BB Phoneを実演するソフトバンクの孫社長

BB Phoneのロゴデザイン

通話料金の比較。国内では最低水準となる通話料金を設定した

　ソフトバンクグループ、BBテクノロジー、ヤフーの3社は、かねてよりウワサされていたブロードバンド回線を使用した電話サービス「BB Phone」を正式に発表した。12月をメドにYahoo! BB会員向けに試験サービスを提供、2002年春ごろには正式サービスを開始する。通話料金は日本国内一律で3分7.5円、米国向けも3分7.5円と国内最低水準の価格を設定した。

　BB Phoneは、Yahoo! BBのブロードバンドインフラとVoIP（Voice over IP）技術を組み合わせた電話サービス。Yahoo! BB会員がサービスを利用する場合には、専用の追加ターミナルアダプタを利用することで一般的に使われている電話機がそのまま利用できる。電話番号やダイヤル方法などは通常の電話とまったく同様。特別な設定なども不要だ。

　通話品質も、Yahoo! BBが全国に敷設したギガビットネットワークとManaged QoS（Quality of Service）を活用するため、高水準なものになるという。

　料金は、月額基本料金が390円、通話料は日本国内および米国向けは一律3分7.5円、そのほかの国際電話も世界231カ国に最低水準の価格で提供する。なお、BB Phoneユーザー間の通話は無料で提供される。電話機を接続するターミナルアダプタのレンタル料金は月額140円、買い取りの場合は6720円。このほかに初期登録費用3980円がかかる。なお、110や119といった3桁の番号、携帯電話やPHSなどはBB Phoneのサービス対象外となり、ユーザーが契約している電話会社の所定の通話料がかかる。

　試験サービスへの申し込みは、Yahoo! BB会員向けのWebページより行なう。試験サービスを通じて実用レベルのサービス品質、運用保守などの技術的特性、マーケットの要望調査などを実施するという。

　発表会でBB Phoneの説明を行なったソフトバンクの孫社長によれば、今回設定した価格でも十分に利益を出せる。バックボーンなどは、Yahoo! BB事業と共有するため大きな追加投資が不要、NTTに支払う回線接続料もどこからどこへかけるかに左右されるものの、概ね4円から5円程度に収まるという。

　バックボーンとして、全国の1143（12月18日時点）のNTT収容局へ接続したネットワークを使用する。大半が光ファイバを使用。これはNTTから借り上げたダークファイバに自前の機器を取り付けて使用しているという。2002年春には収容局数を1200程度まで増やす計画だ。総投資額は、Yahoo! BBなどで共有する部分も含めて500億円程度。

　専用のターミナルアダプタは、BB Phone用のオリジナル製品。ソフトバンクが設計・開発に深く関わっており、ベースとなるアイデアは孫社長自らが2年半ほど前に出したものだという。

　製造メーカーは明らかにしていないが日本製ではない。大きさは、ADSLモデムを一回り大きくした程度で4つのポートを搭載している。配線は、まず収容局（NTT）につながっているモジュラージャックに接続したケーブルをスプリッタで分岐。一方をADSLモデム、もう一方をターミナルアダプタに接続する。従来、スプリッタからはモデムと電話機につながっていたが、電話機をターミナルアダプタに置き換えるわけだ。

　ADSLモデムのイーサポートもターミナルアダプタと接続する。PCや電話機の接続先もターミナルアダプタ。つまり、収容局（モジュラージャック）、ADSLモデム、PC、電話機のすべての中心にターミナルアダプタが位置する。

　ターミナルアダプタは、ユーザーが電話をかけようとすると相手先電話番号をもとにADSLモデム経由でIP電話として発信するか、通常の電話として発信するかを判断する。通常はIP電話となるが、携帯電話やPHS、110や119といった3桁の番号にかける場合はユーザーが契約しているNTTなどの電話サービスを使用した発信・通話となるわけだ。

　なお、なんらかの原因でYahoo! BBのバックボーンなどにトラブルが生じている場合も、自動的に通常の電話網を利用するように切り替わる。いざというときに電話が利用できないといったケースは生じないという。

　ターミナルアダプタの仕入れ価格などは明らかにしていない。Yahoo! BBで使用するADSLモデムの場合、ソフトバンクからヤフーを経由してBBテクノロジーがユーザーに提供していたが、ターミナルアダプタについてはどういったルートで提供するかは現時点では決まっていない。

電話を接続するために使用するターミナルアダプタ。ADSLモデムより一回りほど大きい

背面にあるインターフェイス類。モジュラージャック、ADSLモデム、PC、電話機を接続する

ターミナルアダプタの配線図

　通話で使用するパケットは、QoSを使用して通常のデータよりも優先して転送される。これは、ユーザーの足回りとなるADSL回線上でも同様。もっとも、現在Yahoo! BBのユーザーが得られている平均帯域は3.5Mbps。その中では音声用に使用する帯域は誤差の範囲に収まる程度で、ほとんど影響はないという。

　孫社長によれば、BB PhoneのライバルはNTTやKDDI。NTTなどの電話網は高価な交換機を多数使用しており、それを維持・運用するための人件費もかかる。また、他社がサービスを展開しているVoIPサービスについても、バックボーンにインターネットを使用するため、パケットの伝送遅延やロスなどの影響で音質に影響が出やすいという。

　これに対し、BB PhoneではバックボーンにYahoo! BBと共有する専用のネットワークを利用。低価格でサービスを提供できる上に、音質も一般加入電話と比べて遜色ないレベルのものが提供できる。PCを使用しない、普通の電話として魅力あるサービスが提供できる点がポイントだとアピールした。

　利用者の見込みについては、具体的な数値を述べていない。もっとも、現在Yahoo! BBを利用しているユーザーの大半が利用したいと考えるサービスに仕上がったと自信を見せる。当面はYahoo! BB（ADSL接続サービス）とセットでの利用が前提となるが、今後はBB Phoneのみでの提供も検討し、将来的にはYahoo! BB、BB Phoneともに同社が展開する事業のハシラにしていく考えだ。

　試験サービスでは、技術的な検証のほかに、事務手続きを行なう体制も検証する。孫社長によれば、Yahoo! BBで学習した経験を活かして、申し込みの受付やユーザーへの情報提供、スムーズな導入処理といった事務手続き面でもユーザーに迷惑をかけることがないよう十分に検証した上で、本サービスを開始したいという。

従来の電話網やIP電話との比較。BB Phoneでは多数の交換機やパケット遅延・ロスが生じるインターネットを使用しない

通信サービスは音声だけでも5兆8393億円のマーケット規模がある。ここでBB PhoneがIP電話という新しい切り口で革命を起こすという

ソフトバンクのブロードバンド分野でのプラットフォーム展開

□ニュースリリース（ヤフー）
http://docs.yahoo.co.jp/info/pr/release/2001/1218.html
□関連記事「DSL契約者数でYahoo! BBがNTT東日本と並びシェアトップに」
http://bb.watch.impress.co.jp/news/2001/12/14/ybb2.htm

（笠井 康伸）
2001/12/18 17:48