イー・アクセスは5日、同社子会社でモバイル事業を担当するイー・モバイルが、株式と借入枠で3,500億円の事業資金を確保、モバイル事業の資金調達を完了したと発表した。
■ イー・モバイルへのノン・リコースで2,200億円を借り入れ
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左から千本倖生代表取締役会長兼CEO、種野晴夫代表取締役社長兼COO、エリック・ガン代表取締役副社長兼CFO
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株式については、総額約280億円となる第三者割当増資を実施。内訳はイー・アクセスが60億円、三井物産が50億円、米ゴールドマン・サックス・グループが49.3億円、そのほかヨドバシカメラやビックカメラ、コジマ、エヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズ、ジャフコなどが合わせて121.5億円。今回の増資により、イー・モバイルの資本金は581.15億円、資本金と資本準備金の合計額は1,159.3億円となり、イー・アクセスの株式持分比率は51.4%となった。
また、6月を払込期限とした140億円の追加増資にもめどがついたとしており、累計で1,300億円の資本金および資本準備金を事実上確保。この追加増資が行なわれた際のイー・アクセスの持分比率は、45~51%の範囲内となる見込みという。
借入では期間最長7年の借入枠で、総額2,200億円を10行の引受幹事銀行団と合意。借入枠は親会社のイー・アクセスではなく借入人であるイー・モバイルの資産および将来のキャッシュフローを担保にするノン・リコースで行なわれている。これによりイー・モバイルは資本金および資本準備金の合計1,300億円と借入金2,200億円を合計した3,500億円の事業資金を確保した。
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3,500億円の資金調達を完了
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ファイナンスの構造
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主な出資企業
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主な融資機関
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■ 事業開始前の会社への借入金額としては前例のない最大規模
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千本倖生代表取締役会長兼CEO
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イー・アクセスでは事業資金確保の発表に合わせて記者会見を開催。また、会見の後には記者向けの懇親会が開催され、イー・アクセスの千本倖生代表取締役会長兼CEOが今回の資金調達やソフトバンクのボーダフォン買収に対してコメントした。
ノン・リコースでの資金調達はソフトバンクがボーダフォン買収の際に行なっているが、すでに携帯電話事業を運営しているボーダフォンに対して、イー・モバイルはまだ事業を開始していない。千本氏は「事業開始前のキャッシュフローがない会社に対して、総額2,200億円の借入枠がノン・リコースで設定された事例は今までにない」と語った。
借入の期間についても「1年ではなく最大7年の長期借入が完了した点もポイント。これでモバイル事業の資金調達は完了した」と指摘。「ドコモの中村社長などには『3,500億円ではとでも3Gの設備はできない』と言われているが、実際に結果を見ていて欲しい」と自信を見せた。
■ ソフトバンクのボーダフォン買収は「2Gユーザーの3G移行が課題」
ボーダフォン買収を発表したソフトバンクに対しては、「あれだけのディールをやってのけた孫さんはすばらしい」と高く評価。一方で「ボーダフォンの1,500万契約のうち、8割以上はまだ2Gの契約のはず。また、3Gのネットワーク整備もドコモやKDDIと比べて進んでいない」と指摘、「ナンバーポータビリティが始まった後、いかに2G契約のユーザーを他の事業者に取られることなく3Gへ移行させるかが鍵」との課題を示した上で、「孫さんなら面白い戦略で既存事業を活性化させてくれるだろう」との期待を示した。
「時間を金で買った」という千本氏の指摘の通り、既存事業者のボーダフォンを買収することで顧客やインフラを手に入れたソフトバンクに対し、イー・モバイルは設備や顧客がゼロの状態から事業をスタートすることになるが、千本氏は「むしろ最新の設備を使って事業をスタートできる」と自信を見せる。また、今回の発表により資金調達も完了している点も強みとし、「時間がかかることは理解している。1年後にデータ通信、2年後に音声サービスと地道に進めていく」との姿勢を示した。
ソフトバンクがボーダフォンとして800MHz帯でのイコールフッティングを求めている件については「800MHzはドコモとKDDIで満員電車状態。とても使える帯域はない」と指摘。「精神的には孫さんを応援している」としながらも、「イコールフッティングというなら、5MHzしか割り当てられていないイー・モバイルのことも考えて欲しい」とコメント。ソフトバンクが割り当てられている1.7MHz帯に関しては「ボーダフォンのネットワーク設備に追われ、両方をやる余裕はないのでは」との考えを示した。
モバイルWiMAXに関してはイー・アクセスも取り組んでいるが「実用化に2年はかかる。マスコミはWiMAXに関して騒ぎすぎ」という姿勢。FMC(Fixed Mobile Convergence)に関しても、「バルセロナの3GSM World Congressには6万人が訪れた。世界の注目はモバイルにある」とし、「ワンセグも含め、あらゆるものがモバイルに向かっていくだろう」との考えを示した。
■ URL
ニュースリリース
http://www.eaccess.net/cgi-bin/press.cgi?id=405
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(甲斐祐樹)
2006/04/05 19:22
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