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【Web and Internet Applications Day】
ブログサービス開発者による今後のブログ展望

 12月3日、パシフィコ横浜で開催されている「INTERNET WEEK 2004」で、日本UNIXユーザ会が主催するイベント「Web and Internet Applications Day」が行なわれた。第1部ではブログ関連サービスの開発に携わる人物によるパネルディスカッションが行なわれた。


ブログサービス開発者がそれぞれのサービスを紹介

ゾープ・ジャパンの柴田淳氏
 Web and Internet Applications Day 第1部のセッションには、「COREBlog」を開発したゾープ・ジャパンの柴田淳氏、シックス・アパートの平田大治氏、tDiaryを開発した日本Rubyの会のただただし氏、はてなの伊藤直也氏がパネラーとして出席。モデレーターは日本UNIXユーザ会の小山哲志氏が務めた。

 セッションは、パネリストがそれぞれ携わるブログサービスの紹介からスタート。ゾープ・ジャパンの柴田淳氏は、COREBlogおよびWebアプリケーションサーバー「Zope」について説明を行なった。

 柴田氏はZopeについて「もともと新聞社のサイトを構築するために作られたため、CMS的な性格を強く持っている」と紹介。「Webアプリケーションサーバー内にHTTP/FTP/WebDAVサーバーやオブジェクトデータベースを持っているため、単体で簡単に起動する。サーバーでもあり開発環境でもある」との特徴を示した。

 COREBlogはZopeに追加できるミドルウェアとして位置付けられており、柴田氏は「サイトの中で更新性のある部分だけをCOREBlogに置き換えて部品的に使える」とコメント、北海道宗谷地域の情報サイト「さいほくネット」を導入事例として紹介した。

 Zopeは米国で開発されたツールのため、今後は日本語化も含めた国際化を図っていく方針。2005年第一四半期にはCOREBlogとZopeの日本語版を正式リリース予定だという。柴田氏は「単なる翻訳ではなく、国内で使ってもらうために不便なところを解消していきたい」との方針を示した。


COREBlogの特徴 今後の展開予定

ブログを続けるための機能向上や周辺サービスの充実が必要

シックス・アパートの平田大治氏
 平田大治氏は、最近のシックス・アパートの動向を紹介。3.11のバグフィクスバージョンである「3.121」のリリース、ソフトバンクBBとの提携による法人向けパッケージ販売といった展開に加えて、ユーザーとのコミュニケーションを円滑にするためのパートナー制度「ProNet」、フレームワーク構築に必要な技術情報提供の「Developer Network」も発足する。

 ブログサービス「TypePad Japan」では、コメントやトラックバックのスパム対策を進めているほか、フォントの大きさや色などを変更できるエディタ機能「WYSIWYG Editor」を実装。さらに国内でTypePadをOEM提供しているココログがサービス開始から1周年を迎えた点にも触れ、「意外かもしれないがまだ1年しか経っていない。驚くとともに、この1年間で大きく伸びたと思う」と感想を述べた。

 平田大治氏は、ブログのPingサーバー「ping.bloggers.jp」も運営しており、Pingサーバーから見た「ブロガーの一生」というデータも紹介。「最低で2回はPingを送信したことがあるブログの“平均寿命”は38.2日、10回以上はPing送信しているブログは60.79日で、平均のエントリー間隔は3.63日」とコメントしたのち「ブログの“三日坊主率”は47%」と紹介、会場の笑いを誘った。

 今後の展望としては、法人向けブログ市場の立ち上がりに加えて、個人ユーザーの底辺の広がりにも期待しているという。平田氏は「先ほど紹介したように、ブログがなかなか続かない人がいるのは事実。そのためにも、さらなる機能向上や周辺サービスの充実が必要だろう」と語った。


TypePad Japanのエディタ機能「WYSIWYG Editor」 「ping.bloggers.jp」のデータによる「ブロガーの一生」

Web日記とブログは独自発生ながら並行進化

tDiaryのただただし氏

はてなの伊藤直也氏
 ただただし氏は、日記サービスの歴史を振り返りながら自身が開発したtDiaryを紹介。日記サービスの特徴を「新しい記事順に並ぶTOPページ」「特定の段落にリンクできるアンカー」「リファラーを辿ってリンク先を知るというゆるやかなコミュニケーション」と説明した上で「アンカーはパーマリンク、リファラーで知るリンク先はトラックバックに近いのでは」との意見を披露。「Web日記とブログは独自に発生しながらも並行して進化している」と語った。

 tDiaryの特徴としてただ氏はオープン利用できる点や、内容に読者が“ツッコミ”を入れられる「ビルトイン掲示板」、リファラーを読者に公開する「本日のリンク元」機能などを紹介。また、テンプレートを固定してCSSを共有することで200を超えるテンプレートが配布されており、ただ氏は「国内最大規模のテンプレート数ではないか」とコメント。ただ氏がブログ三種の神器と考える「トラックバック」「Ping」「RSSフィード」もサポートしており、今後もXM RPC実装やRSSフィードのチューニングといった開発を進めていくとした。

 はてなの伊藤直也氏は、ブログと日記の違いについて「本質的には一緒だが、RSSやPing、トラックバックといった機能がシステム的には違うだろう」との意見を述べた上で、同社のはてなダイアリーを「もともとは日記として作ったサービスだが、今はトラックバックなどの機能を実装して“ブログです”と言っている、いいとこ取りのサービス」と紹介した。

 近日中には、はてなのホームページ更新チェックサービス「はてなアンテナ」のリニューアルを予定する。伊藤氏は「早ければ来週には公開できるだろう」と公開時期を示し、「今後はてなアンテナではRSSの対応も考えているが、既存のインターフェイスではRSSの対応が難しかい」と、RSSリーダー機能についても実装を考えているとした。


土佐日記を例に挙げ「日本人は古くから日記を公開するのが好きだった」とただ氏。「しかも紀貫之はネカマ」とのコメントに会場は爆笑 Web日記のリファラーを辿ってリンク元を探ることはトラックバックに似ていると語るただ氏

日記にブログ機能を実装した“いいとこ取り”のはてなダイアリー リニューアル後のはてなアンテナ画面イメージ

RSSとAtomは「大きな違いはない」との意見が多数

モデレーターを務めた日本UNIXユーザ会の小山哲志氏
 セッションの後半は、司会の小山氏が掲げた「RSSとAtom」「トラックバックの文字コード」「ブログに今後求められる機能」というテーマにに沿って議論が進められた。柴田氏はRSSについて「インターネットはそもそも何が流行るのかがわからず、RSSも最近聞かれるようになったが昔からあったもの」と指摘。「開発側としてはデファクトスタンダード待つしかないが、逆にいろいろなフォーマットに対応できるものをブログツールのベースに使う必要があるだろう」と語った。

 平田氏は「個人的な意見だが」と前置いた上で、「RSSもAtomも目的は一緒だが、RSSは過去の歴史を引きずっていて、その解決策としてAtomが登場した。今後は競争の中で1つになっていくのではないか」とコメント。「RSSとAtomは単なる文字列の変換なので、ユーザーはアプリ側で解決できる問題であり、開発者もフィードする側であればRSSとAtomに対応すればいい。フィード情報を受ける側が頑張る必要があるというのが実態だろう」との考えを示した。

 ただ氏はRSSとライセンスの問題に触れ、「RSSは現状自由に加工して配布されているが、その加工は誰の許可を得てやっているのだろうかという話題が上がったことがある。技術面だけでなく、そういう方向の議論もなされるべきでは」と指摘。平田氏が「Atomには著作権情報を盛り込もうという議論もあり、メタデータ付加によるコンテンツ管理は不可能ではないだろう」と答えると、ただ氏は「クリエイティブコモンズのようなライセンスを追加するだけであればツールは対応できるだろう」と補足した。

 伊藤氏は「RSSはバージョンごとフォーマットが異なって大変という話があるが、実際にはライブラリを使って抽象化すればあまり問題はない。逆にAtomこそライブラリが対応していなくて困っている面もあり、あまりバージョンの違いは関係ないのでは」との意見を披露。また、RSSは海外で広告ビジネスが立ち上がるといった試みがすでに始まっており、「Atomが普及するにはRSSを超えたインパクトが必要ではないか。先ほど話があった著作権対応などが差別化にならなければ普及は難しいのでは」との見通しを示した。

 司会の小山氏がフィードの著作権サポートについて「既存メディアには嬉しい話ではないだろうか」との意見を述べると、伊藤氏は「RSSフィードを配信しているasahi.comでは、フィード内の文字で二次利用を禁止している」との事例を紹介したのち、「それだけでは検索エンジンの判断に困るので、今後はロボットが自動解析できるような仕組みがあればいいのではないか」と語った。


API公開によるサイト間連携がインターネットの次の段階へ

出席したパネリスト
 続いて「トラックバックの文字コード」については、ただ氏が「『トラックバックの文字コードUTF-8で決まりだろう』という意見について議論が起きたことがある」との事例を紹介した上で、「日本には文字コードがいろいろあって対応できないシステムもあるが、文字コードは受け取る側で対応するというのがその議論のコンセンサスだった」と説明。平田氏は「海外からのトラックバックも考えれば、UTF-8というリーズナブルなユニコードは捨てがたいのでは」との考えを述べた。

 トラックバックという機能も、平田氏によれば「(Six Apartの)トロット夫妻が仕様をWebに公開したという状況にとどまっており、それ以上でもそれ以下でもない」のが現状という。平田氏は「日本でトラックバックについて関心が集まっているという話はトロット夫妻に伝えている。今後はXMLでのコンテンツ送信というやり方もあるかもしれない。その辺りの取り組みは現状では検討段階」とした。

 「ブログに今後求められる機能」では、平田氏が「企業秘密的な部分もあるが」と断った上で、「初心者にはテンプレート編集が難しいという話も聞いており、もっと個人ユーザーに楽しんでもらえるサービスを提供したい」と回答。フォトアルバムやプライベート管理機能などの強化といったアイディアを披露した上で、アフィリエイトにも触れ「今はアマゾンしかないという現状があるが、今後はアフィリエイトに関して企業も動いてくるだろう」との展望を示した。

 伊藤氏は「RSSやトラックバックといった機能は固まってきただろう。そういう機能は企業よりも単独で作ったものが広がるのが日本には適しているのではないか」とした上で、今後のポイントとして「APIの公開がサイト間の連携を生み、インターネットの次の段階に進んでいけるのではないか」との考えを示した。


ブログはパブリッシングとコミュニケーションの要素が融合

 ディスカッションの最後には参加者からの質問も寄せられた。「ブログサービス開発者から見た日記サービスとの違いは」との質問に平田氏は「Movable Typeを初めて見た時に思ったのは、更新の面倒くささから解放されたということ。日記だけで使うには贅沢なくらい作り込まれている」と回答。柴田氏は「ブログは1つの方式であって、ブログを長く続けている人は、実際には日記サービスの頃から続けていたりする」との意見を披露した。

 「ブログは日記と違って本当に普及するのか。まだまだ知名度が低いのではないか」との質問には、ただ氏が「ブログと日記の最大の違いは名前。日記は1人で書いて、人に見せるものではないが、ブログは人に語りかけるもの」と回答。「ブログの最大の功績は、読者を意識したユーザーに対して門戸を広げたことだろう。三日坊主が多くても、始めようとする人はいるので、いかに続けてもらう工夫をしていくかが重要だ」と続けた。

 平田氏はブログ普及に関する質問に対し、「その質問に対する答えは、私が2002年の頃からFAQとして申し上げていたことで、その疑問に打ち勝ってきたから今がある」との自信を示した上で、「ブログは僕が思うにパブリッシングツール。写真を送ることもパブリッシングだし、今はパブリッシングの概念が広がっていて、コミュニケーションの要素も強くなっている」とコメント。「米国ではブログがジャーナリズム的に使われていると言われるが、実際にはコミュニケーションツールとして使われることが大多数だ」と補足した。

 ブログのユーザー層について質問が飛ぶと、伊藤氏は「はてなは20代後半から30代が多く、趣味や職業は技術者系」とした上で「他のブログ事業者を見ると、ヤプログでは女の子が多いようだ。サービスコンセプトによって異なるのではないか」とコメント。「若い人にはインターネットが物心ついた頃から存在していて、既成概念にとらわれていない。だからブログの浸透も早いのでは」との考えを示した。


関連情報

URL
  Web and Internet Application Day
  http://www.jus.or.jp/events/wiad/
  関連記事:ゾープ・ジャパン、オープンソースCMSの公式日本語版をプレビュー公開[Enterprise Watch]
  http://enterprise.watch.impress.co.jp/cda/software/2004/11/17/3922.html


(甲斐祐樹)
2004/12/03 17:09
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