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【WIRELESS JAPAN 2007】
クアルコム高木氏「IEEE 802.11nは2008年秋に標準化を完了」

 WIRELESS JAPAN 2007のネットワークコンファレンス IEEE 802ワイヤレス技術フォーラムでは、クアルコム シーディエムエー テクノロジーズ 執行役員 テクニカルマーケティング部長の高木映児氏が、IEEE 802.11nの標準化動向や技術説明、今後の市場展開などを講演した。


11nの基本仕様をほぼ満たした「ドラフト2.0」

クアルコム シーディエムエー テクノロジーズ 執行役員 テクニカルマーケティング部長の高木映児氏
 高木氏はIEEE 802.11nの標準化動向から講演を開始。2007年3月にドラフト2.0が承認され、続く6月にはWi-Fi Alliance(WFA)でのドラフト2.0認証がスタートしており、2008年秋にはIEEE 802.11nの標準化作業が完了するとの見通しを示した。

 IEEE 802.11gの場合、ドラフトは5.0を超えた段階で対応製品が市場に投入され始めたが、高木氏は「IEEE 802.11はすでにドラフト1.0準拠の製品が市場に出回っている」との現状を示し、「ドラフト1.0では製品ごとに接続できなかったり、機能が限定されたりすることもある」と指摘。「ドラフト2.0も積み残しはあるがほぼ安定的なドラフトになっており、市場の混乱を回避する意味でもドラフト2.0のWi-Fi認証を開始した」と語った。

 なお、ドラフト2.0でもIEEE 802.11nの主要な仕様はほぼ実装されているという。高木氏は「オプションである40MHz幅も、市場の期待が大きいことからドラフト2.0では対応済み」と説明。2008年秋に予定されている追加認証は、家電やモバイル機器向けの仕様が中心になるとした。

 高木氏は、IEEE 802.11nの主要技術であるMIMOの対応機器が2008年に市場の65%を占めるという予測データや、2011年にIEEE 802.11nのチップセット出荷が700万を超えるという市場予測を紹介。さらにIEEE 802.11bからIEEE 802.11gへの移行がほぼ2年で行なわれたという過去のデータも示し、「IEEE 802.11nが2011年に80%を超えるというのもあながち大げさではないだろう」との考えを示した。


IEEE 802.11n標準化の流れ ドラフト2.0と正式認証の違い

IEEE 802.11nの市場予測 11nから11gへの移行は約2年

高速性や通信距離拡大に加え、安定性やスケーラビリティも11nの特徴

IEEE 802.11nとこれまでの無線LANとの違い
 これまでとの無線LAN技術とIEEE 802.11nとの違いは、理論値数百Mbpsという高速性やカバーエリアの拡大に加え、ダイバーシティ効果によるデータ伝送の安定性という特徴についても指摘。また、「これはあまり語られていない特徴だが、1×1構成の6.5Mbpsから4×4構成の600Mbpsまで、多様なニーズに1つの技術で対応できるスケーラビリティも特徴の1つ」とした。

 高速性に関しては、米国の3階建て家屋で計測したデータを公開。2×3構成のIEEE 802.11n製品ではほとんどの場所で50Mbpsを超えるスループットを実現したとし、「HD映像でも2本は転送できる」とコメント。さらにシミュレーションデータでは3×3構成、4×4構成では最も高い値で約200Mbpsを計測したほか、ほぼすべての場所で150Mbps近い速度を実現できているとした。

 到達長距離特性の向上についても説明。高木氏は「48Mbpsの伝送を考えた場合、24Mbps×2のMIMO構成であれば、通信速度は同じであっても受信感度で8dBの余裕が生まれ、長距離化が可能になる」と説明。「通信速度が必要なくても距離を伸ばしたい、というユーザーにも適している」とした。

 スケーラビリティに関しては、「1×1構成であれば既存の無線LANと変わらないように思えるが、ネットワーク内の機器を11nで統一することで、ネットワークスループットの低下をを抑制できる」とのメリットを指摘。「11gの場合、11bとの混在環境ではTCP/IPスループットが約60%低下した」との例を示し、「4×4構成でもアンテナを休ませて1×1構成として使う、ということも可能」など、柔軟な運用ができるとした。

 今後の展開としては、PC周辺機器やPCへの標準搭載に加え、モバイル機器や家電など対応デバイスが幅広く広がると説明。「家電のIP化によって家庭内のデジタルネットワーク化が進む」とした。

 また、携帯電話と無線LANの融合も視野にあり、「携帯電話の弱点は屋内で電波が入りにくいこと。屋内では無線LANだけでなくフェムトセルのようなソリューションもあるが、今後1、2年で何が主流になるか興味を持っている」とコメント。「1つの無線技術ですべてをカバーするのは困難。3G搭載のPCが米国で主流になりつつあり、リアルタイムのデータは3G、重たいデータや付加価値的なものは特定のエリアで無線LANを使うといったコンビネーションも面白いだろう」との考えを示した。


3階建て家屋での計測データ MIMOによる到達長距離メリット

無線LAN搭載製品の広がり 携帯と無線LANの融合も視野に

関連情報

URL
  WIRELESS JAPAN 2007
  http://www8.ric.co.jp/expo/wj2007/

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(甲斐祐樹)
2007/07/18 18:15
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