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千本代表取締役会長兼CEO
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イー・アクセスは6日、同社の代表取締役の異動および、モバイル・ブロードバンド通信事業における企画会社「イー・モバイル株式会社」の設立に関する説明会を開催した。あわせて説明会では、NTT東西の光ファイバ開放義務撤廃への反対も表明された。
代表取締役の異動は1月1日付けで行なわれ、千本倖生代表取締役社長兼CEOが代表取締役会長兼CEOに、種野晴夫代表取締役COOが代表取締役社長兼COOに、エリック・ガン代表取締役CFOが代表取締役副社長兼CFOにそれぞれ就任した。千本会長は説明会の冒頭で、「2005年は我が社の運命をかけて望む年」と述べ、「モバイルにおけるブロードバンドサービスをはじめとした新規事業を展開する上で、会社のガバナンス体制を着実なものにするため」に今回会長職を新設したと語った。
なお、1月5日付けで格付投資情報センター(R&I)から長期優先債務格付けBBBを取得した点に関して千本会長は、「ADSLサービスに加えて、モバイル事業に関する現時点での評価も含まれている」と付け加えた。
■ 携帯電話の新規参入議論は消費者を考えて進めるべき
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検討会におけるイー・アクセスの主張
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イー・モバイルは、1.7GHz帯を利用したUMTS対応のW-CDMA方式によるモバイル・ブロードバンドサービスに関する企画および事業準備を進める会社。イー・アクセスの千本会長のほか、種野社長、エリック・ガン副社長が、同社においても同職に就任する。
千本会長は、「『携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会』の設置や1.7GHz帯の割り当て問題など、非常に動きが早く、当社としても素早く動きに対応できるような体制を確立すべく、イー・モバイルを設立した」と設立経緯を説明。また、「検討会でスムーズに議論が進めば、2005年中に免許が取得できる予定だ」とした上で、免許取得後はイー・モバイルを事業会社に移行させたい考えを示した。
続けて、総務省が開催している携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会において、同社が主張している「FDD方式の参入は2社とすべき」「2006年での新規参入を認めるべき」「周波数の移行と集約先は800MHz帯、新規参入は1.7GHz帯とすべき」の3つの考え方について改めて説明が行なわれた。
FDD方式の参入事業者を2社とする点について千本会長は、過去の携帯電話における新規参入が2社ずつだったことを例に、「既存事業者対新規事業者に加えて、新規対新規の競争があったほうが、市場が健全に育つのは明らか」と指摘。その上で「1.7GHz帯も、20MHzを2事業者に10MHzずつ割り当てることが、今後のモバイルブロードバンドサービスで重要になってくるのではないか」と語った。
参入時期を2006年とした経緯については、同時期に開始が予定されているナンバーポータビリティとの連携の必要性があるという。千本会長は「ナンバーポータビリティは携帯電話事業にとって、固定電話のマイライン開始を超える革命的な変化」と語り、「この時期に新規参入が実現できるのは、ユーザーにとってもメリットがある」とした。
また、新規参入を1.7GHz帯とする点に関しては、「800MHz帯を含めて新規参入時に周波数帯域の既存業者との均一化を図るのは難しい」とコメント。千本会長は「周波数に関してはある程度の不利があるのは仕方がない」とした上で、「ローミング協定や、ADSLでの局舎開放と同じように鉄塔を開放するなどの全体的な均一化を図る」考えを示し、検討会については「消費者のことを考えて、議論を進めていくべきだ」と強調した。
■ 既存事業者の半額程度の月額料金を目指し、無線LANとの連携も
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種野代表取締役社長兼COO
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モバイル事業に関するサービスコンセプトに関しては、種野社長から説明が行なわれた。料金体系については、複雑なメニューではなくシンプルで安価な料金体系を実現したい考えで、「音声通話については他事業者への接続料金などで定額化は難しいものの、データ通信に加えて自社ネットワーク内のみの音声通信については定額化を検討してきたい」と語った。
料金体系について具体的な発表はなかったが、千本会長は「10万円程度の収入のうち、毎月2万円を携帯電話代金に支払っている」と自身の娘の例を挙げたほか、「携帯電話の支払いで、娘が自分の母親を殺してしまうというよう事件が起きているのはおかしい」と語り、千本会長自身としては「既存事業者のARPU(1ユーザーあたりの平均月収入)の半額程度を目指していければ」とした。
また、端末については音声とデータ通信を兼ね備えた端末を提供したい考え。加えて、通信モジュールタイプの端末提供も検討し、ポータブルプレーヤーやデジタルカメラと連動した機能の提供や、オンラインゲームや緊急通知メール機能などの活用方法が提案された。また、無線LAN機能についても「無線LANと携帯電話を共有する端末やインフラの整備も進めていく」(種野社長)とした。
このほか、ネットワークプラットフォームに関しても説明が行なわれた。種野社長によれば、通信インフラから端末、プラットフォーム、コンテンツを一括提供するリテールモデルに加え、通信インフラ以外の部分をOEM提供する展開も視野に「新規事業者の強みを生かしたサービスを提供していく」と述べた。
イー・モバイルでは、サービス開始後早期に全国人口カバー率90%を目指したい考えで、全国展開に関する投資は3,000億円程度を見込んでいるという。シェアについては、「段階的にではあるが、10%を確保したい」と述べた。
同社では「基本的にはコンシューマをメインにサービス展開を図っていく」と説明。また固定電話と携帯電話との連動と同じく、「イー・アクセスが提供するADSLサービスとの連動も進めていきたい」と今後の見通しを示した。
なお、イー・アクセスでは富士通と共同で2GHz帯を利用したW-CDMA方式の実証実験を東京近郊で1月中に実施するという。実験ではW-CDMA基地局の性能評価や、HSDPAなどの先端技術検証が実施される予定。加えて、同社では1.7GHz帯の実験局免許の取得後は同社単独で実証実験を行ない、基地局やインフラメーカーなどの選定作業を進めていくという。
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料金メニューや料金体系について
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通信モジュールを利用したイメージ
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OEM提供を含むネットワークプラットフォームについて
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■ 「光ファイバ開放義務の撤廃は時代の逆行」(千本会長)
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光ファイバの規制問題に対する見解
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説明会ではあわせて、NTT東日本およびNTT西日本の光ファイバ開放義務に反対する見解が明らかにされた。
イー・アクセスでは、ソフトバンクやKDDIと同様に「光ファイバの開放義務は維持すべき」考えだという。維持理由について千本会長は「開放義務が撤廃された場合には、中継ダークファイバの利用料金が確実に値上がってしまう」と指摘し、「ADSLの料金上昇に繋がるような撤廃については、将来の光ファイバーサービス環境においても時代の逆行であり、撤廃に反対の立場を貫いてきたい」と語った。
その上で千本会長は、「NTT東西はIP電話の県間通話が認められるなど十分に規制緩和が行なわれており、これ以上の規制緩和はブロードバンド市場の発展を妨げになる」と強調した。
■ URL
イー・アクセス
http://www.eaccess.net/
ニュースリリース(次世代モバイル通信実証実験開始について)
http://www.eaccess.net/cgi-bin/press.cgi?id=264
ニュースリリース(格付け取得について)
http://www.eaccess.net/cgi-bin/press.cgi?id=263
関連記事:携帯周波数の検討会、議論は平行線のまま[ケータイWatch]
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/21859.html
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(村松健至)
2005/01/06 16:30
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