Broadband Watch logo
最新ニュース
【短期集中連載】一家に1台! NASで変わる家庭内のデータ保管術
第3回:「データが消えた!」そんな事態に備えるNASのバックアップ機能

 実際にNASを購入する場合、選ぶ基準はどこにあるでしょうか。低価格なNASも魅力的ですが、価格の高い高性能な製品には、価格なりのメリットがあります。高性能NASの特徴を見ながら、NAS選びのポイントを見ていきましょう。





 いつものようにNASの共有フォルダから文書を開こうとしたら、エラーが表示され、まったくアクセスができない……。おそらく実際にトラブルに見舞われてみないとわからないかもしれませんが、この瞬間は本当に”凍る”ような思いがするものです。

 第1回でNASにデータを集中させておくことのメリットを紹介しましたが、大切な文書はもちろんのこと、かけがえのない写真やビデオ、自分だけでなく家族それぞれのデータなど、さまざまなデータが集中しているNASにトラブルが発生すると、その被害は計りしれません。


NASにトラブルが発生すると、データが集中しているだけに、その被害は大きくなってしまう

 NASの耐久性に関しては各メーカーとも非常に配慮してはいます。しかし、24時間365日とまではいかないものの、パソコンと比べると連続稼働している時間が長く、複数のユーザーからのアクセスが集中するなど、その利用頻度も高くなりがちです。ここに熱、ホコリ、経年劣化、落下・転倒などの要因が重なれば、保存されているデータも少しずつ「データ消失」の危険にさらされる可能性が高くなっていきます。





ハードディスクの故障に備えるには

 もちろん、だからといってNASの利用を避ける必要はありません。大切なのは「NASもいずれ故障する可能性はある」ということを認識した上で、安全性の高い製品を選んだり、きちんと対策をしておくことです。

 たとえば、最近のNASには、どの製品にもバックアップ機能が搭載されています。USBで外付けのハードディスクをNASに接続し、バックアップを実行することで、NASのデータをUSBハードディスクにバックアップできます。これを定期的に実行しておけば、万が一のトラブルでも迅速にデータを復元できるというわけです。


NASには、ほとんどの場合バックアップ機能が搭載されている。この機能を利用すれば、外付けのUSBハードディスクなどにデータをバックアップできる

 また、最近の製品では「ジャーナリングファイルシステム」と呼ばれるファイルシステムが採用されることが多くなってきました。これはデータの更新情報をログファイルに記録することで、データの記録ミスや突然の電源断などのトラブルが発生した際でも、ログからデータを復旧することができる技術です。

 これは万全の技術ではないため、バックアップとの併用が不可欠ですが、ジャーナリングファイルシステムを採用していない古いNASなどと比べると、その安全性ははるかに高いと言えるでしょう。





手間いらずで高い安全性を実現するRAID対応NAS

 そうは言っても、いろいろな設定が面倒そう。もっと手軽に安全性を確保できないのか? そんな人は、より高い安全性を得るために、もう少しNASにコストをかけてみるという方法もあります。

 その代表とも言えるのがRAIDに対応したNASです。RAID(Redundant Array of Inexpensive Disks)とは、複数台のハードディスクを利用してデータの安全性を確保する技術です。具体的には、データを書き込む際に、複数台のハードディスクにデータを分散して記録します。万が一、複数台のハードディスクのうちの1台が故障しても、残りのハードディスクに分散されたデータから元のデータを復元したり、1台が故障したままの状態で暫定的に運用を続けることが可能なのです。


複数台のハードディスクを搭載することで、ハードディスクのトラブルにも対応可能なバッファローのRAID対応NAS「HS-DHTGL/R5」

 RAIDには、その形態によっていくつかのレベルがあります。たとえば、RAID1は「ミラーリング」と言って、最低2台のハードディスクを利用し、その両方に同じデータを書き込む方式。RAID5は4台以上のハードディスクを利用し、1~3までにデータを分散して記録し、残りの1台に誤り訂正符号データを記録する方式です。


RAID1は2台のハードディスクに同じデータを記録する。一方、RAID5では各ハードディスクにデータを分散させ、さらに誤り訂正符号(パリティ)を記録する

 RAID対応NASでも、設定を変更することでRAIDの方式を選択することができますが、通常は出荷時状態でRAID5に設定されているのが一般的です。このため、RAID対応NASだからといって面倒な設定などは必要なく、通常のNASと同様に、基本的にはつなぐだけですぐに利用できます。


RAIDの方式はNASの設定画面で選択可能。ただし、製品によって設定できるレベルは異なる

 なお、RAID対応NASの中には、故障時の復旧時間短縮のために、ケースタイプのハードディスクが採用されている場合があります。この場合は「ホットプラグ」と言って、NASの運用中にハードディスクの抜き差しをすることも可能です。

 ハードディスクが故障すると、ランプなどで警告が表示されますので、ケースをさっと引き抜いて新しいハードディスクを装着すれば、再構築が行なわれて元通りに復旧するというわけです。


ホットスワップに対応したNASの場合、稼働中でも故障したハードディスクを素早く取り出して交換できる




コストは安全性と容量の対価と考えよう

 このようなRAID対応NASは、これまで主に企業向けの製品で搭載されていましたが、最近では家庭向けの製品も登場し、低価格化も進んできました。

 低価格化と言っても、搭載されるハードディスクの台数が多いため高価であるのは事実です。1TBのモデルで7~9万円前後、2TBのモデルともなれば13~16万円前後の価格にもなってしまいます。ただし、その分、1TB(RAID5で実質的に利用できるのは750GB)と容量は多く、ハイビジョン映像などの大容量の映像データなども気軽に保存できます。


家庭向けの低価格製品ながらハードディスクを4台内蔵したRAID対応NAS「LANDISK Home HDL4-G1.0」

 このほか、RAID対応NASには、ハードディスクに保存されたデータを暗号化する機能や、第2回で紹介したDLNA対応などのマルチメディア機能などが搭載されているモデルもあり、コストパフォーマンスは高いと言えます。

 NASを選ぶ際は、どうしても価格の絶対値に注目してしがいがちですが、容量とのバランスや付加機能、そしてデータを保管する際にもっとも重要な「安全性」を考慮すると、高価なRAID対応NASを選ぶメリットも見えてくることでしょう。

 もちろん、低価格なNASであっても、運用方法次第では安全性を確保することができます。バックアップ機能を利用して定期的にデータをバックアップしたり、複数台のNASを同時に利用してお互いにデータをバックアップし合うといった使い方も考えられます。また、ハードディスクは利用時間に応じて故障率が上がる特性を考慮し、1~2年とNASの利用期間を定め、こまめに買い換えるという対策も考えられるでしょう。

 もしも、小規模なオフィスやSOHO環境などでNASを使うのであれば、このような安全性を確保するための対策を事前に考慮しておくことをお勧めします。





そろそろ購入を検討したい

 3回に渡ってNASの基本から、機能紹介、選び方などを紹介してきましたが、ホームユースではまだNASの知名度は低く、使っている人も少ない状況です。しかし、家庭向け製品でも機能や安全性が高まりつつあり、大容量ながら低価格の製品も増えてきています。

 特に、今後はネットワークに対応した家電製品などが増え、ホームネットワークが本格的に普及することが期待されています。このようなホームネットワークで、NASはデータを保管する中心的な役割を果たすことが予想されます。

 家庭内にPCが複数ある環境であればNAS導入のメリットも大きく、利用を検討してもようでしょう。また、実際に購入しないまでも、NASとはどのような製品で何ができるのかを確認しておくだけでも十分役に立つでしょう。家庭内のネットワーク環境やコストなどを考えながら、導入を検討することをお勧めします。


関連情報

関連記事
【短期集中連載】一家に1台! NASで変わる家庭内のデータ保管術
第1回:家族でNASを共有して「あのファイルどこにいった?」を無くそう

【短期集中連載】一家に1台! NASで変わる家庭内のデータ保管術
第2回:DLNAやiTunes連携など、NASの便利な機能を使いこなそう



(清水理史)
2007/05/31 11:02
Broadband Watch ホームページ
Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.