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~4,000円台半ばの低価格・高スループットルータ~
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~実効スループット88Mbpsを謳う高速ルータ~
[2002/05/29]
槻ノ木隆の
NEW PRODUCTS IMPRESSION

プラネックスコミュニケーションズ BRL-04AR
~4,000円台半ばの低価格・高スループットルータ~

実売価格4500円でスループット90Mbps!

 プラネックスコミュニケーションズの「BRL-04AR」は、90Mbpsという高いスループットを持ちながら、4,500円前後の低価格で発売されたルータである。

 アイ・オー・データ機器の「NP-BBRP」や、NTT-MEの「BA6000」など、5,000円前後でかつFTTHに対応できるスループットを売りにする製品が見られるようになったが、本製品はコストパフォーマンスの高さが注目に値する。この価格で本当に90Mbpsに迫るスループットが出せるのか、機能的にはどうなのか、などが気になる人も多いだろう。さっそく試してみたい。

写真01
上面のデザインが特徴的な本製品。サイズは161.5×101×35mm(幅×奥行×高)と比較的コンパクト
写真02
同社らしくWAN/LANポートの各状態を把握できる前面LED。リセットスイッチが前面に搭載されている点は珍しい

 外観はこれまでのプラネックス製品らしい青い筐体のものである(写真01)。単なる立方体ではなく上面に段差が付いたデザインになっているほか、ロゴマークも製品ブランドである「BroadRunner」をイメージされたものが大きくあしらわれているのが特徴的だ。

 フロントパネルは同社のこれまでの製品同様、WAN/LANの各ポートの状態が分かるよう配置されている(写真02)。ただ、パネルの文字には丸ゴシックを利用しており、少々ファンシーな感じになっている。

写真03
背面はWAN/LANの各ポートとACアダプタコネクタのみ。WAN/LANの全ポートがAuto MDI/MDI-Xに対応
写真04
プラネックス製品といえば「大型ACアダプタ+ショートケーブル」の構成がおなじみだが、本製品は小型のACアダプタとなりショートケーブルは付属しない

 背面はさすがにシンプルで(写真03)、ACアダプタコネクタとWAN/LAN×4ポートが並んでいる。

 付属品はACアダプタ(写真04)やLANケーブルのほか、通常のマニュアルとチュートリアルが書かれたA4版の「プラネックスインターネットスタートガイド」といったところだ。


シンプルで分かりやすい設定画面

 では、設定画面を見ていこう。設定はWebブラウザで行なう一般的なもので、左のフレームにメニュー、右のフレームに各設定画面という配置になる(画面01)。

画面01
稼動状況や各種パラメータがひと目でわかる
画面02
接続方式の選択により、下半分の項目が変化する
画面03
必要最低限の設定項目にまとめており、特に初心者にはわかりやすいだろう
画面04
LAN設定項目も少ない。ただし、必要な項目はほぼ網羅しているので、困ることはほとんどないだろう

 WAN側の設定は、固定IP、DHCP、PPPoEと一般的な接続方法をサポートしている(画面02)。PPPoE接続の設定では、IPアドレスの取得方法も指定可能なほか、MSS(MTU)値の変更、オンデマンド接続などをサポートしており、必要な機能は備えているといって差し支えないだろう(画面03)。

 LAN側の設定は必要最低限のもので、LAN側IPアドレスやゲートウェイアドレス、DHCPの割り当て範囲を指定できる(画面04)。DHCPの静的割り当てにも対応しており、リース時間など細かい設定はできないものの、個人利用において困ることはほとんどないだろう(画面05)。

画面05
MACアドレスを登録することで静的にIPを割り振る機能を持つ。設定はわかりやすい
画面06
名称の統一が図られていないため、他社製品からの乗り換えユーザーは少しとまどう恐れがある
画面07
ポート転送の「有効/無効」を切り替えができるルータはあまりみかけない
画面08
非常にシンプルなフィルタ機能。片方向のみでは物足りない

 NATの設定はシンプルだが、機能名の表現で多少困惑するかもしれない(画面06)。同社製品を使い慣れている人なら問題ないが、いわゆる「DMZホスト機能」が「バーチャルコンピュータ」、「ポートフォワーディング機能」が「ローカルサーバ」という表現になる(画面07)。ポートフォワーディングで設定できる内容はシンプルで、届いたパケットのポート番号と転送先のIPアドレスを指定するのみだ。各設定は[有効/無効]が切り替えられるので、必要に応じて適宜ポートを開放する人には便利だろう。

 さて、本製品のセキュリティ機能に目を向けてみたい。まずはパケットフィルタリング機能だ(画面08)。画面を見る限りでは、よく見かけるパケットフィルタリング機能と変わらないように思えるが、実は「LAN→WAN」方向の設定しかできない仕様になっている。WAN→LAN方向の流れに対応できるセキュリティ機能は、別画面に用意されている「ステルスモード」(画面09)程度で、外部からのセキュリティ面については少々心許ないと言わざるを得ない。

画面09
ステルスモードは、icmpの反応を行わないだけの機能しかないほか、WAN側からルータにログインする機能も持っており、設定によってはセキュリティが甘くなる
画面10
マニュアルによればwww.dyndns.orgのDynamic DNSのみのサポート

 このほかの機能としては、かなりお馴染みの機能となりつつあるが、DDNSへの対応が挙げられる(画面10)。本製品ではDynDNS.orgのサービスに対応している。


RDC製のRISCプロセッサを搭載

 続いては、内部構造をチェックしてみよう。メインの基板はかなりシンプル(写真05)で、チップ数もそれほど多くない。背面に関しても、大半がグランド(アース)になっており、部品も実装されていない。

写真05
最近の小型製品としては、基板面積のわりに実装チップ数は少ない印象を持つメイン基板
写真06
裏面にはチップ・パーツ類は一切搭載されておらず、配線パターンのみ
写真07
本連載では初登場となるRDC社のR2020。シンプルなネットワークプロセッサである
写真08
IC PLUS社のPHY層を含む5ポートスイッチ「IP175A」

 メインとなるプロセッサは、台湾RDC社のR2020(写真07)だ。台湾RDCといえば、2001年頃の低価格ルータに同社のR8820シリーズが使われることが多かったが、こちらは80186互換のRISCプロセッサというちょっと不思議な代物。内部は5ステージのパイプライン構成となっており、独自のRISC命令のほか、80186の16bit x86命令を処理できるようになっている。メモリサイズは最大1MB、処理性能はというと、最短だと1クロックで処理できる命令もあるから、カタログスペック的には40MIPS程度となる。しかし、これを使ったルータ製品のスループットが6~7Mbpsで横並びになっているあたりからも、それほど性能が高くないことは想像できる。

 さて、そのR2020だが、なんとこのR8820のハイスピード版のようだ。基本的なコアの構造は全く同一のようで、主な違いは

  • メモリインターフェイスがPSRAM(Pseudo SRAM)→SDRAMに
  • 最大メモリ容量が1MB→16MBに
  • PCMCIAのバスインターフェイスを内蔵
  • 8KBのキャッシュを内蔵
  • 25MHzの入力で100MHz動作(R8820は40MHz入力で40MHz動作)
  • 10/100BASE-T MACを2ポート内蔵

といったあたり。R8820を高速・高集積化したといったあたりだろうか? メモリインターフェイスの高速化やキャッシュの内蔵、及び周辺デバイスを内部の高速ローカルバスで接続することにより「システム全体の性能が大幅に引き上げられた」と同社のページでは説明されているが、それがどの程度のレベルのものなのかは未知数だ。

 ちなみにプロセッサ脇には、25MHzの水晶発振子が搭載されており、データシートによれば、入力クロックが25MHzの場合、25/50/75/100MHzの動作が可能となっている。ただ、不思議なのはSDRAMが143MHzのものを使っていること。前出のSpecification Sheetを読む限り、コア周波数とメモリコントローラは同一周波数で駆動されるので、仮に100MHz駆動としても少しマージンが大きすぎる。その理由としては、これより遅い製品が入手できないなど、単に入手性の問題とも考えられる。

写真09
143MHz駆動の16MビットSDRAM、TurnKeys社の「TK57V161610DTC-7」
写真10
4Mビット(512Kバイト)、90nsのフラッシュ

 LAN側には、PHY層を含むスイッチコントローラとして、台湾IC PLUS社の「IP175A」(写真08)が搭載されている。VLAN機能も備えているようだが、本製品では使用されていない。

 このほかのチップは、16Mビット(2Mバイト)のSDRAMであるTurnKeys社の「TK57V161610DTC-7」(写真09)、4Mビットのフラッシュである台湾Macronixの「MX29LV400BTC-90」(写真10)が搭載されている。


下りのスループットは優秀だが上りがもう一つ。ただし実際の利用には支障なし

 それでは、最後にスループットの計測を行なうことにしたい。本製品の公称スループットは「下り:90.90Mbps、上り:80.40Mbps」となっており、上り/下りともにかなり高速である。果たして4,000円台のルータでもこの速度が出せるか気になるところだ。環境は本連載の過去のテスト同様、図1/表1のとおりである。


表1、図1:テスト環境
 
  サーバー(WAN1側) クライアント
CPU AMD Athlon MP 1.2GHz×2 AMD Athlon XP 1700+
マザーボード TYAN TigerMP(AMD760) EPoX EP-8K3A+(Apollo KT333)
メモリ Registerd DDR SDRAM 512MB(256MB×2) PC2700 DDR SDRAM 512MB(256MB×2)
HDD Seagate Barracuda ATA IV 40GB Seagate Barracuda ATA IV 80GB(NTFS)
LANカード メルコ LGY-PCI32-GT Intel 21143搭載LANカード
OS RedHat Linux 9(kernel 2.4.20-8smp,Apache 2.0.40-21,VSFTPD1.1.3-8) Windows XP Professional 日本語版+SP1(IIS 5.1)
RAMディスク 128MB 128MB

 まずLAN環境でのテスト結果を表2に示したが、下りに関してはいずれも86Mbps以上の好成績を出している。直結状態でも90Mbps弱の環境なので、この成績は充分すぎるものだ。一方で上りの速度は、公称値とは大きく離れたものとなってしまっていて残念である。


表2:計測結果(LAN)
 
  プロトコル 転送条件 速度(Mbps)
直結状態 ftp サーバー → クライアント 89.87
クライアント → サーバー 82.27
http サーバー → クライアント 89.60
クライアント → サーバー 73.27
プラネックス
コミュニケーションズ
BRL-04AR
ftp サーバー →
クライアント
パケットフィルタリングなし 87.20
パケットフィルタリングあり 86.67
パケットフィルタリングあり+NAT 86.67
クライアント →
サーバー
NATあり 54.29
NAT+パケットフィルタリングあり 52.74
http サーバー →
クライアント
パケットフィルタリングなし 86.40
パケットフィルタリングあり 86.13
パケットフィルタリングあり+NAT 86.93
クライアント →
サーバー
NATあり 49.19
NAT+パケットフィルタリングあり 48.81

 次いでWAN環境での結果を表3に示す。なかなかの数字で、実際の利用にも差し支えはない。LAN環境では低めに終始した上りに関しても、実際に使ってみるとほぼ回線のピーク一杯という感じだ。筆者の契約プロバイダはNTT-MEのWAKWAKざんまいBファインで、回線はBフレッツのニューファミリータイプ。公称値はともかく、実際の利用にはほとんど支障がないレベルの性能であることは確認できた。


表3:計測結果(WAN)
 
  平均値(Mbps) 最大値(Mbps)
フレッツ・スクウェア 56.82 61.15
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Upload 7.35 8.87

メインルータとしては心許ないが価格は魅力

 以上、本製品を試用しての率直な感想は、「価格の割りはまずまずの製品」という印象だ。スループットに関しても実用上問題ないレベルになっており、これで不満が出るのはよほど通信状態のいい場合だけだろう。

 ただ機能面については、セキュリティに関してやや不満が残る。IN方向のパケットフィルタリングが付いていないことに加え、最近ではステートフル・パケット・インスペクションなど高いセキュリティ機能を誇る製品が登場しているが、こうしたプレミアを省いた分、低価格にせざるを得なかったのではないかと思うほどの内容である。

 セキュリティ面が不安な以上、メインで使うルータとしては心許ないと言わざるを得ないが、価格は非常に魅力的だ。接続するクライアントが1台のみで、そちらにはパーソナルファイアウォールを導入している、という個人ユーザーにはお勧めできる製品だし、2台のルータを使った本格的なDMZ環境を作るさいの内側のルータとしても使えるだろう。もちろん、1台目のルータのトラブルに備えたバックアップ用としても気軽に購入できる。

 このように、メリット・デメリットを理解したうえで利用するのであれば、本製品ほどコストパフォーマンスに優れた製品はないと、筆者は考える。



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□プラネックスコミュニケーションズ BRL-04AR 製品情報
http://www.planex.co.jp/product/broadlanner/brl04ar.sham

(2003/08/26)
槻ノ木隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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