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PS3連携やゲーム配信サービスに対応したPSP最新ファームウェアを検証

 11月21日に公開されたPSPの最新ファームウェア「3.00」は、PS3との連携機能を中心に大幅な機能強化が図られた。ネットワーク機能を中心に、最新ファームウェア「3.00」の機能をレポートする。


PS3との連携機能やゲームソフト配信サービスに対応

PS3のコンテンツをPSPで再生できる「リモートプレイ」
 今回の新ファームウェアで搭載されたPS3との連携機能は2つ。1つはPS3と無線LANで接続し、PS3内のコンテンツをPSPでストリーミング再生できる「リモートプレイ」機能。もう1つはPS3向けネットワークサービス「PLAYSTATION Network」を介し、PS3経由でPSPにゲームをダウンロードできる機能だ。

 このうち、リモートプレイはPS3との接続に無線LANが必要なため、PS3は標準で無線LANを搭載した上位モデルでなければ利用できない。一方、ゲームソフトのダウンロードはUSB経由でPS3からデータを転送するため、無線LANを搭載していないPS3でも利用可能だ。


PS3のコンテンツをPSPでストリーミング再生する「リモートプレイ」

リモートプレイではあらかじめPS3本体の設定が必要
 まずはリモートプレイから見てみよう。リモートプレイを利用する場合は、初めにPS3でSSIDとWPAキーを作成し、PSPに同じSSIDとWPAキーを設定することで利用可能になる。このSSIDとWPAはPSPとPS3の間で直接通信するために利用するもので、インターネット接続に利用するSSIDとは異なる。また、リモートプレイで利用できるWPAキーの暗号モードはAESのみで、TKIPやWEPキーなどは利用できない。

 無線の設定が終了したら、PS3のメニューから「リモートプレイ」を選択してPS3を待ち受け状態にし、続いてPSPから「リモートプレイ」を選択。PS3で設定したSSIDとWPAキーを指定して接続する。PS3のメニュー画面がPSPに表示されれば成功だ。

 リモートプレイは、PS3に保存された動画、静止画、音楽の再生が可能。本体に保存されたファイルだけでなく、スマートメディアリーダーに保存されたファイルも再生可能だ。PSPとPS3のボタン配置がほぼ同じなため、PSPでもPS3と同じ感覚で操作できる。また、ファイル再生以外に、PLAYSTATION Networkでフレンド登録した友人のオンライン状態やメッセージ送受信も可能だ。


PS3で「リモートプレイ」を選択するとPS3が待ち受け状態になる


PSPの「リモートプレイ」機能 「リモートプレイ」からPS3で作成したSSIDとWPAキーを指定してPS3にアクセス

メモリーカードのデータも再生可能 メッセージ送受信などのコミュニケーション機能も利用できる

ゲームやBD再生のリモートプレイはリモートプレイ非対応

PS3のブラウザをPSPから利用できる
 また、PS3のブラウザをPSPから利用することも可能だ。ただし、画像はMPEG-4でストリーミングされていることもあり読み取りにくく、表示サイズのカスタマイズ機能なども利用できない。PS3のメモリを利用できるためキャッシュ容量が大きい、タブを6枚まで表示できるという違いはあるものの、ブラウジングに関してはPSP搭載のNetFrontを利用したほうがいいだろう。

 なお、PS3の機能がすべてPSPで利用できるわけではない。PS3のゲームやBDの再生など、BDドライブに関する機能は利用できない。また、ユーザー変更や設定変更などもPSPからはできないようになっている。

 PS3の画面はMPEG-4でストリーミング配信されているため、ボタン操作と画面の変化には多少のタイムラグが生じるほか、細かい文字などは崩れてしまって認識が難しい。また、ブラウジング中にはブロックノイズもやや見受けられた。これらはPSPのHOMEボタンを押し、「設定」の「反応速度」からカスタマイズできる。反応速度は1から5までの5段階で設定でき、数字が大きいほど反応速度が速くなるが、代わりに画質が低下する。

 PSPの画面にPS3のメニュー画面が映し出された瞬間は大きな感動を覚えるが、現段階ではPS3のコンテンツがPSPで再生できるという機能そのものは興味深いものの、その機能によって得られるメリットというのはあまり感じない。ただし、今後PS3向けのコンテンツ配信が活性化し、映画やドラマなどのコンテンツがPS3に保存されるようになれば、そのコンテンツを離れたところから視聴できるというロケーションフリー的な利用形態は面白そうだ。

 現状はリモートプレイ機能を利用している場合、PS3は一切操作できなくなるが、今後は同時に利用できるようになれば、PS3でゲームをしながらPSPでPS3の動画を楽しむなど、家庭内での利用スタイルが広がるだろう。ソニーのコミュニケーション端末「mylo」でも、他の端末から楽曲をストリーミング再生する機能を搭載しているが、こちらはストリーミング中でもmyloを操作できる。リモートプレイはまだ始まったばかりの機能ではあるが、今後の機能拡張も期待したいところだ。


「ゲーム」などの機能はアイコンが表示できるが詳細が表示されない 反応速度と画質の設定画面

PS向けゲームをダウンロード配信する新サービスも開始

「アーカイブス」にPSP向けゲームタイトルが追加。価格はいずれも525円
 PLAYSTATION Network経由のPSP向けゲーム配信は、3.00が公開された翌日の11月22日にスタート。現在のところ「鉄拳2」「みんなのGOLF2」「BIO HAZARD DIRECTOR'S CUT」など9タイトルが用意されており、PS3にUSBで接続したPSP内のメモリースティックDuoにゲームを保存してプレイできる。PS3で「PlayStation Store」にアクセスすると、これまでコンテンツが存在しなかった「アーカイブス」カテゴリに、PSP向けゲームソフトがラインナップされている。

 ファイル容量はソフトごと異なるが、おおむね数百MB程度といったところ。「みんなのGOLF2」の210MB、「BIO HAZARD DIRECTOR'S CUT」の380MBなど、200~300MB程度が中心だが、「鉄拳2」は550MBと512MBをオーバーしているため、PSソフトをPSで楽しむには1GB以上のメモリースティック Duoが良いだろう。

 配信タイトルは、ゲームデータそのものと、ゲームの利用に必要なチケットという2種類のデータが用意されている。利用チケットはダウンロードのみでよく、ゲームデータはダウンロード後にPSPへのインストールが必要だ。約200MBの「みんなのGOLF2」をダウンロードしたところ、インストールには10分程度の時間がかかった。


「みんなのGOLF2」は210MB 「鉄拳2」は550MB以上のデータ空き容量が必要

ダウンロードは利用チケットとゲームデータの2種類 ダウンロードにはPSPをPS3にUSB接続する必要がある

ゲームのプレイは非常に快適。ボタン操作は慣れも必要

「みんなのGOLF 2」を起動
 インストールが完了すれば、あとは「ゲーム」の「メモリースティック」からゲームをプレイできる。メモリースティックDuoからのデータ読み込みは非常に高速で、プレイしていてストレスなどはほぼ感じなかった。PSという過去のゲームタイトルでデータ容量も少ないという違いはあるものの、PSPのUMDディスクでゲームをプレイするよりははるかに高速だと感じた。

 なお、PSPはPSよりもボタンの数が少なく、画面の大きさも異なるため、PSPの「HOME」ボタンからカスタマイズが可能だ。画面は「オリジナル」のほか、オリジナルを拡大した「ノーマル」、PSPの画面全体に表示する「フル」の3種類から選択できる。

 ボタン割り当ては4種類から選択でき、標準の「タイプ1」では、アナログパッドを左に押すとL2ボタン、右に押すとR2ボタン、上に押すとL2ボタンとR2ボタンの同時押しになる。タイプによっては十字ボタンとアナログパッドの組み合わせでL2/R2ボタンを操作することや、アナログパッドを十字ボタンとして使用し、十字ボタンをL2/R2ボタンとして利用することも可能だ。

 一旦ダウンロードしたデータは、PLAYSTATION Networkにアクセスすれば再度ダウンロード可能。また、PSP内のゲームデータとライセンスデータをPCへ移動し、再度PSPに戻した場合でも問題なくゲームを起動できた。


「フル」で表示したところ。16:9表示のため画面が横につぶれている コントローラのカスタマイズ画面

Podcastの自動ダウンロードが可能になった「RSSチャンネル」

Podcastコンテンツの指定時間ダウンロードが可能に
 PS3関連以外の機能強化も見てみよう。Podcast機能「RSSチャンネル」は、指定した時刻にファイルを自動でダウンロードできる「タイマー設定」機能が新たに搭載された。

 タイマー設定は1分単位で時間指定が可能で、複数のPodcastコンテンツを一括ダウンロードできる。なお、タイマー設定を利用するには必ずスリープモードにしておく必要があり、メニュー画面のままでは自動でダウンロードされなかった。

 2005年11月に公開された「2.60」で初めて搭載され、2006年7月の「2.80」で動画のPodcastにも対応したRSSチャンネルだが、これまではコンテンツのダウンロードをするためには毎回ネットワークに接続する手間が必要だった。そのため、あらかじめダウンロードしておいたファイルをPCに接続するだけで転送できる本家iPodと比べると使い勝手に課題があった。

 しかし、今回のタイマー設定により、インターネットに接続してコンテンツをダウンロードする必要がなくなったことで、利便性が飛躍的に向上した。スリープモードに設定することを忘れなければ、寝ている間にコンテンツを自動でダウンロードしておき、通勤時などはそのままPSPを持っていくだけでPodcastコンテンツが楽しめる。無線LANを標準搭載したPSPならではの機能で、PCレスで使えるという点ではiPodよりも手軽にPodcastを楽しめると感じた。


有害サイトへのアクセスをブロックする「i-フィルター」にも対応

i-フィルター for PSPを設定してアダルトサイトにアクセス。、「このページはひょうじできません」というメッセージが表示された
 3.00からは、デジタルアーツのWebフィルタリングサービス「i-フィルター for PSP」も新たに提供された。アダルト、犯罪・暴力、出会い系サイトなど1億8千万以上のサイトが登録されているというデジタルアーツのデータベースを利用し、有害と思われるサイトの表示をブロックする。

 申し込みはPSP本体から行なうほか、「i-フィルター for PSP」のWebサイトからPCで申し込むこともできる。PCの場合、メールアドレスや名前などの入力がPSPより楽に行なえるが、代わりにPSP本体のプロキシ設定を手動で行なう必要がある。PSP本体で申し込めばプロキシ設定が自動で行なわれるので一長一短といったところだ。

 プロキシ設定が終了した後、実際にアダルトコンテンツを販売しているサイトにアクセスしたところ、「このページはひょうじできません」と表示され、サイトにアクセスできなかった。なお、PSPにはユーザー切り替え機能が存在しないために、「i-フィルター for PSP」のフィルターは同じPSPを利用する全員に適用される。家族でPSPを共有している場合などは、大人が利用する場合もWebサイトがフィルタリングされる点を注意しよう。


PS3連携は始まったばかり。今後のコンテンツやサービス拡充に期待

 PS3との連動を含めて大幅な機能強化が行なわれた「3.00」。PS3との連携機能は始まったばかりではあるが、リモートプレイはPS3へのコンテンツ配信サービスが活性化すれば、PS3でダウンロードしたコンテンツを自分の部屋で寝転がりながら楽しむなど、視聴シーンの幅が広がりそうだ。

 また、ゲームタイトルのダウンロードも、過去のゲームながら525円という低価格で購入できるのが嬉しい。こちらも作品が充実すれば魅力的なサービスになるだろう。できればPS3を持っていないユーザーも利用できるよう、今後はPC経由での配信も期待したい。

 RSSチャンネルのタイマー設定も、一見地味ではあるがPodcastの利便性向上という点では大いに価値がある。また、ネットワークには直接関係はないが、オプションの専用カメラを使ったカメラ機能も搭載され、外出先で撮影した画像をPSPのみでオンラインアルバムなどにアップロードすることも可能になった。

 アップデートによって着実に機能強化を図るPSP。今後はPS3との連携も含めてさらなる機能向上も期待される。ゲームに特化したニンテンドーDSと異なり、AV機能やネットワーク機能を活用したPSPがどういった進化を遂げるのか、今後も注目していきたい。


関連情報

URL
  PSP システムソフトウェア バージョン 3.00 アップデートについて
  http://www.jp.playstation.com/psp/update/ud_01.html

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(甲斐祐樹)
2006/11/22 14:42
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