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【WIRELESS JAPAN 2008】
京セラ講演、実環境重視のiBurstで2GHz帯再割当を目指す

 WIRELESS JAPAN 2008のネットワークコンファレンス IEEE 802ワイヤレス技術フォーラムでは、京セラ 通信機器関連事業本部 海外システム営業部 開発営業課責任者の土屋剛氏が、2GHz帯の再割当を狙うiBurstについて講演を行った。


iBurstは「実環境での性能を重視したシステム」

京セラ 通信機器関連事業本部 海外システム営業部 開発営業課責任者の土屋剛氏
 土屋氏はiBurstの特徴を「実環境での性能を重視したシステム」と説明。基地局あたり最大32Mbpsのスループットや半径12.75kmのカバーエリア、時速100kmでのモビリティなどを5MHz幅で実現でき、オールIPベースの技術のために既存のIPネットワークと接続しやすい、VoIPサポートなども特徴として挙げた。

 技術面では、ターゲットの端末にのみ電波を集中するアダプティブ・アレイ・アンテナを紹介。これによって1ユーザーあたりのデータレート向上やカバーエリア拡大が見込めるほか、空間を多重するSDMAも実現でき、同一周波数を最大3ユーザーで利用することで利用効率が高められるとした。

 また、アダプティブ・アレイ・アンテナでターゲットへ電波を絞ることで隣接するセルでも同一の周波数を利用できるという特徴も紹介。他のシステムでは一般的に隣接するセルは異なる周波数を利用する必要があり、結果として利用周波数帯域が広くなるが、同一周波数帯でセルを構築できるiBurstはこの点でも利用効率が高いとした。


iBurstの概要 iBurstが採用するアダプティブ・アレイ・アンテナ技術の概要

アダプティブ・アレイ・アンテナの効果 iBurstのスロット構成

ユーザー速度は下り1~2Mbps。時速100kmでのモビリティも確保

1ユーザーあたり下り1~2Mbpsで通信
 ユーザー単位でのスループットは下り1Mbps、上り346kbpsで、1基地局に最大24ユーザーを収容可能。また、1基地局の収容人数を12ユーザーとすることで、下りを2Mbps、上りを692kbpsに倍速化することも可能であり、すでに2Mbps対応のiBurst製品も市場に投入しているという。

 5MHzで最大24Mbpsのサービスが提供できるため、周波数の獲得が容易である点もアピール。「他のシステムであれば狭すぎるような帯域でもiBurstなら利用できるため周波数も割り当てられやすく、海外のような電波割り当てのオークション制度でも競争相手が少なくなるため安価に周波数を入手しやすい」とした。

 時速100kmでの高速移動については、アダプティブ・モジュレーション方式を紹介。電波環境が良い場合はデータレートを重視した変調方式に、悪い場合には接続性を重視した変調方式に切り替えることで、安定的に高速な通信を実現しているという。

 12.75kmというカバーエリアについては「実際の設置例では都市部で1~2km、郊外で3~5km程度が多い」と断った上で、アダプティブ・アレイ・アンテナの効果に加えて低い周波数帯域を利用するためにカバーエリアを広くできると説明。屋内の電波浸透も良好であり、「京セラの横浜事業所ではビルの真上に設置されたアンテナを1階で受信するという、電波としてはよくない環境だが、21台のPCで同時に通信しても1台あたり1Mbpsのスループットを実現できている」とした。


5MHz幅で運用できるため周波数を獲得しやすいメリット iBurstのモビリティ性能

事業者申請は2008年12月頃。今後はさらなる高速化を目指す

国内での2GHz帯再割当に関する状況
 セキュリティ面でも56~280bitの可変長暗号キーを5ミリ秒ごとに更新するiSECにより「事実上解読は不可能」(土屋氏)。VoIPに関してもITU-Tの品質基準であるR値で固定電話並みの品質と固定電話より上の遅延品質を提供できるとし、「すでに南アフリカではiBurstでVoIPサービスを提供している」とした。

 標準化に関してはANSI、ITUに続いて2008年6月にiBurstをベースとした「625k-MC」がIEEE 802.20として承認。国内ではアイピーモバイルが返上した2GHz帯の再割り当てを希望しており、「京セラはメーカーなので実際の申請は事業者経由になるが」とした上で、「7月中には報告書がとりまとめられる予定で、12月には事業者の申請受付が始まるのでは」との予測を示した。

 今後の開発動向としては基地局のさらなる容量向上を予定。現在は1基地局で上下合計32Mbpsだが、空間を4多重、帯域幅を倍の10MHzとすることで上下合計86Mbpsを実現。さらにIEEE 802.20では128Mbpsまで高速化できるとした。


iBurstのセキュリティ VoIPの品質も固定電話並みを実現

iBurstの国際標準化動向 今後の開発動向。多重化や仕様帯域幅拡張により基地局あたり最大128Mbpsを実現

関連情報

URL
  WIRELESS JAPAN 2008
  http://www8.ric.co.jp/expo/wj/
  iBurst(京セラ)
  http://www.kyocera.co.jp/prdct/telecom/office/iburst/

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京セラ、iBurstの説明会を開催。2GHz帯の再割当を目指す


(甲斐祐樹)
2008/07/23 19:31
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