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【ポッドキャスティング・マーケティングセミナー】
Podcasting関係者が語るマーケティング活用事例と最新動向

 ニフティと博報堂DYメディアパートナーズは23日、「ポッドキャスティング・マーケティングセミナー」を開催した。Podcastingを利用した広告展開の現状や動向が紹介されたほか、関係者によるパネルディスカッションも行なわれた。


多メディア化の時代ではマーケティングの主体がマスから個人中心に

博報堂DYメディアパートナーズの鷲尾和彦氏
 「ポッドキャスティングを活用した新しいマーケティング戦略とは」と題した講演では、博報堂DYメディアパートナーズの鷲尾和彦氏が登壇。鷲尾氏は「ビジネスやマーケティングなどさまざまな面でメディア環境が変化している」と前置いた上で、その原因として「さまざまなメディアが氾濫する多メディア化」「タイムシフトやプレイスシフトといったオンデマンド化」「情報コンテンツ配信ツールの充実」の3点を指摘。中でもオンデマンド化により「いかに効率よく広告を送るかという送り手の観点から、広告が受け取られるかどうかという受け手の観点に軸が移っている」点が重要とした。

 そうしたメディア環境の変化の中で、Podcastingは音声だけでなく画像や動画も配信できるという情報量の多さや聞き手との共感力、コンテンツの個性が特徴的なメディアであると鷲尾氏は語る。また、制作コストや配信コストも安価なほか、オンデマンドで好きな時に聴くことができるという特徴も指摘。さらにコンテンツの質次第では小さなメディアであっても大きな評判を得られるという可能性も魅力の1つだという。

 Podcastingを利用したプロモーション例としては、映画の出演俳優による音声プロモーション、美術館などのイベントを配信するリアル連動プロモーション、地域のFM放送局が全国展開するPodcastingなどの事例を紹介。出版社などが紙では伝えきれない情報を発信する、企業が自ら情報を発信してメディア化するなど、さまざまな可能性があるとした。

 今後のPodcastingマーケティングの観点では「多様性、オープン性、公平性というネット的な視点」が重要だと鷲尾氏は指摘。「これまでのブランディングは層の多いマスを対象としていたが、今後は個人が主体になり、個人のつながりが規模を獲得するという方向になるだろう」と述べ、「絞り込むプランニング」よりも「つくり・広げるプランニング」の視点が重要になるとした。


Podcastingの特徴 マーケティングの主体はマス発からプライベート発へ

米国ではPodcastingへの広告展開が好調

米国ではPodcasting広告の大きな伸びが期待されているという
 鷲尾氏に続き、Ad Innovator編集長の織田浩一氏はPodcastingの海外事例を紹介。米IDCが「2010年には5,680万のPodcastingユーザーが存在する」との調査結果を公表したほか、「2010年にはPodcastingの広告費が3億ドルを超える」という見通しを複数の調査会社が示すなどPodcastingの期待は大きいと説明。「ブログも3億ドルの広告費が見込まれており、広告費に関してはPodcastingはブログを超えるメディアになるとの期待が持たれている」とした。

 こうしたPodcastingの盛り上がりを受けて、米国ではラジオ局やテレビ局が次々とPodcastingに参入したほか、AOLやLogitech、VOLVO、BESTBUYなど大手広告主がPodcastingで広告を展開しているという。この中から織田氏は2つの事例を取り上げて説明した。

 最初に紹介されたのは、家電メーカー「Whirlpool」が配信する「The American Family」。仕事と家庭を両立する母親のインタビューを通じ、Whirlpoolの製品が提案するライフスタイルを伝えるというコンセプトで、ターゲット層である家庭や仕事を持つ両親へのブランド展開、ブランドのロイヤリティー構築といった目的に加えて、インタビューを受けた人が自主的にPRするという口コミ効果も想定。すでに毎回30,000以上のダウンロード数で、Podcastingのキャンペーンそのものもブログを通じて話題が広がっているという。

 もう1つの事例が、ドメインホスティング事業の「Godaddy.com」による「Advertisin2.0」。こちらはPodcastingのディレクトリサービス「Podshow Network」から50の人気サイトに対してバナー広告やCMスポットを配信し、フィードバック計測のために各Podcastingへ個別のコードを挿入した。Podcastingの運営者は自由にGoodaddy.comのCMを作ることができ、自分たちのリスナーに最適な広告コンテンツを管理者がそれぞれに用意することで、他のオンラインキャンペーンよりも高い効果を上げることに成功。結果としてGodaddy.comはP&GやAOLなど多くのクライアント獲得につながったという。

 Podcastingの今後については、音声をテキストに自動変換して検索対象とするPodcasting検索、指定したキーワードに関するiTMSの最新情報を取得するといった事例を紹介し、「キーワードと連動した広告をPodcasting番組に挿入することで、コンテンツに連動した広告を表示できるというステップもこの先にある」と指摘。また、YouTubeを使った映画プロモーション事例なども踏まえ、「Podcastingは音声から映像へという流れもあるだろう」との考えを示した。


WhirlpoolのPodcastingマーケティング戦略 Podcasterを起用したマーケティング戦略

Podcastingの音節ごとテキスト化する検索エンジン 消費者主体の動画Podcastingの流れも

移動中の利用率が高いPodcasting。今後は携帯電話向け配信に期待

ニフティの清水孝治氏(左)とソニー銀行の河原塚徹氏(右)
 セミナーの最後はPodcastingポータル「Podcasting Juice」を担当するニフティの清水孝治氏、「from MONEYKit ポッドキャスティング」を担当するソニー銀行の河原塚徹氏によるパネルディスカッション。モデレーターは日本技芸代表取締役社長の御手洗大祐氏が務めた。

 清水氏は、Podcasting Juiceで行なったユーザー調査の事例を紹介。Podcastingの利用シーンは都市圏では電車、地方圏では車という移動シーンが多いほか、「ほぼ毎日」利用するユーザーが7割以上と習慣的な利用傾向が見られると指摘。また、Podcasting利用者の47.1%が音楽配信サービスの利用経験があるなど、ネットでの情報感度が高い点も特徴とした。

 自身がiPodを購入して以来Podcastingに夢中になったという河原塚氏は、10月の企画立案からわずか2カ月でソニー銀行のPodcastingサイトを開設。Podcastingに関心があるユーザーに対しては企業認知や商品・サービスへの興味喚起を、金融に関心があるユーザーには付加価値の高い金融情報を提供するという2つの層をターゲットとしてコンテンツを展開していくことで、サービス開始から約2カ月で5万ダウンロードを達成。当初予定していたサイト開設期間以降も配信が続いているとした。


Podcasting Juiceに見る利用者動向 開設から約2カ月で2万ダウンロードを達成したソニー銀行の「from MONEYKit ポッドキャスティング」

モデレーターを務めた日本技芸代表取締役社長の御手洗大祐氏
 パネルディスカッションは、Podcastingを利用したマーケティングに関する話題が中心となった。御手洗氏が清水氏へPodcasting Juiceでの事例を尋ねると、清水氏は「企業がメディアとして番組を配信する、すでに立ち上がっている番組に広告を挿入するという2つの方法がある」と回答、「スポンサーの場合は単にCMを流すだけでなく、番組の中でも商品を想起させるようなことをパーソナリティに発言してもらう」と付け加えた。

 河原塚氏はソニー銀行が行なった1時間30分のセミナーを3回に分けてPodcastingで配信した例を挙げ、「受け入れられるか不安だったが反応は良く、当日参加できない人もセミナーのメリットが体感できるという価値があった」と説明。既存の広告キャンペーンと比較し、「内容を丁寧に説明できるコミュニケーション的な部分が良い」と高く評価したほか、「ニューヨークの株式市場を日本語のPodcastingで毎朝配信するというスピードは紙媒体ではできない」との違いも指摘した。

 マーケティング活用の可能性と課題というテーマに関しては、Podcasting以外のメディアと連動したクロスマーケティング展開、携帯電話など視聴端末の増加、Podcastingの効果測定などが挙げられた。清水氏は「音楽対応の携帯電話が増えており、携帯電話向けのPodcastingも考えられる」とコメント。河原塚氏も「ソニー銀行も近々モバイルバンキングを始めるので、そのタイミングで取り組みたい」と期待を示した。


Podcastingの最新動向 マーケティング活用の可能性と課題

関連情報

URL
  博報堂DYメディアパートナーズ
  http://www.hakuhodody-media.co.jp/
  ニフティ
  http://www.nifty.com/
  Podcasting Juice
  http://www.podcastjuice.jp/

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(甲斐祐樹)
2006/05/24 11:02
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