12月16日、Future Planning Network(FPN)が主催するブログイベント「ジャパンブロガーカンファレンス」が開催された。イベントには有名ブログの運営者が参加し、パネルディスカッション形式でブログの魅力について意見を交わしあった。
FPNとは、参加型のビジネス向けニュースコミュニティを目指して有志が運営する団体。2004年には影響力を持つ多くの読者に読まれているブロガー「アルファブロガー」を選出するWeb上での試み「日本のアルファブロガーを探せ」を実施、この中で選ばれた11人のインタビューを書籍化した「アルファブロガー」も発行された。
今回のイベントはこの書籍化を踏まえ、「ブロガーのブロガーによるブロガーのためのイベント」というコンセプトで開催されたもの。主催者の1人であるFPNの徳力基彦氏はイベントに趣旨について「ビジネスや技術といった観点ではなく、ブログを書く人がどうすればいいのか、ブロガーの悩みなどを、ブログ界の“濃い”人から聞いて欲しい」と語った。
■ 「毎日更新」「悪口を書かない」がブログの鉄則
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イベントでは○×形式のクイズも出題。「ブログをやめようと思ったことがある」との問いには3人とも「×」と回答
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第1部は、書籍「アルファブロガー」に掲載されたブロガーの中から、「Passion for the future」の橋本大也氏、「ネタフル」のコグレマサト氏、「isologue」の磯崎哲也氏が登場。人に読まれるブログの秘訣をテーマにディスカッションを行なった。
橋本氏はブログの秘訣について「毎日更新は鉄則。ページが多いほどGoogleで検索されやすくなるし、毎日書いていれば文章力も少しは上がる」とコメント。コグレ氏も毎日更新を基本としつつ、「スポーツ新聞のようにキャッチーなタイトルをつける」という点にも気を使っているという。磯崎氏は「条文や法律などの専門用語を長めに引用しているので、そうした専門用語の検索ではSEO効果が高いようだ」との考えを示した。
ブログを書いていて生活が変わったかという問いに、コグレ氏は「(毎日更新するために朝早く起きるようになった」としたほか、毎日1冊の書評をブログで書いている橋本氏は「エントリーのタイトルを書名そのものにしているため、今まで書いた本の半数以上はGoogle検索でAmazonより上位表示される。その影響で著者や出版社と関係が築けるようになってきた」とコメント。磯崎氏は「赤の他人とまではいかないが、知り合いの知り合い程度の人が自分のブログを見て仕事を依頼する、というケースが増えてきた」とした一方で、「ライブドアのニッポン放送買収騒動の際にテレビ出演した時は、ほとんど話をしたことのないような知人や親戚からも連絡がきた。やはりテレビの影響力は大きい」とした。
ブログを書き続けるモチベーションは「もともとバンドで音楽を作っていたこともあり、情報を発信して、見てもらうということが好き(コグレ氏)」と、ブログが趣味の一環になっているという。一方で磯崎氏は「会計財務など専門家の分野で情報を発信していると、他の専門家から情報をもらえることもある」とコミュニケーションの魅力を指摘。さらに橋本氏は「自分は何がやりたくて何ができる人なのか、それを伝える“パーソナルブランディングツール”だ」との考えを示した。
「ブログでこれだけはやらないルール」については「悪いことは書かない」で3人が一致。「批判的に言うのも言い方次第(橋本氏)」「自分が言われて嫌なことは書かない(コグレ氏)」という意見に加え、磯崎氏は「制度などにはネガティブなことを書いているが、個人を傷つけるようなことは書かないようにしている」と話した。
■ ブログは自分をプロモーションするツールに
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第2部の登壇者。左から渡辺英輝氏、齋藤朱保氏、保田隆明氏
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第2部のテーマは「ブログはネットの外でも面白い?」。仕事や現実の世界でブログを活用している事例として、「29man(ニクマン)」を運営する渡辺英輝氏、「shuiro note」を運営、シックス・アパートのマーケティングを担当する齋藤朱保氏、「ちょーちょーちょーいい感じ」の保田隆明氏が登場した。
ブログを始めたきっかけは、渡辺氏が「マラソン初心者がホノルルマラソンに挑戦するというイベントで書いたWeb日記がきっかけ」、保田氏が「SNS事業を立ち上げようとした時、知人から『SNSをやるならブログもやっておくといい』とアドバイスを受けた」とのことで、共に2004年からブログをスタート。一方、齋藤氏がブログを始めたのは2002年と早く、シックス・アパートへの入社もMovable Typeでブログを構築していたことが縁となっているという。
ブログを書いているメリットとして渡辺氏は、木村剛氏を招いて開催したイベントを例に挙げた。ブログ「小鳥」との何気ないコメントのやりとりから実現したこのイベントによってブログのアクセスが急増し、今回のイベントにも招かれるなどネットでの人脈も増したという。「ブログは仕事の一環」という齋藤氏は「初対面だと冷たいイメージに思われることが多いが、ブログを見てもらうことで自分を理解してもらえる」とのメリットを挙げた。
保田氏の場合、ブログは趣味として個人的な内容を書いていたが、FPNの上原氏がそれを気に入ってブログにコメントし、その経緯で今回のパネルに参加。また、証券会社出身の保田氏がライブドアの買収騒動の件をブログで投稿、それを見たテレビ局から出演依頼を受けるなど、趣味のブログが予想外のつながりを生み出しているという。
「ブログとは何か」という点で3人に共通するのは、第1部で橋本氏が挙げた「パーソナルブランディングツール」であること。渡辺氏はWeb広告研究会による「Web人」の受賞や雑誌「販促会議」の表紙を飾った例を挙げ、「これらはブログがあったおかげ」とコメント。「仕事の僕とブログ界の僕という2つの人格があって、ブログ界の僕のおかげで情報伝達が早くなり、プラスに影響している」とした。
齋藤氏は「どこまでが大丈夫なのか、というラインがあいまいだが」と断りつつ、「内容は軽い話題が多いが、仕事先に見られても大丈夫なように気を使っている」と説明。保田氏は「プライベートブランディングはもちろんだが、自分としては趣味の要素も大きい。息抜きに面白いタイトルでエントリーして、反応がよければ嬉しい。渡辺氏と同じく、個人も仕事も関係なくブログを楽しんでいる」と語った。
■ 気軽な匿名ブログ、自分のブランドになる実名ブログ
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第3部に登場した藤代裕之氏、いちる氏、catfrog氏。
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第3部のテーマは「ブログの実名と匿名」。「ガ島通信」の藤代裕之氏、「小鳥ピヨピヨ」のいちる氏、「好むと好まざるにかかわらず」のcatfrog氏が、匿名と実名の違いやメリットについて議論した。
3人のうち、ハンドルネームを使って匿名でブログを書いているのはいちる氏とcatfrog氏。ともに自分がブログを書いていることは、会社の中でも少数の人間しか知られていないという。一方、新聞記者時代には匿名でブログを書いていた藤代氏は、転職を機に実名に切り替えている。
ブログを書いているメリットは「匿名でも身近な人はブログを知っているので、そういう人たちのコミュニケーション(catfrog氏)」「仕事をしていると自分がどういう人間かを忘れがちだが、ブログという息抜きで本来の自分に戻れる(いちる氏)」。藤代氏は新聞記者から転職した経緯を例にとり「記者というものは書くことを奪われるのが嫌で、新聞にしがみついてしまう。僕はブログという自分の書く場所を持っていたことで、その問題から解放された」と語った。
実名と匿名の切り分けは、catfrog氏が「ネットで知り合った人には実名でもいいが、職場の人間にはネットの自分を見られないよう気を使っている」とコメント。また、自分のブログが職場に知られた時に備えて「自社の悪口だけは書かないようにしている」という点にも配慮しているという。また、藤代氏は「実名でも匿名でも、会社の内情や他人に面と向かって言えないことは書くべきではない」との考えを示した。
実名と匿名の違いは「実名なら自分のプライベートブランドになり、人生が広がる可能性もあるがリスクもある。気楽に始められるのは匿名なので、自分がブログで何をしたいのかを考えておくといい(いちる氏)」。実名の藤代氏も「匿名だったら別の人生をブログで歩むこともできる」と匿名のメリットを挙げた上で「もし自分の仕事の延長線上でブログを書くのであれば、匿名で書く場合も実名前提で気をつけて書いておくといい」と付け加えた。
「実名にしたことで悪影響を受けた人もいるのでは」とcatfrog氏が尋ねると、藤代氏は「プライベートブランドなのでダメージを受ける人もいるだろうが、それを乗り越えていける人もいる」と回答。小鳥氏は「ブログをやっていると人生が良くも悪くも変わるという、魔法のような効果はある」と語った。
■ URL
ジャパンブロガーカンファレンス
http://bloggerconference.jp/
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(甲斐祐樹)
2005/12/19 17:27
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