メルコは総合カタログの2月号で「“スループット”の表記方法にご注意!」と題して、実際の環境に即した実測値として自社とコレガのルータの測定値を公表した。これに対し、コレガはその表記について「本来の性能が発揮できていない」とWebサイト上で反論を行なった。論点は測定方法の違いによるもの。
メルコのカタログでは、自社ルータ2機種、コレガ製2機種について、メルコが測定した実効スループットのグラフが掲載されている。これによるとWAN側のポートを10BASE-Tに固定して測定した結果と断った上で、メルコの「BLR-TX4」は9.2Mbps、コレガの「BAR SW-4P Pro」は8.5Mbpsと掲載されている。そしてコレガのカタログ掲載値「65Mbps」を挙げて「数字が大きいから速いと勘違いしないように」と結んでいる。
これを受けて、コレガはWebサイトにメルコのカタログに対するコメントを掲載した。WAN側を10BASE-Tにして測定したことについて「BAR SW-4P Proの本来の性能を発揮していない」として、あらためて「BAR SW-4P Pro」のWAN側が100BASE-TXに対応していることや、各種テストで優位な結果を出していることを主張した。最後の1文には「お間違いなくお選びいただきますようお願い申し上げます」と書かれている。
メルコによれば、総合カタログに10BASE-Tを用いた数値の掲載をしたのは、ユーザーのスループット値についての誤解を解きたかったからという。現在、数社のルータのカタログにはユーザーが利用した際には体感することのないテストパターンによる測定値が並んでいる。メルコはこのような実態に対し、ルータはテストパターンなどではなく実効値で選ぶこと、ADSLユーザーなど、ほとんどのユーザーはWAN側を10BASE-Tで接続しているため、その環境でのデータが“実効値”であるということ、そしてテストパターンと実効値は違うということもアピールしたい考えがあった。また、コレガのルータでWAN側を100BASE-TXにした場合の測定値を否定するつもりはないという。
両者の意見をまとめると、大部分のユーザーはADSLなど10Mbps未満の環境が多く、ユーザーが実際に利用する環境の数値を掲載したというメルコ。それに対して、光ファイバの普及などでWAN側が100Mbpsに移行した場合にも有効な性能をアピールするコレガということになり、直接対立するものではないことがわかる。
メルコのとった方法はユーザーが実際に使うことを想定したスループットを測定しており、大部分がADSLユーザーで最高8Mbpsの速度でしか使っていない現状をふまえると、100BASE-TX時の測定値は現在は意味をなさないことを証明したメルコに一定の評価ができる。しかし、これだけでルータを選んでしまうと、近い将来、光ファイバなどの高速サービスが普及した際に、ルータを買い換えるといった負担がユーザーに強いられることになる。
一方でコレガは問題となった「BAR SW-4P Pro」のスループットを発表当初から65Mbpsと表記していた。テストパターンでの測定結果と断わりを入れたとしても、実際の使用状態とはかけ離れた測定結果を表示することにユーザーの誤解がつきまとい、問題がないとは言えない。Broadband Watchの測定結果でも、26.371Mbpsのスループットが確認されている。
今回の一件をはじめとして、今後もルータのスループットに関する測定・表示方法の違いによる混乱は続くだろう。そして、ユーザーは、ルータ選択の際はスループット値の比較は慎重になる必要がある。できれば、第三者が同一条件で比較した数値を参考するのが望ましいが、そういった数値がなければ、測定値のそばに小さく書かれている条件をよく読んだり、実際に使っているユーザーの評判などをもとにするしかない。いずれにしても、メーカーは、ユーザーにわかりやすい数値で製品アピールをしてほしいものだ。
□カタログ(PDF形式・メルコ)
http://buffalo.melcoinc.co.jp/download/catalog/vol108/index.html
□コレガ「メルコ社カタログ掲載の「ルーターのスループット表記」について」
http://www.corega.co.jp/support/important/throughput.htm
□関連記事「コレガの高速ルータ「BAR SW-4P Pro」を実際にテストしてみました」
http://bb.watch.impress.co.jp/news/2001/11/19/sw4ppro.htm
□コレガ
http://www.corega.co.jp
□メルコ
http://www.melcoinc.co.jp
(正田拓也)
2002/01/15 20:53
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