アイピーモバイルは17日、2006年12月に実験免許を取得した「TD-CDMA E-R7(Evolved Release7)」における実験状況を公表した。
■ 下り最大42.2Mbpsの通信が可能な「TD-CDMA E-R7」の実験状況を公表
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手前にある2台が「TD-CDMA E-R7」移動局装置の試作機。2007年内をめどにチップ化を進めるという
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「TD-CDMA E-R7(Evolved Release7)」は、アイピーモバイルが今後開始する商用サービスで採用している「TD-CDMA R7」を拡張したもの。MIMO技術の利用によって、理論値で下り最大42.2Mbpsの無線LAN通信が可能だとしている。また、R7と比較して変調方式に64QAMを追加するとともに、干渉緩和技術として通信セクターおよびセル間での干渉を緩和する「GMUD(セル間干渉緩和機能)」によって、干渉エリアを含めたスループット向上が図れるという。
セクター(1基地局のカバーエリア)内の最大スループットはMIMOを使用した状態で最大31Mbpsだが、今回行なった実験ではMIMOを使用していない数値となるため、最大15.5Mbpsになる。基地局は同社発祥の地だという東京・上野のラボに設けられ、直線距離で約100m離れたビルの1室に移動局装置(試作機)を設置している。
実験ではビットレートが10~12MbpsのHD映像を、ラボ内のメディアサーバーからストリーミング配信。移動局装置に接続したパソコンでの受信速度は10Mbpsから15Mbpsを計測しており、アイピーモバイルではTD-CDMA E-R7が持つ性能をアピールしていた。また、Yahoo! JAPANに対するPing応答速度も60ms前後を示しており、「100msを超える他社の既存データ通信サービスよりも高い数値(広報チーム 川村啓三室長)」とした。このほか、「プレイステーション 3」のリッジレーサー7を利用したネットワーク対戦、動画配信サービス「GyaO」の動画視聴もスムーズに行なえるという。
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HD映像ストリーミングのビットレート
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Yahoo! JAPANに対するPing応答速度は60ms前後
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PS3のネットワーク対戦も可能だとアピール
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2台の自動車を用いた走行実験結果
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加えて同社は、移動局装置を積んだ自動車2台を利用した走行試験の結果も公表。各車の通信速度は5~8Mbpsで、双方を合計したセクター内の平均スループットは10.9Mbpsだったという。このうち、同社が商用範囲と考える半径500m圏内の広い地点で10Mbps超の通信を確認。技術部の脇元将仁マネージャーは「実験では出力を2Wに抑えており、商用時で予定する出力5Wではより高い数値になるのではないか」と語った。
「GMUD(セル間干渉緩和機能)」に関しては、実験免許の対象が1基地局となるため、ラボ内で擬似的に行なった実験の数値が示された。それによれば、2セクターの重複するカバーエリアでの通信速度は干渉がある状態で4.13Mbpsだったのに対し、GMUDでは7.52Mbpsへと改善。また、C/I比も-2.8dBから12.2dBへと改善できたという。脇元氏は、「GMUDはTD-CDMAでのみ実現されている機能で、干渉エリアではWiMAXなどよりも速度減少を抑えることが期待できる」とした。
また、同社におけるTD-CDMA E-R7の位置づけについて脇元氏は、「スーパー3Gとも呼ばれる『LTE(Long Term Evolution)』へ繋げる開発ステップ」と説明。同氏によれば、20MHz幅を使用し、下り100Mbps、上り50Mbpsを目標技術基準として標準化作業が進んでいるといい、「標準化完了は2008年末から2009年、商用化は2010年から2011年頃を想定している」と語った。同社では、E-R7からLTEへは基地局のソフトウェアアップデートでの対応を視野に入れているという。
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今回行なった実験のシステム構成
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TD-CDMA E-R7の特徴
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実験結果
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自動車に搭載された移動局装置。手前にあるのは電源装置になる
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移動中におけるGyaOの番組視聴デモも
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■ 2GHz帯利用の商用サービスは2007年秋を予定。春からは試験サービス
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TD-CDMAのロードマップ
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合わせて、TD-CDMA R7を使用した商用サービス時期に関する説明もあった。アイピーモバイルでは、サービス開始時期を当初の2006年10月から2007年春へと延期。合わせて、技術仕様も変更し、下り最大11Mbpsでのサービス提供を予定している。
川村氏によれば、2007年春の段階で同社社員による検証が終わった後、学識者や報道関係者などに限定して試験サービスを5月前後に開始する予定だという。その上で、一般ユーザーに向けた商用サービスは2007年秋頃に開始したい考えを示した。
試験サービス段階での提供端末はPCカードとなり、CFカードはできるだけ早い段階での投入を予定する。また、「モバイル・ブロードバンド・ゲートウェイ(MBG)」に関しては商用化以降に提供したいとしている。
サービスエリアは、試験サービス段階で東京23区内の中心部。その後、利用ニーズを把握した上で、順次拡大したいという。また、料金体系に関しては固定と移動利用、通信速度などの組み合わせで、最大4プランを検討しており、「最も高いプランでも、他社の料金体系を下回るようにしたい」と川村氏は語った。
なお、総務省から割り当てられた周波数は2GHz帯で、今回実験結果が公表された「TD-CDMA E-R7」が利用した2.5GHz帯とは異なる。川村氏は、「あくまで実験免許で2.5GHz帯を使用しただけで、2GHz帯を使用しても同等の性能は得られる」と答えた。
■ URL
アイピーモバイル
http://www.ipmobile.jp/
関連記事:アイピーモバイル、TD-CDMA方式の携帯ブロードバンドデモ[ケータイ Watch]
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/31789.html
■ 関連記事
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・ アイピーモバイル、サービス開始を2007年に延期。新技術で高速化を図る
(村松健至)
2007/01/17 19:44
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