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USB機器が無線で使える! USBデバイスサーバー「SX-2000WG」


サイレックスの「SX-2000WG」。標準価格は17,640円。無線LANアクセスポイントに似た外観だ
 サイレックス・テクノロジーのUSBデバイスサーバー「SX-2000WG」は、USB接続のデバイスを無線LANで利用するための機器だ。USBストレージをLANで利用するためのコンバータは他社からも発売されているが、本製品は無線LANを内蔵しており、ワイヤレスでの設置が可能である上、USBプリンタ・スキャナなど非ストレージ系のデバイスもLAN経由で利用できるのがウリである。

 なお、今回はメーカーの試作機を用いての評価であり、出荷版の製品とは若干仕様が異なる可能性があることをあらかじめ断りしておく。


USB機器が無線LANで使える

背面にはLANポートのほか、USB 2.0ポート×1を装備。リセットスイッチを除き、本体にボタン類は一切ない
 SX-2000WGは小型のルータほどの大きさで、背面には無線アンテナのほか、LANポート(10BASE-T/100BASE-TX)とUSB 2.0ポートがそれぞれ1ポート搭載されている。USBポートに接続した機器は、無線LAN(IEEE 802.11b/g)を経由し、LAN上のパソコンから利用することができる。詳しくは後述するが、ハードディスクやUSBメモリといったストレージはもちろん、プリンタやスキャナなど、非ストレージ系のUSB機器も利用できるのが本製品の大きな特徴だ。

 まずは本製品を無線LANネットワークに接続してみたい。本製品で無線LANを設定するための方法はいくつか用意されているが、Windows XP SP2に標準で装備されている「ワイヤレスネットワークセットアップウィザード」を用いるのが簡単だ。これは一般に「Windows Connect Now」と呼ばれている機能で、USBメモリを使って無線LANの設定情報をコピーする機能だ。

 すでに無線LANに接続しているWindows XP SP2搭載のパソコンから、ウィザードに従って設定情報をUSBメモリに書き出す。次にUSBメモリを本製品のUSBポートに接続し、その状態で電源を投入すれば、無線LANの設定が本製品に読み込まれ、無線LANに接続可能になる。ルータなどのDHCPサーバーがある環境下では、この時点で本製品にIPアドレスが割り振られ、Web設定画面へのアクセスが可能な状態になるわけだ。


有線/無線のほか、USBメモリを用いて無線LANの設定が可能 無線LAN規格はIEEE 802.11b/g。セキュリティ面では64/128bitのWEP、WPA-PSK(TKIP/AES)をサポートする

専用ユーティリティにより、パソコンのローカルデバイスとして表示

 USB接続の機器をLANに変換するため、どことなくNASに近い使い勝手を連想させられる本製品だが、接続されたUSB機器をパソコンに認識させるためには、パソコン側に管理ツール「SX Virtual Link」を別途インストールしてやる必要がある。LANに接続されたすべてのPCからユーティリティなしでアクセスできるNASとは少々違った仕組みだ。専用のツールで認識させるという点では、NASよりも、むしろXimeta社のNDASテクノロジーを用いたLAN接続HDDと似ている(関連記事)。


USBハードディスクを接続したところ。USBハブを用いて最大15台(ハブ含む)までの増設が可能だ 管理ツール「SX Virtual Link」のメイン画面。SX-2000WGのUSBポートに接続されている機器が表示されている。この状態で画面右下の「接続」をクリックするとパソコンとの接続が確立する

 さて、まずは代表的なUSB機器として、USBハードディスクをパソコンから認識させてみたい。SX-2000WGのUSBポートにUSBハードディスクを接続したのち、パソコン側にインストールしておいた管理ツール「SX Virtual Link」を開くと、デバイスサーバーリストにUSBハードディスクの機種名が表示される。これを選択して「接続」ボタンをクリックすると、マイコンピュータにアイコンが出現し、通常のハードディスクとして利用可能になる。ちなみに、2回目以降は「SX Virtual Link」起動時にUSBハードディスクが自動的にマウントされるよう、設定することも可能だ。

 SX-2000WGに接続したUSBハードディスクは、パソコンに直結している場合と同様、マイコンピュータ上では「ローカルディスク」として認識される。ちなみに、USBメモリを接続した場合も、パソコン直結の場合と同様に「リムーバブルディスク」として表示されるほか、後述のDVDドライブの場合も直結時と同じ名称で認識された。ネットワークドライブとしてドライブレターなどを割り当てる必要がなく、名称が変更されることもないため、初心者でも戸惑うことはないだろう。


SX-2000WGに接続したUSBハードディスクをマイコンピュータで表示したところ。パソコンに直結した場合と同様にローカルディスクとして表示されている 接続したUSB機器は、管理ツールで「お気に入りに登録」したのち、オプションで自動的に接続するよう設定しておけば、次回からは自動的にマウントされる

 ちなみに、USBデバイスをSX-2000WGのUSBポートから抜いた場合、パソコン本体のUSBポートから抜いた場合と同様にアンマウントが実行され、マイコンピュータから表示されなくなる。ただし、この時点で管理ツールの「SX Virtual Link」からも切断されるため、ふたたびUSBポートに差し込んだだけでは自動マウントは行なわれない。マウントする場合は「SX Virtual Link」でデバイスを選択して「接続」ボタンをクリックしてやる必要がある。

 こういった仕様を見る限り、機器のマウント・アンマウントをひんぱんに繰り返す使い方はあまり主眼に置かれていないようである。カードリーダーやUSBメモリなど、着脱することの多いデバイスを利用する際は少々面倒そうだ。


非ストレージ系のUSBデバイスも利用可能。スキャナや記録型DVD、iPodなども

DVDドライブを接続したところ
 SX-2000WGの特徴として、ハードディスクやUSBメモリといったストレージ以外の機器も利用可能である点が挙げられる。メーカーサイトによると「インクジェット複合機、プリンタ、スキャナ、デジタルカメラ、USBメモリ、メモリカードリーダ・ライタ、オーディオプレーヤー、ハードディスク、CD/DVD/MO/FDドライブ」が利用可能な機器として挙げられている(Webカメラ、USBスピーカーなど、アイソクロナスモードを使用するUSBデバイスは利用できない)。

 というのも、前述の通り、パソコン側はUSB機器が直結されているものと認識しているため、USB機器固有のユーティリティの多くがそのまま使用でき、結果として幅広い機種への対応を実現しているのである。

 例えば、筆者手持ちのエプソンのインクジェットプリンタ「PM-3300C UG」では、プリンタ付属のユーティリティソフト「EPSONプリンタウィンドウ! 3」がそのまま利用可能で、ネットワーク経由でありながらインク残量の表示もきちんと行なえた。現在市販されているUSBプリントサーバーの多くは双方向通信に対応せず、インク残量表示のできない機種がほとんどである。ネットワーク経由で双方向通信に対応していることは、本製品の大きなメリットと言って良いだろう。

 このほか、手元にあるいくつかのUSB機器を試してみたところ、エプソンのUSBスキャナ「GT-7000U」も問題なく認識され、ネットワーク経由で印刷物のスキャンを行なうことができた。また、USB外付型の記録型DVD(アイ・オー社製「DVRP-UM8」)についても、ライティングソフト「B's Recorder Gold」を用いてネットワーク経由でDVD-Rへの書き込みが行なえた(ただし、無線LANがボトルネックになるせいか、速度的には少々難がある)。

 さらにiPodを接続してみたところ、iTunesによる更新もきちんと行なえた。結果的に、DVDドライブでマイコンピュータからのディスク取り出しが行なえなかった点を除き、筆者手持ちのUSB機器においては、パソコン直結時とまったく同じ挙動が確認できた。

 なお、これらは筆者個人の環境で試した場合によるもので、メーカーによる動作保証がされているわけではないので注意してほしい。


SX Virtual Linkのオプション画面。USBのHi-speed、Full-speedのいずれで接続されているかがアイコンで表示されるのでわかりやすい DVDドライブ(上)、iPod(下)を接続したところ。筆者の環境ではこのほかにUSBメモリ、プリンタ、スキャナなどが接続可能であった

同時接続数は1台まで

 USBデバイスを無線化し、直結時と変わらない使い勝手を実現するという意味で本製品は大変ユニークな存在だが、制限もいくつかある。その最たるものが、同時接続数がパソコン1台までに限られており、複数のパソコンから1つの機器を同時に共有できないという点だ。例えば、本製品経由でUSBハードディスクにアクセスする場合、誰かが管理ツール上で「接続」の状態にしている限り、他のユーザーは読み書きできないほか、マイコンピュータ上にそのデバイスを表示させることもできない。

 その場合、管理ツール画面に表示された該当USB機器と「接続」状態になっているパソコンを「切断」させたのち、自分のパソコンで「接続」をクリックする、という作業が必要になる。これはおそらくローカルデバイスとして認識させていることに起因する問題だと思われるが、本製品の共有機能を大きくアピールするのであれば、接続中の相手に切断を依頼するメッセージを送れるようにするなど改善を望みたい点ではある。

 なお、念のために書いておくが、ここでいう同時接続数1台というのは、USB機器ごとに1台ずつのパソコンという意味であって、SX-2000WG本体に対して1台のパソコンというわけではない。仮にUSBハブを使って5台のUSB機器を接続している場合、それぞれに1台ずつ、最大5台のパソコンが同時に利用可能である。

 こういった点から、SX-2000WGは現状では複数のUSB機器をまとめて無線化し、1台のパソコンから集中的に利用する用途に向いた製品である、と言えそうだ。


ライフスタイルを変えかねない逸品

SX-2000WGにはUSBポートが1ポートしかなく、事実上USBハブは必須アイテムとなる。写真は今回使用したバスパワータイプの2ポートUSBハブ
 もう1つ惜しいのは、USBポートが1ポートであること。本製品ではUSBハブを用いた増設が可能で、最大15台(ハブ含む)までの拡張が行なえるが、どちらかというと1人のユーザーが複数台の機器を接続し、利用するケースが多いと思われる。それならやはりデフォルトで3ポート程度は欲しい。少なくとも現状のポート数では、USBハブの増設は必須であると言える。

 また、無線LANがIEEE 802.11b/gのみの対応である点も若干気になる。ネットワーク経由でデータを書き込む場合、電波の干渉が起こる確率の高い2.4GHz帯のIEEE 802.11b/gだけでは、少々心もとないのは事実。後継製品ではIEEE 802.11aへの対応も望みたいところだ。

 本製品は標準価格が17,640円と決して安くはないが、USBをLANに変換するコンバータと無線LANコンバータを合わせると3万円近くなることを考えると、十分にリーズナブルな価格設定だと言える。無線で共有できるというメリットはもちろん、プリンタで双方向通信が行なえる点や、ネットワーク経由でスキャナが利用できる点など、同社ならではの技術を利用した機能は秀逸である。少々大げさかもしれないが、筆者はライフスタイルを変えてしまう可能性のある製品だと感じた。


関連情報

URL
  製品情報
  http://www.silex.jp/japan/products/network/usb/sx2000wg.html
  サイレックス・テクノロジー
  http://www.silex.jp/

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(kizuki)
2005/09/07 11:01
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