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Airgo高木氏講演「最新の無線LAN技術MIMOの紹介と今後の無線LAN展開」

 WIRELESS JAPAN 2004で、Wi-Fi AllianceのConsumer Electronics(CE) Task Group Chairを務めたAirgo Networks Japanの高木映児氏は、「最新の無線LAN技術MIMOの紹介と、今後の無線LANの展開」と題した講演を行なった。


IEEE 802.11はさらなる進化のための規格

Airgo Networks Japanの高木映児氏

無線システムの搬送波と伝送速度の関係図
 高木氏ははじめに無線LANの現状整理として、無線LANで利用される周波数について説明した。現在IEEE 802.11b/gやBluetoothなどで最も多く利用されている2.4GHz帯は様々な無線が密集している状態であり、国際的にも5GHz帯の利用を推進する流れがあるという。

 日本では現在のところ屋内の利用に限り、IEEE 802.11aで使われる5.15~5.25GHz帯が免許不要局として割り当てられている。また、従来まで公共機関の気象データが利用していた5.25~5.35GHzについても、国際的に開放するという流れを受け総務省が調整を行なっており、2005年からは限定的な使い方にはなるものの利用が可能になる見込みという。

 このほか免許制で割り当てられている5.03~5.091帯は、MLS(Microwave Landing System)に予約されている帯域のために2007年までの暫定使用であり、2007年移行は現在電通業務に使われている4.9~5.0GHz帯が代わりに開放される見込み。

 続いて高木氏はIEEE 802.11規格の位置付けについて説明した。一般的には通信速度に関するIEEE 802.11a、IEEE 802.11b、IEEE 802.11gが広く知られているが、2006年に標準化が完了予定で、100Mbpsを保証する高速規格「11n」、日本仕様の「11j」、11aを欧州で使うための「11h」、通信の優先制御や帯域管理を行なう「11e」、セキュリティ強化の「11i」、管理用の「11f」「11k」など多くの規格が存在する。高木氏は「11eはQoSと言われているが、スループット自体を高速化する規格でもある」と補足した上で、「IEEE 802.11は単にパソコンをインターネットにつなぐものではなく、これを軸としてさらなる進化を図るためのもの」と説明した。

 無線LANの今後の展開としては、「OSやCPUなどが良い意味でも悪い意味でも決まっているPCと異なり、冷蔵庫や高機能テレビといった家電と接続するためには多岐のレイヤにまたがる相互接続性が必要になる」とコメント。デジタル機器の相互接続性確保を目的とした団体「Digital Living Network Alliance(DLNA)」を紹介し、「個人的な観点だが、独自に規格を作るのではなく、各団体のスタンダードを採用して協調できるようなまとめ方に好感を持っている」とコメントした。


世界の5GHz帯割り当て状況 日本国内の5GHz近傍周波数割り当て状況

IEEE 802.11の階層的位置付け IEEE 802.11規格の応用から見た位置付け

無線LANのホームユース展開

有線に近い品質を実現できるMIMO

MIMOの概要

MIMO技術は既存機器との共存が重要
 高木氏は現在注目されている無線LANの高速化技術として、MIMO「Multi-Input Multi-Output」を紹介。これは複数の送信アンテナで複数の信号を多重化し、さらに複数の受信アンテナで受信するシステムであり、スループットの高速化が図れるほか、周波数利用効率にも優れているという。

 高木氏は「テレビを見るときに、有線と無線で品質が違うようでは問題がある」と例示したのち「MIMOで複数アンテナを使うことで、有線に近い品質を実現できる」と説明。複数アンテナによるダイバーシティ効果も図れるとした。

 MIMOの注意点として高木氏は「既存の機器との共存が重要」とコメント。「IEEE 802.11gの導入時はIEEE 802.11bとの干渉問題が発生してしまったが、MIMOは既存の機器とも通信可能な上、既存の機器でも性能が向上することで世代交代の促進が期待できる」とした。

 シリコンバレーのオフィスで行なわれたMIMOのテストでは、約45Mbpsのスループットが実現できたほか、アクセスポイントから離れていて既存の機器ではPingも通らない場所でも、15Mbps以上のスループットが計測できたという。高木氏は「テストは公平な測定のために端末を360度回転させてアンテナ感度を平均化している」と説明したのち、「MIMOでは最大スループットと最低スループットの差が少ない点も大きな特徴だ」とした。

 高木氏は最後にまとめとして、「無線LANの周波数開放化や新仕様の策定、CE機器への展開が進んでいる」と説明、「MIMOは高スループットと高信頼性を実現する技術としてCE市場やインフラビジネスからも期待されている」として講演を締めくくった。


MINOのテスト環境 MIMOと既存機器のスループット比較

関連情報

URL
  WIRELESS JAPAN 2004
  http://www.ric.co.jp/expo/wj2004/
  Airgo Networks
  http://www.airgonetworks.com/

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(甲斐祐樹)
2004/07/23 19:59
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