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【技研公開2008】
高度BSデジタル放送を利用した映像の高速DLサービスなどを技術展示

「技研公開2008」のテーマは「技術のチカラがテレビを変える」
 日本放送協会(NHK)は、東京都世田谷区・砧にあるNHK放送技術研究所を一般公開する「技研公開2008」を、5月22日から25日にかけて開催する。これに先立って、20日にはプレスプレビューが行なわれた。

 技研公開は、NHK放送技術研究所の研究成果などを一般公開するイベント。入場は無料で、一般公開日の公開時間は午前10時から午後6時まで。技研公開2008で公開される研究成果は43項目で、昨年の「技研公開2007」で展示された36項目から増加。また、講演や専門家向けのポスター展示も行なわれる。なお、NHKによれば例年の入場者数は約2万人だという。


BS放送波から最大10倍速でコンテンツをダウンロードできるVODサービス

高度BSデジタル放送システムを利用した「高速ダウンロードサービス」
 技研公開2007では、NHKで放送した番組をVOD配信するにあたっての技術が展示されていた。しかし、2008年12月に「NHKオンデマンド」としてサービスが開始されることから、技研公開2008では同サービスに展示は行なわれていなかった。

 その一方、「高度BSデジタル放送システム」を用いたVODコンテンツの高速ダウンロードサービスを展示。高度BSデジタル放送システムは、BSアナログ放送が終了する2011年以降に新たに利用可能となる12GHz帯のBSチャンネル(計7チャンネル)での利用を目指した、大容量伝送も実現可能な方式になる。

 高速ダウンロードサービスでは、専用に割り当てた帯域を使ってコンテンツを配信。コンテンツは編成スケジュールに沿って配信されるため、予約を行なった上で指定時間にダウンロードされる形になる。ダウンロード所要時間は、コンテンツ実時間の最大10倍速程度になるという。また、コンテンツ情報や予告映像のダウンロード用途にも専用帯域が用意されている。

 実際のサービス化に関しては、高度BSデジタル放送システムの実現が前提になるため、最低限2011年以降が目安になる。このため、配信フォーマット自体も詳細は決定していないが、MPEG-2 TS方式以外にも携帯端末などで視聴できるようH.264といったフォーマットへの対応も可能だとしている。


コンテンツ選択時には容量などに加え、配信予定時間なども表示される 展示では課金決済はダウンロード後にネット経由で行なう方式をイメージ 携帯端末向けのコンテンツ提供も想定。microSDにデータを移して再生する

配信スケジュールは放送局側で設定する ユーザー切替も想定。その際は、おすすめコンテンツも切り替わる 高速ダウンロードサービス概要
配信時間が訪れると、予約コンテンツの自動ダウンロードが開始される
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 高度BSデジタル放送システムに関連した技術ではこのほか、新しいデータ放送を見据えた「インタラクティブ放送プラットフォーム」も展示されている。同技術では、Javaを活用したデータ放送番組が提示されていたほか、ホームネットワーク内にあるゲーム機や携帯端末などとも連携。各機器が持つ機能に応じて、データ放送番組の操作や文字入力といった機能をホームネットワークを介して行なえるようになる。


インタラクティブ放送プラットフォーム概要 ゲーム用コントローラを使用して画面を操作 携帯端末からの文字入力も

関連映像やWeb情報を検索・表示する「CuiroView」やCGMコンテンツ

CuiroView
 インターネットに関連した技術としては、関連映像やWeb上の関連情報を表示する「情報検索型視聴CuiroView(キュリオビュー)」、作成したコンテンツをインターネット上に配信・共有できる「TV4U(TV for you)」、ネットを介したコンテンツ配信における「番組配信サービスのセキュリティ技術」などが展示されている。

 CuiroViewは、ホームサーバーに蓄積したコンテンツを用い、再生中の映像に関連した映像や情報を、自動検索して画面右側などに表示するもの。EPGや字幕などをメタデータ素材に、ホームサーバーに蓄積した映像に加え、インターネット上にある映像やWebサイト情報の表示が可能。表示された関連情報への切替も可能で、同情報に関連した映像・情報などの追加検索・表示も行なえる。


再生映像に関連したコンテンツを表示 右側の表示コンテンツの再生も行なえる ドラマの例では、Webサイトなども提示された

TV4U。ネットを介した再生では台本データや画像などをダウンロード。元素材自体はPC内にインストールしたものを利用する
 TV4Uは、あらかじめ用意された素材に対してテキスト台本の打ち込みや、好みの演出スタイルを選択することで、CGキャラクターによる番組を作成できるコンテンツ。今回の展示では、番組間のハイパーリンク機能を使って、インターネットを介した他ユーザーとのコンテンツ公開や共有が例示されていた。

 ユーザーが制作したコンテンツは、専用ブラウザ上で表示が可能。ここから各コンテンツの再生が行なえるほか、番組間ハイパーリンク機能を利用することで番組から番組への遷移にも対応する。また、他ユーザーが作成したコンテンツを再編集する機能や、コメントを付加できると言った要素も盛り込まれている。


TV4Uのコンテンツ例
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P2Pによるコンテンツ配信イメージ
 番組配信サービスのセキュリティ技術では、P2Pを活用して放送事業者を経由したコンテンツ配信サービスが紹介されている。この場合、P2Pによるコンテンツをダウンロードする前に、各端末の匿名性を保持しながら端末間で認証を行なった上で、ダウンロードを開始。ダウンロード時には複数端末から受信を受けることで、実時間の短縮も図られる。

 P2P利用サービスではまた、コンテンツ購入前に一部の映像を確認できる機能も展示。これは元映像の一部を暗号化処理し、スライス状に部分部分が視聴できるというもの。暗号化の度合いはニーズに応じて対応が可能で、正規購入後に解除される。説明員によれば、プロモーション映像が用意されおらず、新たに制作する場合にコスト面での課題が生じる過去の映像作品などでの活用が見込めるという。


元映像に対してスライス状に暗号化処理を施したスクランブル技術 異なるテストパターン。元映像自体は同一 購入処理を行なうことで、正常に再生されるようになる

そのほか

そのほか、例年と同様にスーパーハイビジョンシアターも設置 強調撮影ロボットなどを組み合わせた「高度スタジオ番組制作技術」 インタラクティブ触覚ディスプレイ。今回の展示では、タッチ操作が加わっていた(下記動画参照)
インタラクティブ触覚ディスプレイ。駅構内の配置情報を確認しているところ
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関連情報

URL
  技研公開2008
  http://www.nhk.or.jp/strl/open2008/
  NHK放送技術研究所
  http://www.nhk.or.jp/strl/

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(村松健至)
2008/05/20 20:05
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