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挑戦者ブランドの自作NASキット「LANTANK」に挑戦!(前編)

LANTANK SOTO-HDLWU
 家庭内で複数のPCを使うことも珍しくなくなってきている昨今、ちょっぴり困るのがファイルの共有ではないだろうか? いつでもファイルを共有したいとなると、最低でも1台のPCは電源を入れっぱなしにしておかなければいけないため、電気代や動作音が気になってしまう。ファイルを共有するだけのために常時起動させておくのもなぁ……。

 このような悩みを解決してくれるのがNAS(Network Attached Storage)だ。NASとは、ファイルの共有に特化したPC、つまりファイルサーバーである。PCといっても、ディスプレイやキーボードなどの入出力機器を使う必要はなく、LANケーブルでネットワークに接続するだけで、複数のPCからアクセス可能なHDDとして扱うことができる。NASを利用してファイルを共有しておけば、使っていないPCの電源を切っても問題なし! というわけだ。

 「でも、NASの電源は入れっぱなしにしないといけないんでしょ?」と突っ込みを入れたくなるところだが、一般的に個人向けのNASは、PCよりも消費電力も少なく音も静か。電源をつけたままでも負担にならないというのがポイントなのだ。また、小型なので設置場所もそれほど選ばないというのも嬉しいところである。

 というのが一般的に言われているNASの“いいところ”。しかしながら筆者、気にはなっていたもののNASを使ったことがなかったのだ。そこで、6月初旬にアイ・オー・データ機器の挑戦者ブランドから発売されたNAS組み立てキット「LANTANK」を使い、NASとはどんなものなのか、実際に体験してみることにした!





LANTANKはNAS機能を備えたLinux BOX

 LANTANKは、自分で別途用意したHDDを利用できる組み立てキット。本来はストリーミングサーバーとしての位置付けだが、ファイル共有というNASの基本的な機能はもちろんのこと、iTunesと連携できるミュージックサーバー機能や、アイ・オー・データ機器製の「AVeL LinkPlayer(AVLPシリーズ)」と連携可能なAVサーバ機能、Web/FTPサーバー機能などなど、便利な機能を備えたLinux BOXだ。Linux経験者であれば自分好みにカスタマイズすることもできる。
 
 2台のHDDを搭載できるということも特徴の1つであり、別々のHDDに同じファイルを同時に保存する「ミラーリングモード」や、2台のHDDを1台のHDDのように利用できる「スパニングモード」が用意されている。そのため、信頼性の高いバックアップストレージとして利用することもできるし、今となっては容量不足で使い物にならなくなったHDDも有効利用することが可能なのだ。

CPU SH-4/266MHz
メモリ 64MB
対応HDD 3.5インチIDE HDD×1~2(Big Drive対応)
インターフェイス 10BASE-T/100BASE-TX×1、USB 2.0×2、シリアルコンソール接続穴
OS Debian GNU/Linux SH(iohack版)ベース(カーネル2.4.21)
冷却ファン 2基
価格 オープンプライス(実売19,800円程度)
LANTANKの主な仕様


 ここで“挑戦者”ブランドについて触れておこう。挑戦者ブランドとは、その名の通り“挑戦的な製品を商品化する”というブランドである。また、初期不良交換以外のサポートは受け付けておらず、「ユーザー側も挑戦者となり製品を使いこなしていこうじゃないか!」という意味も込められているのだろう。

 そのため、挑戦者ブランドの製品には「カンターン」「フツー」「ムズカシィ~」、「ヤバ~イッ」の4段階で難易度が示されているのだが、LANTANKは挑戦者ブランド史上初の「ムズカシィ~」に設定されている。つまり、上級者向けの製品というわけだ。

 確かに、HDDの調達やOSのインストール、本体の組み立てまで自ら行なう必要があるため、導入するまでに少々苦労するかもしれない。ただし、さまざまなサポートソフトが自動でインストールされるため、筆者の感想としては、デスクトップPCのHDDが交換できる程度の知識があれば「カンターン」であった。ということで、まずはLANTANKの導入方法を詳しくレポートしていくことにしよう。


サポート無しというとバルク製品を思い浮かべてしまうところだが、パッケージはしっかりとした作り。外装は質感にもこだわったアルミパネルと、上品なホワイトが採用されており、まさに“白箱”





最初の挑戦はOSのインストール

 パッケージを開けてみると、ほとんどのパーツがバラけた状態で収まっていた。外装の組み立てはもちろんのこと、シールなども自分で貼り付ける必要があるほどの徹底ぶり! 挑戦者の担当者によると「コスト削減だけではなく組み立てる楽しみも提供したい」ということだ。うむ、確かに組み立てたほうが愛着がわくので嬉しい配慮である。

 なお、マニュアルは付属していない。「それは挑戦しすぎ!」と思ったかもしれないが、挑戦者のサイトに丁寧なオンラインマニュアルが掲載されているので安心していただきたい。


心臓部となるマザーボードとシャーシはあらかじめ取り付けられている。背面には、電源スイッチ、USBコネクタ、LANコネクタ、2基のファンなどが設置されている


その他には、アルミ製とプラスチック製のパネルとパネルシール、ストレインリリーフセット、ゴム足、OSのインストールCD、ネジ類などが付属している

 さあ、早速組み立て開始! といきたいところだが、その前にHDDへOSをインストールしなければならない。この作業が若干クセモノで、難易度が「ムズカシィ~」となっている1つの理由と言えるだろう。Windows上からOSをインストールすることができないため、CDブート(CD-ROMからの起動)が可能なWindows PC(x86系PC)が1台必要となり、PCのケースを開けてHDDを接続するという作業を行なわなければならないのだ。PCを自作したことがある人ならカンタンな作業ともいえるが、そうでない人にとってはやや抵抗を感じるかも知れない。

 ということで、PCへHDDを接続する作業を行なう際に気をつけておきたい点を書いておこう。まずは、金属性のモノに触って体の静電気を逃がしておく。次に、手違いによるショートを防ぐためにもPCのコンセントを抜いて完全に電力供給を完全に停止させておく。最後に、OSのインストールを行なう際に既存のHDDをフォーマットしてしまう恐れもあるので、既存のHDDの電源ケーブルとIDEケーブルは外しておく。この3点さえ守って慎重に作業を進めれば、PCが壊れた! なんてことはめったに起きないハズだ。

 さっそく押入れに眠っていたHDDを掘り出しPCへHDDを接続しようとしたところ、いきなり大事件発生! なんと、手元が狂ってHDDをPCのケースにぶつけてしまい、HDDの基盤から部品が2個ほどポロリとはがれてしまったのである……。しかし筆者は、幼少の頃から「メタルスラ○ムできたよ!」と楽しんでいたほどハンダごてに慣れ親しんでいたのだ。「このくらい修復してやる!」との気合いで何とか元に戻すことができたのだが、こんなことも起こりかねないのでHDDの取り扱いには十分注意していただきたい。


ハンダ付けされたHDDのチップコンデンサ×2。慣れ親しんでいたものの上手いわけでもないので、アップで見せるのが恥ずかしい状態……。動いているからいいんだ! 既存のHDDからケーブルを外して、LANTANKで使用するHDDに接続すればインストール準備は完了!

 HDDの接続が完了したら、セットアップCD-ROMを挿入してPCを再起動する。もし、「システムがありませんよ?」という感じのメッセージが表示されてセットアッププログラムが起動しなかった場合は、PCのBIOS設定からブートの優先順位をCD-ROMに変更しよう。

 セットアップについてはコマンド入力といった複雑な操作をする必要は無く、指示に従って項目を選択していくだけでOK。セットアッププログラムさえ起動してしまえば安泰だ。なお、HDDの内容はすべて消去されてしまうので、必要なデータが残っている場合は事前にバックアップしておくことを忘れずに。


LANTANKのインストール画面。インストール中に選択する項目はHDDを選ぶときくらいで、そのほかはライセンス表示を確認するだけである





組み立てはドライバー1本でOK。プラモデル気分で楽しくいきましょう

 HDDにOSがインストールされたところで、いよいよLANTANKの組み立てだ。まずはIDEコネクタをガッチリ固定する「ストレインリリーフ」と、HDDからケーブルを抜きやすくする「ベロ」を取り付ける。実はこの2つ、地味ながらなかなか重要なパーツだったりする。なぜならIDEケーブルはマザーボードへ直に接続されているため、IDEコネクタが破損してしまった時に「ケーブルだけ差し替えればいいや」というわけにはいかないからである。


マザーボードとIDEケーブルはガッチリとハンダ付けされている ストレインリリーフをベラに通し、ケーブルを折り曲げてからコネクタにはめ込む

 次に、フロントパネルの取り付けだ。マザーボードから伸びているLEDをフロントパネルに挿し込み、本体にカチッっと4つのツメで固定する。最後にLANTANKの顔となる「LANTANKシール」を慎重に、そしてまっすぐ貼り付ける。この後にもシールの貼り付け作業が待っているが、溝にピッタリとはまるように作られているため、不器用な筆者でも綺麗に貼り付けることができた。ただし、方向を間違えてしまうと剥がすのに若干苦労するので要注意。


LEDをシャーシに通してからフロントパネルに挿し込む。赤LEDと緑LEDの位置は決まっているので間違えないようにしよう


 それでは、先ほどインストールしたOS入りのHDDを取り付けていこう。まずはHDDの設定が「マスター」になっているか確認すべし。筆者は動作確認を行なった際に、HDDランプが点灯したままになりシステムが起動せず、さらに背面の電源スイッチを切っても電源が切れないという症状に悩まされた。「電源が切れないとはどこか壊れてしまったのか!」、もしくは「HDDチップ抵抗脱落事件の影響なのか!」と軽く混乱してしまったが、ただ単に「スレーブ」になっていたことによるトラブルだったのである。些細なミスで心臓に負担をかけるのはもったいないので、しっかりとチェック。


マスター/スレーブの設定はHDDのジャンパーピンで行なう。設定方法はHDDに書いてあるはずだ HDDを1台のみ取り付けるときは、熱を効率よく処理するためにもマザーボードから離れたほうに装着すべし

 まだ組み立ては完了していないが、この時点でLANTANKの動作チェックを行なっておきたい。筆者はちょっとしたミスを繰り返してしまい、HDDを外したり、内部の接続を見直したりすることがあった。組み立て作業に喜びを感じていたとはいえ、その都度ばらすというのはちょっとばかり面倒くさい。

 特に、上部と下部に取り付けるプラパネルは、内部の穴にツメを引っ掛けて固定する方式なうえに、アルミパネルのネジ穴をふさいでしまう。めんどくさいというより外すのが結構難しい。下手をするとツメを折りかねないので、正常に動作することを確認してから取り付けるようにしよう(というかツメ折りました。LANTANKの神様ゴメンナサイ)。

 動作の確認はカンタン。電源を入れると緑のパワーランプが点滅するのだが、2分ほど待って点灯状態に変われば、システムが正常に起動したということになる。もちろんLANに接続して徹底した動作確認を行なうのもよいだろう。

 最後に、アルミパネルと上部と下部のプラパネルなどを取り付ければ組立作業は終了だ。順調にいけば、OSのインストールも含めて約1時間で完成するだろう。とはいえ、このような製品なだけに、十分な時間をとって慎重に作業を進めていきたいところだ。



アルミパネルをネジで固定し、カチッとはめ込んだプラパネルに小さなゴム足を貼り付け、シールを貼れば作業終了!





PCの自作に興味を持っている人にこそ挑戦してほしい一品

 LANTANKの導入までをざっとレポートしてきたが、いかがだっただろうか? OSのインストールから組み立てまで、すべて自分で行なう必要があるうえに、初期不良以外のサポートが受けられないため、確かに初心者には難しいかもしれない。

 とはいうものの、「PCを自作してみたいな」と思っている人にとっては、入門用としてちょうど良い製品という面もあるかもしれない。PCを自作するよりもコストがかからず、組み立てた後も現役PCのサポート機器として十分に活躍してくれる。そしてPCを自作している気分を味わえるのだから! 「ムズカシィ~」という上級者向けの製品ではあるが、初心者の方にも挑戦してみて欲しかったりするというのが正直なところだ。

 さて、次回の後半では、LANTANKをネットワークに接続してどんなことができるのか? という使い心地をお伝えしていきたい。前半を読んだ時点で、「挑戦してみたくなってしまった!」という熱い方もいるかもしれないが、残念なことに初期出荷分はほぼ完売してしまい、次回の出荷は7月上旬とアナウンスされている。ただし、次回出荷分もすぐに完売してしまうことも考えられるので、今のうちに予約しておくというのもアリ。その際には、自分のPC環境でLANTANKのセットアップが可能なのか、しっかりと確認しておこう。


関連情報

URL
  LANTANK SOTO-HDLWU
  http://supertank.iodata.jp/products/sotohdlwu/

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(西野滋仁)
2005/06/23 11:01
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