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CATVブロードバンドが目指す戦略
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CATVブロードバンドが目指す戦略
~アットホームジャパンの挑戦~


 ブロードバンドブームの牽引車の1つであるCATVインターネット。その中で圧倒的なシェアを誇るアットホームジャパンが事業説明会を開催した。価格破壊の進むADSL市場を横目で睨みながら、日本を代表する新たなブロードバンドビジネス戦略を打ち出している同社にスポットを当ててみた。

CATVの二種事業者的役割

 米国では、放送コンテンツを中心にCATVサービスを行なう事業者と、これら事業者のCATVネットワークを使ってインターネットサービスを提供するCATVプロバイダーに業態分割されている。わが国の場合には、どちらかといえば、CATVサービス事業者がテレビ放送コンテンツの配信とインターネットサービスを一緒に提供しているケースが多い。

 しかし、住宅が密集した都市型CATVならともかく地方都市での単純放送配信だけを行なってきた中小事業者がネットワークをIP対応するための投資はリスクが大きい。とくにバックボーンネットワークを安価に構成することに苦慮している。このような状況を好転するために、CATV事業者が所有する既存の同軸CATVネットワークをIP化しバックボーンへの接続、ビリング(支払い)などのファシリティを提供しているのがアットホームジャパンであるといえるだろう。つまり、CATVインフラそのものは自ら所有せず、事業者の同軸ケーブルにIPという付加価値を付けるCATVプロバイダーがアットホームジャパンのビジネスだ。

お客様は事業者

 前述のように、アットホームジャパンのお客様は、エンドユーザーではなくCATV事業者が中心である。そのため、低価格でインターネットバックボーンを提供する1次プロバイダー的な役割を持っており、サーバーの構築、システム運用・管理代行、ASPソリューションの提供、リッチコンテンツの配信、CATVプロバイダー関連のマーケティング・コンサルティング、ヒューマンリソース提供などのフルサービスの請負を行なっている。

 最近では、TV映像コンテンツの配信だけでは飽き足らないCATV加入者のために、バラエティに富んだリッチコンテンツの単独配信も積極的に行なっており、CATV事業者のみならず、ADSL事業者など他のブロードバンド事業者に対するコンテンツ配信も多数手掛けている。

 CATVインターネット市場も独占から競合の時代に入り、さらにはADSLや光ファイバなどによるブロードバンドインターネットサービス事業者との競争も激化している。とくに、Yahoo! BBの参入による価格破壊により、低コストの経営体質に変身する必要がある。アットホームジャパンでは、このような厳しい市場環境の中でもユーザーの増速ニーズに安価に応えるために、低価格・広帯域バックボーンの調達を行ない、多くのCATV事業者の支持を受けている。

快速・高品質・おもしろコンテンツ

現状や今後の事業について説明するアットホームジャパンの廣瀬社長
 ブロードバンドサービスを常時接続で安く提供する。これだけでは、最近のユーザーは満足しない傾向にある。カタログ上の高速をうたったところで、バックボーンが非力でサクサクつながらない、というクレームメールをADSL関連サイトでよく目にするようになった。ADSL先進国といわれた米国では、最近、相次いでADSLのトップ3社が倒産に追い込まれたが、原因はカタログに偽りあり、という話が風説となってユーザーに行き渡ったからといわれる。わが国でも、同様の現象で危機に直面しそうなADSL事業者が出てきそうな気配だ。

 高品質のバックボーンを提供することはもとより、充実した加入者サポートや事業者向けの技術サポートもブロードバンド業界では重要なカギである。アットホームジャパンのインフラ技術はNASAの地上系、宇宙系のネットワーク構築を手掛けてきた米国を代表するネットワークアーキテクトにより設計構築されている。これは、多数の見学者が物語るように、わが国のブロードバンドインターネットにおけるモデルシステムともいわれている。

 筆者も、昨年5月のアットホームジャパン本社ビルのオープンハウスに参加し、NOC(Network Operation Center)やマシンルームの一部を見学したが、まさにNASAのオペレーションセンターの雰囲気が漂っていた。加入者サポートツールも最新のものが導入され各地に配備されている。今後は、高品質なサービス提供を志向し、99.999%の高信頼度実現を目標にしていく意気込みのようだ。

 ところで、同社社長の廣瀬氏は、IBMを振り出しに、アスキー、セガのマネジメントチームの中核として活躍し、新技術や新サービスに積極的な経営者として社内外から高く評価されている。また、多趣味・多才であることからコンテンツ選定には陣頭指揮をとっているという。米国をはじめ欧州で注目されている総合コンテンツハンドラーであるCenterseat社と提携し、凸版印刷や国内プロバイダーと共同でCDN(Contents Distribution Network)構築を目指している。

急成長の一途をたどる加入者数

 CATV業界では、加入者数の尺度として実際の加入者数とホームパスという2つの尺度を使う。前者は読んで字の如くであるが、後者は、自分の家(ホーム)の前にCATVの同軸ケーブルが通過(パス)していて、申し込めばすぐに加入できる状況にあることを示す数字だ。この数字が大きいほど潜在加入者が多いことを意味し、事業力を示すものでもある。

 アットホームジャパンによれば、現時点で実に北海道から九州までサービスを提供し、ホームパスは690万におよぶ。2001年末にはコンテンツ配信サービスの急激な増加により、1000万世帯にサービスが提供できるというから驚きだ。もちろん、CATVブロードバンド業界でのシェアは50%を超えている。

 アットホームジャパンでは、加入者数やホームパスの順調な伸びだけに満足していない。今後、激化商戦が予想されるブロードバンド市場では、高速広帯域というグラウンドで安い、速い、高品質を誇ってもダメだ、と廣瀬社長は断言する。同社では、リッチコンテンツの充実に経営リソースを注力し、ユーザーの満足度99.999%を目指していく。これまでにないおもしろいコンテンツや画期的な新サービスを創造するという意気込みに大いに期待したい。

長門雄太
国内よりも国際で知られた異色のITスーパーマン。考案した特許はPDA、デジカメ分野でも活かされる。幾つかの仕事を器用にこなすマルチ人間。
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