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韓国KTによる世界最大級の公衆無線LANサービス
「NESPOT」体験レポート

 韓国の大手通信事業者KTが運営する公衆無線LANサービス「NESPOT」は、13,000カ所以上のアクセスポイントを構築、ユーザー数はすでに30万を超えているという。韓国で実際にNESPOTを利用してみたので、その使用感などをレポートする。


30万以上のユーザーを抱える巨大な公衆無線LANサービス

NESPOTの無線LANアクセスポイント
 NESPOTは、韓国の大手通信事業者であるKTが運営するワイヤレスインターネット接続サービスだ。家庭内のインターネットを無線化するサービスに加えて、韓国内の宿泊施設や飲食店など約13,000カ所にアクセスポイントを設置、すでに30~40万近いユーザーを獲得している。また、2004年内にはアクセスポイントの数を20,000カ所へと拡大する予定で、その規模は世界最大級だという。

 日本の公衆無線LANサービスと比較してみよう。日本国内で最もユーザー数が多いと推測されるのは、2004年8月に3万ユーザーを突破したとの発表を行なったNTT西日本の「フレッツ・スポット」だ。このフレッツ・スポットのアクセスポイント数は8月末で1,600カ所を超え、2004年度内に3,000カ所へ設置する予定という。単純に数値だけで比較しても、NESPOTの規模の大きさがわかるだろう。

 なお、韓国の面積は日本の約37万7,887平方kmと比較して約4分の1程度の9万9,274平方km、人口は2002年末の時点で日本の1/3程度の約4,778.6万人(外務省調べ)。面積や人口との比率で考えれば、韓国での公衆無線LANサービス普及率はさらに高いといえるだろう。


HOTSPOTの国際ローミングでNESPOTを体験

国際ローミングではNESPOT用のIDとパスワードが割り当てられる
 規模は大きいながらも、NESPOTはあくまで韓国向けのサービス。旅行者などが簡単に利用できる環境ではない。ただし、現在はNTTコミュニケーションズ(NTT Com)の運営する「HOTSPOT」が、NESPOTとの国際ローミングサービスを試験的に実施している。このローミングサービスに申し込み、韓国でNESPOTを実際に利用してみた。

 HOTSPOTの国際ローミング試験サービスは3月25日から開始、9月下旬に終了する予定だ。モニターの対象はHOTSPOTの月額プラン、NTT Comのオンラインストレージサービス「cocoa」とHOTSPOTがセットになった「OPENプラン」、cocoaのほかにHOTSPOTが分単位課金で利用できる「OPENプラン・ライト」のうち先着1,000名となっている。1日利用の1DAY PASSPORTや、OCNを含む提携プロバイダーのユーザーはモニターの対象外だ。

 試験サービスの対象プランのうち、HOTSPOTの月額プランはオンラインで申し込むと同時に利用を開始できるが、OPENプラン、OPENプラン・ライトはcocoaのみ即時利用が可能で、HOTSPOTは申し込みの10日後以降から利用が可能になる。そのため、今回は韓国からHOTSPOTの月額プランに申し込み、その後に国際ローミングに申し込んだ。

 対象コースですでにHOTSPOTを利用可能なユーザーであれば、国際ローミングはオンラインでの申し込みのみで利用できる。国際ローミング申し込み用の専用サイトでHOTSPOTのIDとパスワードを入力してログインすると、HOTSPOTとは異なるNESPOT専用のIDとパスワードが提供され、NESPOTが利用可能になる。


セキュリティの考えに日本との違いが

NESPOT CM
 NESPOTへの接続には、専用のソフトウェア「NESPOT CM(Connection Manger)」のインストールが必要になる。ソフトは韓国語版のほかに英語版も用意されており、NESPOTのサイトから無料でダウンロードできる。インストール後にNESPOT COMを起動、IDとパスワードを入力するだけでインターネットへの接続が可能だ。

 興味深かったのはNESPOTのアクセスポイント管理だ。というのも、NESPOTではアクセスポイントにWEPキーを設定していないため、アクセスポイントを選択するだけで接続できるのだ。これに対して日本の無線LAN事業者の多くはアクセスポイントにWEPキーを設定しており、そのほとんどはWEPキーをユーザー以外に公開していない。

 セキュリティ的にも日本との違いが見られた。日本では同じアクセスポイントに接続している他のユーザーへのアクセスはできないよう対策が講じられている場合がほとんどだが、釜山展示コンベンションセンター(BEXCO)で試したアクセスポイントでは、他のユーザーのクライアントや共有ファイルが表示されてしまった。NESPOTを利用するユーザーは自分でファイアウォールソフトをインストールしておくといった対処が必要だろう。


NESPOT CMの高度設定画面。接続時間が確認できる 割り当てられたグローバルIPアドレスといった情報も表示される

NESPOTのアクセスポイントはWEPキーが設定されていない 他ユーザーの共有フォルダが表示されてしまった。つまり、ファイアウォールの設定をしていないと、自分のPCの共有フォルダも他人から丸見えということになる

コンテンツが充実、料金は日本と同程度

 コンテンツが充実しているのもNESPOTの特徴で、NESPOT専用のメッセンジャーソフト「KTIman」「imanPlus」や、オンラインストレージ「NESPOT IDISK」といったサービスが用意されている。PDA向けコンテンツはさらに多く、インターネット電話ソフト「NESPOT Phone」やランチャーソフト「NESPSOT Launcher」に加えてKBSやSBSの動画コンテンツ配信も行なわれており、PDAでドラマやバラエティといった映像コンテンツを楽しむことができる。

 NESPOTの料金は、外出先の宿泊施設や飲食店でのみ利用する場合、使い放題プランが15,000ウォン、5時間以上は1分につき20ウォンが課金される準定額プランが10,000ウォン(10ウォン=約1円)。日本の定額制プランではHOTSPOTが月額1,680円、無線LAN倶楽部が1,575円、フレッツ・スポットが月額840~945円程度とほぼ同程度に設定されている。

 なお、NESPOTは公衆無線LANサービスだけでなく、家庭内にアクセスポイントを設置して宅内のインターネット環境を無線LAN化するサービスも提供している。日本国内のサービスでは、ADSLオプションとして無線LAN機器のレンタルサービスを提供しつつ、試験サービスながら公衆無線LANサービスを提供しているYahoo! BBのサービス形態に近いといえるかもしれない。


メッセンジャーソフト「imanPlus」。オンラインゲームやSMS機能とも連動する オンラインストレージの「NESPOT IDISK」

ドラマやバラエティなどのテレビ番組も動画で提供される

携帯電話と公衆無線LANが連動した「NESPOT Swing」

 インターネットに接続できる、という点だけでは、NESPOTは日本国内の公衆無線LANサービスとそれほど差があるわけではない。やはり重要なのは1万3,000カ所を超えるというアクセスポイントの数だろう。韓国中を回って試したわけではないので実際の感覚はわからないが、宿泊施設や外出先のほとんどで使えるほどにアクセスポイント環境が充実しているとすれば、30万を超えるユーザー数というのも納得できる数字だ。また、KTでは無線LAN内蔵の携帯電話とNESPOTを組み合わせたサービス「NESPOT Swing」といった面白い試みも行なわれている。


NESPOT Swing最新端末の「iPAQ SwingPhone」

 日本では、電波法改正待ちで現状は試験サービスにとどまっているサービスが複数あるなどの事情も絡んで、これまでの公衆無線LANサービス市場ではめざましいというほどの伸びはみられない。

 しかし、前述の通りフレッツ・スポットでは、NTT西日本エリアのみで1,600カ所近いアクセスポイントを設置するというリリースが発表された。これは、本格普及に向けてサービス提供側が本腰を入れて取り組み始めたことを感じさせる数字と言ってよいだろう。

 利用エリアについても、Mzoneが東京メトロ全駅のカバーを発表したほか、JR駅構内や主要航空にも着々とアクセスポイントが設置されつつある。また、業務用ではあるが無線LAN機能内蔵の携帯電話もNTTドコモから発売予定だ。

 この数年急速にブロードバンド化が進み、ブロードバンドが一般化しつつある日本で、公衆無線LANサービスが今後どのような進化を遂げるのか、公衆無線LANサービスの今後に期待したい。


関連情報

URL
  KT社NESPOTとの国際ローミング実験
  http://www.hotspot.ne.jp/korea/kt_1.htm

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(甲斐祐樹)
2004/09/10 11:30
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