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アセロス、802.11a/bのデュアル対応が3チップで実現できるチップセット

アセロス・コミュニケーションズの米国本社CEO、Richard Redelfs氏
 アセロス・コミュニケーションズの米国本社CEOであるRichard Redelfs氏が来日し、次世代無線LANに対応した同社のチップセットの詳細を説明。802.11bと802.11aの両方に対応できる「AR5001X」や第2世代の802.11a対応チップセットの詳細が明らかになった。

 3月にアセロスが発表したのは2.4GHz帯を使用する最大帯域11Mbpsの802.11b、5GHz帯で最大54Mbpsの802.11a、2.4GHz帯で最大54Mbpsの802.11gのすべてに対応したAR5001Xと、同社の第2世代の802.11a対応チップセット「AR5001A」、従来と比較して高集積化を実現したアクセスポイント用のチップセット「AR5001AP」の3製品。

将来的には802.11a/bのデュアルを2チップで

miniPCI用の基板に802.11a/bのデュアルを実装。中央にあるのがベースバンド部とMAC部を処理するチップ、その左側に縦に2つ並んでいるのが2.4GHzと5GHz用のRFチップだ
 無線LANを実現するチップセットは、一般的にLANのコントローラなどに相当するMAC部、信号の変調などを行なうベースバンド部、電波を受発信するRF部から構成される。ベースバンドで処理を行なう変調方式には、802.11bがCCK、802.11aと802.11gがOFDM、通信帯域は802.11bと802.11gが2.4GHz帯、802.11aが5GHz帯を使用する。

 AR5001Aは、OFDMとCCKの両方に対応したベースバンド部とMAC部を1チップで実現。これに2.4GHzもしくは5GHz帯に対応したRF用チップを組み合わせることで無線LANが実現できる。たとえば802.11bと802.11aのデュアル対応カードを作る場合、ベースバンドとMAC用に1つとRF用に2つ(2.4GHz用と5GHz用)の計3チップとなる。従来は、各規格ごとに個別に対応チップを使用していたためチップ数は4つ、ベースバンドとMACを別々のチップで実現した場合は6つとなり、PCカードで使われる面積の小さな基板などに実装する場合にはチップの数がネックとなっていた。

 ただし、802.11bと802.11gのデュアルを実現する場合でも、チップは3つとなる。これは、802.11gを実装する場合、ベースバンド部とRF部のインターフェイスに5GHz用を使用するため、同じ2.4GHz対応のRFチップが2つ必要になるからだという。

 Redelfs氏によれば、2.4GHzと5GHzの両方に対応したRFチップの開発計画は持っており、将来的にはデュアル対応であっても2チップで実現できるようにする計画だ。もっともMAC、ベースバンド、RF部をすべて統合した1チップソリューションについては、アナログとデジタルを同じチップ上に実装する必要があり、考えてはいるものの技術的には難しいという。

 なお、802.11g規格で使用する変調方式にはOFDMのほかに、Texas Instrumentsが推進しているPBCCもオプションで用意されている。しかし、アセロスはPBCCをサポートする計画はまったくないという。

 802.11g規格は現在策定段階で、もっとも早い場合2003年1月には規格が確定する見込みだ。この規格にPBCCが盛り込まれる可能性はあるもののオプションという位置付けで、実際にはほとんど利用される可能性はないとみているわけだ。

 また、Redelfs氏によれば802.11gの現行のドラフトが変更された場合、チップのインターフェイスを変えずに対応していくとしている。つまり、現在のチップに対応して設計しておけば、将来仮に802.11gの規格に変更が加えられても、チップ自体を入れ換えるだけで回路設計などはそのまま流用できるようにしていくということだ。

 すでにサンプルチップを出荷しており、量産は6月の予定。パートナー企業から、このチップを使用した無線LAN製品が登場するのは第3四半期ごろだという。チップセットの価格は、具体的には明らかにしなかったが39ドル以下になる見込み。

第2世代では周波数帯域の拡大と低消費電力化を実現

写真上がPCカード用の基板に第2世代の802.11a対応チップセットを使用して実装したもの。第1世代(写真下)を使用したものより、部品の点数が減っているのが分かる
 同時に発表された第2世代の802.11a対応チップセット「AR5001A」は、第1世代と比較して対応する周波数帯域の拡大や低消費電力化などが行なわれている。2.4GHzと異なり、5GHz帯では日本、米国、欧州で無線LANに使用できる周波数帯が異なっている。共通で利用できるのは5.15~5.25GHz帯のみで、これに米国や欧州では5.25~5.35GHzや5.725~5.85GHz(米国のみ)などが加わる。AR5001Aでは、5.15~5.85GHz帯をサポートすることで、米国と欧州で最大限に周波数が利用できるようになった。

 なお、日本では4.9~5.0GHzと5.03~5.1GHz帯が、屋外での使用も含めて無線LAN用に解放される見込み。アセロスでは第2世代のチップセットの範疇で、利用できる周波数帯が確定次第、対応する計画だ。

 低消費電力化では、パケットの送信時に必要な電力を1.5Wに抑えたという。同社の第1世代のチップセットでは1.7W、802.11b対応のチップでは1.5Wだった。第2世代のチップセットではチップのインターフェイスなどを改良することで、PCカードなどに実装する場合、使用する部品の数を20%程度減らすことができる。このため、製品として見た場合の消費電力は、さらに小さくなるという。

 このほかにQoSのサポートやセキュリティ関連の機能追加など、さまざまな改良が行なわれている。なお、同社のチップセットでは独自の通信方式による「Turboモード」をサポートしているが、AR5001Aでも引き続き利用できる。速度は第1世代より高速化されており、理論上は108Mbpsでの通信が可能だ。もっとも使用する通信帯域が2倍になるため、電波の利用規制の関係から日本で利用することはできないという。

 出荷時期はAR5001Xと同様で6月に量産の予定。価格は第1世代と同じ35ドル以下。もっとも実装に使用する部品点数が削減できるため、最終製品は低価格化が見込めると説明する。

 3つ目のチップセットであるAR5001APは、802.11a用アクセスポイントでの利用を想定した製品。5GHz帯のRFチップと、32bit RISC CPUであるMIPS R4000コアとMAC部、ベースバンド部を統合したチップで構成される。

 802.11a対応のほかに、10BASE-T/100BASE-TXに対応したイーサネットのMAC部、Bluetoothで利用できる1MbpsのUART、115kbps UARTやローカルバスインターフェイスなどを装備する。量産出荷は第2四半期に開始する見込み。


□ニュースリリース(英文)
http://www.atheros.com/news/flagship.html
□関連記事「Intel、最大54Mbpsでの通信が可能なIEEE802.11a対応製品」
http://bb.watch.impress.co.jp/news/2001/11/28/intel1.htm
□アセロス・コミュニケーションズ(英文)
http://www.atheros.com/

笠井 康伸
2002/03/28 20:04

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