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【NET&COM 2006】
ネットKADEN2005パネルディスカッション「情報家電の将来展望」

 経済産業省は3日、「ネットKADEN2005」表彰式とあわせて、受賞企業によるプレゼンテーションおよびパネルディスカッション「情報家電の将来展望」を開催した。司会進行はネットKADEN2005審査委員長である慶應義塾大学教授の國領二郎氏が務めた。


ソニー西谷氏、ロケーションフリーと他社サービスの連携を示唆

 ソニーコーポレート・エグゼクティブ SVPの西谷清氏は、「ロケーションフリーベースステーションパック」について「テレビについては、高画質、薄型、大画面が主流となっているが、映像については外でも視聴できる点を重視。PSP、ノートPCでの視聴を考慮したことが、ロケーションフリーベースステーションパックの原点となる」とロケーションフリーのコンセプトを説明。また、ロケーションフリーの誕生から現在までの経緯について「最初にロケーションフリーを販売した当初は、インターネットはダイヤルアップのみ、常時接続もなく最も難しかった」とコメント。「現在では、ブロードバンドの普及に加えてHDDレコーダの普及によって土壌が整備され、ユーザーの利用環境が整ったことが後押しとなっている」とロケーションフリーの開発の経緯を述べた。

 ロケーションフリーの今後の展開については、「携帯電話やデジタルスチールカメラ向けなど、新しい市場を開拓したい」とコメントしたほか、「ソニーにしては珍しいが、とてもオープンなサービスを目指している。ロケーションフリーがネット家電の集合体となるよう、様々な企業とサービスの連携を行ないたいと思っている」と、他社サービスとの連携の可能性について言及した。

 また、ネット家電の普及については「ロケーションフリーは、ボタンは電源ボタンのみ、設定も3ステップで終了するほど簡単」とし、「接続環境などの土壌が整えば、プラグアンドプレイの導入なども可能となる」と、家電に求められる簡易性についてロケーションフリーの優位性を語った。一方で、「ネット家電は、宅内で接続する5~10mの部分が最も難しい。家電をインターネット接続するとなると、有線ではコネクタの取り回しがやっかいになる、無線では(電子レンジなどとの)干渉が避けられないのが現状」と、ユーザーごとの接続環境への対応が難しい実態を語った。また、「日本国内で、総務省などの協力を得ながら標準的な接続方式を努力して開発したい」と、ネット家電の普及に向けた新たな規格設立を望んでいる旨を訴えた。


ソニーコーポレート・エグゼクティブ SVPの西谷清氏 ロケーションフリーワールドの製品展開

アップルはiPodを4,200万台出荷。東芝はコンテンツ重視のサービス展開

 アップルコンピュータ代表取締役兼米国アップル バイスプレジデントの前刀禎明氏は、プレゼンテーションにて、「iPod nano」を含めたiPodファミリーや「iTunes Music Store(iTMS)」についてのサービス説明を行なった。前刀氏によれば、iPodファミリーの累計出荷台数は2月3日現在で4,200万台を突破していると発表。また、iPod向けアクセサリーも2,000点以上販売されているとし、「全ての人がiPodを利用していると言ってもいいだろう」とコメントした。また、iTMSでは「サービス開始を待ち望んでいたユーザーが多かった」と前置きし、サービス開始から4日間でダウンロードされた楽曲数が100万件を突破した件に触れ「他社サービスでは1カ月程で達成する数値だ」とサービスの優位性を示した。


アップルコンピュータ代表取締役兼米国アップル バイスプレジデントの前刀禎明氏 iPodファミリーの累計出荷台数

 東芝デジタルメディアネットワーク、デジタルAV事業部DAV商品企画部商品企画担当グループ長の片岡秀夫氏は、HDD搭載DVDレコーダ「RDシリーズ」について「コンテンツを重視していると」とコメント。RDシリーズユーザーの録画予約番組情報にもとづいたランキング情報などを紹介する「おすすめサービス」について、「おすすめサービスによって、新たな番組録画予約を追加するユーザーが約4割増加した。また、増加したユーザーのうち、約4分の1のユーザーが翌週も同じ番組を録画予約している」と、おすすめサービスの効果について語った。今後の展開については、「現在では、コンテンツが多様化し情報との接触が難しくなっている。ユーザーが映像を視聴することは、映像の作り手との接触を持つことに繋がることで、点と点を線で繋ぐネットの利点を生かして人と人とを繋ぐのを助けたい」と意気込みを述べた。


東芝デジタルメディアネットワークの片岡秀夫氏 「おすすめサービス」サービス概要

白物家電や自動車、セキュリティサービスでもネットとの融合が進む

 象印マホービン特機営業部マネージャーの若杉晋輔氏は、電機ポット「i-PoT」利用したポットの利用状況をメールで通知するサービス「みまもりほっとライン」について、「制作のきっかけは医師からの相談で、ネットワーク技術を取り入れることで実現できた」とコメント。また、「ネット家電というお題目を立てて制作したものではなく、ニーズに確実に応えただけ」としながらも「電機ポットにどんなコミュニティツールを搭載すればいいのか、ニーズを見つつ適切な技術を採用していきたい」と今後の展開を語った。

 セコムの個人向け位置情報サービス「ココセコム」については、開発センター技術リサーチ担当グループマネージャーの滝沢博氏は「個人にセキュリティを提供するサービスで、24時間365日監視を行ない即座に駆けつける点がセコムらしいサービス」とサービスの利点を説明。技術面では、「GPSの精度を誤差5~10mに収める事に成功したことが、サービス開始を大きく後押しした」とコメント。また、利用端末については「老人に持たせることが前提だったので小型化が必須であったが、携帯電話の発達によって携帯電話の電池と通信機器を導入することで小型化が可能となった」と説明した。

 ユーザー同士による渋滞情報の共有などが可能なナビゲーションシステム「Hondaインターナビ・プレミアムクラブ」で優秀賞を受賞した本田技術工業(ホンダ)のインターナビ推進室室長の今井武氏は、サービスのコンセプトについて「車は閉ざされた空間であるので、インターネットを利用したコミュニケーションを取れる環境を提供することが、運転の快適さを実現できる」と説明。「車の寿命が7~8年で、ナビゲーション機器の寿命が2~3年であるため、ナビゲーション機器のつなぎをどうするかが課題」としながらも「人と車、車と車がコミュニケーションを取ることで、より早くより快適な車ができると確信している」と意気込みを語った。


「みまもりほっとライン」のサービス概要 「ココセコム」サービスシステム図 「Hondaインターナビ・プレミアムクラブ」のサービス内容

審査委員からネット家電の方向性について意見が寄せられる

 パネルディスカッションでは、ネットKADEN2005審査委員からネット家電のあり方や方向性についての意見や要望が寄せられた。小学館情報誌編集局「DIME」編集長の松元浩一氏は、応募製品について「多くの製品には、いつでもどこでも、監視システム、リモコンの延長の3つの傾向が見られた。しかしこれらは予想できるサービスであり、インターネットを利用することでパワーアップするような家電が欲しかった」とコメント。今後提供されるネット家電については「売りっぱなしで終わりの製品ではなく、インターネットがユーザーをメーカーを繋ぐパイプとなるようなサービスを強調する製品が出てくれるとありがたい」と希望を述べた。

 また、オールアバウト家電担当ガイドの戸井田園子氏は、ネット家電について「家事の分野にネットを落とし込んで、便利にしてもらいたいと思っている」とコメント。ネットKADEN2005の一般投票にて、投票者の大半が若い世代の男性であることを述べ、「ネット家電を、家事に携わる人間や子供、高齢者も手が出しやすい分野にも広げて欲しい」と意見を述べた。このほか、ネット家電の普及については「現在のネット家電は、機能が多く便利ではあるが習得までに時間がかかる。便利でわかりやすいサービスが普及に繋がる」と語った。


ネットKADEN2005審査委員の面々 パネルディスカッションの模様

関連情報

URL
  ネットKADEN2005
  http://www.meti.go.jp/policy/netkaden.html

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(大久保有規彦)
2006/02/03 18:18
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