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IP電話サービス導入の選択肢を広げるVoIPアダプタ

VoIPアダプタ
 大手プロバイダーを中心に急速に広まりつつあるIP電話サービス。しかし、IP電話サービスの利用に必要な機器類はそのほとんどがルータ機能を搭載しているため、すでにルータを導入している場合は併用することができない。高価なルータを購入していたり、無線LANルータで家庭内のパソコンをすべてワイヤレスにつないでいるといったユーザーにとって、機器を交換しなければならないのは大きなデメリットだ。そのためIP電話サービスの導入をためらうユーザーも多いと思われる。

 NTT東西が5月からフレッツユーザー向けに提供を開始した「VoIPアダプタ」は、こういったデメリットを解消できる存在だ。ルータがUniversal Plug and Play(UPnP)機能を搭載していれば、基本的にはLANポートにVoIPアダプタを接続するだけでIP電話サービスが利用可能になる。すでにルータを導入しているユーザーも環境を変えることなくIP電話の導入が可能なほか、対応している機能によってルータを選択することが可能になる点もメリットだ。本記事ではこのVoIPアダプタについて使用感などをレポートする。


接続方法のサポートは充実

 VoIPアダプタのインターフェイスは他のIP電話対応機器とほぼ同等で、WAN側、LAN側ともに10BASE-T/100BASE-TX×1ポート、電話回線用と電話機用のアナログポートが1ポートずつ搭載されている。詳細は後述するが、外付けのアダプタとして利用するほか、VoIPアダプタ自体をルータとして利用することも可能だ。

 マニュアル類は非常に豊富で、取扱説明書の冊子、導入手順をまとめた「IP電話 かんたん接続」に加えて、ルータやモデムといった接続機器ごとにカラーマニュアルも用意されている。電話回線を共用しないADSL タイプ1といった環境ごとに内容がまとめられており、パソコンでの設定も項目ごとに解説が加えるなど、ユーザーへの配慮が伺える内容になっている。

 とはいえ機器の接続自体はそれほど難しいものではない。すでにルータを導入しているユーザーであれば、新たにパソコンを1台接続する感覚でVoIPアダプタのWANポートとルータのLANポートを接続すればよい。電話回線もモジュラージャックと電話機の間にVoIPアダプタを挟み込む形で接続する。

 なお、VoIPアダプタと接続するルータはUPnP機能が必須だが、機器ごとに細かい仕様が異なるために、UPnP対応ルータであれば必ずVoIPアダプタが利用できる訳ではない点は注意が必要だ。とはいえNTT東西はVoIPアダプタの動作確認済みルータをWebサイトで公表、NTT東日本ではNTT東西の機種に加えてメルコなど他メーカーも含めた約40機種を動作確認済みとしており(2003年6月5日現在)、積極的な対応が伺える。


左からルータ型の「Web Caster V100」、VoIPアダプタ、ADSLモデム内蔵型の「ADSLモデム-MNV」 機器背面。Web Caster V100が4ポートスイッチングハブを搭載するほかはほぼ同一

豊富な添付マニュアル VoIPアダプタ設定時の接続イメージ

設定はダウンロードで行なうことも可能

 続いてVoIPアダプタの設定に入る。初めて設定する場合はブラウザにプライベートIPアドレス「192.168.100.1」を入力、続けて表示されたログイン画面でマニュアルに記載されたIDとパスワードを入力する。

 ここで気をつけなければいけないのはIPアドレスのサブネットだ。VoIPアダプタは基本的にルータに接続して利用するため、すでにルータが割り当てているプライベートIPアドレスとVoIPアダプタのプライベートIPアドレスが重複する可能性がある。具体的には、「192.168.100.x」のサブネットをLAN側で使っている場合だ。一部のルータでは初期設定でこのアドレスを使っている。

 ただし、この場合は画面に「WAN側とLAN側のアドレスが競合しています」と警告を表示、ユーザーへ注意を促す。また、マニュアル類に「ブロードバンドルータ等との接続時の注意事項」という注意書きも添付されているので、あわてずにルータとVoIPアダプタどちらかのIPアドレスを変更しよう。

 設定画面にログインした後はまずルータの設定を行なう。VoIPアダプタをルータに接続する場合であればほとんど初期設定から変更する必要はない。ただしVoIPアダプタをルータとして利用する場合は、多少の設定変更のほか、フレッツ用のPPPoE設定などを行なう必要がある。

 この後はいよいよIP電話情報の設定だ。通常のIP電話対応機器であればプロバイダーから送付されたVoIPサーバー、IP電話用のIDなどを入力するところだが、VoIPアダプタを含むNTT東西のIP電話対応機器は、こういった設定をサーバーからダウンロードする機能を搭載している。もちろん手動で設定を行なうことも可能だが、「VoIPサーバー」「ドメインサーバー」といった紛らわしい名前の多い設定をいちいち入力するよりは、ダウンロードのほうがはるかに有益だ。

 ダウンロード設定はプロバイダーごと用意している専用のWebサイトから、ユーザー登録時に配布されるID、パスワードなどを入力して行なう。ダウンロード設定サービスの対応ははプロバイダーごと異なるが、ぷらら系のVoIP基盤ネットワークを利用するぷららフォン for flet'sやBIGLOBEフォン(PN)、NTT-ME系のWAKWAKフォンやIP電話F(ASAHIネット)などが対応している。


プライベートIPアドレスがルータと競合した場合、アラーム画面が表示される ルータ設定画面

PPPoE設定画面。ルータとして利用する場合はここにID、パスワードを入力 IP電話設定画面。プロバイダーが対応していれば設定をダウンロードできる

ルータとしても利用できるが、機能は最低限

 IP電話情報の設定が終了し、本体の「VoIP」ランプが点灯したら、パソコンのLANケーブルをVoIPアダプタからルータに差し替える。以降はルータの設定変更やファームウェアの更新を行なう以外に基本的にVoIPアダプタを触る必要はない。ルータにパソコンを直接接続することでスループットもルータの機能がほぼ引き出せるし、VPNパススルーといったルータ本体の機能も問題なく利用できる。従来のルータ環境を変更する必要もないうえに、スループット面でも余計な負荷を与えない点は、多くのIP電話対応機器に比べて大きなアドバンテージだろう。

 もちろん、パソコンをVoIPアダプタに接続して利用するほか、VoIPアダプタをルータとして利用することも可能だ。ただしスループットはルータを利用する場合に比べて著しく低下する可能性がある。CPUにPentium 4 1.6GHzを搭載したパソコンで、ルータにNECの「AtermWB7000H」を利用してBフレッツ ベーシックで測定したところ、スループットは約47Mbpsを記録した。同環境でVoIPアダプタをルータとして利用したところ、スループットは約5.8Mbps程度。機能面でもPPPoEやIPマスカレード、DHCPサーバといったルータとして最低限のもののみをサポート。ほぼ同額の料金でルータ型のWeb Caster V100が利用できることを考えると、VoIPアダプタは純粋に「アダプタ」として利用するのが賢明と思われる。

 また、ファームウェアの更新も工夫が凝らされている。ファームウェアを更新する場合はVoIPアダプタの設定画面を開き、指定されたWebサイトのボタンを押すだけで自動的に更新を行なうことが可能だ。IP電話設定のダウンロードも合わせて、できるだけユーザーに余計な処理をさせない工夫がなされている。

 なお、ファームウェアの更新の場合はパソコンのLANケーブルを再びVoIPアダプタへ接続する必要があり、この点では通常のIP電話対応機器よりも作業が煩雑になる。そのためVoIPアダプタの設置はファームウェアの更新を考慮して行なっておくほうが良いだろう。わざわざケーブルをつなぎ直したくない、というのであれば、パソコンをVoIPアダプタに接続したまま利用するという方法もあるが、前述の通りスループットや機能面で大きな制限があることを踏まえる必要がある。


AtermWB7000Hの測定結果 VoIPアダプタをルータとして測定

設定終了後の接続イメージ ファームウェアの更新画面。IPアドレスは工場出荷時から変更していなければ特に入力する必要はない

 設定のダウンロード機能やマニュアル類を豊富に同梱するなど、VoIPアダプタの導入は比較的わかりやすい。ルータの導入が前提条件のため、初心者向け製品とは言い切れないものの、よけいな設定をできるだけ省略できる点では利便性が高いといえる。何よりもルータを導入済みの環境を変えることなくIP電話を導入できるという意味では、現状では唯一無二の製品だ。今後はより多くのユーザーがVoIPアダプタを利用できるよう、動作確認済みルータと設定ダウンロードサービスの拡大に期待したい。


関連情報

URL
  VoIPアダプタ(NTT東日本)
  http://www.ntt-east.co.jp/ced/goods/voip/
  VoIPアダプタ ルータ確認状況(NTT東日本)
  http://www.ntt-east.co.jp/ced/goods/voip/taiou.html
  VoIPアダプタ ルータ確認状況(NTT西日本)
  http://www.ntt-west.co.jp/kiki/consumer/flets/voip/check.html

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(甲斐祐樹)
2003/06/09 14:16
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