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【Web and Internet Applications Day】
国内関係者が議論「これからのソーシャルネットワーキングとは」

 「Internet Week 2004」最終日には、日本UNIXユーザ会によるプログラム「Web and Application Day」が開催され、国内ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)関係者らが集まってセッションを行なった。

 出席者は「mixi」の笠原健治氏、「GREE」の田中良和氏、「キヌガサ」の上田澄博らをはじめ、音楽配信のためにSNSを仕組みとして導入したという「recommuni」の竹中直純氏、日本初のオープンソースによるSNS「WaWaWa」のプロジェクトリーダーである吉村圭太郎氏ら5人。司会は奈良先端科学技術大学院大学情報科学センターの砂原秀樹助教授とインターネット総合研究所の法林浩之氏が務めた。


左から吉村氏、笠原氏、上田氏 田中氏(左)と竹中氏 司会の法林氏(左)と砂原氏

米国の「Friendster」がきっかけ

 SNSを始めたきっかけは米国の「Friendster」と答えたのは、学生時代から友人だったという笠原氏と田中氏。笠原氏は「Friendsterの人気ぶりに、自分の会社であるイー・マーキュリーに多くのユーザーが集まるコンテンツを持たせるにはSNSだと考えた」。一方の田中氏は1度はFriendsterに興味を覚えたものの、「こんなサービスを楽しいと思うなんてアメリカ人は変だと思った」という。しかし、その後も米国でFriendsterが流行していたことから、「この人気には何かがある」と直感。友人らを半ば強引に誘って試してみたところ「他人のページを見ても面白くないが、友人同士なら面白いと感じた」と語る。

 笠原氏と田中氏が面白いと感じたSNSだが、スタートするためには苦労したという。笠原氏は「どういうサービスなのか、社内に説明することも難しかった」とコメント。個人で始めた田中氏も「サーバーやプログラムは全部自前。仕事から帰ってきて朝4時までプログラムを組んで寝るという生活が何日も続いた」と語った。

 苦労したという点でいえばキヌガサはmixiやGREEとは異なる苦労をした。上田氏によれば、「ウチのサービスは、知らないうちに社長(paperboy&co.の家入一真社長)がブログで発表してしまった」という。2004年6月25日にスタートしたキヌガサだが、社長ブログで“発表”されたのが5月18日、6月10日に正式にプロジェクトとしてスタートした。上田氏は「わずか2週間程度の開発期間だったが、なんとか無事にサービスを開始できた」とコメント。しかし、当初こそ順調だったものの、現在の成長率は停滞気味だという。会員数でもmixiに差をつけられており、「手を打っていかなきゃいけない状況だ」と分析した。

 また、GREEの株式会社化を表明している田中氏も「ゼロからの出発」を強調。「良いサービスを作るには良い土台から。笠原君は大学生の頃から会社を作っていて、土台となる会社組織を持っていた。GREEをより良いサービスにするためには土台から作り直す必要があり、それは僕個人だけでは無理な作業だ」と株式会社化の必要性を述べた。

 現在約20万人のユーザーが登録しているという国内SNS最大手のmixiだが、笠原氏の目標は高い。「野心的な目標ではあるが、今後はメールやインスタントメッセンジャーのように1人1アカウントが当たり前になるようなサービスにしたい」と抱負を語った。


SNSにはネット上の悪い行為を防ぐ効果あり

 「ほかのSNSとは異なり、recommuniでは音楽を、音楽業界をもっと良くするためにSNSを取り入れた」と竹中氏。「音楽配信ビジネスが流行しつつあるが、違法ダウンロードがあるということを前提にしているため、著作権管理が非常に厳しい。正規の手段で音楽を楽しむ、本当に音楽が必要なユーザーには辛い状況になっている」と最近の状況を解説した。

 「音楽好きな私自身もとても悲しい」というこの現状を打破するために、竹中氏はGoogle社員が開始したSNS「orkut」に注目したという。米国でスタートしたSNSは、友人や知人など信頼の置ける仲間を招待するサービスで、「人と人が信頼関係でつながるもの」だ。「SNSは、インターネット上で行なわれている悪い行為を防ぐ効果があるのではないか」と分析した。

 この信頼関係を担保にrecommuniでは、ユーザーが正規に購入したCDからのリッピングデータをアップロード、運営者側が著作権関連の権利処理を一括して行ない、コミュニティ内での楽曲配布が自由にできるようにしている。複雑な権利関係の処理を行なうために、いわゆる第二JASRACである「e-License」から人材を招いている。また、音楽産業やミュージシャンなど音楽関係者の意見を取り入れるために、ソニー・ミュージックエンタテインメントから福岡智彦氏を社長に、ミュージシャンでプレイステーションの音楽ゲーム「パラッパラッパー」シリーズのディレクターを務めた松浦雅也氏らを取締役に招いたという。

 ログイン後のトップページには自己紹介や日記ではなく、好きな曲の推薦文が掲載されるのも「音楽関係者の意見を反映したため」で、招待した友人に関しても、友人の画像ではなく友人が推薦する楽曲についての文章が掲載される仕組みだ。

 音楽好きのスタッフが集まって提供しているrecommuniだが、竹中氏によれば「日本の法制度上は限りになく“白に近いグレー”だ」。メジャーレーベルを中心として、著作権関連の権利を理由にrecommuniに賛同しない企業も少なくない。また、「アップルのiTunes Music Storeが国内で開始すると報道されてしまったため、メジャーは“アップル待ち”の状況になってしまった」という。しかし、インディーズレーベルでは10数社の賛同を得ており、「基本契約ベースでは30社程度の協力を得られるはず」と強調。文化庁などに著作権法の改正を訴えているところだと語った。


トランスSNSの可能性は?

 会場からは、「限られた友達にだけサイトを見せたい」「複数のSNSに一斉にログインできる“トランスSNS”の可能性は」といった質問があった。

 これについては、SNSの管理機能として「Central-WaWaWa」を開発している吉村氏が回答。Central-WaWaWaの考え方は、各SNSに対して個人情報を登録する中央サーバー「Central-WaWaWa」を設置し、中央サーバーによって各SNSのログインや公開範囲などの管理を行なうというもの。実際には開発途上のシステムだが、現段階でもXMLのデータ形式である「FOAF(Friend of a Friend)」を利用することで、「限られた友達にだけサイトを見せる」ことは可能だという。

 サイトを見せる対象を限定するための技術としては、シックス・アパートの提供するセントラルIDサービス「TypeKey」も応用できる。上田氏は「一意のIDを割り振ることで、友達かどうかグループかどうかを認証することもできるだろう」と説明した。

 トランスSNSについては、上田氏が「SNSごとに人格を使い分けているユーザーがいる。例えば会社の同僚と友人では付き合い方が違う方が普通だ」との見解を示した。また、「以前勤めていた楽天でもサービスIDを統合しようという動きがあったが、IDの機能はサービスによって異なる。ブログでは毎回の入力が面倒なのでなるべく省略したいが、ショッピングは毎回ログインしてもらう方が安心できる」(田中氏)、「mixiでは公開設定にしているが、GREEでは非公開設定にしているユーザーもいる。統合しない方がいいという需要もある」(笠原氏)などの意見も出た。

 一方、竹中氏は「トランスSNSやりませんか」と他の事業者に呼びかけた。「例えば、orkutでは自分の友達を10段階で評価できるが、自分自身では恐ろしくてできない。しかし、Central-WaWaWaのような統合するシステムによって、各SNS内における関係から自動的にユーザーの評価が出力されるのであれば、面白い」とトランスSNSならではの新サービスを提案した。


関連情報
  Internet Week 2004
  http://internetweek.jp/
  mixi
  http://mixi.jp/
  GREE
  http://www.gree.jp/
  キヌガサ
  http://kinugasa.cc/
  recommuni
  http://recommuni.jp/
  WaWaWa
  http://wawawa.jp/


(鷹木 創)
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