Windows Liveで提供中ソフトウェアが強化され、使いやすく進化した。中でも注目は「Windows Live Mail」や「Windows Liveフォトギャラリー」など、Windows Vistaに搭載されたアプリケーションのオンラインサービス対応版だ。Live版で何ができるのかを検証した。
■ ようやくマイクロソフトらしさが出てきたWindows Live
Windows Liveのサービスに、ようやくマイクロソフトらしさが見えはじめてきた。
従来のサービスは、Live Searchにしろ、Live Spaceにしろ、多少の独自性はあるものの、既存のオンラインサービスと大きな差は感じられなかった。
OSやアプリケーションなどのデスクトップソフトウェアを供給しているマイクロソフトの特性を考えると、純粋なオンラインサービスのみの提供というよりは、OSやアプリケーションとの連携こそが他のサービスとの差異化を図れるポイントとなるのは明らかだが、これまでのWindows Liveのサービスは、どちらかというとこのソフトウェアとの連携が控えめだった。
しかし、ここ最近のWindows Liveは、メールソフト「Windows Live Mail」やブログエディタ「Windows Live Writer」などがベータ版から正式版へと昇格し、「Windows Liveフォトギャラリー」のベータ版が新たに提供されるなど、徐々にその内容が充実してきた。
もちろん、オンラインサービスと連携するアプリケーションをOSに搭載するというのも理想的な形の1つだが、OSで圧倒的なシェアを持つだけに、法的に考えてもそう簡単な話ではないだろう。Windows Liveからの無償提供という形も難しい判断だったと思われるが、いずれにせよソフトウェアというマイクロソフト本来の強みがオンラインサービスと結びつく形になったのはなかなか興味深いところだ。
■ 簡単インストールで敷居が下がった
では、具体的にWindows Liveでどのようなソフトウェアが提供されるようになったのかというと、以下のようなソフトウェアを現在無償でダウンロードすることができるようになっている。- Windows Live Mial(メールクライアント)
- Windows Live Messenger(メッセンジャーソフト)
- Windows Live フォト ギャラリー(画像・映像管理ソフト)
- Windows Live Writer(ブログ記事作成・投稿ツール)
- Windows Live Toolbar(ツールバー)
- Windows Live OneCareファミリーセーフティ(フィルタリングソフト)
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Windows Liveで提供されているアプリケーション。いずれも無償で利用できる
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これらのうち、MessengerやToolbar、Mailなどは以前から提供されていたものだが、この9月からWindows Live簡単インストールという一括ダウンロードに対応したのが大きな特徴だ。
従来のWindows Liveのソフトウェアはベータ版が多く、そのダウンロード先もいまひとつ明確ではなかったため、初心者層の利用があまり望めず、そもそもその存在を認知してもらうことが難しかった。
しかし、今回のWindows Live簡単インストールによって導入の敷居が下がり、Windows Live Searchのトップページからも「メッセンジャーやメールなどの Windows Live 製品を無料インストール。ぜひお試しください」というリンクから手軽にアクセスできるようになった。
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Windows Live簡単インストールの提供により、インストーラーをダウンロードするだけで複数のアプリケーションを選択インストール可能となった
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この手のサービスやアプリケーションは、先進的なユーザー層から、その先の一般ユーザー層にどのように認知してもらうかが、最終的に広く普及するかどうかのカギになるが、今回のアプリケーションの拡充と導入の敷居を下げたことで、ようやく、一般層にアプローチするための入り口にたどり着いたと言えそうだ。
■ Hotmailをシームレスに利用できる「Windows Live Mail」
というわけで、いくつかのアプリケーションを実際に利用した。Windows Live Writerもかなり使いやすいが(詳細はこちらの特集記事を参照)、個人的にはやはりWindows Live MailとWindows Live フォト ギャラリーが興味深かった。
なぜなら、いずれのソフトウェアもWindows Vistaに標準搭載されているアプリケーションの拡張版的な位置付けのソフトウェアとなっているからだ。提供側の意図がどこにあるのかは別途想像するとして、ユーザーからすると、すでにWindows Vistaに搭載されているアプリケーションと、何が違うのか、どう使い分ければ良いのかが気になるだろう。
結論から言えば、もしもWindows Live MailやWindows Live フォト ギャラリーをダウンロードして利用するのであれば、Windows Vistaに標準搭載されているWindows MailやWindows フォト ギャラリーは使う必要はない。ほとんどのユーザーはVista標準のアプリケーションから完全に乗り換えることができるだろう。
たとえば、Windows Live Mailは、Windows Mailとメニューや検索ボックスの位置などが若干異なる程度で、ほとんど同じデザインとなっている。また、機能を比較してみると、Windowsカレンダーとの連携(と言っても起動だが)が無くなっているものの、左ペインにアドレス帳やフィード、ニュースグループ、Messengerなどのメニューが並んでおり、たとえばMessengerをクリックすると、Windows Live Messengerがワンクリックで起動するようになっている。
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Windows Live Mailの画面(プレビューを右側にした場合のレイアウト)。Windows Live Hotmailのアカウントでメールの送受信ができたり、Messengerとの連携機能などが搭載されている
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ポイントは当然のことながらWindows Liveのサービスとの連携だ。Windows MailではできなかったWindows Live Hotmailのアカウントを登録することができるようになっており、Webメールとして利用していたWindows Live Hotmailを通常のメールソフトと同様に利用できる。当然、POPやIMAPなどのアカウントも利用できるので、これらのアカウントとWindows Live Hotmailの併用が可能だ。
また、「ブログに引用」というメニューが追加されていることからもわかる通り、受信したメールを引用してWindows Live Spaceのブログ記事として投稿することも可能となっている。厳密には、Windows Live Writerに記事を渡すだけであり、個人的には引用に対する意識が低下するのではないかという懸念もあるのだが、仕組みとしてメールをベースにしたブログ記事の投稿などが手軽にできるようになったのは確かだ。
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Windows Live Writerとの連携でメールを引用したブログ記事の作成や投稿も手軽にできる
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さらにメッセージの新規作成では、通常のメールのほかにWindows Live Messengerのインスタントメッセージも選択できる。メールのメッセージを読んで相手とすぐに連絡を取りたいときなどには、メールではなくメッセンジャーで返事をすることが可能だ。
このほか、写真付きメールというものを作成し、写真を並べたアルバム形式のHTMLメールを送信できる。写真はWeb上に保存され、そのリンクがメールで送信される形式となっており、メールソフトだけでなくWeb上でも写真をスライドショー形式で表示できる。これはなかなか面白い機能だ。
Windows Live Mailで送信できる写真付きメール。選んだ写真がアルバム上に配置されたメールのほか、その写真をWeb上でスライドショー表示できる
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基本的にはWindows MailにWindows Live対応の機能を追加したWindows Live Mailだが、唯一、注意したいのがアドレス帳の扱いで、従来のWindowsアドレス帳からMessengerのメンバーへと変更されている。Windows Live Mailのアドレス帳のインポート機能を利用し、Windows アドレス帳のアカウントを追加しておくと良いだろう。
■ 写真やビデオを手軽に投稿可能
もう1つのWindows Live フォト ギャラリーも、Windows VistaのWindows フォトギャラリーの機能拡張版という位置づけのアプリケーションだ。というより、こちらの方が拡張版としての性格が強く、メニューバーの色と項目以外、デザインは同一でパッと見ただけでは区別するのさえ難しい。
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Windows Live フォト ギャラリーの画面。見た目は色とメニューが違う程度だが、機能的にはオンラインサービスとの連携が強化されている
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基本的な機能も、画像やビデオの管理と、ほぼ同じだが、やはり注目はメニューに追加されている[投稿]ボタンだろう。
たとえば一覧から写真を選び、[投稿]ボタンから[Windows Live Spacesに投稿]を選ぶと、Windows Live Spacesのフォトに直接写真をアップロードできる。Windows Live Spacesの場合、ブラウザからのアップロードもIEのアドオンによって比較的手軽にできたのだが、やはりローカルのアプリケーションからアップロードできる方がはるかに手軽だ。
写真を選んで投稿ボタンを押すと、その写真をWindows Live Spacesに手軽にアップロードできる
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また、この投稿機能は、Windows Live以外のサービスにも対応しており、Flickrにも写真をアップロードできる。これが他のサービスにも広がると、さらに便利そうだ。
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投稿機能はFlickrにも対応しており、選んだ写真を手軽にFlickrへアップロードできる
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もちろん、写真だけでなくビデオのアップロードも可能だ。同様にフォトギャラリーの一覧からビデオを選択して投稿ボタンをクリックすると、[MSN Soapboxに投稿]というメニューが選択可能になる。これを選ぶと、選択したビデオがMSN Videoにアップロードされる。
ただし、アップロードされたビデオを見るには海外のMSN Videoにアクセスする必要がある。国内のMSNビデオはベータサービスとなっており、投稿したビデオを管理するためのページが存在しなかった(11月1日時点)。
最近ではデジタルカメラで動画が手軽に撮影できるだけに、こういった動画共有サービスを手軽に利用できるのはありがたい。肝心のMSN Soapboxの日本語版が早く稼働することを望みたいところだ。
PCに保存されているビデオをMSN Soapboxに投稿することも簡単にできる。ただし、現状はベータ版となるため、投稿したビデオを見るには海外のMSN Videoにアクセスする必要がある
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■ ソフトウェアの追加ではなく置き換えを
というわけで、Windows Liveで提供されているWindows Live MailとWindows Live フォト ギャラリーを取り上げたが、いずれもWindows Liveのサービスをシームレスに活用できるようになっており、非常に使い勝手が良いアプリケーションに仕上がっていると言える。
特にWindows Live フォト ギャラリーは、面倒設定や操作が必要なく、写真やビデオをアップロードできるため、これまでオンラインアルバムや動画共有サービスを利用したことがなかった人でも手軽に動画共有などを楽しめるようになっている。
欲を言えばWindows Live MailでMSNのオンラインカレンダーとの連携ができるようになり、たとえば打ち合せのメールをドラッグするだけでスケジュールを登録できればありがたいところだが、現状のままでもWindows VistaのWindows Mailよりは確実に使いやすい。
ただし、いずれのアプリケーションをインストールしても、Windows Vista上に従来のWindows MailやWindows フォト ギャラリーが残るため、同じようなアプリケーションがいくつも存在し、間違えやすい。せっかく、高機能なアプリケーションをインストールしたのだから、標準のアプリケーションをユーザーの選択で削除できるようにして欲しいところだ。
SP1で検索エンジンの選択ができるようになるのであれば、このようなアプリケーションもユーザーの選択でインストールや削除が自由にできるようになって欲しい。
■ URL
Windows Live
http://www.live.jp/
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2007/11/06 11:05
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