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公衆無線LANやIP電話事業者などが考えるモバイルIP電話の将来

 アイピートークが開催したプライベートセミナーの前半では、公衆無線LANサービス事業者や機器メーカーなどから複数の講師が出席、モバイルIP電話の本格展開に向けて、それぞれの立場から現状分析・将来展望を行なった。


駅を中心に展開するモバイルポイント。新幹線でのサービスも視野に

日本テレコム プロダクト統括本部 ODN本部 モバイルポイント推進グループ マネージャーの浅川明氏

モバイルポイントはISPへ卸売りする形で提供。各ISPは独自の課金体系を用意する
 セミナー第1部ではまず、日本テレコム プロダクト統括本部 ODN本部 モバイルポイント推進グループ マネージャーの浅川明氏が登壇。公衆無線LANサービス「モバイルポイント」を展開する事業者としての立場から、今般の動向を解説した。

 モバイルポイントの前身は、2001年9月からJR東日本と共同で実験した駅構内での無線LANサービス。「駅は極めて公共性の高いエリアで利用者も多く、(無線LAN導入による)メリットが大きい」と浅川氏が説明するように、当初から駅を中心としたサービス展開を模索していた。

 すでにモバイルポイントは商用サービスとして展開されているが、独自の会員制ではなく、ISPに卸売りする形で提供。供給を受けたISPは、月額定額制料金や分単位課金など、オリジナルの方法でユーザーに課金を行なう。また「利用しているISPのIDとパスワードがそのまま認証に使える」ことを大きな利点として浅川氏は挙げる。

 なお、サービスエリアは、全国のJR鉄道駅を中心に拡大を進める計画。街頭の飲食店や人気スポットについても、他の公衆無線LANサービス事業者の独自エリアを借り受ける形で広めていく。今後も乗降客の多い駅を特に優先し、エリア拡大を図ってきたいという。

 将来的なサービス展望には、新幹線車内での無線LAN接続サービスの可能性を筆頭に挙げた。浅川氏も「米Boeingが航空機内でのインターネット接続サービスをはじめたこともあり、移動中の車内でも使いたいという要望は大変多くなった」と明かす。

 実現に向けた取り組みも始まっており、現在はJR北海道と協力し、新千歳空港周辺の路線での実験が開始されているという。ただ、実用化時期に関しては現時点で未定。浅川氏は「車両に搭載する通信機器の選定や、保守などに関する運用面などで検討すべき課題が多い」と話している。

 ほかにもモバイルポイント提携ISPのユーザー以外でも簡単に無線サービスを利用できるよう、一時利用チケットを発行することも検討しているという。

 また浅川氏は「日本テレコムでは最近オフィスの移転を行ない、固定席を持たないフリーアドレス制のオフィス環境を社員約2,000人規模で構築した」と紹介。これにはノートPCと、モバイルIP電話による内線システムの存在が不可欠だったという。そして「我々自らがモバイラーとなり、率先してユビキタス環境の実現に取り組んでいきたい」とまとめた。


「一生変わらない内線番号」を050番号で実現

フュージョン・コミュニケーションズ IP商品開発部部長の鎌田武志氏
 セミナー第2部は、フュージョン・コミュニケーションズ IP商品開発部部長の鎌田武志氏が「FUSION IP-Phoneの事業戦略」というテーマで講演した。

 FUSION
IP-Phoneは、フュージョンが独自に構築するネットワークを利用することで電話料金を抑えたIP電話サービス。発信側・着信側がともにFUSION IP-Phoneを利用していれば、NTTの固定電話網を一切介することなく通信可能で、料金も全国一律3分8円を実現している。

 「電話料金の値下げはすでに限界を迎えている」と考える鎌田氏は、「値下げの原資がなくなるほど安くしてしまった」と表現する。さらに「今後は料金競争でなく、いかにIP電話ならではサービスを打ち出せるかという競争になる」とも付け加えた。

 その中でも蒲田氏は、IP電話用に割り当てられる050番号を企業内の内線番号として使う手法に期待を寄せた。「050番号は固定電話として利用される一方、アイピートークで発売しているモバイルIP電話のような移動体端末でも利用できる」と、固定性と携帯性を併せ持った番号だと説明。具体的には、社内従業員1人1人に050で始まるダイヤルイン番号を割り当てることで、電話応対業務の削減や、転勤時に内線番号を変更する手間を省略できると指摘。さらには、そもそも内線と外線の差を意識せずに発・着信可能になるとみている。

 今後は、企業内にある既存の内線システムをそのまま利用し、モバイルIP電話による内線機能を付加するソリューションなどを推進していく計画。またグループウェアと連携し、Web上から内線番号をクリックすることで直接発信ができるアプリケーションなどの開発が待たれると鎌田氏は解説した。


携帯型端末に最適なSDIO規格をアピール

シイガイズのSales & Business Management, Director 真子泰則氏
 セミナー第3部のテーマは「SD/SDIO規格と無線LAN市場動向」。シイガイズのSales
& Business Management, Directorである真子泰則氏が、おもにSDIO規格と無線LANの現状を説明した。

 SDIO規格は、SDカードスロットを使って無線通信やGPS機能を付加するための世界共通規格。「スロットへ挿入される部分は幅24mm、長さ32mm+アルファ(搭載機能によって長さは異なる)と、PCカードやコンパクトフラッシュ製品と比較して小型である点が最大の特徴だ」と真子氏は強調し、小型化が至上命題とされる携帯型機器には大きなアドバンテージを持つと説明する。実際に、シイガイズのSDIO無線LANカード「SD-Link11b」はアイピートークのモバイルIP電話「M107ip」で使用されている。

 無線LAN機器の市場規模については、シンクタンク発表の統計資料などを例示しながら「右肩上がりの傾向は続くだろう」と予測。ノートPCで無線LAN機能の標準装備が一般的になったことや、プリンタやプロジェクタ、ネットワークカメラなどでも対応が進んだことなど、拡大の要因は揃っていると補足した。

 逆に市場拡大を阻む要因には、無線LANの設定が難解なことを挙げた。真子氏は現在の設定方法はあくまでもPC向けのもので、誰もが使えるものではないとした上で、「これのブレイクスルーを見つけ出すことができれば」と語った。


関連情報

URL
  アイピートーク
  http://www.iptalk.net/

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(森田秀一)
2005/03/10 18:09
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