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ホームエンターテイメント本格化を阻む壁とは

 NetWorld+Interop 2003 Tokyoのコンファレンスにおいて、「これからのホームエンタテイメント」と題した講演が開催された。マイクロソフト、松下電器産業、ソニーの担当者が出席し、家庭内ネットワークをベースとしたホームエンターテイメントのあり方や将来予測について議論した。

 進行役を務めるNetWorld+Interop 2003 Tokyoプロデューサーの大嶋康彰氏はまず、日本国内におけるブロードバンド利用者が1,000万人を越えた状況を説明。新製品として発売されるパソコンにTVチューナーが多数搭載されていることから、「PCがAV機器へ歩み寄る一方、AV機器もまたPC的になりつつある」と述べ、より家庭内において、エンターテイメント要素の強い製品が要望されていると解説した。


映像の蓄積と、自由な視聴スタイル

左よりマイクロソフト 御代茂樹氏、Interopプロデューサーの大嶋康彰氏
 続いてマイクロソフトの御代茂樹氏、松下電器産業の西村明高氏、ソニーの富樫浩氏が、それぞれ展開中の家庭内ネットワークに対する製品・サービスの取り組みを具体的な形で語った。

 マイクロソフトの御代氏はまず「それぞれの端末用途にあわせて開発製品を提供する」という同社のスタンスを解説。具体的製品として海外ではすでに、リビング用途を意識したPC向けOS「Windows XP Media Center Edition」をリリース、さらにPDA向け「Windows CE.NET」といった製品を提供している。そしてその端末間の連携を促す「コンテンツ」の用途として「Windows Media 9」などを合わせて展開しているという。

 また西村氏は「松下電器では、TCP/IPに対応したものだけをネットワーク家電と捉えず、SDカードによる連携が可能な機器も含めて“ネットワーク対応”と定義している」と発言。特に最近はHTML対応ブラウザ・イーサネット端子を搭載するデジタルテレビを中心とした製品展開を行なっているという。

 ソニーの富樫氏もまた同社の新ブランド「CoCoon」の用例を紹介。HDDにいったん蓄積した映像・音声コンテンツを、リビングのPCや、同じく同社のパソコン「VAIO」シリーズで視聴するスタイルを提案している。

 また松下電器産業・ソニーでほぼ共通しているのが、「無線LAN」を活用するための取り組み。両社とも、一般の家庭におけるネットワーク構築用に、無線LANが占める役割は大きいと見ているようだ。加えて、外出先から自宅内の機器にアクセスをする用途などを想定した「ホームサーバー」と呼ばれるカテゴリの製品にも期待を寄せている。


市場の普及はいつなのか

左よりソニー 富樫浩氏、松下電器 西村明高氏
 コンファレンスの後半は、議論に時間が割かれた。大嶋氏が質問を挙げ、それに対して各社が回答するという形式で、まず最初に「著作権処理」への問題が提示された。高名なコンテンツになるほど不法コピーを恐れ、配信するための許可を得られないという傾向が古くから語られているからだ。

 ネットワークを活用したコンテンツ流通といえば、ファイル交換ソフト「WinMX」などの影響により、違法コピーなどの悪いイメージがついてまわるという。ただし、大嶋氏は海外の事例として「極端に品質の悪いソフトが交換対象にされている影響で、多少なら金銭を払っても品質の高いコンテンツが得たい、という発想」が少なからずあるのだという。

 「マイクロソフトでは、製品にコンテンツのコピー防止機能を搭載するなど著作権保護への対応は万全。この保護機能への認知が広がれば……」と御代氏は回答。著作権者側の理解を求めた。

 西村氏は著作権保護以前の問題として「TV放送と似たようなイメージのストリーミング映像配信では、(付加価値も低く)儲からない」という認識が一部にある、と発言。その一方で「DVDに残せる・書き込めるというような機能があれば、ユーザー側も満足できるだろう」とし、「データの保存性」に着目する必要性を述べた。

 続く質問は「各種デバイスが市場に増えることによってコンテンツの利用シーンが増えるのではなく、むしろ規格の乱立による悪影響があるのでは?」という内容。大嶋氏はこれをSDカードやメモリースティックといった小型メモリーカード市場になぞらえ、その将来性を危惧した。

 富樫氏によれば、ソニーとしてもそれを防ぐため、複数の家電メーカーなどが参加するワーキンググループを設立。異なるメーカーの製品間でも最低限の相互接続性を維持できるよう、数年後をメドに統一規格などを決めていきたいとしている。

 ただし一方で西村氏は「例えばMPEG-2でも、放送用とDVD用で微妙に規格が異なる。ワーキンググループの結成によっていろいろな取り組みも生まれるだろうが、スムースに進行するかは不透明」と語り、規格の制定、メーカー間の協調には一定の課題があると見ている。

 またコンファレンス最後の質問は「ホームエンターテイメント市場の普及とマーケットの成立はいつか」というもの。御代氏が抽象的に「近いのでは」と語るのに対し、西村氏は独自に集計したアンケートの結果を引用。「現在は潜在ユーザーが多いものの、普及にはまだまだ時間がかかると見られる。専門家の分析によると、これは2~3年先を意味している」と答えた。また富樫氏も「技術が進んでも、それに応じた人間側の対応に問題もある」と微妙な表現にとどめた。重要な質問だけに、各社とも慎重に言葉を選んだと言えるが、実際問題として、時期の把握が困難であることもうかがわせた。


関連情報

URL
  NetWorld+Interop 2003 Tokyo
  http://www.interop.jp/


(森田秀一)
2003/07/04 20:22
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