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パナソニックの目指すユビキタス環境とは

 幕張メッセで開催中のIT関連展示会「WPC EXPO」会場において、「ユビキタス時代を拓く『デジタルAVネットワーク』の現状と将来構想」と題した講演が行なわれた。松下電器産業が主張するユビキタス環境について、同社の大坪氏が、SDカードの抜き差しで情報を機器間共有するデモを交えて解説した。


3つの「D」の現状は

松下電器産業 代表取締役専務 パナソニックAVCネットワークス社社長の大坪文雄氏
 今回の講演者は松下電器産業代表取締役専務の大坪文雄氏。同社の社内カンパニー「パナソニックAVCネットワークス社」の“社長”を務めている。

 大坪氏はまず、「我々は3つの『D』を中核に事業を進めている。すなわちSDカード、DVD、デジタルテレビだ」とカンパニーの役割を説明。続いて各事業の概要解説を行なった。

 最初に取りあげたSDカードは、デジタルカメラやPDA、ノートパソコンからネットワーク家電といった各種のIT機器に対応した小型メモリーカード。全世界で664メーカーに採用され、対応製品は1,500モデルにおよぶという。

 売上規模についても大坪氏は自信を見せる。「2003年8月国内市場における占有率は30.7%。全世界でも2005年の需要動向予測では50%に達成するという民間機関の分析もある」と説明。将来需要も明るいとの見解を示した。

 続く2番目には「ポストVHS事業の創造」を目指して立ち上がったDVD関連事業を説明。現在はDVDレコーダー「DIGA」シリーズが好調だ。やはり2005年前後にはDVDレコーダーの需要がVHSの需要を追い抜くという予測データを引き合いに出し、書込型DVD分野がいよいよメインストリームに踊り出すのが近いと見ている。

 そして最後、3番目のDがデジタルテレビだ。大坪氏は「白黒テレビ時代から業界をリードしてきた自負がある」と、テレビ分野への継続的な注力を強調。「薄型&デジタル」をキーワードとした新ブランド「VIERA」シリーズをすでに立ち上げたことを述べた。

 「白黒、カラー、大画面に続く『第4の波』である」と大坪氏が自ら語る「薄型&デジタル」製品の販売目標も高い。「32インチ以下は液晶、37インチ以上はプラズマという住み分けで、2005年には全世界で売上7,000億円、薄型テレビ比率60%を目指す」としている。

 そしてデジタルテレビにはもう1つの大きな期待がかかる。ユビキタス環境実現に向けてのコア製品としての役目だ。大坪氏はシェア拡大を図る一方で、ユビキタス社会形成の基盤製品として展開したいと、今後の抱負を語っている。


ユビキタス実現にむけた製品展開

講演中にも各製品をアピール。先日発表されたSDカードに録画・撮影できる「D-snap」シリーズ
 大坪氏によると、パナソニックはユビキタスを3つのレイヤーから捉えているという。「SDカードによる機種間連携の『メディアネットワーク』、IEEE 1394や電子番組表(以下EPG)による連携『ホームネットワーク』、そしてIPによる直接的な連携『IPネットワーク』。これらが進化することでユビキタスは実現できる」(大坪氏)

 メディアネットワークの中核を担うSDカードについて、大坪氏は「ブローバンド時代への対応としてさらなる大容量化・高速化を目指している。来年のなるべく早い段階で1Gバイトタイプの製品を実現したい。また転送速度も今後は10MB/Sから倍の20MB/Sを目指す」と説明している。

 また、SDカードを有効活用するための製品一例として、先頃発表されたばかりの「D-snap」シリーズを紹介。とくに最上位機種の「SV-AV100」は、世界最小・最軽量ながら秒間3OフレームのMPEG-2撮影が可能なことをデモでアピールした。

 さらに大坪氏はSDカードが「異なる機器間の橋渡しする『ブリッジメディア』として最適」と発言。「DIGA」で録画したMPEG-4動画を、SDカードを介してD-snapや一部の携帯電話、カーナビで視聴する用途に使えることを説明した。

 つづいて大坪氏がパナソニックが主張するホームネットワークの一例で挙げたのがEPGの連携だ。今回の講演においては具体的事例として、DIGAでの番組録画予約を携帯電話から設定できる点を挙げている。また大坪氏は「当社はEPGのリーダーとして、あらゆる端末にEPGを搭載していきたい」と、今後の展開にも触れている。

 最後の用件であるIPネットワーク対応製品として、大坪氏が今回取りあげたのが、先述した薄型テレビ「VIERA」シリーズだ。本体にはイーサネット端子を搭載しており、インターネットへの接続が可能。そしてポータルサービス「Tナビ」から生活情報などを入手できる。

「PCと違い、リモコンのボタン1つで家族そろって楽しめる」と大坪氏は強調。コンテンツも宅配便の収集依頼やグルメ情報の検索といった機能が現在すでに29種類ラインナップ。年内にも百科事典サービスや医療情報サービスを加え、50種類程度にまで拡大させる計画だという。


「実機で紹介できたことが嬉しい」

 今回の講演で紹介された製品は、いずれも発表済み、もしくは発売済みの製品。大坪氏は「昨年の講演ではいずれもコンセプトの紹介にとどまったが、今年の講演はいずれも実機を交えてデモンストレーションができ、大変嬉しい」と心境をコメント。そして最後に「今後も3つの『D』によるバリューチェーンの構築に向けて努力する。『3D ユビキタスワールド』の成長に期待して欲しい」と述べ、講演を終えた。

 大坪氏が言うように、ユビキタス製品はコンセプトから製品化の段階へと、徐々にではあるが達しつつある。真のユビキタスの実現に向けては製品の価格帯が手頃になること、高速な無線ネットワークの普及など課題も多いが、少なくともパナソニックが主張するユビキタス環境は整いつつあると言えるだろう。


関連情報

URL
  WPC EXPO 2003
  http://arena.nikkeibp.co.jp/expo/2003/
  パナソニック
  http://panasonic.jp/


(森田秀一)
2003/09/19 15:08
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