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第230回:PCの音楽を無線LAN経由でどこでも再生
ソニーのWi-Fiオーディオ「VGF-WA1」


 2007 International CESで出展され、注目を集めていたソニーのオーディオ新製品「VGF-WA1」が登場した。「Wi-Fiオーディオ」と名付けられていることからわかる通り、無線LAN経由でPCの音楽を再生できるオーディオ機器だ。その使い心地を検証してみよう。





どこでも音楽を楽しめる

 配線の心配は不要、内蔵バッテリーを使えば電源すら確保する必要がない。ソニーから登場したWi-Fiオーディオ「VGF-WA1」を使えば、PCに保存された音楽を家中のどこでも楽しむことができるようになるだろう。

 VGF-WA1は、見た目はオーディオ機器のようなデザインだが、その中身はネットワーク経由でPCのコンテンツを再生する、いわゆるネットワークメディアプレーヤーの一種だ。IEEE 802.11b/g準拠の無線LANを本体に内蔵しており、PCに保存されているATRAC3/ATRAC3plus/WAVE/MP3/AAC/WMAといったフォーマットの音楽をワイヤレスで再生できる。


無線LAN経由で音楽を楽しめるソニーのVFG-WA1と付属のリモコン。アンプとスピーカーを内蔵し、単体で音楽の再生が可能だ


背面のパネルを開けたところ。背面には光などのオーディオアウト端子も用意

 これまでに市販されていたネットワークメディアプレーヤーは、主に映像の再生が目的であり、テレビに接続して利用する場合が多かった。これに対して本製品は8cmの大型スピーカーを本体に内蔵し、他の機器との接続なしに単体で動作する仕様となっている。また、本体にフル充電で約4時間の駆動が可能なバッテリーが内蔵されており、電源ケーブルすら接続しなくて済むようになっている。

 ソニーのホームページでは、本製品を”ワイヤレススピーカー”と表現していることがあるが、PCと有線でつなぐことなく家中のどこでも使えることを考えると、この呼び方が確かにしっくりくる印象だ。





無線LANとサーバーをセットアップ

 というわけで早速利用してみたいところだが、本製品を利用するためにはネットワーク環境とサーバーという2つの環境整備が不可欠となる。

 接続環境にはいくつかのケースが考えられるが、もっとも単純なのは付属のUSB無線LANアダプタを利用し、PCをサーバー兼アクセスポイントとして利用する方法だ。利用するPCがVAIOシリーズの場合、USBアダプタをPCに装着するだけで自動的に設定が行なわれ、VGF-WA1を利用可能となる。手軽さを考えればこの方法も悪くないが、今回は汎用性を考えて、すでに家庭内に存在するアクセスポイントを利用してPCに接続するという方法を試した。


付属するUSB接続の無線LANアダプタ。VAIOシリーズを利用している場合、このアダプタを接続するだけでセットアップが完了する

 と言っても、設定方法はそれほど複雑ではない。サーバーとして動作させたいPC(再生したい音楽データが保存されているPC)に付属のCD-ROMをセット。今回試用した製品は発売前の試用版であったためソフトウェアのバージョンなどに若干の違いはあるが、「SonicStage」「VAIO Media Integrated Server」「Adobe Reader」「アクセスポイント接続ツール」などの必要なソフトウェアをウィザードにしたがってインストールしていき、その後にVGF-WA1をUSBケーブルでPCに接続。アクセスポイント接続ツールを利用して無線LANの設定を行なうという流れになる。

 無線LANの設定に関しては、近くにあるアクセスポイントを自動的に検出することはできるものの、バッファローやNECなどの自動設定には対応していないため、基本的に手動での設定が必要になる。アクセスポイントの設定画面で、暗号化方式や暗号キーなどをあらかじめ確認しておくと良いだろう。


ウィザードに従って設定を進めていけば設定は完了する。ただし、無線LANの設定は基本的に手動


 なお、今回の製品は試用版であったことが原因だと思われるが、暗号化の設定によっては無線LANにうまく接続できないことがあった。NECアクセステクニカのAterm WR8200N、およびNTT東日本RT200NEでテストしてみたところ、暗号化にAESおよびTKIPを利用するとVGA-WA1からアクセスポイントに接続できず、WEPを利用することでようやく接続できた。アクセスポイントとの相性も考えられるが、製品版では問題なく接続できることを望みたいところだ。





選べるサーバー。DLNA対応NASもOK

 設定が完了すれば、VGA-WA1でPCの音楽を再生できる。前面のディスプレイに接続可能なサーバーの一覧が表示されるので、「VAIO Media Integrated Server」をインストールしたPCを選択。アーティストやアルバムなどの分類を選択し、曲を選べば音楽が再生され、本体のスピーカーから音が聞こえてくる。


無線LANでの接続に成功すると、ネットワーク上のサーバーが一覧表示される。サーバーを選択後、音楽ファイルを選べば音楽を再生できる


 音質はなかなか良好だ。無線LAN経由でも音楽がとぎれることなくスムーズに再生される。スピーカーのサイズも大きめなので、音量を大きくするとなかなかの迫力で音楽が再生される。個人的にはあまり音質にこだわる方ではないが、普通の使い方であれば音質に不満を覚えることはないだろう。

 付属のソフトウェアを使えば手軽にPCの音楽を再生できるVGF-WA1だが、実はサーバーとして利用するPCには必ずしもソフトウェア(VAIO Media Integrated Server)をインストールする必要はない。VGF-WA1はDLNAガイドラインに対応しているため、DLNAガイドラインに対応した製品であれば、他のソフトウェア、さらにはPC以外の機器でもVGF-WA1からサーバーとして認識できる。

 試しに、DLNAガイドラインに対応したアイ・オー・データ機器のNAS「LANDISK Tera HDL-GT1.0」を利用してみたところ、問題なくサーバーとして認識され、DLNAでの共有を有効に設定したフォルダ内の音楽ファイルを再生できた。すでにDLNA対応のNASを利用している場合は、こちらの方が設定の手間も少なく、わざわざPCを起動する必要もないので効率的だろう。


アイ・オー・データ機器の「LANDISK Tera HDL-GT1.0」の設定画面。共有フォルダにDLNAの設定をすればVGF-W1から参照できる

 ただし、実際に何をサーバーとして利用するかは、その特性をよく考慮して決めるべきだ。たとえば、普段iTunesを利用して音楽を聞いている場合であれば、iTunesのファイルを再生できるサーバーを選ぶ必要がある。付属の「VAIO Media Integrated Server」あればm4aファイルを再生できるが、未対応のサーバーの場合はVGF-W1からファイルを参照できない。

 また、DRMで保護された音楽ファイルにも注意が必要だ。たとえば、Windows Media Playerで著作権保護機能を有効にした状態で取り込んだ音楽、インターネット上の音楽配信サービスから購入したWMA形式の音楽などは、前述したVAIO Media Integrated Server、DLNA対応NASともに、ファイルとしては認識されるものの再生できない(NASは再生可能だが音が出なかった)。

 では、DRMで保護された音楽はVGF-W1では再生できないのかというと、そうではない。サーバーとして「Windows Media Connect」や「Windows Media Player 11」を利用すれば可能だ。たとえば、WMP11にはネットワーク上のPC間で音楽データを共有するための機能が標準搭載されているが、これを有効にすることで、VGF-W1からサーバーとしてPCを認識できる。このサーバーに接続すれば、DRMで保護された音楽もネットワーク経由で再生できるのだ。


Windows Media Player 11の共有機能を利用すれば、VGF-W1でDRM保護機能付きのWMAファイルを再生可能

 というわけで、m4aもDRM保護WMAも再生したいとなると、VAIO Media Integrated ServerとWMP11などの複数のサーバーを有効にしなければならず、再生するコンテンツによってVGF-W1からサーバーを選んで接続し直さなければならない。このあたりの使い勝手はもう少し改善されるとうれしいところだ。


本体上部の「WEB RADIO」ボタンを押すことでモードを切り替え可能。Live365の放送を再生することができる


 ただし、購入後30日間は100chのラジオ放送が無料で楽しめるが、その後に再生可能となるのは10chほどに限定される。Live365で提供されているすべての局を楽しむにはVIPサービスへの登録が必要となるので注意が必要だろう。

 このように、VGF-W1はPCに保存されている音楽、そしてWEBラジオをワイヤレスでどこでも楽しめる製品となっている。特にバッテリーでの駆動ができるというのは便利で、家中のどこにでも手軽に持ち運んで音楽を楽しめるのがうれしいところだ。

 ただし、前述したように、音楽データによってサーバーの使い分けが必要だったり、DRMの扱いに注意が必要など、環境によっては若干使いにくい面も見られる。どちらかというと音楽ファイルの形式や著作権保護機能などの乱立を何とかすべきだとは思うが、もう少し、形式や著作権保護機能などをユーザーが意識せずに扱えるようになって欲しいところだ。


関連情報

URL
  Wi-Fiオーディオ
  http://www.vaio.sony.co.jp/Products/WA1/

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2007/01/30 10:56

清水理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ
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