドラインでftp getを行なってみたが、概ねOperaでのftp getと同じ成績だった)が、いろいろと癖はありそうだ。

表3:ローカルルータ(単位:KB/sec)
Normal Jumbo
(1,512バイト) (9,000バイト)
NAT サーバ→
クライアント
http 13,037.3 12,984.7
ftp get 13,004.4 13,077.9
ftp put 17,957.6 18,007.6
クライアント
→サーバ
http 12,964.8 13,000.9
ftp get 12,996.9 13,053.7
ftp put 17,174.8 17,227.9
NAT+
パケット
フィルタリング
サーバ→
クライアント
http 11,051.8 11,001.4
ftp get 11,174.5 11,344.3
ftp put 19,988.6 19,912.3
クライアント
→サーバ
http 11,101.1 11,226.4
ftp get 11,270.9 11,330.4
ftp put 20,324.1 20,327.7

●PPPoE直結状態
画面29

 ここまでサーバー側ではWindows XPを立ち上げていたが、ここからはSlackwareに切り替えてのテストである。まず、RT-PPPoEに含まれるPPPoEサーバーをKernel-Mode PPPoEで実行し(*2)、一方クライアント側ではネットワーク接続の「広帯域の接続」を使って、直接PPPoEサーバーへの接続させた。図2の構成で言えば、再び破線に戻るわけだ。

 この状態での転送速度を確認した結果が表4の通りである。ftp putが異様に落ち込んでいるわけだが、これは別に測定ミスでも何でもなく、まさしくこの通りの性能になっている(画面29)。また全般的に性能は落ち込んでいるわけだが、この最大の理由として挙げられそうなのが、RT-PPPoEサーバーの遅さである。RT-PPPoEパッケージに付属するmanページでも“Note that pppoe-server is meant mainly for testing PPPoE clients. It is not a high-performance server meant for production use.”(pppoe-serverは主にPPPoEクライアントのテストのためのものである。製品として利用するための高性能なものではない)という注意書きがあるほどだ。一応、今回はパッケージとしての遅さをCPU性能で押し切ろうとしたわけだが、どうもWindows XPのPPPoE クライアントとの相性はうまくないようである。もっとも、それでもノーマルサイズで56~58Mbps、ジャンボパケット利用時には84~88Mbpsのスループットは出ているので、テストには使えるだろう。


*2:実はこの環境を立てるまでに無茶苦茶時間がかかったのが、このレビューが遅れた最大の要因である。


表4:PPPoEサーバ直結(単位:KB/sec)
Normal Jumbo
(1,512バイト) (9,000バイト)
サーバ→
クライアント
http 7,305.4 11,000.2
ftp get 7,048.4 10,538.4
ftp put 66.7 66.5

●PPPoE+ルータ

 では表4の環境にOPT-GFiveで接続するとどうなるか? を試した結果が表5である。結果を見ると、なんと直結よりも性能が出ている。ftp putでこそ80Mbpsそこそこだが、http/ftp getでは100Mbpsを超える性能をたたき出しており、OPT-GFiveの性能の高さが証明された形だ。

 というよりも、Windows XPのPPPoEクライアントが無茶苦茶にRT-PPPoEサーバーと相性が悪かったということなのだと思うが、それは置いておいてもPPPoEセッションで100Mbpsを達成している以上、現在日本でコンシューマ向けに提供されているブロードバンドサービスをカバーするに十分な性能であることは間違いないだろう。

表5:PPPoEサーバ+ルータ(単位:KB/sec)
Normal Jumbo
(1,512バイト) (9,000バイト)
NAT+
パケットフィルタリング
サーバ→
クライアント
http 14,225.3 14,223.2
ftp get 13,205.9 13,180.9
ftp put 10,581.3 10,349.0


性能で差別化を図るSuperOPT

 このところ、ルータの性能競争も一段落してしまった。というか90Mbpsを超えた時点で、そろそろ接続に利用しているイーサネットがボトルネックとなってくるわけで、ルーティング性能が100Mbpsを超えていても回線は100Mbpsが上限では意味がないからだ。

 SuperOpt-GFiveは「この状況を一変させてしまった最初の製品」になるのかもしれないという予感が筆者にはある。現状ではSupetOPT-GFiveの性能は間違いなくNo.1である。ただ極端なことを言えば、従来ルーティング性能を競ってきたルータのLAN/WAN側にギガビットイーサネットコントローラさえ入れれば、再びスピード競争を始めることができるわけで、あとはマーケティング的にそれでいけそうという判断をどこかが下せば、再び数字の競争が始まりそうである。それが良いことか悪いことか、現時点でははっきりしないが……。

 もちろんそんなことはわかった上で、マイクロ総合研究所はSuperOPT-GFiveを投入したのだと思う。VLANやQoS、UPnPだけでは差別化に十分ではないこと(UPnPはともかく、コンシューマ用途でVLANやQoSが使われるケースはまだ少ないだろう)と、何よりOPTシリーズやSuperOPTシリーズは、常にその時代における最高速ルータの1台というポジションを常に獲得してきたというアイデンティティを保つために、ギガビット化が必須だったのではないか? と筆者は考える。

 直販サイトでの価格は、31,290円。ちょっと高めではあるが、無茶苦茶高いというほどではないし、性能や機能を考えればリーズナブルな価格と言える。誰にでも必要な性能や機能ではないが、マイクロ総合研究所がSuperOPT-GFiveに掛ける心意気や良し! と思える人にはぜひ買っていただきたい製品だと筆者は感じる。



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□マイクロ総合研究所 NetGenesis SuperOPT-GFive 製品情報
http://www.mrl.co.jp/catalog/nw/mr-optg5.htm

(2004/09/03)
槻ノ木隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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