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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
ソフトバンクがFTTHに関する説明会開催。1分岐単位での貸出を強く要求

 ソフトバンクは17日、NTT東西の光ファイバ接続料などに関する同社の考え方を説明する説明会を開催した。ソフトバンクテレコムCTOの弓削哲也氏を中心とし、NTT東西の光ファイバ1分岐単位貸出に関するソフトバンクグループとしての考え方などが示された。


光ファイバの1分岐単位での貸出を要求

 今回の記者説明会は、主にFTTHサービスの光ファイバ回線分岐に関するもの。戸建向けのFTTHサービスでは、1つの光ファイバ回線を分岐して複数の戸建で共有するシェアドアクセス方式が主流となっているが、光ファイバの貸出を行なっているNTT東西では最小で8分岐単位からの構成で貸出を行なっている。

 これに対して光ファイバの貸出を受けてFTTHサービスを提供するKDDIやソフトバンクグループなどは、1分岐単位での貸出を求めて実証実験を共同で実施。市販の光信号伝送装置(OLT装置)を用いて1分岐単位での貸出が可能だという実証実験を行なっていた。

 2007年11月に情報通信審議会が開催した次世代ネットワークに係る接続ルールの在り方に関する合同公開ヒアリングでも、光ファイバの貸出分岐単位について議論が白熱。NTTからは速度向上や新サービス提供に支障が生じる、帯域確保サービスの実現が困難になる、故障対応のレベルが低下するといった理由から「1分岐単位での貸出は困難」との意見を表明。今回の説明会はこの時のNTTによる意見を踏まえて行なわれている。


光ファイバ接続料値下げは「算定内容を見直しすべき」

弓削哲也氏。ソフトバンクテレコムでCTOや専務取締役専務執行役員、研究所長兼渉外部担当を務めるほか、ソフトバンクBB常務執行役員接続企画本部本部長、ソフトバンクモバイル常務思考役員渉外本部長も兼任する
 弓削氏は1分岐貸出の前に、NTT東西が総務省に申請した光ファイバ接続料の値下げについて言及。光ファイバの現行接続料はNTT東西とも5,074円だが、これをNTT東日本が4,713円に、NTT西日本が5,048円に値下げするとの申請を行なった件について「この値段でもまだまだビジネスとしては難しい」とコメント。また、「現行接続料算定時には2007年度の接続料が2,647円と算定されていたが、この数値との乖離も大きい」とした。

 新接続料の算定理由としては、光ファイバの需要設定を現行の7年から3年へ短縮するとともに、2010年度末でFTTH回線加入者数を2,000万回線と予測しているが、弓削氏は「インフラ整備は2010年で終了するものではなく、接続料規則の上限である5年で算定すべき」と指摘。また、「接続料事業者が利用しやすい仕組みであれば多くの需要が見込める」と、2010年の2,000万回線という目標を上方修正すべきとした。

 費用の算出についても光ファイバの耐用年数が13~21年としている点について「私が日本テレコム時代に敷設した光ファイバは20数年が経っているが、製造不良はあっても物理的劣化は見られていない」とし、耐用年数も実用を踏まえてより長期にすべきと指摘。施設保全費も効率化によりさらなる削減ができるとした。

 また、NTT東西では原価予測と実績が乖離した場合に事後調整を行なうとの内容も申請に盛り込んでいるが、弓削氏は「まったくもって迷惑で、御免被りたい」と拒否。「我々が需要を申請して達成できなかったのならともかくとして、数年後に数百億円足りませんでしたと後から言われても困る」と述べ、「この料金水準では競争できる環境になく、光の普及にも問題があるのではないか」と、算定内容の見直しを要求するとともに、効率的なネットワーク運用に向けた1分岐単位での接続を実現すべきとの考えを示した。


NTT東西の接続料申請は「依然として高水準」と指摘 NTTの申請に対するソフトバンクの考え

ソフトバンクグループの算出ではFTTH料金は1回線617円に

、「次世代ネットワークに係る接続ルールの在り方について」骨子案でまとめられている分岐案
 続いて弓削氏は、「次世代ネットワークに係る接続ルールの在り方について」の骨子案でまとめられている内容について指摘。NGNやひかり電話網、地域IP網などNTT東西の電気通信設備は「(圧倒的なシェアを持つ事業者は他事業者へ設備を貸し出す)第一種指定電気通信設備に指定されることが当然と考えている」とし、「今回の説明も第一種指定電気通信設備の指定を前提としている」と補足した。

 分岐端末回線については、ソフトバンクなどが主張する1分岐単位(OSUの共有)のほかOSUは占有するが1分岐利用の場合は基本料を徴収し、利用分岐数につれて加算するというOSUの専用案、BフレッツというNTT東西のサービスから営業費などを控除して接続料化するという3案が上げられており、弓削氏は「OSUの専用案は条件次第だが、Bフレッツの接続料化は地域IP網の費用も負担することになるため適当ではない」とコメント。「いずれも設定レベルによって内容が変わるため、我々も参加して議論したい」との要望を示した。

 ソフトバンクグループとして提案する1分岐単位の場合、「主要なコストが光ファイバの減価償却である」とした上で、光ファイバの減価償却期間を30年に設定。さらに光ファイバの需要設定を5年間とし、保全費や設備調達は技術革新や大量調達などによる30%の削減を見込み、1分岐あたりの料金を617円と算出。弓削氏は「他事業者から電柱共架や道路占有などの費用が考慮されていないと言われるが、このコストはNTTの光ファイバ接続料算定根拠に含まれており、我々もこの根拠をベースに再計算しているために問題はない」とした。


ソフトバンクグループが算出したFTTH料金 算定の根拠

「1分岐単位が困難」というNTTの意見も徹底的に反論

説明会に出席したソフトバンクBBの筒井多圭志取締役常務執行役員兼CS(左)、入部吉也接続企画本部副本部長(右)
 1分岐単位での接続に関するNTTの意見に対しても個別に反論。過去に分岐単位を4回も変更しており、共有化すると事業者間の調整が困難となって新サービスや速度アップが難しいとの理由については、「今までの流れは速度アップや値下げを実現するもので、すべての事業者にメリットがある。そうした標準的な技術動向の流れであればどの事業者も方向性として合意できるのでは」とし、「装置や分岐方式の変更は利用者と事業者にメリットをもたらすもので、事業者間の調整は用意であるとの考えを示した。

 新サービスに伴い機器の変更についても「これまでも新サービス用には新たに設備を導入しており、それは設備占有でも共有でも変わらない」とコメント。他社ユーザーの帯域制御ができないという点は「帯域制御サーバー間で連携すべき」とし、「今までもサーバーを接続したいと申し出ているが実現していない。むしろきちんとやるべきことをやっていないのでは」とコメントした。

 故障時の対応も「現状の指定電気通信設備でも同様のことが行なわれており、問題なく円滑に対応できる」と説明。事業者間共通の運用ルールを定めるのが難しいという点には「運用ルールは協議して決めるべきことで、協議する前から困難と決めつけるのは不適当」と否定。NTTが事業者間の共通運用ルールが困難という根拠にADSL回線名義人の確認ルール調整を一例として上げたとの件について「我々は関連企業全社を集めた会合の開催を要求したが、会合は行なわれずに各社の意見取りまとめだけで終わっており、主要事業者2社が意見の取りまとめや調整を行なっている」と指摘。「ルールを定めるのであれば関係事業者が積極的に調整すべき」とした。

 光ファイバの敷設手続きに関してNTTも電柱利用にあたって他社と同じ手続きをしているという点には「手続きが同等でもNTTとは設備環境が違いすぎる」と反論。NTT東西がFTTHサービスで70%のシェアを占めている点に触れ、「電柱などボトルネック設備を所有する事業者が優位である」とした。また、分岐による投資リスクや営業リスクについては「分岐を行なうことでより効率的な貸出が可能になり、リスク低減ができるはず」とした。

 1分岐単位が実現しなかったらどうするのかという質問に対しては、「先送りということも考えられなくはないが、そもそも議論ができていない。我々の617円という意見も荒唐無稽と言われるだけで議論できていない」とコメント。「以前は1分岐単位が技術的に困難という話だったのが、最近では違う方向になっている」と指摘した上で、「実際の費用構造や経済的な問題をきちんと議論したい」と語った。
 


分岐構成の変更は「標準的な技術動向の流れであれば合意できる」 新サービス提供は「占有でも共有でも設備を新たに増やす点は共通」

帯域制御は「帯域制御サーバー間で連携すべき」 投資リスクは「1分岐単位とすることでより効率的になる」

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URL
  ソフトバンク
  http://www.softbank.co.jp/

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(甲斐祐樹)
2008/01/17 17:12
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