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KDDI講演「電話サービスにおけるIP電話の位置付けと将来」

KDDIの松本潤氏
 NET&COM2003のフォーラム「ネットソリューションI」の講演「本格始動するIP電話サービス」の第2部では、KDDI ネットワーク技術本部の松本潤技術企画部長が「電話サービスにおけるIP電話の位置付けと将来」と題して講演を展開。はじめにブロードバンドの市場動向とKDDIのブロードバンドに対する取り組みについて説明した。

 松本氏はADSLの急速な普及について「成長はまだまだ続くだろう」との予測を示した。しかしながら、現在期待されているADSLの高速化については「距離延長が主たる目的であるため、スピードアップを宣伝していくとユーザーの不満が募るのではないか」と言及。FTTHについても現状ではまだ高価格であり、FTTHを必要とするコンテンツやアプリケーションも整ってはいないが「IP電話がキラーアプリケーションなんていう情けない状態は早く脱出したい」と大胆な意見を披露。韓国がブロードバンド先進国と言われるまで成長した理由としてオンラインゲームとVOD形式のドラマ配信を挙げ、「ブロードバンドにおいても放送が重要なコンテンツになるだろう」との考えを示した。

 KDDIのブロードバンドに対する取り組みとしては、2002年に実施した「FTTHトライアル」を紹介。また、国内や海外のバックボーンも合併の関係で潤沢な光ファイバネットワークを構築しているという。高速道路沿いには約1万kmの光ファイバネットワークを敷設、光海底ケーブルも導入しており、「光ファイバの通信容量は10年で1,000倍に達した」とKDDIのバックボーンに自信を示した。

 このようにバックボーンは潤沢である一方、FTTHサービスではいかにユーザーへのアクセスネットワークを構築するかが課題であるという。松本氏は「自前で構築する体力はないが、他事業者に“おんぶにだっこ”という状態も困る」という心中を明かした上で、KDDIの「半自前」というアプローチについて説明した。これはNTT局にコロケーションを置く、ダークファイバーを借りるなどの手段でアクセスネットワークを構築するという意味だという。また、携帯電話事業であるauの基地局も専用線ベースだが、これも「半自前」にすることで大幅なコスト削減が見込めるという。

 また、ブロードバンドで求められるコンテンツについてはKDDIサーバーを構築して配信を行なう一方、コンテンツ事業者にも開放していく方針だという。この中で高速インターネットやコンテンツ配信だけでなく、認証・決済サービスといったプラットフォームも展開するほか、「ブロードバンド当初の主要アプリ」とするIP電話も提供していくという。


 松本氏は講演の本題となるIP電話について「当初の無料型、広告型のサービスは使い勝手の悪さで普及しなかった」と前置き。中継局にIP網を構築、ユーザーからは普通の電話として利用できるサービスの流れを汲んだのち、現在さかんに騒がれているIP電話サービスが始まったと説明した。

 ここで松本氏はIP電話の信号方式について比較、SIP、H.323、MGCPの3方式について説明した。SIPとH.323はマルチメディア対応プロトコルであり、MGCPはアメリカのCATVで採用されているプロトコルで、既存の電話機能程度であれば安価に実現できる点が特徴だという。また、H.323はテレビ会議システムなど多くのサービスで採用されている実績があり、現時点では安定しているもののSIPと比較するとやや複雑な構成であるという。対するSIPはIETFで標準化され、Windows Messengerや第3世代携帯電話に採用されるという実績を持つ。また、インターネットとの親和性が高い点や、サーバーも含めてすべてSIPで構築できるという水平連携モデルという点からも、松本氏は「今後のトレンドはSIPになるだろう」と語った。

 KDDIの具体的なサービスとしては、法人向けに「IPフォンサービス」試験サービスを2002年7月から開始、同年11月から正式サービスとして提供している。個人向けにも2002年12月から「IP電話サービス」を展開、2003年4月に正式サービスに移行する予定だという。また、日本テレコム、NEC、松下電器産業とともに幹事会社として参加するメガコンソーシアムでのIP電話連携やイー・アクセスがモデム供給やサポートを一元的に提供、プロバイダー11社で実施するIP電話サービスも説明。NTTコミュニケーションズが中心となって提供するIP電話サービスについても「多くのプロバイダーは両方参加しているから、できれば仲良くやっていきたい」との意向を示した。

 IP電話の今後の課題は、通話品質や相互接続といった技術的課題はもちろんのこと、コストも大きな問題だという。IP電話サービス時代はコスト削減が図れるというものの、機器の値段がまだまだ高く、「レンタル提供するVoIP機能内蔵TAなども今の半額くらいになって欲しい」という希望を示した。技術の革新速度も著しいため、速度に合わせたコスト回収も難しいという。

 今後のIP電話の動向について松本氏は「ブロードバンドとVoIPが“卵と鶏”の関係で成長していく」と語った一方、固定電話市場より大きくなった携帯電話市場に加え、新たにIP電話が登場した電話市場は「正直どうなるかわからない」と素直な心中を明かした。ただし、「固定電話は高品質で高信頼性の上、よく考えてみれば料金も安い」とし、トラフィックの低下は避けられないものの、固定電話自体は存続すると考えているという。また、現在のIP電話サービスは既存の電話網があることを前提とした、いわば「軽いノリの息子」的存在であり、親である固定電話市場の懐が痛んではいくものの、「タフな仕事になるだろうが、IP電話を一人立ちさせられるよう覚悟を持ってビジネスを進めていく」という意気込みを示した。


関連情報

URL
  NET&COM2003
  http://expo.nikkeibp.co.jp/netcom/
  KDDI
  http://www.kddi.com/
  関連記事:KDDI、FTTHによるブロードバンド事業の試験サービスを実施
  http://bb.watch.impress.co.jp/news/2001/07/23/kddi.htm
  関連記事:KDDI、法人向けにIP電話サービスを試験提供
  http://bb.watch.impress.co.jp/news/2002/07/09/kddiipp.htm
  関連記事:KDDI、個人向けIP電話の試験サービスを開始
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/71.html
  関連記事:メガコンソーシアム4社、IP電話サービスの相互接続に合意
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/111.html
  関連記事:DION、ODN、TTNetなどプロバイダー11社がIP電話で相互接続
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/191.html


(甲斐祐樹)
2003/02/07 20:00
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