サンフランシスコで開催中の「Web 2.0 Expo San Francisco 2008」で23日、“Web 2.0”という名称を提案した、米O'Reilly Media創業者でCEOのティム・オライリー氏が基調講演を行なった。Web 2.0の進化の方向性を示す一方で、オープンで分散的なはずのWeb 2.0が、一部の企業に「力の一極集中」をもたらす「Web 2.0の逆説」が起こる可能性があると警鐘を鳴らした。
■ Web 2.0はクラウドコンピューティングの方向で進化
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ティム・オライリー氏
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オライリー氏は冒頭、Web 2.0によってインターネットがあらゆる物事のプラットフォームになり、世界中の“知”が集約しつつあると指摘。「とはいえ、Web 2.0にはまだやれることがある」と語り、Web 2.0が「クラウドコンピューティング」の方向性で進化するのではないかとの見方を示した。
クラウドコンピューティングとは、インターネット上に分散するリソースを活用してサービスを提供するというコンセプト。インターネットを図版で描く際に、雲(クラウド)で表わすことに由来する。オライリー氏は、クラウドコンピューティングを活用することで、ユーザーが使えば使うほど便利になるアプリケーションが構築できるとした。
「真のWeb 2.0企業であれば、ユーザー数に比例して価値が向上するデータベースを構築している。これは、ユーザーが生成するデータを蓄積する競争だ。GoogleやeBay、Amazonなどは競合企業に比べて強力なデータベースを構築しているが、この競争の勝者には大きなリターンが与えられる。」
また、ユーザーがインターネット上で生成するデータの“意味”を理解しつつあることもWeb 2.0の特徴だという。意味とは、ユーザーがリアルタイムに利用しているデータのことで、その具体例として、Webページの重要性を測るGoogleの「PageRank」のほか、オライリー氏も出資したというWebアプリケーション「Wasabe」を紹介。Wasabeは、会員が商品購入履歴を公開しあうことで、商品を販売する店舗ごとの評判や価格を参考にする。これにより、スマートな買い物ができるという。
■ オープンなWeb 2.0で発生した利益が一極集中する「Web 2.0の逆説」
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Web 2.0の逆説
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このようにWeb 2.0は、クラウドコンピューティングの方向で進化しているが、オライリー氏は、進化の影に「Web 2.0の逆説」があると懸念を示す。「オープンかつ分散的なネットワーク上に構築されたアプリケーションは、新たな力の一極集中をもたらしかねない。それを防ぐためにも、(本当の意味で)オープンかつ相互運用可能なレイヤーでアプリケーションを構築する必要がある」。
さらなるWeb 2.0の進化としてオライリー氏は、「iPhone」をはじめとするモバイル機器の発展を挙げ、アプリケーションが機器を問わずに利用できるようになってきていると指摘。Microsoftが22日にプレビュー版を公開した「Live Mesh」でも複数機器でデータやアプリケーションを利用できるようになると紹介し、「当初は、Windows対応機器のみをサポートするようだが」と皮肉を交えると、会場からは笑いと拍手が起こる一幕も見られた。
さらにオライリー氏は、新たなセンサーが発達することによって、コンピュータを使っていることを意識せずに、インターネットの恩恵を受けられる「アンビエントコンピューティング」が実現すると予測。その具体例として、ユーザーが提供するGPSデータをもとにした交通情報や、米国で販売される自動車のタイヤに埋め込まれたセンサーをもとに情報を収集するシステムを紹介した。「我々はパーソナルコンピュータの時代から、アンビエントコンピューティングの時代に移りつつある」。
■ 世界を良くするためにテクノロジーができることはまだまだ残されている
最後にオライリー氏は、Appleのスティーブ・ジョブズ氏を真似て「One more thing」と発言。ビジョナリー企業は、社運をかけた大胆な目標を持っていると述べ、Googleが設立当初から世界中の情報を整理することを掲げたことを紹介。オライリー氏は、この構想がまだ実現していないと指摘し、世界を良くするためにテクノロジーができることはまだまだ残っていると語気を強めた。
「例えば、テクノロジーの力で政府の取り組みを国民にわからせるようにしたり、環境破壊を追跡することはできないか。そこにお金がもたらされるかは知らないが、そんなことよりこれは重要なことだ。」
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Googleは「世界中の情報を整理する」という構想を掲げたが、オライリー氏は「まだ実現できていない」と指摘する
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ビジョナリー企業の一例として、「PCをどんなデスクや家庭でも」という構想を掲げたMicrosoftも挙げられた
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テクノロジーができることとして、政府の取り組みを国民にわかりやすく伝えることを例に挙げた際に紹介したWebサイト
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「Google Earth」によって、ブラジルで行なわれていた違法な森林伐採が追跡されたという
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■ URL
Web 2.0 Expo San Francisco 2008(英文)
http://en.oreilly.com/webexsf2008/
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(増田 覚)
2008/04/24 19:06
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