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[2002/04/12]
韓国ブロードバンドはADSLからCATVへ
[2002/03/29]
韓国のホットスポットサービスの動向
[2002/03/08]
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韓国のホットスポットサービスの動向


 日本では、MISなどが中心となってIEEE802.11規格をベースにしたホットスポットサービスを東京・山手線内において拡大展開しつつある。また、NTT西日本も大阪を中心としたエリアでフレッツユーザーを対象に同様の試行サービスを行なっている。

 一方、ADSLを用いたブロードバンド先進国の韓国では、ADSL加入者が800万を超えた現在、次のブロードバンドサービス展開のひとつとしてワイヤレスブロードバンドサービスを開始した。今回、訪韓し現場を実査したので状況を報告したい。

MISの技術がソウルにも活きていた!

屋外設置のアンテナと基地局
 ソウル市内の人気観光スポット「東大門」の北西部に位置する大学路という地域で、リング状に設置されたCATVインターネットに無線ルータ40台を使った11Mbpsのホットスポットのトライアルサービスが2001年11月から2002年4月までの予定で行なわれている。CATV+無線アクセスという組み合せでは世界初の試みだろう。

 この大学路という地区は、以前にソウル大学があった場所で、現在は芸術家を目指す若者たちの集まる街となっている。無線基地局は、ルート製の無線ルータを利用しMISが開発したモバイルインターネットのソリューションを用いており、同地区内にある29カ所のインターネットカフェを中心に屋外のものを含めて40台が設置されている。

 大学路の中心部に位置する若者カップルの集まるマロニエ公園にほど近いところに「Maum Cafe」と呼ばれる小さなコンサートホール的な雰囲気の漂うカフェがある。Maumとは韓国語で「心」を意味し、店内も一見ホットスポットサービスとは縁遠い癒し系の雰囲気である。が、壁面には室内用の無線LANアンテナが設置され、店内にはCCDカメラ付きの高性能PCが配置されており、まさにホットなスポットといえる。

 無線アクセスサービスは、MIS、ルート、韓国の三星グループのハンソルなどが共同出資で2001年10月に設立したWireless Broadband Service(WBS)が、AOW(Any One Wireless)のサービス名称で提供している。WBSは、三軒茶屋のトライアルなどで有名なMBA(Mobile Broadband Association)の韓国での活動の中心的役割もしている。

無線基地局と室内アンテナ
 
室内アンテナ

3G危うし?

CFタイプの無線カードを挿入したiPAQ
 AOWの無線部は数々の独自技術を有しており、一般にいわれる無線LANの延長上にあるホットスポットサービスより高機能なものを目指しているようだ。各無線基地局は大学路周辺にCATVサービスを提供している中央放送社のCATVネットワークに接続されている点でもユニークな展開をしている。

 無線基地局はルータ機能も有するルート製、屋内・屋外アンテナは日本アンテナ製を用い、パソコンあるいはPDAに挿入する無線LANカードはWBSが開発した韓国製のものを使用している。この無線LANカードは三軒茶屋などのMBAトライアルサービスでも使用されている。すでに、CFサイズのカードも開発されMaum Cafe店内ではCompaq のiPAQを用いたビデオサービスのデモも行なわれている。機能面では、ハンドオーバー機能やローミング機能も有しており、セキュリティに関しては基本的にMISの三軒茶屋実験と同じレベルであり、ユーザごとにMobile IPを付与し、Dynamic Key Exchange手法とRADIUSサーバーによる認証を行なっている。

 画期的な試みとしては、iPAQを用いてPhone to PDA、PDA to PDAのVoIPも提供している点だ。韓国でも携帯電話の普及は急速であるが、料金負担は若者には苦しい。そこで、無線アクセスを用いたモバイルVoIPを提供しようというものだ。商用化した場合にイヤフォンマイクを使うという制限は付くかもしれないが、すべてのモバイル環境をブロードバンド環境で提供する点で画期的なものになりそうだ。

Hanaroも参入

 韓国NCCのエースであるHanaro Telecomも、IEEE802.11b規格を使い11Mbpsの無線アクセス環境を提供するホットスポットサービスをソウル市内の地下鉄構内で2001年12月3日から行なっていたが、2月1日からIEEE802.1xに対応しワールドカップ前に全路線全駅、さらには地下街にも展開する計画の商用サービスを開始した。すでに、全国100地域でサービスを提供しており、ロッテリア、バーガーキング、ガソリンスタンドなどとのチャネルマーケティングを進め、2002年末には1万5000の基地局を設置する計画だ。

 Hanaroは加入者系の無線利用に以前から積極的で、韓国で初めてのLMDS(Local Multi-point Distribution System)によるインターネットアクセスサービスの提供を2000年7月1日から行なっている。LMDSは28GHz帯のマイクロ波を利用して最高7Mbpsを提供する技術で、光ファイバ並みの大容量でインターネットやCATVに接続する用途もある。LMDSの一般家庭および小規模ビジネス向けのサービス料金は2Mbpsでの無制限インターネットアクセスで月2万8000ウォン(約2800円)、3つのIPが割り当てられる中規模ビジネス向け2Mbpsサービスの場合、7万5000ウォン(約7500円)である。この料金と比較すれば、ホットスポットサービスの新規加入料3万ウォン(約3000円)、定額使用料が月6万ウォン(約6000円)はリーズナブルかもしれない。さらにHanaroが提供するブロードバンドインターネットサービスの既存加入者は、加入料なしで月3万ウォン(約3000円)を支払えばよい。

 Hanaro Telecomは元祖ADSL通信事業者であるが、2002年からはCATVに事業の軸足をシフトしつつあり、基地局の設置環境に応じてCATV、ADSLへの接続を使い分けることで有線部分のコストを抑える考えだ。現在設置されている基地局の多くはADSLに接続されているが、今後はCATVに接続するケースも増えそうである。

Korea Telecomも全国サービスを目指す

 Korea Telecomでは、昨年夏から全国42カ所にIEEE802.1xを用いたホットスポットを設置し試行サービスを行なってきたが、技術的確認が終わり2月1日から「NetSpot」という名称で商用サービスを開始した。ワールドカップに向けて、主要駅、公共施設、大学構内などに積極的に基地局を設置しており、2002年末には1万台を設置する計画だ。しかし、商用サービスでは定額制で、月3万5000ウォン(約3500円)と韓国の平均的通信費と比べ、割高感がある。

 Korea Telecomでは、NetSpot上で高付加価値サービスを提供する計画で、ワイヤレスVoIPサービスや特別仕様の解像度を2倍以上に向上させたPDAを用いたKT PDAサービスも3月末から予定している。

 韓国では、モバイルキャリアがホットスポットサービスとセルラーのデュアルバンドソリューションでワイヤレスブロードバンドを少ない投資で早期に普及させる考えだ。Korea Telecomは子会社のモバイルオペレータKTF(Korean Telecom Freetel)と共同で新型携帯でサービス提供を検討している。一方、Hanaro TelecomもLG Telecomと共同でホットスポット(点のモバイル)ではIEEE802.1xを利用し、移動中(線のモバイル)ではCDMA2000 x1のモバイルインターネットを提供する計画だ。SK TelecomやDACOMも同様の戦略で市場参入を予定しており、日本はワイヤレスブロードバンドでも韓国に先を越されそうな状況である。

長門雄太
国内よりも国際で知られた異色のITスーパーマン。考案した特許はPDA、デジカメ分野でも活かされる。幾つかの仕事を器用にこなすマルチ人間。
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