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(左から)新たに量産化が開始されるHD-PLC用LSI、モジュールと、サンプル提供中のHD-PLCアダプタ」
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発表会場では実証実験デモも
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松下電器産業とパナソニック コミュニケーションズは、「高速電力線通信技術(HD-PLC:High Definition-Power Line Communication)」用LSIとモジュールの量産を2005年度中に開始する。合わせて、10月4日から開催する「CEATEC JAPAN 2005」でHD-PLCの公開実証実験を行なうと発表した。
両社では、既存のイーサネット機器をPLC環境下で利用できる「HD-PLCアダプタ」の評価サンプルとスタートアップユーティリティソフトウェアの出荷を8月に開始済み。今回、2005年度内の量産化が開始されるHD-PLC用LSI「MN1A92080L」は2006年4月に、同LSIを組み込んだモジュールは2005年12月にサンプル提供の開始を予定している。
HD-PLC用LSI「MN1A92080L」は、イーサネットコントローラを内蔵し、HD-PLCとイーサネットのブリッジ機能を1チップで実現。既存システムに対して不要輻射を低減できる松下独自の技術「Wavelet OFDM」、最大35dBまで制御可能な「フレキシブルノッチ」を採用したことで、既存システムへの影響を除去したという。
また、LSI上にはWavelet OFDMを実装したPHY部、データ伝送を制御するMAC部と32bitRISCプロセットを内蔵する。通信速度はPHY層で最大170Mbps、MAC層で最大90Mbpsの通信が可能。通信可能距離は、米国で行なった実験で150mを測定したという。また、TDMAをベースにした独自のQOS機能を搭載し、映像やIP電話などが途切れることなく通信できるとしている。このほか、同LSIでは暗号化方式に128bitのAESを採用している。
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HD-PLC用LSI「MN1A92080L」
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HD-PLCモジュール
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■ 将来は松下の全製品をHD-PLC対応に。価格面は無線LAN機器以下が目標
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松下電器産業の有高氏
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松下電器産業とパナソニック コミュニケーションズは今回の発表に合わせて、CEATEC JAPAN 2005における公開実験や両社が保有する技術に関する説明会を29日に開催した。
松下電器産業 ネットワーク開発センター所長の有高明敏氏は冒頭、これまでの電力線通信技術の進化について説明したのち、「現在我々が開発を行なっているのは第3世代の電力線通信技術で、2~30MHz(米国では80MHzまで)の周波数帯域を使用して最大200Mbpsの通信を実現するものだ」と語った。
有高氏は「2~30MHz帯は、ちょうどAMラジオとFMラジオの間にある帯域」と語る。しかし、同帯域は短波放送や船舶・航空無線、アマチュア無線などが利用しており、「日本国内では技術開発目的の実験でのみ利用できる」と付け加えた。
また、HD-PLCにおける両社の取り組みとしては、Wavelet OFDMに加えて、通信路推定技術による並行度の改善や、モジュール化によるコモンモード電流の減少によって漏洩電界の低減が可能になったという。
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PLCを利用したホームネットワークのイメージ
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現在の規制緩和状況に関して研究会に参加しているという有高氏は、「海外は電界強度をどの値にするかで規制が行なわれており、米国では50dBμVとなっている」といい、「日本における規制はコモンモードと呼ばれる電流にある」と説明した。「我々としては電流を抑える形で研究開発を進めており、研究会の座長から30dBμAという数値が示されている」と語り、「VCCIが規定している値を適用している」と述べた。
一方で同氏は「これ自体は特に問題視していない」とした上で、「問題は測定値にある」と指摘。「我々としてはクリアできる数値だと考えているが、可能であればもう少し規定値を緩くしていただければ」と語った。
また、実用化時期に関しては「年内もしくは年明け頃から規制緩和の手続きが可能になると考えており、来年の今頃には市場に商品が登場しているのではないか」と見通しを語った。また、価格面では「製品登場後の実現は難しいが、何世代か重ねて無線LAN機器と同程度に、将来的には無線LANより安い価格を実現したい」と述べ、さらに「松下電器の製品すべてをHD-PLCに対応させたい」とした。
加えて、LSIの価格に関しては、「将来的な話になるが、冷蔵庫や電灯で高速通信を行なう必要はなく、それぞれのニーズに応じた通信が可能なチップセットを提供し、価格面を気にすることなくPLC搭載製品が広がっていけば」と語った。
HD-PLC実用化時の利用環境について有高氏は、「距離的な問題はあるが、延長ケーブルやたこ足配線の場合にも利用できる」と説明。「ブレーカーが複数ある家庭においても、そうした状況を意識することなく通信が可能だ」と述べた。
また、PLCの応用例として有高氏は「例えばAV機器メーカーが出されているアクティブスピーカーシステムのように、スピーカーの配線の上にPLCの信号を流して通信を行なうことも可能だ」と語り、「電力線を利用しているのは、電気をとりながら信号もとれるというメリットがあるからで、信号だけで良ければ必ずしも電力線である必要はないのではないか」と考え方を示した。
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無線LANやイーサネットなど他の技術との比較
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HD-PLCを利用したホームネットワーク「どこでもリンク」
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■ CEATEC JAPANではトリプルプレイ環境で実証実験を実施
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発表会場のデモは、CEATEC JAPAN 2005での公開実証実験とほぼ同構成。IP電話やデータ伝送に加えて、20MbpsのHD映像の伝送も行なわれた
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CEATEC JAPAN 2005での公開実証実験は、ネットワークカメラを利用したデータ伝送に加えて、HD映像伝送、IP電話の通信が電力線上で行なわれる。有高氏は「いわゆるトリプルプレイと呼ばれるサービスが、電力線上で実現できることを皆さんに知っていただきたい」と語るとともに、「公の場でトリプルプレイサービスの実証実験を行なうのは今回が初めてだ」とした。
また同実験では、複数のアプリケーションを実行した場合の伝送状態と不要輻射状況を観測して、両社が開発した低減技術の実用性が確認される。このため、HD-PLCアダプタ稼働および非稼働時の電界強度をループアンテナで測定するという。なお、実証実験の許可は現在総務省に対して申請中で、設営を行なうイベント前日の10月3日に実験許可が下りる予定だとしている。
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通常の電気機器と同様にコンセントに接続することでネットワークの利用が可能に
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HD-PLCアダプタ背面
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■ URL
松下電器産業
http://panasonic.co.jp/
パナソニック コミュニケーションズ
http://panasonic.co.jp/pcc/
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(村松健至)
2005/09/29 18:14
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