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第6回:カード、携帯電話、決済手段などで利用できる機能が異なるSuica

 前回紹介したSuicaには、カード型の「Suica」と携帯電話で利用する「モバイルSuica」で利用できるサービスに違いがあります。どのサービスをどのような場合に利用できるのか、またどういったケースで利用できないサービスが発生するのかを見てみましょう。





「新幹線もタッチ&ゴー」が使えるSuica、使えないSuica

 「新幹線もタッチ&ゴー」というキャッチフレーズを、テレビCMや駅のポスターなどで見かけたことはあるでしょうか。2008年3月から新幹線もSuicaを使ったチケットレスで利用できるようになりましたが、実際に新幹線の乗車に利用できるSuicaの種類が限られています。では、どういった場合に新幹線でタッチ&ゴーができるのでしょうか?

 答えは、「クレジットカードを登録したモバイルSuica」です。新幹線をSuicaを利用する場合は、カード型の一般的なSuicaは利用できず、おサイフケータイを利用したモバイルSuicaを利用する必要があります。ただし、オンラインでチケットを予約・購入する必要があるため、モバイルSuicaの場合でもクレジットカードが登録されていないと利用できません。つまり「モバイルSuica」と「クレジットカード登録」という2つの条件を満たす必要があるのです。

 なお、同じ新幹線でも、在来線から乗り換えの場合の精算にはカード・モバイルを問わずどのSuicaでも利用できます。同じSuicaであっても利用できるサービスが異なる点が、Suicaの難しいところです。

 電子マネーのサービスについては、これまでEdyやSuica、さらに今後はnanaco、WAONなどを紹介していく予定ですが、多くのサービスでは非接触ICカードとおサイフケータイを利用したモバイルサービスで、その内容に大きな差が設けられていることは基本的にありません。

 しかし、Suicaの場合は、前述した新幹線の例のように、カードとモバイルで利用できるサービス、利用できないサービスがいくつか存在します。中にはクレジットカードの種類によって異なるサービスなどもありますので、Suicaのすべてのサービスを使いこなしたいのであれば、これらの違いを押さえておく必要があるでしょう。


同じSuicaでもカードと携帯電話で機能が異なる




媒体の違いによるサービスの差

 では、具体的にどのようなサービスに違いがあるのでしょうか。まず下記の表をご覧ください。

利用方法 媒体 クレジットカード一体型Suica Suica モバイルSuica EASYモバイルSuica
一体カード 専用カード おサイフケータイ
登録クレジットカード VIEWカード 提携VIEWカード*1 --- VIEWカード 提携VIEWカード 一般カード ---
年会費 --- --- --- ---
*8
---
*8
1000円 支払い不同意*2 ---
履歴確認 自動券売機
PC+カードリーダー
オンライン × × ×
再発行 ○*4 ×
電池切れ --- --- --- 10分程度利用可能
電子マネー機能 ショッピング
鉄道・バスの利用
チャージ 現金
クレジットカード ○*5 × ---
オンライン × × × ---
オートチャージ × --- --- --- --- ---
乗車機能 定期券 ○*3 × ○*6 × ---
Suicaグリーン券 × ---
モバイルSuica特急券 --- --- --- × ---
JR東海 EX-IC --- --- --- △*7 △*7 ---
※1Suica機能付きのView Suicaカード(モバイルSuicaにはSuica機能なしの提携カードを登録することも可能)
※2EASYへの変更は不可(クレか情報削除できない。退会、加入し直し。残高は手数料引きで払い戻し)
※3VIEW Suicaカード、VIEW Suicaリボカード、アトレクラブVIEW Suicaカードのみ
※4Suica定期券/My Suica(記名式)のみ
※5VIEWカードでのみ可能
※6Suica定期券のみ
※7EX-IC側に登録したカードとの組み合わせによっては乗車時にEX-ICカードが必要
※8当面無料(2008年8月現在)


 最初に気がつくのは、やはり媒体の違いによるサービスの差でしょう。媒体、つまりカードなのか携帯電話なのかで、利用できるサービスに違いがあります。

 たとえば、カード型のSuicaの場合、クレジットカード一体型Suicaであれば残高が一定以下になったときに自動的にクレジットカードから金額をチャージするオートチャージ機能を利用できますが、この機能はモバイルSuicaでは利用できません。

 オートチャージが利用できるかできないかは、プリペイド型電子マネーの場合、使い勝手に大きく影響します。頻繁に利用する人の場合は必須のサービスとも言えますが、残念ながらモバイルSuicaでは現時点で利用できません。

 その代わりと言うわけではありませんが、モバイルSuicaでは携帯電話の通信機能を利用し、履歴や残高をオンラインで確認したり、クレジットカードなどを利用してオンラインでチャージすることができ、券売機などでチャージする手間を省けます。

 また、前述した新幹線の利用を実現する「モバイルSuica特急券」、さらにJR東海が提供しているオンライン予約とICカードを利用した新幹線の予約・乗車サービス「EX-IC」も、モバイルSuicaでしか提供されていないサービスです。


モバイルSuicaではオートチャージは利用できないが、通信機能を利用したさまざまなサービスを利用可能 モバイルSuica特急券を利用するとタッチ&ゴーのチケットレスで新幹線に乗車可能(JR東日本)

 モバイルSuicaは微弱ながら動作に携帯電話の電力を利用しますので、電池切れのときに利用できないという欠点がありますが(通話できなくなってから10分程度は利用可能)、Suicaとしてより豊富なサービスを備えているのは、モバイルSuicaと言えるでしょう。

 なお、前述したオートチャージについては後述する決済手段の違いによる差も考慮する必要があります。そもそも、クレジットカード機能を搭載したSuicaはJR東日本系列のクレジットカード「VIEW Suicaカード」のみであり、オートチャージの決済に利用できるのは同社もしくは提携先が発行するVIEWカードのみで、これ以外のクレジットカードを利用したオートチャージ機能は提供されません。





決済手段の違いによるサービスの差

 続いて注目しておきたいのは、決済手段の違いによるサービスの差です。

 もっともわかりやすいのは定期券機能でしょう。Suicaに定期券の情報を登録することで、日々の通勤や通学に利用することができますが、この機能はカード、モバイルSuicaのどちらでも利用できるようになっています。

 しかしながらカードの場合、専用のSuica定期券を定期券として利用することができるのは当然ですが、クレジットカードが一体となったSuicaの場合、JR東日本が発行するVIEW Suicaカード(「VIEW Suicaカード」「VIEW Suicaリボカード」「アトレクラブVIEW Suicaカード」)でなければ、定期券機能を付加することはできません。

 VIEW Suicaカードには、前述したJR東日本発行のもの以外に、「ビックSuicaカード」「ANA Suicaカード」など、提携先が発行するカードが多数存在します。しかし、これらは通常の乗車はできても、定期券としては利用できないのです。


VIEW Suicaカードでも提携カードは定期券として利用できない


 一方、モバイルSuicaの場合、クレジットカードとして登録されているカードが、JR東日本発行でも、提携先でも、一般カードでも定期券として利用することができますが、唯一、一般カード(VIEWカード以外)を決済用のクレジットカードとして登録している場合で、しかもモバイルSuicaの年会費(1,000円)の支払いに同意していない場合は、定期券の機能を付加できません。

 このように、モバイルSuicaの場合、年会費を支払っているかどうかでもサービス内容が区別されます。現状、VIEWカードを登録している場合は、年会費が無料となっていますが、そのほかのカードを登録している場合は年会費を支払わないと、クレジットカードでのチャージ、定期券機能、Suicaグリーン券、モバイルSuica特急券などの機能が利用できず、クレジットカード登録の必要がない「EASYモバイルSuica」と同等のサービスしか受けることができません。

 ちなみに、一般カード登録で年会費支払い不同意の場合、サービス内容がEASYモバイルと同等に制限されるため、「実質的にカードを使うサービスが利用できないなら登録したカードの情報を削除して欲しい」と考えるかもしれません。しかし現状ではクレジットカード情報だけを削除することはできず、いったんSuicaを退会してから改めてEASYモバイルSuicaに加入し直すという方法しか用意されていません。





VIEWカードを組み合わせたSuicaの利用がお勧め

 このように、組み合わせによって利用できるサービスに違いがあるSuicaですが、結局のところ、どの組み合わせを選ぶのが良いのでしょうか?

 まず、すべてのサービスを利用したいのであれば、JR東日本のVIEW Suicaカード+モバイルSuicaという組み合わせがベストでしょう。これなら、カードを定期券として利用することもでき、すべてのサービスを網羅したモバイルSuicaとしても利用することができます。

 そうは言っても、クレジットカードの場合、カード側のポイントサービスなどの関係もありますので、JR東日本のVIEW Suicaカード以外を選びたいという場合もあることでしょう。そういう場合は、カードでの定期券の利用はあきらめ、提携VIEW Suicaカードを利用したモバイルSuicaがお勧めです。

 提携VIEW Suicaなら現状はモバイルSuicaの年会費もかからず、家電量販店や航空会社、銀行、ショッピングセンターなど、好みのカードを利用することができます。

 いずれにせよ、Suicaの場合、JR東日本、もしくは提携先のVEIW Suicaカード以外での利用は、年会費の負担や何らかの機能的な制限を受けることになります。このあたりを考慮してサービスに加入すると良いでしょう。


関連情報

URL
  Suica
  http://www.jreast.co.jp/suica-info/
  VIEWカード
  http://www.jreast.co.jp/card/

2008/09/18 11:28

清水理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ
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