前回のnanacoの最大のライバルとも言えるのが、イオンが提供する電子マネー「WAON」です。nanacoとの違いにも注目しながら、その特徴に迫ってみましょう。
 
 
 
 
■ 「ワォン!」とほえる電子マネー 
 レジのリーダーにかざすと、イメージキャラクターの犬「ハッピーワオン」が「ワォン!」とほえる電子マネー。それがイオンが提供する電子マネー「WAON」です。
 
 
 電子マネーのキャラクターと言えば、テレビCMなどでもおなじみのSuicaのペンギンが有名ですが、「かわいいお金」というキャッチコピーの通り、キャラクターの存在感が強い電子マネーの1つと言えるでしょう。
 
  WAONのサービスが開始されたのは2007年4月と、数日の違いはありますが、サービスの開始はセブン&ワイホールディングスのnanacoとほぼ同時です。
 
  発行枚数は2008年6月時点で490万枚、2008年8月末現在で560万枚。同時期に発表されている公式のデータが存在しないため厳密な比較はできませんが、nanacoは2007年10月時点で500万枚を突破していますので、現状はWAONが若干の遅れをとっているようです。
 
  しかしながら、利用できる店舗数は同じく2008年6月時点で2万6000店と、2万店に満たないnanacoを引き離しています。ジャスコ、サティ、カルフール、マックスバリュ、ミニストップなどのグループに加え、昨年までイオンが積極的に展開してきた郊外型商業施設のテナントなどでも利用可能な点が、数の上での優勢となっているのでしょう。
 
 
  一方、コンビニエンスストアという視点で考えると、nanacoが1万2752店のセブン-イレブンで利用できるのに対して、イオングループのミニストップは2008年7月末時点で店舗数が1914店しかありません。この違いが、今後の勢力争いにどのように影響してくるのかも注目です。
  
      | サービス名 | 
      WAON | 
     
  
      | サービス提供会社 | 
      イオン | 
     
  
      | サービス開始 | 
      2007年4月 | 
     
  
      | 使用技術 | 
      Felica | 
     
  
      | 発行枚数 | 
      560万枚(2008年9月) | 
     
  
      | 提携店舗数 | 
      2万6000店舗 | 
     
  
      | 利用件数 | 
      月間約1020万件 | 
     
 
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サービス概要
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      | コンビニエンスストア | 
      セブン-イレブン | 
      × | 
     
  
      | ローソン | 
      × | 
     
  
      | ファミリーマート | 
      × | 
     
  
      | サークルKサンクス | 
      × | 
     
  
      | ミニストップ | 
      全国 | 
     
  
      | am/pm | 
      × | 
     
  
      | 交通機関 | 
      JR | 
      × | 
     
  
      | 私鉄 | 
      × | 
     
  
      | バス | 
      × | 
     
 
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利用店舗の一例 
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■ 年齢制限なしで誰でも使える 
 WAONは利用できるカードの種類が豊富な点も特徴の1つです。自社が発行するカードには、無記名の「WAONカード」、イオンカード会員向けの「WAONカードプラス」「WAON一体型のイオンカード」、イオン銀行利用者向けの「イオンバンクカード(WAON機能付き」があり、さらにおサイフケータイ向けの「モバイルWAON」、JALとの提携による「イオンJMBカード(JMB WAON一体型)」「JMB WAONカード」があります。
 
 
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おサイフケータイでの利用が可能なモバイルWAON
 
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 特徴的なのは、無記名のカードが存在する点、そしてオートチャージが可能な点です。これら2つは、nanacoとは大きな違いになっています。
 
  まず、無記名のWAONカードですが、これはミニストップなどの店頭で手軽に購入できるカードです。発行手数料として300円がかかりますが、個人情報を登録する必要がなく、年齢にかかわらず誰でも利用できます。この点は、15歳以下の利用は親権者の同意が必要なnanacoとの違いと言えるでしょう。
 
  そもそも、セブン&ワイホールディングスやイオンのような流通業の企業が電子マネーサービスを提供する理由は、利便性の向上による集客力の向上が期待できることに加えて、詳細な顧客データの収集ができることが挙げられます。電子マネーの個人情報を販売データと結びつけることができれば、どんな商品がいつ売れたのかというデータが、どんな商品がいつ「誰に」売れたのかというデータとして利用できるからです。
 
  このため、電子マネーをマーケティングの道具としても活用するなら、nanacoのように個人情報の登録を必須とするのが当然ではありますが、イオンが無記名のWAONカードも提供しているのは、将来的なデータの収集よりもまずは普及させることに注力しているからと推測されます。
 
 【お詫びと訂正】
  初出時、無記名WAONではポイントサービスが利用できないとしておりましたが、実際には無記名WAONでもポイントサービスが利用でき、WAONポイントを他社ポイントに変換する際に個人情報の登録が必要になりまう。お詫びして訂正いたします。
  
  
      | 専用カード | 
      WAONカード | 
      手数料300円。無記名(ポイント利用は必要) | 
     
  
      | WAONカードプラス | 
      手数料300円。イオンカード会員向け | 
     
  
      | 会員証一体型 | 
      JMB WAONカード | 
      JAL ICカード一体型 | 
     
  
      | クレジットカード一体型 | 
      イオンカード(WAON一体型) | 
      手数料無料 | 
     
  
      | イオンJMBカード | 
      手数料無料。JALマイレージバンク一体型 | 
     
  
      | キャッシュカード一体型 | 
      イオンバンクカード | 
      手数料無料 | 
     
  
      | おサイフケータイ | 
      NTTドコモ | 
      ※モバイルWAONのオートチャージはイオンカード必須 | 
     
  
      | au | 
     
  
      | ソフトバンク | 
     
  
 
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カード種類の一例 
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■ オートチャージでより便利に 
 WAONのもう1つの特徴と言えるのは、オートチャージが可能な点です。nanacoはポストペイのQUICPayと組み合わせて利用することでチャージレスで利用できますが、基本的には事前のチャージが必要です。
 
  これに対してWAONは、加盟店のレジ、WAONチャージャー、WAONステーション、イオン銀行ATMなどでのチャージに加えて、あらかじめ指定した残高以下になった場合に一定金額を自動的にチャージするオートチャージの利用が可能です。
 
  オートチャージは、WAONカードプラス、WAON一体型イオンカード、イオンバンクカード、モバイルWAONが対応していますが、クレジットジャージの場合は同社のイオンカード(オートチャージ以外の通常のクレジットチャージもイオンカードのみ対応)、銀行口座からのオートチャージの場合はイオンバンクカードが必須になります。
 
  このように、利用環境は限られますが、プリペイド式の電子マネーの欠点とも言えるチャージを自動的にできるようにしている点は大きな特徴です。
 
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WAON一体型イオンカードを利用することでオートチャージにも対応
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■ Suicaとの相互交換が可能なWAONポイント 
 カードの種類やオートチャージへの対応、キャラクター展開など、サービス全体を見てみると、実はSuicaによく似たイメージを持つWAONですが、両者の共通点はポイントサービスにも見られます。
 
  WAONでは、WAONポイントという独自のポイントサービスが実施されており、提携店で200円の買い物に対して1ポイントのWAONポイントが付与されます。nanacoポイントは100円に対して1ポイントなので、200円で1ポイントはレートとしてはあまり高くはありませんが、毎月10日のWAONデーはポイントが2倍になるなど、定期的なキャンペーンを利用することで効率よくポイントを集められます。
 
  Suicaとの共通点が見られるのは、この貯めたポイントの使い道です。WAONポイントは100ポイント=100円として再びチャージして利用できますが(WAONステーションでの手続きが必要)、100WAONポイントを90Suicaポイントとして、Suicaポイントに交換することができます。もちろん、その逆も可能で、SuicaAポイントを100→90のレートでWAONポイントに交換することもできます。
 
  このほか、JALのマイルとの交換もできるようになっており、他のポイントサービスとの連携ができるのは、nanacoとの違いと言えるでしょう(nanacoもJCBのポイントと交換できるが、郵送手続きなどが必要)。
  
      | 利用ポイント | 
      サービス固有 | 
      WAONポイント | 
      1ポイント/200円(提携店での利用) 
      有効期限:1年の加算期間を含む2年間で失効 | 
     
    
      | 提携先サービス | 
      --- | 
     
  
      | チャージポイント | 
      チャージポイントなし(イオンカードのクレジットチャージ、オートチャージ) | 
       | 
     
  
      | ポイント交換 | 
      電子マネーに換金(ポイントのチャージ) | 
      WAONポイント | 
      100WAONポイント→100円 
      (手数料なし。WAONステーションでの操作必要) | 
     
  
      | 他ポイントへの交換 | 
      Suicaポイント | 
      100WAONポイント→90Suicaポイント ※年間5000WAONポイントまで | 
     
    
      | 他ポイントからの交換 | 
      Suicaポイント | 
      100Suicaポイント→90WAONポイント | 
     
  
      | ときめきポイント(イオンカード) | 
      200P→1000WAONポイント | 
     
  
      | JALマイル | 
      10,000マイル→10,000WAON(ポイントではなく直接チャージ) | 
     
 
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ポイント交換の概要  
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 このように、他社との連携がなされているというのは、WAONとnanaco、イオンとセブン&ワイホールディングスの違いとも言えます。セブン&ワイホールディングスは他社の電子マネーサービスを自社では利用できるようにしておらず、自社のnanacoも自グループ内でのみ利用可能な閉じたサービスとなっています。
 
  これに対して、WAONというサービス自体は同様にイオングループ内で閉じた世界のサービスとなっていますが、イオングループの各店舗はEdyやSuica、PASOMO、iDなど他社の電子マネーの利用も可能となっており(店舗による違いあり)、その門戸を他社に開いています。
 
  岡田屋、フタギ、シロの三社から成ったジャスコの時代から、同社は異なる企業や文化をうまく取り入れることで成長してきましたが、その特徴が電子マネーへの取り組みにもよく現れていると言えそうです。
 
 
■ URL 
  WAON 
  http://www.waon.com/
 
 
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2008/10/09 11:04
		 
 
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