Interop Tokyo 2006で7日に行なわれたカンファレンス「IP放送はどうなる?」において、ソニーコミュニケーションネットワーク(SCN)の久松龍一郎氏からテレビの側面から見たIP放送の考え方が示された。
■ テレビでIP放送をどう攻めるかが重要。パソコンと同じでは意味がない
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SCNの久松氏
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久松氏は冒頭、「ソニーグループでは、多少失敗の歴史もあるがテレビポータルの実現に向けてさまざまな製品を発売してきた」と発言。しかし、「まだまだテレビはテレビで、テレビを通じてインターネットを利用しているユーザーは全体の0.2%にとどまっている」と通信利用動向調査の結果を挙げる。久松氏は「大画面やリモコンでの操作、すぐに使用できるといった期待もあるが、現状では必ずしもそうした声に応えられていない」と付け加えた。
一方、動画配信サービスの普及ポイントに関しては「無料」「豊富なコンテンツ」「テレビで簡単に」の3つがキーワードになると指摘。その上で、久松氏は「ソニーとSo-netでは機が熟したと感じて、BRAVIAの一部モデルにWebブラウザを搭載した」と語り、「定期的にコンテンツを更新を行なう機能の利便性を実感して貰えれば、ユーザーにテレビでのインターネットを利用して貰えるようになる」と述べた。
またSCNは、ソニー、松下電器産業など6社共同でデジタルテレビ向けのポータルサービスを運営する事業会社設立を6月5日に発表している。久松氏は「メーカーの本分としてHD品質のVODコンテンツをテレビ向けに配信したいと考えているが、その際メーカーごとに仕様が異なっていては意味がない。そうした点を含めて、ワーキンググループで検討を行なっていた」という。一方、「豊富なコンテンツを揃えるにはメーカーだけでは当然難しいので、多方面の方々と商品やサービスを提供することを進めていきたい」と語った。
HDコンテンツのVOD配信に関しては、SCNではEdyによる決済に対応したシステムを4月に発表している。「このシステムではプロバイダーフリーで利用できるほか、HDクオリティ、Edyによる簡単決済を実現しているのが大きなポイント。さらに将来的にはデジタルテレビ本体に搭載することも視野に入れたユースケースである」点を強調した。そして、IP放送の普及に向けては「テレビをどう攻めるかが重要で、テレビからかけ離れて、単にパソコンと同じものを搭載しても意味がない」と久松氏は語った。
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ソニーがテレビポータルの実現に向けて取り組んできた製品群
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BRAVIAの一部モデルにWebブラウザ機能を搭載
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デジタルテレビ用共通ポータル構築に向けて6社共同で事業会社を設立する
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HDコンテンツ配信に対応したVODシステム。Edyによる決済も特徴の1つ
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■ 著作権処理が前進すれば、レコメンド技術やメタデータ管理が重要に
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テレビによるIP放送実現に向けた技術的課題
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技術的側面としてはユーザーインターフェイス性やコンテンツの検索性、著作権保護技術の3点を挙げる。このうち、ユーザーインタフェイスに関しては「ワンボタンで操作が完了される点が重要で、複雑な階層では利用されないのは経験上理解している」とコメント。「デジタルテレビの価格競争が進む中で、余計なリソースを盛り込まないのが暗黙の了解になっているが、どのぐらいのタイミングで実装していくかがポイントになるだろう」とした。
また、「今後、著作権処理の問題が前進して、コンテンツが多数登場した際には、視聴したコンテンツの検索性への対応も必要になる」と考えを示し、「その際には、レコメンド技術やメタデータの管理などが重要になってくる」と語った。
久松氏は「HDDレコーダの普及はユーザーに大きなインパクトを与えた。これにより、タイムシフト機能などを通じて好きなときに好きなコンテンツを視聴したいというニーズも高まりつつある」と発言。その上で久松氏は「こうした延長線上にIPによるVOD配信があり、いよいよテレビの出番だと考えて頑張っていきたい」と締めくくった。
■ URL
Interop Tokyo 2006
http://www.interop.jp/
So-net
http://www.so-net.ne.jp/
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(村松健至)
2006/06/07 21:50
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