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ブロードバンドも“It's a SONY!?”


東急CATVを使ったソニーのブロードバンド戦略

東急CATVの新しい社名は“イッツ・コミュニケーションズ株式会社”
 昨年3月に、株式会社東急ケーブルテレビジョン(東急CATV)、東京急行電鉄株式会社ならびにソニー株式会社の3社は、東急CATVのブロードバンド時代に向けた変革を加速していくことで合意した。これを受けて、東急CATVは今年の8月1日から社名を“イッツ・コミュニケーションズ株式会社”(英文名: its communications Inc.)に変更した。

 同時に、競争が激化してきたブロードバンド市場におけるユーザー層の拡大、信頼性の高いネットワークの整備、電子マネーサービスの利用による安全な決済手段の提供等をはじめとしたサービスを提供する意向だ。

 3社は、イッツ・コミュニケーションズを“ブロードバンド・コミュニケーション&エンタテインメント企業”に育成していくとしている。

 東急CATVは、都市型CATV業界の草分け会社の1つとして、CATVネットワークをインフラとして使ったブロードバンド・インターネットサービス事業の構築を積極的に展開してきた。

 サービスエリアに比較的高収入層の住宅地を抱えていたことから、経営的にも順調に加入数を伸ばし、単年度黒字基調にまで近づいた。

 しかし、400社におよぶ東急グループ各社の経営不振の煽りを受け、グループのリーダーである東急電鉄が株価安定策をとった。また、東急CATV自体のIPOに向けた資金安定化策などの一環として、東急電鉄経営陣がソニーからの出資を受け入れた、というのが業界での通説だ。

 これによりソニーは東急CATVの株式15%を取得し、経営面でも一気に存在感を強めた。

 さらに、ソニーは東急陣営に対してこれまで東急CATVが自ら行なってきた接続サービス業務の設計、構築、運用ならびにバックボーン接続、システムインテグレーションなどの基幹業務をAII社に委託することを合意させた。

 このAII社は、ソニーが東急電鉄、関西電力、伊藤忠商事などの出資を受けて設立したブロードバンドコンテンツ、サービス配信会社で、ソニーは51%の株式を所有している。ソニー出身者が経営トップを務めるソニー会社なのだ。

 つまり、東急ケーブルはもはやソニーのCATV会社になってしまったのである。近い将来には、So-netの一部になってしまうのではという観測もある。

It's a SONY!?

 今回の社名変更に関連する3社の報道発表資料を注意深く読むと興味深いことが分かる。ソニーの発表資料を見ると「ソニーがリーダーシップをとりながら…」と断言しており、あたかも東急CATVのケーブルネットワークを“パイプ”として借りるようなニュアンスにさえ取れる。

 表面的には、従来からの東急CATVの路線を継承しながら、インターネットになじみの薄いシニア世代、主婦層などを主な対象にCATVインターネットサービスやCATVサービスを提供していくと説明している。

 具体的には、新規ユーザーを対象にテレビ、インターネットなどを家の中の好きな場所で楽しめるソニー製の“エアボード”を利用した加入キャンペーンを行なう。また、電子マネー“Edy"を使ったインターネットショッピングの提供を予定している。このEdyは、ソニーグループが50%近い株式を所有し経営陣もソニーが抑えるビットワレット株式会社が10月からサービスを開始するものだ。

 さらに、ソニーはAIIを介して3Dチャットやコミュニケーション機能が楽しめるソニーのエンターテインメントコミュニティーサービス“こみゅー3D”を提供。株式会社ソニー・ピクチャーズエンタテインメントにより配給作品の予告情報や将来的なネット試写会実施も視野に入れたサービス提供も東急CATVで進めて行く計画だ。

 ソニー関係者の言葉を借りれば、「東急CATVはソニーのブロードバンド製品のテストグラウンド」。まさに、東急CATVはソニーの出資を受けたがために、軒先貸して母屋までのシナリオを演じているような気がしてならない。

 ところで、新商号の“its”は“Interactive Transcendent System(=卓越した、優れたコミュニケーションシステム)”という意味とか、Interaction Ties Society、Indispensable Total Service、Integration by Tokyu and Sony、Innovate! Transform! Start!などの意味、との解説が報道資料の記事欄にはある。

 しかし、この社名からはどうしても「It's a SONY」を連想してしまうのは筆者だけだろうか。

 もっともソニーが関与することで当然のことながらメリットも多数ある。前述のさまざまなサービスやハードウェアを利用できるのもその一つだ。

 大切なのは、経営の自主性を保ったまま、うまく相乗効果を出すことができるかどうかである。歴史ある両社が、今後、どういったビジネスプランを展開するのか。結論が出るまで、それほどの時間はかからないだろう。

東急CATVと東急電鉄、これにソニーが加わるメリットを活かせるかがカギ!?

長門雄太
国内よりも国際で知られた異色のITスーパーマン。考案した特許はPDA、デジカメ分野でも活かされる。幾つかの仕事を器用にこなすマルチ人間。
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