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Yahoo! BB、TTCに動議を提出しスペクトル管理について意見

 Yahoo! BBの運営を行なっているBBテクノロジーは、記者説明会を開催し、TTC(情報通信技術委員会)に対して動議という形で意見書を提出したことを明らかにした。内容は、TTC標準「JJ100.01」の廃止、中立な専門委員の選定などを求めている。同時に、イー・アクセスと同社の小畑至弘氏に対し訴訟を検討していることも明らかにした。

TTCに動議を提出

机を叩き、声を荒げるBBテクノロジーの孫正義社長

 まず、冒頭でソフトバンクグループ代表であり、BBテクノロジー社長の孫正義氏が、TTCへ「動議」という形で提出した意見書について説明した。「まじめに技術を革新していこうという志の足を引っ張ることに憤慨している」と発言し、TTCのスペクトラム管理委員会(第四部門委員会第六専門委員会サブワーキンググループ5)で不当な議論がなされているため、「動議」という形で異議を申し立てたのだという。

 その提出した動議の内容は3つ。1つは7月31日にイー・アクセスが提案した「標準システム、標準外システムの分類および再定義」が正確な提案理由の提示がなく、裏付けの資料もないものであるとし、採択しないように求めているもの。新たに「AnnexA.ex」を制限のない第一システムとするような分類表も提案したという。

 2つめはTTC標準 JJ100.01の廃止、大幅改定の提案。JJ100.01はISDNを基準に置いたものであり、国際標準から大きく離れていると主張。ITU-Tに準拠し、国際標準としてITU-Tで定められたYahoo! BBのAnnexAが逸脱しているのはおかしいとした。

 3つめには専門委員の選任と専門家委員会の設置を求めたこと。現在の委員会は全く異なる方式でサービスを行なう予定の事業者の集まりで、対立的議論をしているにもかかわらず、中立的な立場で発言を行なう学識経験者がいないことが問題であると指摘した。さらに、委員会の議論は特定事業者らが政策的に行なっているとした。

 さらに、孫氏はTTCのポジションについても言及する。そもそも、TTCは許認可団体ではないものが、NTTの約款改正などがあれば、事実上の許認可権限を持ってしまうことを問題として挙げた。ならばスペクトラム管理委員会の委員長の人選は慎重になるべきで、競合他社の役員であるイー・アクセスの小畑氏が委員長を務めることは問題であるとした。また、TTCの主要メンバーにNTTのキーメンバーが多数入っていることについても疑問を投げかけた。孫氏はこの状況を自動車にたとえ「同じ道路を走っているからと、新型車を出すのに競合他社の役員の許可を得るのか」と述べ、委員会の中立公正が守られていないことを強調した。

「TTC標準は目を覆うばかり」

 動議とともに提出したものは東京工業大学講師の太田昌孝博士が作成したTTC標準 JJ100.01の妥当性に疑問を投げかける書面と弁護士の牧野二郎氏によるTTCとTTC標準のについての意見書、さらに、TTCのシミュレーション方式で12MタイプADSLの速度低下を比較した表など。

 太田博士の書面では、アメリカのスペクトル管理を行なうANSI(American National Standard Institute)と比べた結果「TTC標準の質は目を覆うばかり」と厳しくTTCを非難する内容となっている。さらに、TTC標準については「AnnexAに完全に適合したADSLを不適合とするために、恣意的に歪曲されたものではないかとすら思われる」と結論づけている。

 また、牧野弁護士の意見書には、TTCの役割について法的見地からの意見が書かれており、スペクトラム管理委員会で、対立関係にあるイー・アクセスの役員が委員長を務めることについて「異様な形態」と表現し、公正さを著しく欠いた状態とした。

 速度低下の比較では、Yahoo! BB 12Mが他社の12MタイプADSL24回線に囲まれた場合と、その逆の場合の速度低下をTTCスペクトラム管理委員会の方式に基づいてシミュレーションした結果を提示した。それによると、距離が2kmの場合では、Yahoo! BB 12Mに囲まれた他社回線が全く影響を受けていないのに対し、他社回線に囲まれたYahoo! BB 12Mは、19%の速度低下が見られるという。4kmになると、Yahoo! BB 12Mが44%の影響を与えることに対し、他社の影響を受けたYahoo! BB 12Mは85%も速度低下が発生するという。この結果から、加害者ではなく、むしろ被害者であるとした。

イー・アクセスの小畑氏への訴訟も検討

 後半の孫氏の発言はイー・アクセスの小畑氏のことに集中した。「競合しているイー・アクセスの技術責任者が、スペクトラム管理委員会の委員長という看板を掲げ、収容局から2km以上は提供できないとか、同一カッド内に入れてはいけないと発言すると、どうなるか考えてほしい」と小畑氏を批判した。

 さらに、孫氏は訴訟の準備を行なっていることを明らかにした。内容はYahoo! BBに対する営業妨害というもので、被告がイー・アクセスになるか、同社の小畑氏個人となるかは今後調査して検討するという。

 その営業妨害については過去に2度あったという。1度目はYahoo! BBのサービス開始直後、2度目は今回のことだという。1度目についてはYahoo! BBのサービス開始直後から、イー・アクセスがAnnexAは日本の環境で収容局から2km以上になるとISDNの影響を受け、著しくスピードがダウンするというグラフなどを掲げていたこと。その結果「雑誌や新聞、ホームページ上で引用されて、専門雑誌でもAnnexAは2km以上では速度が低下するとされてしまった」とした。すでに80万人のユーザーにサービスを行なっているが、3kmや4kmでも十分接続できていることを挙げて小畑氏の指摘が事実でないことを強調した。

 また、TTCがAnnexAに対してとった姿勢について、アメリカの商務省も「技術参入障壁」ではないかと疑問を抱きはじめたということも明らかにした。

 最後に孫氏は、「真実は最後に必ず勝つ」と自らの姿勢に自信を見せ、Yahoo! BBの問題については、多くのユーザーによって、問題がないことが明らかにされるという主張を繰り返した。

 なお、孫氏から「営業妨害で訴える」との発言まで出たことについて、イー・アクセスは「当社に対して直接抗議などはこれまでいただいたことがないため、“回答できない”」(広報担当)とコメントしている。


□関連記事:Yahoo! BB 12Mのサービス概要を発表、既存ユーザーの変更費用は4800円
http://bb.watch.impress.co.jp/news/2002/07/16/ybb12m.htm
□Yahoo! BB
http://bbpromo.yahoo.co.jp/
□TTC(情報通信技術委員会)
http://www.ttc.or.jp/
□イー・アクセス
http://www.eaccess.net/

正田拓也
2002/08/20 20:13

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